ロンドとルーベに挟まれた水曜日に開催されたシュヘルデプライスを走ったバイクたちを紹介。ルーベを見据えたチームスカイのサスペンション搭載DOGMAや、ファンシップが使う日東の幅狭ハンドル、アクアブルースポートの3Tなど話題のバイクたち。まずは前編から。
イアン・スタナード(イギリス、チームスカイ)
ピナレロ DOGMA K10-S
イアン・スタナード(イギリス、チームスカイ)のピナレロ DOGMA K10-S photo:Makoto.Ayano
チームスカイのクラシック班主要メンバーの一人、イアン・スタナード(イギリス、チームスカイ)はパリ〜ルーベに向けた予行演習としてサスペンションを搭載したDOGMA K10-Sをロンドとシュヘルデプライスに投入した。昨年のルーベから手元のスイッチで動きを設定できる電子制御のeDSSサスペンションを使い、今年も継続運用中。他のチームメイトはオールラウンドモデルのDOGMA F10を駆った。
スタナードのみFMBのパリ〜ルーベ(27c)を装着 photo:Makoto.Ayano
目を引く電子制御のeDSSサスペンション photo:Makoto.Ayano
パリ〜ルーベを見据えてエリートのCiussi GELボトルケージを装備 photo:Makoto.Ayano
他メンバーが駆ったDOGMA F10 photo:Makoto.Ayano
ルーベを見据えるだけに、ボトルケージは高い保持力を誇るエリートのCiussi GELボトルケージに滑り止めを貼り付けて使用。他のチームメイトがコンチネンタルのタイヤを用いる中、スタナードのみFMBのパリ〜ルーベ(27c、フランス国旗ロゴ入りはあまり見かけないタイプ)を貼り付けたデュラエースC60ホイールでシュヘルデプライスに挑んだ。パリ〜ルーベでも基本的な仕様は変わらないと思われる。
ヤンウィレム・ファンシップ(オランダ、ルームポット・ネデランセロテリ)
イサーク Element Team Edition
ルームポット・ネデランセロテリのイサーク Element Team Edition photo:Makoto.Ayano
おそらくパリ〜ルーベまでのクラシックシーズン中最も注目を集めたのがこのバイクだろう。見た者を驚かせる幅狭ハンドルの持ち主はルームポット・ネデランセロテリに所属するヤンウィレム・ファンシップ(オランダ)。トラック競技出身で、オランダのコンチネンタルチームに所属した昨年はワールドチーム相手に大金星を挙げ、プロコンチームとの2年契約に繋げた23歳だ。
ハンドルは日東がランドナー/ツーリング用としてラインナップするB135SSB。実測値はブレーキレバーフード部で32cmとややカタログ値より狭いが、日東への電話取材によれば過去にトラック選手からのオーダーで幅狭タイプを製造した可能性もある、とのこと。ファンシップはトラック時代から狭いハンドルを愛用しており、チーム監督も現地取材に対してそのように語っている(現地レポートを参照)。最近の石畳クラシックでは積極的に逃げを打っており、その度にハンドル幅が注目を集めてきた。
ハンドルは日東がランドナー/ツーリング用としてラインナップするB135SSB photo:Makoto.Ayano
ステムクランプ部分に「TOKYO」の文字が見える photo:Makoto.Ayano
サドルはスポンサー外のスペシャライズド POWER photo:Makoto.Ayano
バイクはオランダのイサークで、オールラウンドモデルのElement Team Editionを全メンバーが使用する。ホイールはファストフォワード、タイヤはブレデステインとオランダ色濃いアッセンブルは昨年同様で、コンポーネントは今では貴重なカンパニョーロ。セカンドグレードのレコードEPS(パワーメーター導入車両のクランクはスーパーレコード)を全員が使用中だ。
ハンドル周りやシートポスト類はリッチーがスポンサーだが、ファンシップの例からもそこまで縛りは厳しくない様子。デダのロゴをかなり雑に塗りつぶしたZERO100ステムなども散見される。ファンシップのサドルはハンドルと同じく巡行を意識した非スポンサーのスペシャライズド、POWER。
マキシム・ダニエル(フランス、フォルトゥネオ・サムシック)
ルック 785 HUEZ RS
マキシム・ダニエル(フランス、フォルトゥネオ・サムシック)のルック 785 HUEZ RS photo:Makoto.Ayano
スタート前に機材を確認するメカニック photo:Makoto.Ayano
ホイールはコリマのWS、タイヤはヴィットリアのCORSA(25c) photo:Makoto.Ayano
チーム名を微変更したフォルトゥネオ・サムシックは今年も母国フランスのルックを駆る。昨年登場した軽量モデルの785 HUEZ RSとエアロロードの795 LIGHTを乗り分けており、高速レースのシュヘルデプライスでも785 HUEZ RSの使用率が高めだった。ブレーキをフォークに内蔵する795AEROLIGHTは整備性を考慮してか採用していない。
