前後を山頂フィニッシュに挟まれた平坦コースで行われたジロ・デ・イタリア第7ステージでサム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ)が勝利。ジロでトップスリーを6回経験していたベネットがグランツールのステージ初優勝を飾った。


青い海に面したピッツォの町青い海に面したピッツォの町 photo:LaPresse
5月11日(金)第7ステージ ピッツォ〜プライア・ア・マーレ 159km ☆5月11日(金)第7ステージ ピッツォ〜プライア・ア・マーレ 159km ☆ photo:RCS Sport5月11日(金)第7ステージ ピッツォ〜プライア・ア・マーレ 159km ☆5月11日(金)第7ステージ ピッツォ〜プライア・ア・マーレ 159km ☆ photo:RCS Sport

イスラエルで3日間、シチリア島で3日間を過ごしたジロは、第7ステージでようやくイタリア半島の土を踏んだ。長靴に形容されるイタリア半島の「つま先」部分、カラブリア州のピッツォからプライア・ア・マーレまで、ティレニア海に沿ってひたすら北上する。159kmコースの約97%を占める海沿いの国道18号線はほぼ真っ平ら。残り20kmを切ってからカテゴリーの付いていない登り(全長3.6km/平均勾配4%)が登場するものの、集団が割れるような難易度ではない。

海からの風を受けながら走るステージで、トニー・マルティン(ドイツ、カチューシャ・アルペシン)がファーストアタックに加わった。マルティンは4名で抜け出すことに成功したものの、元TT世界チャンピオンの独走力を警戒するクイックステップフロアーズがメイン集団を率いて吸収する。

続いて8km地点でマキシム・ベルコフ(ロシア、カチューシャ・アルペシン)、ダヴィデ・バッレリーニ(イタリア、アンドローニジョカトリ・シデルメク)、マルケル・イリサル(スペイン、トレック・セガフレード)が抜け出すと、メイン集団はメンバーに納得して見送る。延々と続く国道18号線でタイム差は4分半まで拡大。完全スプリンター向きの平坦ステージのため、ミッチェルトン・スコットに代わってクイックステップフロアーズやウィリエール・トリエスティーナが長時間にわたってメイン集団を牽引した。

ティレニア海に沿って北上していくティレニア海に沿って北上していく photo:LaPresse
前日とは打って変わって平穏な1日を過ごすプロトン前日とは打って変わって平穏な1日を過ごすプロトン photo:LaPresse
ティレニア海に面した町を通過していくティレニア海に面した町を通過していく photo:LaPresse
チームメイトに守られるマリアローザのサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)チームメイトに守られるマリアローザのサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) photo:LaPresse
2つのスプリントポイントではエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、クイックステップフロアーズ)がしっかりと連続で集団先頭通過(4番手通過)。最終的なマリアローザ獲得を目指すヴィヴィアーニがこつこつと12ポイント獲得している。

向かい風が吹く中を平均スピード42km/h前後で逃げ続けた先頭3名だったが、幅の広い幹線道路での逃げは分が悪い。タイム差は残り30km地点で2分を切り、その後イスラエルサイクリングアカデミーのペースアップもあって残り15km地点で逃げは全て吸収される。

スプリンターを欠くカチューシャ・アルペシンは引き続き攻撃を続け、マルティンやアレックス・ドーセット(イギリス)、マッズウルス・シュミット(デンマーク)らがそれぞれアタック。ディエゴ・ウリッシ(イタリア、UAEチームエミレーツ)やニコラス・ロッシュ(アイルランド、BMCレーシング)もここに加わったが、メイン集団から完全に抜け出す選手は現れなかった。

高速ダウンヒルを経て、EFエデュケーションファースト・ドラパックやトレック・セガフレード、ロットNLユンボがリードアウトトレインを組んでフィニッシュ地点プライア・ア・マーレに向かう。残り1kmを切ったところでクイックステップフロアーズが先頭に姿を現したものの、完全に主導権を奪うことはできなかった。

青空が広がる海岸線を走る青空が広がる海岸線を走る photo:LaPresse
クイックステップフロアーズとウィリエール・トリエスティーナが率いるメイン集団クイックステップフロアーズとウィリエール・トリエスティーナが率いるメイン集団 photo:LaPresse
集団のペースを上げるイスラエルサイクリングアカデミー集団のペースを上げるイスラエルサイクリングアカデミー photo:LaPresse
残り15km地点まで逃げ続けたマルケル・イリサル(スペイン、トレック・セガフレード)ら残り15km地点まで逃げ続けたマルケル・イリサル(スペイン、トレック・セガフレード)ら photo:LaPresse
チームメイトの最終リードアウトを受けたダニー・ファンポッペル(オランダ、ロットNLユンボ)の後ろから、クレマン・ヴァントゥリーニ(フランス、アージェードゥーゼール)とサーシャ・モードロ(イタリア、EFエデュケーションファースト・ドラパック)がそれぞれ別ラインで加速する。ヴァントゥリーニの後ろにニッコロ・ボニファツィオ(イタリア、バーレーン・メリダ)、モードロの後ろにヴィヴィアーニという並び。

およそ残り300mからのロングスプリントで先行したのはモードロ。しかし残り150mでそのスリップストリームから加速したヴィヴィアーニが先頭を奪う。さらにそのスリップストリームから、残り100mでベネットが加速した。

