ヨークシャー最終日に総合逆転劇が発生。総合首位マグナスコルト・ニールセン(デンマーク)擁するアスタナが崩壊し、グレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシング)が第4代覇者に。単独で110km以上を逃げ続けたステファン・ロゼット(フランス、コフィディス・ソルシオンクレディ)がステージ優勝を挙げた。



総合首位で最終日を迎えたマグナスコルト・ニールセン(デンマーク、アスタナ)総合首位で最終日を迎えたマグナスコルト・ニールセン(デンマーク、アスタナ) (c)CorVos前日に勝利を逃したシルヴァン・シャヴァネル(フランス、ディレクトエネルジー)前日に勝利を逃したシルヴァン・シャヴァネル(フランス、ディレクトエネルジー) (c)CorVos

ハリファックスを出発していくハリファックスを出発していく (c)www.tour-de-yorkshire.co.uk
ツール・ド・ヨークシャー(UCI2.1)最終日は、大きくn字を描いてハリファックスからリーズを目指す189.5km。ノコギリ歯のようなアップダウンコースはここまで同様だが、その凹凸がより厳しいタフコースが用意された。

コースの序盤から連続するカテゴリー山岳の数は6ヶ所。登坂距離こそ短いが平均勾配10%前後の坂が続くほか、その合間にも細かいアップダウンが連続するため獲得標高は2000mを超える。トップ10が30秒以内にひしめく状態で最終日が幕開けた。

序盤からマグナスコルト・ニールセン(デンマーク)擁するアスタナに対し、10秒差の総合2位につけるグレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー)の逆転総合優勝を目論むBMCレーシングが揺さぶりを掛ける。16km地点でピークを迎えるカテゴリー山岳「ヘブデン・ブリッジ(登坂距離7km/平均勾配4.6%)」でのペースアップによって、18名という大きな逃げグループが生まれた。

この日も沿道には大観衆が詰めかけた。縫うように集団が山岳区間を走るこの日も沿道には大観衆が詰めかけた。縫うように集団が山岳区間を走る (c)www.tour-de-yorkshire.co.uk
BMCレーシングは総合8位のブレント・ブックウォルター(アメリカ)を送り込んでアスタナにプレッシャーを掛け、同タイムの総合9位ステフ・クラス(ベルギー、カチューシャ・アルペシン)や、前日に勝利を逃したシルヴァン・シャヴァネル(フランス、ディレクトエネルジー)、ブライアン・コカール(フランス、ディレクトエネルジー)、オウェイン・ドゥール(イギリス、チームスカイ)ら強力なメンバーも同調。この中から続く山岳「グーズアイ(1500m/10%)」でステファン・ロゼット(フランス、コフィディス・ソルシオンクレディ)とマキシミリアン・ステッドマン(イギリス、キャニオン・アイスベルグ)が抜け出して先を急いだ。

先頭2名のうちステッドマンが山岳ポイントで1位通過を続けたものの、キャリアに勝るロゼットが77km地点の「パークラッシュ(2200m/10.5%)」で単独に。連続する山岳ポイントを相次いでクリアしたため山岳賞獲得が確定し、逃げ切りに向けて淡々とペダルを回した。

一方メイン集団は、厳しい登りを得意としないニールセンのためにペースが上がらなかった。アスタナ率いるメイン集団は最大で先頭2名に9分差、追走グループに4分差のリードを許し、追走グループに入ったブックウォルターがバーチャルリーダーに浮上。中盤になってようやくタイム差を縮めに掛かったものの、その過程でアシスト陣が完全崩壊してしまう。ニールセンが丸裸になったことが激しいアタック合戦の呼び水となった。

しかしアスタナに代わり、セルジュ・パウェルス(ベルギー)の総合順位を守りたいディメンションデータが状況を抑え、ブックウォルターとクラスが入る追走グループとの差を詰めていく。最後のカテゴリー登坂「オトレー・シェヴィン(1400m/10.3%)」を前に追走グループの回収に成功し、その前に抜け出していたコカールとドゥールも登坂中に引き戻す。

中盤までメイン集団をコントロールしたアスタナだが、この後に崩壊してしまう中盤までメイン集団をコントロールしたアスタナだが、この後に崩壊してしまう (c)CorVosアップダウンの大きな丘陵地帯を通過していくアップダウンの大きな丘陵地帯を通過していく (c)www.tour-de-yorkshire.co.uk

ユニオンジャックはためく市街地を通過していくユニオンジャックはためく市街地を通過していく (c)www.tour-de-yorkshire.co.uk
平均10.3%をマークする直登でパウェルスたちがペースアップし、攻撃を受けたニールセンは遂に脱落。これを見たBMCレーシングがヴァンアーヴェルマートのために牽引し、遅れたニールセンの再合流を阻んでいく。最終的にニールセンは2分以上遅れたことでトップ15からも姿を消した。

173km地点の中間スプリントではヴァンアーヴェルマートが先頭通過し、かつてマトリックスパワータグに所属した総合3位のエデュアルド・プラデス(スペイン、エウスカディ・ムリアス)が2位通過。それぞれ2秒と1秒を確保したことで総合4位パウェルスとの差を広げた。

