スプリンターのためのクラシックとして知られるシュヘルデプライスが今年はオランダをスタート。海に面したゼーラント州を走り抜けベルギーのスコーテンにフィニッシュするレースをクイックステップの21歳、ヤコブセンがスプリントで制した。35人が踏切突破で失格になる事件も。
6勝目を狙うマルセル・キッテル(ドイツ、カチューシャ・アルペシン) photo:Makoto.AYANO
キッテルがシュヘルデプライス6勝目のスタートに向かう photo:Makoto.AYANO
今年で第106回の開催を迎えるシュヘルデプライスは、毎年ロンド・ファン・フラーンデレンとパリ〜ルーベに挟まれた水曜日に開催される伝統あるクラシックレース。UCIのレースカテゴリーはUCIワールドツアーの一つ下のHC(超級)だが、ロンド(1913年初開催)よりも歴史が古く、フランドル最古のロードレースとされる。レースを主催するのはロンドやオンループ・ヘット・ニュースブラッドやドワーズ・ドール・フラーンデレン、ヘント〜ウェヴェルヘム、ブラバンツペイルと同じ「フランダース・クラシックス」だ。
スタートに向かうファビオ・ヤコブセン(オランダ、クイックステップフロアーズ) photo:Makoto.AYANO
スタート前にガールフレンドに応援されるパスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) photo:Makoto.AYANO
昨年はトム・ボーネンのためのフェアウェルレースとしてボーネンが出場する最後のレースとなり、そのためボーネンの故郷モルにスタート地点を移して開催された。そして今年はそれ以前のコースを捨てて一新、オランダのテルネーゼンの街をスタートし、海に面して広がるゼーラント州を走り抜けるコースとなるよう大きく変更された。約200kmレースの130kmがオランダを走るという、ワンデイレースにあって珍しい2国に渡る国際レースとなった。
オランダのテルネーゼンがシュヘルデプライスの新たなスタート地点に photo:Makoto.AYANO
オランダのゼーラント州と言えば2015年のツール・ド・フランスが通過したことが記憶に新しい。海沿いに広がる村をつなげる細く複雑な道がコースとなる。いつでも強い海風が吹いていることで知られる一帯だ。
近年のシュヘルデプライスは昨年までにマルセル・キッテルが大会最多勝の5勝を挙げており、今年もキッテルがさらに勝利数を伸ばすかどうかに注目が集まっていた。昨年はクイックステップで走ったキッテルは今年カチューシャ・アルペシンに移籍、チームを移ってなおこのレースの勝利記録更新に意気込む。
シュヘルデプレイスを初めて迎えたオランダのテルネーゼン photo:Makoto.AYANO
イアン・スタナード(チームスカイ)は電子制御サスつきのピナレロ・ドグマK10を駆る photo:Makoto.AYANO
ゼーラントでのレースは風との闘いになることは大いに予想された。横風に分断されるエシュロンのレースになことはほぼ確実視され、集団はどれだけ数を減らすのか、あるいは逃げが成立するのか?が焦点。スコーテンでの周回路3周には石畳区間もあり、いつもと違う、より厳しいレースになることは間違いない。
スタート前に小さな注目を集めるバイクがあった。ルームポット・ロテリのヤン・ウィレム・ファンシップ(オランダ)の乗るバイクのハンドルの狭さだ。最近のワンデイクラシックで頻繁に逃げに乗る身長194cmの大柄なファンシップが、極端に幅の狭いハンドルを使用していることが国際映像でも話題になっていた。
ヤン・ウィレム・ファンシップ(オランダ、ルームポット・ロテリ)のハンドルは32cm幅と狭い photo:Makoto.AYANO
ファンシップの使うブレーキレバーフード部の実測で32cm幅のハンドルは、ステムから覗く部分には「TOKYO」の刻印があることから日本の日東(NITTO)の製品であると判る。その形状からおそらくはB135SSBというモデル。ランドナーなどに使われるツーリング用のハンドルだ。本人に話は聞けなかったが、マイケル・ボーヘルト監督は「これはチームスポンサーのリッチーの製品ではない。彼はトラックの選手だったのでピストで気に入って使用していたハンドルをロードでも使っている。逃げるときのエアロダイナミクスを重視しているんだろう」と話してくれた。昨年のボーネンもそうだったが、他にプロトンに幅狭ハンドルを使う選手も複数見受けられるようになり、小さな流行の兆しが見える。
