エキップアサダ強化プログラムの2010年参加メンバーが発表された。これは、エキップアサダがそのノウハウを使ってヨーロッパに通用する選手を育成するもので、今回は特別強化選手として小森亮平、強化選手として福田高志、涌本正樹、海藤稜馬、木下智裕、石原裕也が選ばれた。

スライドを使って強化プログラムを説明する浅田顕監督スライドを使って強化プログラムを説明する浅田顕監督 photo:Hitoshi Omae「体力があって素材がよくて元気な選手たちを、計画的にトレーニングし、ヨーロッパの環境に順応させる」。浅田顕監督は、強化プログラムの目的をひと言でそう話す。選ばれた6名の平均年齢は19歳。昨年ツールに出たフミとユキヤを一つの到達点とするなら、彼らには5年ほどのチャンスが与えられているわけだ。

浅田はこうも話す。「小森は今年の世界選U23で10位以内に入る実力を持っている。他のメンバーも、全日本のU23に優勝するか、エリートに出て3位以内、うまくいけば優勝できる素材が揃った。フランスのエリートレースで、プロ予備軍を打ち負かすような走りを見せたい」。

写真左から福田高志、石原裕也、海藤稜馬、浅田顕監督、涌本正樹、木下智裕、小森亮平写真左から福田高志、石原裕也、海藤稜馬、浅田顕監督、涌本正樹、木下智裕、小森亮平 photo:Hitoshi Omae高校生の石原を除く5名はフランスへと飛び、最大3ヶ月滞在してフランス語や現地の生活、そしてもちろん本場のロードレースに慣れる暮らしが始まる。小森と木下はヴァンデUに合流する。

「今年の全日本のU23は、このメンバーから間違いなく出す」。浅田は力強くそう語る。そして、これまでエキップアサダを支えてきた後援会は今年ももちろん継続、田之頭宏明代表が駆けつけ支援金を届けた。


エキップアサダ強化プログラムメンバー

小森亮平(こもりりょうへい)
1988年9月26日生まれ、21歳。昨年のトレック・リブストロングU23からさらなるレース出場の機会を求めてヴァンデUへと移籍。「タイで1ヶ月ほど走り込んできた。今年一年、プロになるためにがんばりたい」。

木下智裕(きのしたともひろ)
1991年4月19日生まれ、18歳。中2のとき地元での練習中にフミに出会い、「強くなりたいんですけど、後ろを走らせてもらえますか?」と言ったという木下。「やるんだったら浅田さんのもとで指導を受けたい」と参加。

福田高志(ふくだたかし)
1988年6月28日生まれ、21歳。大阪経済大自転車競技部。昨年の全日本U23は5位、U23のTTは6位と「パッとしないので」(本人談)、エキップアサダの強化プログラム参加を決意。陸上競技からの転向組だ。
小森亮平(こもりりょうへい)小森亮平(こもりりょうへい) photo:Hitoshi Omae木下智裕(きのしたともひろ)木下智裕(きのしたともひろ) photo:Hitoshi Omae福田高志(ふくだたかし)福田高志(ふくだたかし) photo:Hitoshi Omae


涌本正樹(わくもとまさき)
1988年8月14日生まれ、21歳。マトリックス・パワータグ所属。「いつも『こいつらは何もない』と言っている安原昌弘監督が『おまえ、やってみるか』と言ってくれた。必ず一芸を身につけて帰ってくる」

海藤稜馬(かいどうりょうま)
1990年8月29日生まれ、19歳。山形大1年、チーム・エルドラード所属。第3回トライアウト合格選手。「まだまだ力は足りないと思っていますが、全日本のU23は優勝したい」。

石原裕也(いしはらゆうや)
1992年4月17日生まれ、17歳。市立習志野高2年、B.C.ブランシュ所属。今回のメンバーでは唯一のUCIジュニアカテゴリーの選手。第4回トライアウトの合格者だ。まだ自転車歴は8ヶ月と浅いが、夏にヨーロッパ遠征を予定している。
涌本正樹(わくもとまさき)涌本正樹(わくもとまさき) photo:Hitoshi Omae海藤稜馬(かいどうりょうま)海藤稜馬(かいどうりょうま) photo:Hitoshi Omae石原裕也(いしはらゆうや)石原裕也(いしはらゆうや) photo:Hitoshi Omae


text&photo:Hitoshi Omae

以下はエキップアサダのプレスリリースより抜粋

【エキップアサダ選手強化プログラム(EDP)始動】
エキップアサダが満を持して始動させた、世界で活躍出来る選手を発掘&強化する「エキップアサダ選手強化プログラム(以下EDP)」。