コンポーネントも昨年同様にスラムのレッドeTapだが、クランクはルックのオリジナル品(ZED)やスラム、プラクシスワークスのチェーンリングなど統一感はかなり薄めだ。セカンドグレードであるフォースのブレーキキャリパーを使う選手も確認できる。
ホイールもフランスのコリマで、末弟モデルのWSシリーズを使う場合が多い。ヴィットリアのCORSA(25c)とタイヤチョイスも通常レースと変わらず、目立つ石畳対策はボトルゲージをエリートのCiussi GELに交換していることくらいだ。
シェーン・アーチボールド(ニュージーランド、アクアブルースポート)
3T STRADA
シェーン・アーチボールド(ニュージーランド、アクアブルースポート)の3T STRADA photo:Makoto.Ayano
フロントシングルギア+ディスクブレーキを装備する3TのSTRADAを実戦投入したことで話題沸騰中のアクアブルースポート。まだ勝利数はヘラルド・サンツアーで稼いだ1にとどまっているものの上位入賞を重ねており、次世代機材の可能性を見出し続けている。
フロントギアの歯数は54T photo:Makoto.Ayano
3TのDISCUSはチューブラーなし。チーム単位でヴェロフレックスのクリンチャーを使う photo:Makoto.Ayano
なぜか3Tのロゴを消したバイクも photo:Makoto.Ayano
ディスクローターはフォースグレード photo:Makoto.Ayano
マレットヘアが特徴的なニュージーランダー、シェーン・アーチボールドのフロントギア歯数は54T。9Tを装着可能なスラムのXDドライバーハブボディには11-36Tのカセットを装着して高速レースへと対応させている。普段のレースでは44Tや48Tを使う場合が多いという。
ホイールも同じく3TのDISCUSシリーズを使う。ブレーキとギアに注目が集まりがちだが、チューブラーがラインアップに存在しないためチーム単位でクリンチャータイヤを運用する点もプロチーム中ほぼ唯一。シーズン開幕前はピレリのタイヤを使っていたが、オーストラリアの開幕戦時点ではヴェロフレックスへと変更されている。
ケニー・デハース(ベルギー、WBアクアプロテクト・ヴェランクラシック)
リドレー NOAH SL
ケニー・デハース(ベルギー、WBアクアプロテクト・ヴェランクラシック)のリドレー NOAH SL photo:Makoto.Ayano
デハースはローターの2INPOWERを採用 photo:Makoto.Ayano
ホイールやハンドル周りなどはフォルツァで統一 photo:Makoto.Ayano
もう一つのプロコン”アクア”、WBアクアプロテクト・ヴェランクラシックは地元ベルギーのリドレーから供給を受けている。チームカラーにペイントされたエアロロードのNOAH SLと軽量オールラウンダーのHELIUM SLXを使い分けており、フォルツァのホイール/パーツ群を組み合わせるベルギー色濃いアッセンブルが特徴だ。
コンポーネントはR9150系デュラエースDi2だが、クランクセットはローターで、スプリンターのケニー・デハース(ベルギー)は2INPOWERでデータ収集を行う。フランスのサイクリングセラミック社がサポートを行うため、ボトムブラケットやディレイラープーリーといった回転系パーツが同社製品に置き換えられている。
その他:高速レース用のエアロロードバイクたち
ダヴィデ・マルティネッリ(イタリア、クイックステップフロアーズ)のスペシャライズド S-WORKS Venge ViAS DISC photo:Makoto.Ayano
集団スプリントが見込まれるシュヘルデプライスだけに、各チームはエアロロードバイクを多数投入した。ロンド・ファン・フラーンデレンには持ち込まれなかったクイックステップフロアーズのS-WORKS Venge ViASと、ヴィタルコンセプトのORCA AEROを紹介しよう。
他チームよりもディスクブレーキを投入することが多いクイックステップフロアーズでは、シュヘルデプライスでダヴィデ・マルティネッリ(イタリア)とイーリョ・ケイセ(ベルギー)が使い、優勝したファビオ・ヤコブセン(オランダ)はS-WORKS Tarmac(リムブレーキモデル)と判断が分かれた。なおゼネク・スティバル(チェコ)は日曜日を見据えてS-WORKS Roubaix(選手供給用オンリーのリムブレーキモデル)を予め使った。ホイールは前にCLX50、後ろにCLX64と2種類をミックス。
クリス・ボックマンス(ベルギー、ヴィタルコンセプト)のオルベア ORCA AERO photo:Makoto.Ayano
ヴィタルコンセプトはエースナンバーを背負ったクリス・ボックマンス(ベルギー)ら大勢が空力アドバンテージのあるORCA AEROをチョイスした。ヴィジョンのステム一体式ハンドルMETRON 5Dは使用率が急上昇しているアイテムで、ルックス上でもエアロロードとの相性は良好。リアディレイラーのプーリーを交換しているのもポイントだろう。
text:So.Isobe
photo:Makoto.Ayano
イアン・スタナード(イギリス、チームスカイ)
ピナレロ DOGMA K10-S