ニュートラル区間の6kmの海底トンネルを抜けるとレースはスタートだ photo:CorVos
12時15分にニュートラルスタートを切ったプロトンはすぐに6km続く海底トンネルへ。それを抜けたところが0km地点のスタートだ。すぐに海風の吹くエリアへ突入。アタックが断続的に続きつつ、検問所を越える。強い横風を受けて大集団は複数のグループに分断され、典型的なエシュロンが形成され、そしてまたまとまるといった有機的な動きを繰り返す。
スタートしてすぐアタックがかかるなか検問所を通過するプロトン photo:Makoto.AYANO
オランダ、ゼーラント州へ入っていくプロトン photo:CorVos
序盤すぐにパンクで遅れたのはキッテルだ。ホイール交換をしてチームメイトに引かれて集団復帰を試みるも、すでに大集団も大きく3つに分断されていた。道もお細く、入り組んでいるため他にも路肩の駐車車両にぶつかっての落車やパンクが続く。モトに乗ったフォトグラファーたちも長くバラける集団に追い越すことができず、40km以上も後方待機が続く異常事態に。新しいコースは未知のためナーバスなレース展開が続く。
海風により集団が分断、エシュロンを形成してレースは進む photo:Makoto.AYANO
風を受けるなかアタック合戦で長く伸びるプロトン photo:Makoto.AYANO
スピードが上がってすぐにパンクに見舞われたマルセル・キッテル(カチューシャ・アルペシン) photo:Makoto.AYANO
幅狭ハンドルのヤン・ウィレム・ファンシップ(オランダ、ルームポット・ロテリ)を含む5人が逃げグループを形成し先行、後方集団は3つの大きなグループに分かれて追走する。そこで踏切強行突破事件が起きてしまう。
幅狭ハンドルで逃げグループを引くヤン・ウィレム・ファンシップ(オランダ、ルームポット・ロテリ) photo:Makoto.AYANO
5人の第1グループが通過した後、鉄道の踏切が下がりはじめ、差し掛かった第2グループがそれを強引に通過してしまう。第3集団はストップしたが、突破した第2グループはしばらく走ったところでUCI審判からグループにいた35人全員に失格が言い渡された。この集団には優勝候補のスプリンター、アルノー・デマール(グルパマFDJ)やディラン・フルーネウェーフェン(オランダ、ロットNLユンボ)、アルバロホセ・ホッジ(コロンビア、クイックステップフロアーズ)らが含まれていた。
踏切を強行突破したフルネウェーフェンとデマールら35人にストップが命じられる photo:CorVos
UCI審判から失格が宣告された photo:CorVos
踏切を強行突破したアルノー・デマールらがマーシャルから制止を受ける photo:CorVos
停止を命じられた第2グループはその場でレースを除外に。審判長をつとめたフランク氏はレース後に取材に応じ、「すでに信号が点滅し、警告音が鳴っている状態だったのに通過しようとしたデマールらが率いるグループの行動は明らかにUCI規則違反の危険行為だったため即刻失格を言い渡した」と話す。非公式な個人的意見として、「2015年パリ〜ルーベで起こった踏切強行突破の件の教訓が生かされていないのは残念でならない。あの時、どういう議論があったのかもう忘れてしまったのか。列車はすぐにやってくる。惨事につながる重大なルール違反だ」とも。
発電風車が回る平原を走る抜けるプロトン photo:Makoto.AYANO
クイックステップフロアーズやカチューシャ・アルペシンが逃げ集団を捕まえるためにメイン集団を牽引する photo:Makoto.AYANO
ゼーラント州での130kmを走り終えてベルギーへと入った後続第3グループが逃げる5人を吸収した。湖風との闘いは終わり、残り60kmで集団は54人に減っていた。しかしカチューシャ・アルペシンは優勝候補のキッテルがこの集団に残り、トニ・マルティンが失格処分のグループに居たため欠けたのみ。他のメンバーは揃って集団のコントロールに入った。
もう少しでベルギーへようこそ!(オランダ国内のファンだと思われる) photo:Makoto.AYANO
キッテルの6勝目を目指して集団をコントロールするカチューシャ・アルペシン photo:Makoto.AYANO
アントワープ市街を抜けてからはシュヘルデプレイス伝統の周回コースへ。スコーテンの中心部のフィニッシュエリアを通過し、フラットな石畳のブロークストラートを含む17kmを3周する。最初の周回に入った時、雹混じりの冷たい雨が降り始めた。オウェイン・ドゥール(イギリス、チームスカイ)とアントワーヌ・デュシェーヌ(フランス、グルパマFDJ)が逃げ、最後まで抵抗を見せる。