本プログラムの目的は、新城幸也、別府史之の次に世界&ツール・ド・フランスで活躍出来る選手育成を、チームの垣根を超えて行うことである。
海外にパイプを持つエキップアサダの財産を、日本自転車界の将来のために惜しげも無く注ぎ込む一大プロジェクトなのだ。

【若い才能を「育成」ではなく「強化」する】
本EDPの参加を認められた選手は18歳から22歳の6名。クラブチーム所属の選手から、本年度よりフランスのプロチーム下部組織で走る選手も含まれる。

まず本プログラムの重要な特徴は「育成ではない」という事だ。世界のレベル、特にツール・ド・フランスを目指して走る事を念頭に置いた場合、ある程度の才能を持ち合わせた選手でないと対応は不可能と、エキップアサダの浅田顕監督は確信している。よって今回選ばれた6人は才能のある選手が「発掘」された結果であり、その選手たちを「強化」することがこのプロジェクトの根幹なのだ。

【6人の選手に課せられた目標=全日本U23優勝】
2月中旬から開始のフランス遠征に先立ち、2月6日に埼玉県にあるエキップアサダチームハウスでは2日間のキックオフ「合宿」及び、ファンの皆様&メディアを迎えての「壮行会」が行われた。

合宿においては、本プログラムの陣頭指揮を執るエキップアサダ浅田顕監督が、選手達に「どうすればツール・ド・フランスに行けるのか?」の講義を行った。内容としてはツールへの道は夢を見ているだけではダメで、具体的に何を行えば本当にツールに出れるのか?を若手選手たちに教え込んで行く。続いてマンツーマンでトレーニングプログラムを策定。

その後、浅田顕監督の車での伴走による6人全員での実走行練習が行われた。今後フランス各地のチームに散らばっての活動が予想されるため、6人揃っての走行は貴重だ。練習にはロードレース中継でおなじみのJ-sportsさんのカメラが取材に入り、選手たちの目の色も変わる。浅田監督、及びメディアへ自分の実力のアピールするために皆必死であり、あたかも実戦の様な緊張感も漂った。

本合宿において、全選手に課せられた2010年度目標は6月に行われる「全日本選手権ロードレースU23」での優勝だ。当然ながら同大会で優勝出来るのは1名のみだが、その座を獲ることを全選手が義務付けられたのだ。同じ目標を目指す同志でありながら、直接のライバルとなる選手たちと肩を並べる強化プログラムはサバイバルの様相も漂わせ、若手選手たちはエキップアサダが見てきた世界の厳しさをひしひしと感じている。

【選手の将来の行き先は自由。エキップアサダは彼らが来たがるチームを構築する】
本「エキップアサダ強化選手プログラム(EDP)」は他のチームの選手達を集めて、エキップアサダが欧州遠征の面倒をみる形となっている。

しかし、この活動はツール・ド・フランスを目指すエキップアサダに取って、どの様な意味があるのだろうか?

浅田監督は語る「今回EDPに参加する選手達には”いくらでも強くなって、新城や別府の様にプロツアーチームに求められる選手になり、ツールに出て欲しい。各選手がステップアップをするにあたっては海外強豪チームへの移籍を含め、可能な限りサポートをしたいと思う。”とはっきり言っています。」

それではエキップアサダはどうなるのか?

「近い将来、エキップアサダは強くなった彼らが入りたがる様なチームになっていれば良いのです。目下エキップアサダは、来年以降のUCIプロチーム再登録を準備中です。我々が再び海外で活躍し始め、ツール・ド・フランスに出場出来るであろう魅力的なプロチームを作りさえすれば、必ず日本最高の選手が入団を望み集まってくる。そのチームこそが日本のファンの皆さんが望む形であり、我々が目指すエキップアサダなのです」

UCIプロ登録チームの活動がない本年を、逆に好機と捉えて才能有る若手の強化へとスイッチしたエキップアサダ。近い将来、第一線で再活躍する土台を着々と構築中だ。