チームスカイのクラシック班主要メンバーの一人、イアン・スタナード(イギリス、チームスカイ)はパリ〜ルーベに向けた予行演習としてサスペンションを搭載したDOGMA K10-Sをロンドとシュヘルデプライスに投入した。昨年のルーベから手元のスイッチで動きを設定できる電子制御のeDSSサスペンションを使い、今年も継続運用中。他のチームメイトはオールラウンドモデルのDOGMA F10を駆った。




ルーベを見据えるだけに、ボトルケージは高い保持力を誇るエリートのCiussi GELボトルケージに滑り止めを貼り付けて使用。他のチームメイトがコンチネンタルのタイヤを用いる中、スタナードのみFMBのパリ〜ルーベ(27c、フランス国旗ロゴ入りはあまり見かけないタイプ)を貼り付けたデュラエースC60ホイールでシュヘルデプライスに挑んだ。パリ〜ルーベでも基本的な仕様は変わらないと思われる。
ヤンウィレム・ファンシップ(オランダ、ルームポット・ネデランセロテリ)
イサーク Element Team Edition

おそらくパリ〜ルーベまでのクラシックシーズン中最も注目を集めたのがこのバイクだろう。見た者を驚かせる幅狭ハンドルの持ち主はルームポット・ネデランセロテリに所属するヤンウィレム・ファンシップ(オランダ)。トラック競技出身で、オランダのコンチネンタルチームに所属した昨年はワールドチーム相手に大金星を挙げ、プロコンチームとの2年契約に繋げた23歳だ。
ハンドルは日東がランドナー/ツーリング用としてラインナップするB135SSB。実測値はブレーキレバーフード部で32cmとややカタログ値より狭いが、日東への電話取材によれば過去にトラック選手からのオーダーで幅狭タイプを製造した可能性もある、とのこと。ファンシップはトラック時代から狭いハンドルを愛用しており、チーム監督も現地取材に対してそのように語っている(現地レポートを参照)。最近の石畳クラシックでは積極的に逃げを打っており、その度にハンドル幅が注目を集めてきた。



バイクはオランダのイサークで、オールラウンドモデルのElement Team Editionを全メンバーが使用する。ホイールはファストフォワード、タイヤはブレデステインとオランダ色濃いアッセンブルは昨年同様で、コンポーネントは今では貴重なカンパニョーロ。セカンドグレードのレコードEPS(パワーメーター導入車両のクランクはスーパーレコード)を全員が使用中だ。
ハンドル周りやシートポスト類はリッチーがスポンサーだが、ファンシップの例からもそこまで縛りは厳しくない様子。デダのロゴをかなり雑に塗りつぶしたZERO100ステムなども散見される。ファンシップのサドルはハンドルと同じく巡行を意識した非スポンサーのスペシャライズド、POWER。
マキシム・ダニエル(フランス、フォルトゥネオ・サムシック)
ルック 785 HUEZ RS