冷たい雨の降るなかキッテルの勝利目指しフラットな石畳のブロークストラートを突き進むカチューシャ・アルペシン photo:Makoto.AYANO
逃げるオウェイン・ドゥール(イギリス、チームスカイ)とアントワーヌ・デュシェーヌ(フランス、グルパマFDJ) photo:Makoto.AYANO
スコーテンの街中にはマルセル・キッテルのポスターが掲げられる photo:Makoto.AYANO
雨に濡れ始めた路面は極端にスリッピーになる。そして小石やゴミが立ち、パンクを呼びやすくなる。キッテルを導くカチューシャは順調に周回を重ねていたが、最終周にその犠牲となったのがキッテルだった。ラスト13kmで見舞われたパンクでバイクを交換するも、集団に戻ろうと引くチームメイトの後ろで苦しみだす。頭を上下に振り、遅れだしたキッテルはレースが最後の局面に差し掛かったところで前に追いつくことを諦めてしまう。それまでの横風区間の追走の繰り返して脚に疲労を溜め込んでいたようだ。
ゴールまで残り13kmでパンクして停まったマルセル・キッテル(カチューシャ・アルペシン) photo:CorVos
キッテルの脱落に生じたチャンス。逃げる2人を吸収したメイングループによる勝負に。雨の降り続くなかでのゴールスリントを制したのはファビオ・ヤコブセン(オランダ、クイックステップフロアーズ)だった。21歳のヤコブセンは、3月の石畳のクラシック、 ノケレ・コールスで石畳の登りスプリントを制したのに続く勝利。2位に昨年5位だったパスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)、3位にクリストファー・ローレス(チームスカイ)。そして優勝候補最右翼だったキッテルは3分以上遅れた最後尾でフィニッシュ。スヘルデプレイス6勝目は叶わなかった。
雨のゴールスプリントを制したファビオ・ヤコブセン(オランダ、クイックステップフロアーズ) photo:Makoto.AYANO
3分遅れの最後尾でフィニッシュしたマルセル・キッテル(カチューシャ・アルペシン) photo:Makoto.AYANO
昨年までU23のSEGレーシングアカデミーで走ったネオプロのヤコブセンは、オランダ人としてディラン・フルーネウェーフェンに続く逸材として期待される若手スプリンター。スコーテンからは100kmほどの街フーケルム出身で、この日は地元から友人たちによる応援団がフィニッシュ地点にも駆けつけていた。アマ時代の昨年のレースの様子は日本ナショナルチームが出場した2017年ツール・ド・ラブニール第2ステージのレポートでも登場している。
優勝したファビオ・ヤコブセン(オランダ、クイックステップフロアーズ)、2位パスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)、3位クリストファー・ローレス(イギリス、チームスカイ) photo:Makoto.AYANO
「いいスプリントができ、勝利することができて信じられないほど嬉しい。まだ若い自分にとってキャリア最高の勝利だし、世界最高のスプリンターのひとりになるべく進化していくモチベーションがさらに高まる。グランツールのツール・ド・フランスやブエルタ、ジロでも勝てる選手になりたい。今日はホッジを失ったけど、終盤はスティバルやケイセらが上手くサポートしてくれた。チームの強力なサポートなしにこの勝利はありえない。チームの皆に本当に感謝しているよ」と話す。
シュヘルデプレイスの宝石トロフィーにキスするファビオ・ヤコブセン(オランダ、クイックステップフロアーズ) photo:Makoto.AYANO
記者会見で質問に陽気に応えるファビオ・ヤコブセン(オランダ、クイックステップフロアーズ) photo:Makoto.AYANO
そしてベルギーのワンデイ・クラシックで連戦連勝を続けるクイックステップフロアーズは、ロンド・ファン・フラーンデレンのニキ・テルプストラ(オランダ)の勝利に続きこれでクラシックだけで12戦中9勝という脅威の勝利数を記録することに。この勝利で早くもシーズン通算24勝目となる。連勝の止まらないWolf Pack(オオカミの群れ)は日曜のパリ・ルーベに向かう。果たしてクラシックの女王でもまたクイックステップショーが繰り広げられることになるのだろうか?