ヴィヴィアーニはモードロを抜き去いて先頭にたったものの、その後ろから追い上げるベネットを振り切れない。フィニッシュラインまで加速を続けたベネットがヴィヴィアーニをかわしてフィニッシュ。アイリッシュスプリンターが、イタリアンスプリンターたちを下した。

Velonの公開データによるとベネットの最高スピードは71.2km/hで、最高出力は1,480W。ラスト280mの平均出力を比較すると、1位ベネットは1,090W、2位ヴィヴィアーニは1,075W、3位ボニファツィオは1,029W、4位モードロは1,129Wだった。

先頭でスプリントするエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、クイックステップフロアーズ)とサーシャ・モードロ(イタリア、EFエデュケーションファースト・ドラパック)先頭でスプリントするエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、クイックステップフロアーズ)とサーシャ・モードロ(イタリア、EFエデュケーションファースト・ドラパック) photo:Kei Tsuji
サム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ)がエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、クイックステップフロアーズ)に並ぶサム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ)がエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、クイックステップフロアーズ)に並ぶ photo:Kei Tsuji
念願のスプリント勝利を手にしたサム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ)念願のスプリント勝利を手にしたサム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ) photo:Kei Tsuji
この2年間のジロでステージ2位を1回と、ステージ3位を5回経験しているベネット。グランツールでステージ初勝利を飾ったベネットは「1987年のステファン・ロッシュ以来となるアイルランド人の勝者になるなんて本当に嬉しい。イスラエルでの2ステージでの調子は良かったし、自分には勝てる力があると信じ続け、忍耐強く待ち続けた成果がようやく出た。この勝利でチームは自信を得るとともに、プロトンの中でリスペクトを得ることができるよ」と語る。アイルランド人選手によるステージ優勝は史上5人目となる。

ハットトリックを逃したが、中間スプリントの12ポイントとフィニッシュの35ポイントでマリアチクラミーノを守ったヴィヴィアーニは「残り5kmでポジションを下げてしまい、そこから前に上がるためにチームは力を使ってしまった。自分の後ろには常にベネットがいた。彼は戦略的にスプリントに持ち込んだと思う。昨日までの厳しい3ステージの影響もあり、今日は自分よりも速いスプリンターに負けてしまった」とコメント。ポイント賞2位のベネットとは78ポイント差をつけている。

マリアチクラミーノを含めて4賞ジャージは動かず。マリアローザを着て平穏な1日を過ごしたサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)は「TTで自分よりも強い選手からもっと大きなタイムを奪う必要があるので、調子が良ければ明日から再びアタックしたい」と語っており、翌日の2級山岳モンテヴェルジネ・ディ・メルコリアーノ山頂フィニッシュに目を向ける。

ステージ初勝利を飾ったサム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ)ステージ初勝利を飾ったサム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ) photo:Kei Tsuji
マリアローザを着てスプマンテを開けるサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)マリアローザを着てスプマンテを開けるサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) photo:Kei Tsuji


ジロ・デ・イタリア2018第7ステージ結果
1位 サム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ) 3:45:27
2位 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、クイックステップフロアーズ)
3位 ニッコロ・ボニファツィオ(イタリア、バーレーン・メリダ)
4位 サーシャ・モードロ(イタリア、EFエデュケーションファースト・ドラパック)
5位 ダニー・ファンポッペル(オランダ、ロットNLユンボ)
6位 ヤコブ・マレツコ(イタリア、ウィリエール・トリエスティーナ)
7位 クレマン・ヴァントゥリーニ(フランス、アージェードゥーゼール)
8位 マッズ・ペデルセン(デンマーク、トレック・セガフレード)
9位 ユルゲン・ルーランズ(ベルギー、BMCレーシング)
10位 イェンス・デブシェール(ベルギー、ロット・フィックスオール)
マリアローザ 個人総合成績
1位 サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) 26:31:30
2位 トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ) 0:00:16
3位 エステバン・チャベス(コロンビア、ミッチェルトン・スコット) 0:00:26
4位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、バーレーン・メリダ) 0:00:43
5位 ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ) 0:00:45
6位 ローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング) 0:00:53
7位 ペリョ・ビルバオ(スペイン、アスタナ) 0:01:03
8位 クリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ) 0:01:10
9位 ジョージ・ベネット(ニュージーランド、ロットNLユンボ) 0:01:11
10位 ファビオ・アル(イタリア、UAEチームエミレーツ) 0:01:12
マリアチクラミーノ ポイント賞
1位 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、クイックステップフロアーズ) 178pts
2位 サム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ) 100pts
3位 サーシャ・モードロ(イタリア、EFエデュケーションファースト・ドラパック) 73pts
マリアアッズーラ 山岳賞
1位 エステバン・チャベス(コロンビア、ミッチェルトン・スコット) 35pts
2位 サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) 18pts
3位 ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ) 12pts
マリアビアンカ ヤングライダー賞
1位 リチャル・カラパス(エクアドル、モビスター) 26:32:53
2位 ベン・オコーナー(オーストラリア、ディメンションデータ) 0:00:16
3位 サム・オーメン(オランダ、サンウェブ) 0:00:19
チーム総合成績
1位 ミッチェルトン・スコット 79:36:54
2位 チームスカイ 0:02:06
3位 モビスター

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