チーム名を微変更したフォルトゥネオ・サムシックは今年も母国フランスのルックを駆る。昨年登場した軽量モデルの785 HUEZ RSとエアロロードの795 LIGHTを乗り分けており、高速レースのシュヘルデプライスでも785 HUEZ RSの使用率が高めだった。ブレーキをフォークに内蔵する795AEROLIGHTは整備性を考慮してか採用していない。
コンポーネントも昨年同様にスラムのレッドeTapだが、クランクはルックのオリジナル品(ZED)やスラム、プラクシスワークスのチェーンリングなど統一感はかなり薄めだ。セカンドグレードであるフォースのブレーキキャリパーを使う選手も確認できる。
ホイールもフランスのコリマで、末弟モデルのWSシリーズを使う場合が多い。ヴィットリアのCORSA(25c)とタイヤチョイスも通常レースと変わらず、目立つ石畳対策はボトルゲージをエリートのCiussi GELに交換していることくらいだ。
シェーン・アーチボールド(ニュージーランド、アクアブルースポート)
3T STRADA

フロントシングルギア+ディスクブレーキを装備する3TのSTRADAを実戦投入したことで話題沸騰中のアクアブルースポート。まだ勝利数はヘラルド・サンツアーで稼いだ1にとどまっているものの上位入賞を重ねており、次世代機材の可能性を見出し続けている。




マレットヘアが特徴的なニュージーランダー、シェーン・アーチボールドのフロントギア歯数は54T。9Tを装着可能なスラムのXDドライバーハブボディには11-36Tのカセットを装着して高速レースへと対応させている。普段のレースでは44Tや48Tを使う場合が多いという。
ホイールも同じく3TのDISCUSシリーズを使う。ブレーキとギアに注目が集まりがちだが、チューブラーがラインアップに存在しないためチーム単位でクリンチャータイヤを運用する点もプロチーム中ほぼ唯一。シーズン開幕前はピレリのタイヤを使っていたが、オーストラリアの開幕戦時点ではヴェロフレックスへと変更されている。
ケニー・デハース(ベルギー、WBアクアプロテクト・ヴェランクラシック)
リドレー NOAH SL



もう一つのプロコン”アクア”、WBアクアプロテクト・ヴェランクラシックは地元ベルギーのリドレーから供給を受けている。チームカラーにペイントされたエアロロードのNOAH SLと軽量オールラウンダーのHELIUM SLXを使い分けており、フォルツァのホイール/パーツ群を組み合わせるベルギー色濃いアッセンブルが特徴だ。
コンポーネントはR9150系デュラエースDi2だが、クランクセットはローターで、スプリンターのケニー・デハース(ベルギー)は2INPOWERでデータ収集を行う。フランスのサイクリングセラミック社がサポートを行うため、ボトムブラケットやディレイラープーリーといった回転系パーツが同社製品に置き換えられている。
その他:高速レース用のエアロロードバイクたち

集団スプリントが見込まれるシュヘルデプライスだけに、各チームはエアロロードバイクを多数投入した。ロンド・ファン・フラーンデレンには持ち込まれなかったクイックステップフロアーズのS-WORKS Venge ViASと、ヴィタルコンセプトのORCA AEROを紹介しよう。
他チームよりもディスクブレーキを投入することが多いクイックステップフロアーズでは、シュヘルデプライスでダヴィデ・マルティネッリ(イタリア)とイーリョ・ケイセ(ベルギー)が使い、優勝したファビオ・ヤコブセン(オランダ)はS-WORKS Tarmac(リムブレーキモデル)と判断が分かれた。なおゼネク・スティバル(チェコ)は日曜日を見据えてS-WORKS Roubaix(選手供給用オンリーのリムブレーキモデル)を予め使った。ホイールは前にCLX50、後ろにCLX64と2種類をミックス。

ヴィタルコンセプトはエースナンバーを背負ったクリス・ボックマンス(ベルギー)ら大勢が空力アドバンテージのあるORCA AEROをチョイスした。ヴィジョンのステム一体式ハンドルMETRON 5Dは使用率が急上昇しているアイテムで、ルックス上でもエアロロードとの相性は良好。リアディレイラーのプーリーを交換しているのもポイントだろう。
text:So.Isobe
photo:Makoto.Ayano