今年で第106回の開催を迎えるシュヘルデプライスは、毎年ロンド・ファン・フラーンデレンとパリ〜ルーベに挟まれた水曜日に開催される伝統あるクラシックレース。UCIのレースカテゴリーはUCIワールドツアーの一つ下のHC(超級)だが、ロンド(1913年初開催)よりも歴史が古く、フランドル最古のロードレースとされる。レースを主催するのはロンドやオンループ・ヘット・ニュースブラッドやドワーズ・ドール・フラーンデレン、ヘント〜ウェヴェルヘム、ブラバンツペイルと同じ「フランダース・クラシックス」だ。


昨年はトム・ボーネンのためのフェアウェルレースとしてボーネンが出場する最後のレースとなり、そのためボーネンの故郷モルにスタート地点を移して開催された。そして今年はそれ以前のコースを捨てて一新、オランダのテルネーゼンの街をスタートし、海に面して広がるゼーラント州を走り抜けるコースとなるよう大きく変更された。約200kmレースの130kmがオランダを走るという、ワンデイレースにあって珍しい2国に渡る国際レースとなった。

オランダのゼーラント州と言えば2015年のツール・ド・フランスが通過したことが記憶に新しい。海沿いに広がる村をつなげる細く複雑な道がコースとなる。いつでも強い海風が吹いていることで知られる一帯だ。
近年のシュヘルデプライスは昨年までにマルセル・キッテルが大会最多勝の5勝を挙げており、今年もキッテルがさらに勝利数を伸ばすかどうかに注目が集まっていた。昨年はクイックステップで走ったキッテルは今年カチューシャ・アルペシンに移籍、チームを移ってなおこのレースの勝利記録更新に意気込む。


ゼーラントでのレースは風との闘いになることは大いに予想された。横風に分断されるエシュロンのレースになことはほぼ確実視され、集団はどれだけ数を減らすのか、あるいは逃げが成立するのか?が焦点。スコーテンでの周回路3周には石畳区間もあり、いつもと違う、より厳しいレースになることは間違いない。
スタート前に小さな注目を集めるバイクがあった。ルームポット・ロテリのヤン・ウィレム・ファンシップ(オランダ)の乗るバイクのハンドルの狭さだ。最近のワンデイクラシックで頻繁に逃げに乗る身長194cmの大柄なファンシップが、極端に幅の狭いハンドルを使用していることが国際映像でも話題になっていた。

