ピンク色のマリアローザをかけた3週間の戦いが5月4日にイスラエルで開幕する。久々の出場となるフルームや大会連覇がかかったデュムラン、伊チャンピオンのアル、ジロ再挑戦のピノらが揃うマリアローザ争奪戦をプレビューします。

ジロ総合優勝者の証、マリアローザ

トロフェオ・センツァフィーネとマリアローザトロフェオ・センツァフィーネとマリアローザ photo:Kei Tsuji
ジロ総合リーダーの証であるマリアローザは直訳すると「バラ色ジャージ」。独特の淡いピンク色はガゼッタ・デッロ・スポルト紙の紙の色に由来する。イタリア最大手のスポーツ新聞であるガゼッタ紙が発行部数増加のためにジロを初開催したのは今から109年前の1909年。以降、これまでに100回開催されてきた。現在はガゼッタ紙と同じメディアグループのRCSスポルトが大会を主催している。ジャージスポンサーは元国営の電力会社であるエネル社。

他のステージレースと同様に、マリアローザ着用の権利を有するのは「最も少ない合計時間で前日までのステージを走りきっている選手」。つまりミラノの最終ステージ後にマリアローザを受け取った選手が総合優勝となる。また、総合優勝者には「トロフェオ・センツァフィーネ(終わりのないトロフィー)」と呼ばれる螺旋状の黄金トロフィーが贈られる。

ボーナスタイムは今年も健在で、タイムトライアルを除くステージのフィニッシュ地点で1位に10秒、2位に6秒、3位に4秒、そして2つあるうちの2つ目の中間スプリントポイントで1位3秒、2位2秒、3位1秒のボーナスタイムが与えられる。特に序盤のステージはレースの中でタイム差がつきにくく、ボーナスタイムによるマリアローザの移動もあり得る。たかが数秒のボーナスタイムと侮るなかれ、地道にタイムを積み重ねた選手が最終的にマリアローザ争いや総合表彰台争い、総合トップ10争いで笑うことになるかもしれない。

なお、総合優勝者に与えられる賞金は115,668ユーロ(約1520万円)で、特別プライズとして今年は150,000ユーロ(約1970万円)がプラスされる。ステージ優勝者は11,010ユーロ(約145万円)。マリアローザ着用者は1日につき1,000ユーロ(約13万2000円)。賞金総額は1,500,010ユーロ(約1億9750万円)だ。
2017年表彰台 総合2位ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)、総合1位トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)、総合3位ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)2017年表彰台 総合2位ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)、総合1位トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)、総合3位ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ) photo:Kei Tsuji

フルームとデュムランがTTでリード?山岳で勝負するアルやピノ

クリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)クリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:Kei Tsuji
8年ぶりにクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)がジロに戻ってくる。ツール・ド・フランスで4回総合優勝を果たしているフルームはバルロワールド時代の2009年にジロに初出場して総合36位。チームスカイに移籍した2010年に再び出場したが、第19ステージのモルティローロ峠で膝の痛みによりグルペットから脱落し、リタイア場所に決めていたフィードゾーンまで警察バイクに捕まって走ったためリタイア扱いではなく失格処分を受けている。

ツールチャンピオンの存在がイスラエルで開幕する特別なジロに花を添える。しかしフルームの出場に疑問を投げかける声が大きいことも事実だ。2017年ブエルタ・ア・エスパーニャ期間中の尿サンプルから基準値を超えるサルブタモールが検出され、フルームは治療目的の使用であることを主張したが、まだUCIによる処分は確定していない。仮にドーピング違反が認められれば、タイトル剥奪という可能性も十分にある。

サルブタモール問題が未解決のまま、逆風が吹く中で迎えるジロ出場。2017年のツールとブエルタで総合優勝したフルームが仮にジロで総合優勝すれば、3連続グランツール制覇という偉業となる。3連続どころか4連続グランツールならびにダブルツールを狙うフルームは例年よりもスロースタートな印象。ティレーノ〜アドリアティコでは精彩を欠いて総合34位に終わったが、直前のツアー・オブ・アルプスでは山岳で連日動いて総合4位に入っている。山岳ステージではケニー・エリッソンド(フランス)やワウト・プールス(オランダ)、セルジオルイス・エナオ(コロンビア)の援護を受ける。
トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ) photo:Kei Tsujiファビオ・アル(イタリア、UAEチームエミレーツ)ファビオ・アル(イタリア、UAEチームエミレーツ) photo:Kei Tsuji