そんな攻防を尻目に独走を続けたのがロゼットだった。ラスト10kmを切ってもリードの減少を最小限に留め、最終的に逃げ切り勝利を達成。「キャリアの中で最も美しい勝利。どんどん価値を高めているヨークシャーで勝てたことは今後の糧になるよ」と語るロゼットにとって、今回が2015年のコフィディス移籍後初勝利。単独となってから110km以上を逃げ切る圧巻の走りだった。

独走でフィニッシュに辿り着いたステファン・ロゼット(フランス、コフィディス・ソルシオンクレディ)独走でフィニッシュに辿り着いたステファン・ロゼット(フランス、コフィディス・ソルシオンクレディ) (c)CorVos
2位に入り、逆転優勝を確定させたグレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシング)2位に入り、逆転優勝を確定させたグレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシング) (c)CorVos単独で立ち回ったマグナスコルト・ニールセン(デンマーク、アスタナ)を介抱するスタッフ単独で立ち回ったマグナスコルト・ニールセン(デンマーク、アスタナ)を介抱するスタッフ (c)CorVos


その34秒後になだれ込んだ集団では、ヴァンアーヴェルマートがスプリントで先着して逆転総合優勝を達成。クラシックシーズンの休養明けながら総合優勝に輝き、同時にポイント賞、チーム総合優勝も獲得。フィニッシュ直後には積極的なレースを作ったチームメイトたちと抱き合った。

「この勝利は先日死去したチームオーナーのアンディ・リースに捧げる。彼が亡くなってから勝利がなかったので、今回は大きなチーム目標に掲げていたんだ」とヴァンアーヴェルマートは打ち明ける。

総合優勝を決めたグレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシング)総合優勝を決めたグレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシング) (c)www.tour-de-yorkshire.co.uk
ヨークシャーの頭文字を形取ったトロフィーを掲げるグレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシング)ヨークシャーの頭文字を形取ったトロフィーを掲げるグレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシング) (c)CorVosチーム総合優勝もBMCレーシングの手にチーム総合優勝もBMCレーシングの手に (c)CorVos


「僕ら全員がアンディのためにと思ってレースを走っていたし、明日が彼の葬儀なんだ。彼がチームに傾けてくれた愛情はとても大きかったし、彼とチームに感謝したい。そしてヨークシャーで勝つことができて本当に良かった。普段はワンデーレーサーとして走っているから総合を狙って走ることは簡単ではなかったんだ。ブレント(ブックウォルター)を逃げに乗せプレッシャーを掛ける作戦もうまく働いたし、ニールセンが遅れたことで僕はボーナスタイムを狙うだけで良くなった。チーム全員が好調で、為すべきことをし、その上で得た優勝にとても満足しているよ。今回は5人しかいなかったけれど、全員が最高の働きができたと思う」。

満足げに語る32歳のリオ五輪金メダリストは今後、ツール・ド・スイスを経てツール・ド・フランスでのステージ優勝、そしてリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)のアシストに照準を合わせる予定だ。

記者会見に臨むグレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシング)記者会見に臨むグレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシング) (c)CorVos
ステージ結果
1位 ステファン・ロゼット(フランス、コフィディス・ソルシオンクレディ) 4h53’22”
2位 グレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシング) +34”
3位 イアン・ビビー(イギリス、JLTコンドール)
4位 エドワード・ダンバー(アイルランド、アクアブルースポート)
5位 エデュアルド・プラデス(スペイン、エウスカディ・ムリアス)
6位 アントニー・ペレス(フランス、コフィディス・ソルシオンクレディ)
7位 ヨナタン・イヴェール(フランス、ディレクトエネルジー)
8位 セルジュ・パウェルス(ベルギー、ディメンションデータ)
9位 ロベルト・キセルロウスキー(ロシア、カチューシャ)
10位 マイケル・ストーラー(オーストラリア、サンウェブ)
個人総合成績
1位 グレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシング) 16h38’00”
2位 エデュアルド・プラデス(スペイン、エウスカディ・ムリアス) +09”
3位 セルジュ・パウェルス(ベルギー、ディメンションデータ) +14”
4位 ロベルト・キセルロウスキー(ロシア、カチューシャ) +19”
5位 マイケル・ストーラー(オーストラリア、サンウェブ)
6位 イアン・ビビー(イギリス、JLTコンドール) +23”
7位 アントニー・ペレス(フランス、コフィディス・ソルシオンクレディ) +25”
8位 エドワード・ダンバー(アイルランド、アクアブルースポート) +27”
9位 パトリック・ベヴィン(ニュージーランド、BMCレーシング) +37”
10位 ヨナタン・イヴェール(フランス、ディレクトエネルジー) +39”
ポイント賞
1位 グレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシング) 30pts
2位 マグナス・コルトニールセン(デンマーク、アスタナ) 27pts
3位 ステファン・ロゼット(フランス、コフィディス・ソルシオンクレディ) 25pts
山岳賞
1位 ステファン・ロゼット(フランス、コフィディス・ソルシオンクレディ) 16pts
2位 マキシミリアン・ステッドマン(イギリス、キャニオン・アイスベルグ) 10pts
3位 マイケル・カミング(イギリス、マディソン・ジェネシス) 8pts
チーム総合成績
1位 BMCレーシング 49h55’47”
2位 アクアブルースポート +1’24”
3位 JLTコンドール +2’34”
text:So.Isobe
photo:CorVos,www.tour-de-yorkshire.co.uk

最新ニュース(全ジャンル)