ファンシップの使うブレーキレバーフード部の実測で32cm幅のハンドルは、ステムから覗く部分には「TOKYO」の刻印があることから日本の日東(NITTO)の製品であると判る。その形状からおそらくはB135SSBというモデル。ランドナーなどに使われるツーリング用のハンドルだ。本人に話は聞けなかったが、マイケル・ボーヘルト監督は「これはチームスポンサーのリッチーの製品ではない。彼はトラックの選手だったのでピストで気に入って使用していたハンドルをロードでも使っている。逃げるときのエアロダイナミクスを重視しているんだろう」と話してくれた。昨年のボーネンもそうだったが、他にプロトンに幅狭ハンドルを使う選手も複数見受けられるようになり、小さな流行の兆しが見える。

12時15分にニュートラルスタートを切ったプロトンはすぐに6km続く海底トンネルへ。それを抜けたところが0km地点のスタートだ。すぐに海風の吹くエリアへ突入。アタックが断続的に続きつつ、検問所を越える。強い横風を受けて大集団は複数のグループに分断され、典型的なエシュロンが形成され、そしてまたまとまるといった有機的な動きを繰り返す。


序盤すぐにパンクで遅れたのはキッテルだ。ホイール交換をしてチームメイトに引かれて集団復帰を試みるも、すでに大集団も大きく3つに分断されていた。道もお細く、入り組んでいるため他にも路肩の駐車車両にぶつかっての落車やパンクが続く。モトに乗ったフォトグラファーたちも長くバラける集団に追い越すことができず、40km以上も後方待機が続く異常事態に。新しいコースは未知のためナーバスなレース展開が続く。



幅狭ハンドルのヤン・ウィレム・ファンシップ(オランダ、ルームポット・ロテリ)を含む5人が逃げグループを形成し先行、後方集団は3つの大きなグループに分かれて追走する。そこで踏切強行突破事件が起きてしまう。

5人の第1グループが通過した後、鉄道の踏切が下がりはじめ、差し掛かった第2グループがそれを強引に通過してしまう。第3集団はストップしたが、突破した第2グループはしばらく走ったところでUCI審判からグループにいた35人全員に失格が言い渡された。この集団には優勝候補のスプリンター、アルノー・デマール(グルパマFDJ)やディラン・フルーネウェーフェン(オランダ、ロットNLユンボ)、アルバロホセ・ホッジ(コロンビア、クイックステップフロアーズ)らが含まれていた。



停止を命じられた第2グループはその場でレースを除外に。審判長をつとめたフランク氏はレース後に取材に応じ、「すでに信号が点滅し、警告音が鳴っている状態だったのに通過しようとしたデマールらが率いるグループの行動は明らかにUCI規則違反の危険行為だったため即刻失格を言い渡した」と話す。非公式な個人的意見として、「2015年パリ〜ルーベで起こった踏切強行突破の件の教訓が生かされていないのは残念でならない。あの時、どういう議論があったのかもう忘れてしまったのか。列車はすぐにやってくる。惨事につながる重大なルール違反だ」とも。


ゼーラント州での130kmを走り終えてベルギーへと入った後続第3グループが逃げる5人を吸収した。湖風との闘いは終わり、残り60kmで集団は54人に減っていた。しかしカチューシャ・アルペシンは優勝候補のキッテルがこの集団に残り、トニ・マルティンが失格処分のグループに居たため欠けたのみ。他のメンバーは揃って集団のコントロールに入った。


アントワープ市街を抜けてからはシュヘルデプレイス伝統の周回コースへ。スコーテンの中心部のフィニッシュエリアを通過し、フラットな石畳のブロークストラートを含む17kmを3周する。最初の周回に入った時、雹混じりの冷たい雨が降り始めた。オウェイン・ドゥール(イギリス、チームスカイ)とアントワーヌ・デュシェーヌ(フランス、グルパマFDJ)が逃げ、最後まで抵抗を見せる。