フルームと同じ「タイムトライアルでリードを稼ぎ、山岳ステージでもクライマーに肉薄する登坂力を披露する」タイプで、フルームと同じダブルツール狙いのトム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)は、ディフェンディングチャンピオンとしてイスラエルに降り立つ。1年前にキンタナやニバリといった強豪を下して第100代チャンピオンに輝いたデュムラン。しかし今シーズンは「冬場のオーバートレーニングがたたって(本人談)」低迷しており、ここまで目立った成績を残せずにいる。

直前のリエージュ〜バストーニュ〜リエージュでは前年の22位を上回る15位という成績を残しており、調子が上向きなことは間違いないだろう。フルームに対峙する準備はできている様子。話題となった胃腸のトラブルも原因究明して問題なし。なお、第101回大会の個人タイムトライアルの合計距離は43.9kmで、前年の合計69.1kmよりずっと短い。

開催国イタリアの期待を背負うのは、緑白赤のイタリアチャンピオンジャージを着るファビオ・アル(イタリア、UAEチームエミレーツ)だ。2014年から2年連続ジロで総合表彰台に上り、2015年のブエルタで総合優勝を果たしたアル。2017年は落車の影響で地元サルデーニャ開幕のジロを泣く泣くスキップし、ツールでステージ優勝を飾るとともに総合5位に入っている。イタリア勢としては他にも、出場選手中最多12回目の出場となるドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、バーレーン・メリダ)やダヴィデ・フォルモロ(イタリア、ボーラ・ハンスグローエ)がマリアローザに近い存在だろう。
ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ) photo:Tour of the Alpsミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ) photo:Tour of the Alps

ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)は2年連続でジロにフォーカスしている。2017年のジロに初出場したピノは、第20ステージで優勝を飾りながらも総合表彰台には届かなかった。直前のツアー・オブ・アルプスではポッツォヴィーヴォやロペスらを退けて総合優勝を飾っており、フランス人ながらイタリアレースに闘志を燃やしている。

UAEチームエミレーツに移籍したアルに代わってアスタナのエースを担うのはミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)。ツアー・オブ・アルプスの山岳ステージでは誰よりも軽快な登坂力を披露した。体重59kgのピュアクライマーにとってタイムトライアルの距離が短い今年はチャンスだと言える。
サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) photo:CorVosローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)ローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング) photo:LaPresse - D'Alberto / Ferrari

ミッチェルトン・スコットはエステバン・チャベス(コロンビア)とサイモン・イェーツ(イギリス)の二枚看板。エースを担うと見られるのは2016年ジロ総合2位&ブエルタ総合3位という成績を残したチャベスだが、初挑戦の2017年ツールでは総合62位に沈んでおり、ここ2年間は思うような走りができていない。一方のイェーツは2017年ツールでヤングライダー賞を獲得し、今年パリ〜ニース総合2位と安定感がある。

初日の個人タイムトライアルで優勝候補に挙げられるローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)や、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ2位のマイケル・ウッズ(カナダ、EFエデュケーションファースト・ドラパック)、そして2017年ツアー・オブ・カリフォルニア総合優勝者ジョージ・ベネット(ニュージーランド、ロットNLユンボ)、古巣に戻ったルイス・マインティーズ(南アフリカ、ディメンションデータ)らも総合上位候補だ。

歴代マリアローザ獲得選手
2017年 トム・デュムラン(オランダ)
2016年 ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア)
2015年 アルベルト・コンタドール(スペイン)
2014年 ナイロ・キンタナ(コロンビア)
2013年 ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア)
2012年 ライダー・ヘシェダル(カナダ)
2011年 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア)
2010年 イヴァン・バッソ(イタリア)
2009年 デニス・メンショフ(ロシア)
2008年 アルベルト・コンタドール(スペイン)
2007年 ダニーロ・ディルーカ(イタリア)
2006年 イヴァン・バッソ(イタリア)
2005年 パオロ・サヴォルデッリ(イタリア)
2004年 ダミアーノ・クネゴ(イタリア)
2003年 ジルベルト・シモーニ(イタリア)
2002年 パオロ・サヴォルデッリ(イタリア)
2001年 ジルベルト・シモーニ(イタリア)
2000年 ステファノ・ガルゼッリ(イタリア)
1999年 イヴァン・ゴッティ(イタリア)
1998年 マルコ・パンターニ(イタリア)
1997年 イヴァン・ゴッティ(イタリア)
1996年 パヴェル・トンコフ(ロシア)
1995年 トニー・ロミンゲル(スイス)
1994年 エフゲニー・ベルツィン(ロシア)
1993年 ミゲール・インドゥライン(スペイン)
1992年 ミゲール・インドゥライン(スペイン)
1991年 フランコ・キオッチォーリ(イタリア)
1990年 ジャンニ・ブーニョ(イタリア)

text:Kei Tsuji
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