雨に濡れ始めた路面は極端にスリッピーになる。そして小石やゴミが立ち、パンクを呼びやすくなる。キッテルを導くカチューシャは順調に周回を重ねていたが、最終周にその犠牲となったのがキッテルだった。ラスト13kmで見舞われたパンクでバイクを交換するも、集団に戻ろうと引くチームメイトの後ろで苦しみだす。頭を上下に振り、遅れだしたキッテルはレースが最後の局面に差し掛かったところで前に追いつくことを諦めてしまう。それまでの横風区間の追走の繰り返して脚に疲労を溜め込んでいたようだ。

キッテルの脱落に生じたチャンス。逃げる2人を吸収したメイングループによる勝負に。雨の降り続くなかでのゴールスリントを制したのはファビオ・ヤコブセン(オランダ、クイックステップフロアーズ)だった。21歳のヤコブセンは、3月の石畳のクラシック、 ノケレ・コールスで石畳の登りスプリントを制したのに続く勝利。2位に昨年5位だったパスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)、3位にクリストファー・ローレス(チームスカイ)。そして優勝候補最右翼だったキッテルは3分以上遅れた最後尾でフィニッシュ。スヘルデプレイス6勝目は叶わなかった。


昨年までU23のSEGレーシングアカデミーで走ったネオプロのヤコブセンは、オランダ人としてディラン・フルーネウェーフェンに続く逸材として期待される若手スプリンター。スコーテンからは100kmほどの街フーケルム出身で、この日は地元から友人たちによる応援団がフィニッシュ地点にも駆けつけていた。アマ時代の昨年のレースの様子は日本ナショナルチームが出場した2017年ツール・ド・ラブニール第2ステージのレポートでも登場している。

「いいスプリントができ、勝利することができて信じられないほど嬉しい。まだ若い自分にとってキャリア最高の勝利だし、世界最高のスプリンターのひとりになるべく進化していくモチベーションがさらに高まる。グランツールのツール・ド・フランスやブエルタ、ジロでも勝てる選手になりたい。今日はホッジを失ったけど、終盤はスティバルやケイセらが上手くサポートしてくれた。チームの強力なサポートなしにこの勝利はありえない。チームの皆に本当に感謝しているよ」と話す。


そしてベルギーのワンデイ・クラシックで連戦連勝を続けるクイックステップフロアーズは、ロンド・ファン・フラーンデレンのニキ・テルプストラ(オランダ)の勝利に続きこれでクラシックだけで12戦中9勝という脅威の勝利数を記録することに。この勝利で早くもシーズン通算24勝目となる。連勝の止まらないWolf Pack(オオカミの群れ)は日曜のパリ・ルーベに向かう。果たしてクラシックの女王でもまたクイックステップショーが繰り広げられることになるのだろうか?
シュヘルデプライス2018リザルト
1位 | ファビオ・ヤコブセン(オランダ、クイックステップフロアーズ) | 4h23'51" |
2位 | パスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) | |
3位 | クリストファー・ローレス(イギリス、チームスカイ) | |
4位 | イェンス・デブシェール(ベルギー、ロット・スーダル) | |
5位 | ジェレミー・ルクロック(フランス、ヴィタルコンセプト) | |
6位 | マキシミリアン・ヴァルシャイド(イギリス、チームサンウェブ) | |
7位 | ティモシー・デュポン(ベルギー、ワンティ・グループゴーベル) | |
8位 | ジョナス・リカールト(ベルギー、スポーツフランデレン・バロワーズ) | |
9位 | ブラム・ウェルテン(オランダ、フォルトゥネオ・オスカロ) | |
10位 | マルコ・ハラー(オーストリア、カチューシャ・アルペシン) |
photo&text:Makoto.AYANO in Kortrijk, BELGIUM
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