総合連覇を目指しビワセカップに乗り込んだ唐見実世子(弱虫ペダルサイクリングチーム)だったが、一瞬の躊躇で総合首位から遅れを喫することに。残るは4ステージ。起死回生のアタックは決まるのか?本人の手記でビワセカップ後半戦を振り返ります。



前半戦のレポートこちらから。

第6ステージ:逃げに加わり総合タイム差を挽回。12秒差の2位にジャンプアップ

第6ステージ 逃げグループに乗ってフィニッシュを目指す第6ステージ 逃げグループに乗ってフィニッシュを目指す 今日のステージはほとんどフラットの115km。とにかく暑いので水分補給には気をつけないといけない。そしてどことなく、逃げが決まるかもしれないと思った。

レースがスタートして最初は、カザフスタンとタイが先頭を固めている。スローペースでみんなお見合いになって膠着状態。30km過ぎた辺りで日本ナショナルチームの樫木選手がアタックし、それを皮切りにアタック合戦が始まった。

路面状態が悪くパンクしている選手が多いため、路面状況を把握するべく私は出来るだけ前の方でレースを傍観することに。日本や韓国、それに総合に関係のない選手達がアタックしている。1回目のスプリントポイント、2回目のスプリントポイントと通過しても逃げは決まりそうで決まらない。総合逆転を狙う私も参加したが、やはりチェックが厳しく抜け出すのが難しい。今日はやっぱりむりかなぁ、と思っていた頃、日本チームを含む数人の逃げが決まりかけ、追走から思い切りブリッジ。そのまま先頭を引き続けたら、後ろが切れかかっているのが見えたのでそのまま踏み続けた。

数人の選手が協力してくれたこともあって抜け出しに成功し、1分のリードを稼ぎ出すことができた。スタート前の予感が的中だ。風向きも良く、協調性のある逃げ集団有利の展開だったため、そのまま30kmを逃げてゴールへとたどり着く。スプリントは先頭交替にあまり加わらなかった選手に持っていかれてしまったが、タイム差を稼ぐという面においては成功だ。今日の逃げで私自身の総合は2位まで一気にジャンプアップした。リーダーも入れ替り、トップとのタイム差は12秒。しかし残る3ステージはいずれも平坦であり、逆転には再び努力と運が必要だと覚悟する。

第7ステージ:逃げを狙うも、リーダーチームの徹底マークに遭う

第7ステージ リーダーチームの厳しいマークを受けながら抜け出すチャンスを伺う第7ステージ リーダーチームの厳しいマークを受けながら抜け出すチャンスを伺う
今日は1周2.8kmの周回コースを18周する、約50kmのクリテリウムだった。途中180度ターンや直角コーナーもいくつかあり、また疲労が溜まっている選手も見受けられるので、中切れを食らわないようにポジション取りを意識して臨む。

1周のニュートラルを経てスタートすると、すぐに位置取りとアタック合戦が勃発した。さすがに総合勢のアタックに対するチェックは厳しいが、女子レースでは逃げ屋のアタックに便乗されて逃げ切られてしまう場合もあるので、レースを見渡せる位置をキープすることが大切だ。決まりそうなアタックにはしっかり反応したつもりだが、私の後ろには常にリーダーチームがマークしている。彼女たちの表情は相当きつそうだけど、絶対に逃がさないという意思がはっきりと見て取れた。

ラスト3周に入るとスピードも上がり、いよいよ逃げ切りの希望は潰え集団スプリントを覚悟する。しかし、ラスト半周辺りで日本ナショナルチームの上野選手によるキレのあるアタックが決まった。集団が必死に追いかけ、最後の180度ターンを抜けたラスト30m辺りで上野選手をキャッチ。ジュタティップ・マネーファン(タイ)選手が大会3勝目を飾り、スプリントに絡んだ私は6位だった。

第8ステージ:リーダーに加担するチームが出現。逃げを試みるも決まらない

第8ステージはほぼフラットな120km。力の差が出にくいコースであり、如何にリーダーチームを崩していくかがポイントだ。しかし、今年の大会にはリーダーチームの下部チームも出場しているので、私の相手は1チーム5名×2=10名。さらに別のベトナムチームが協調体制を組んでしまったので計3チームで集団をコントロールしている…。これはかなり厳しい状況になってきた。

日本ナショナルチームの中井選手がアタック日本ナショナルチームの中井選手がアタック 第8ステージ アタックは決まらず、ジュタティップ選手が大会4勝目を飾る第8ステージ アタックは決まらず、ジュタティップ選手が大会4勝目を飾る


やがて日本、韓国、タイのアタックが決まった。総合に全く関係のない逃げなので、リーダーチームが1分前後のタイム差を保ち集団をコントロールし、総合上位陣には厳しいチェックが入る。逃げ集団から韓国がドロップしてしまい、それを機に韓国チームが集団を強力に引き始めた。少しして逃げ集団が集団に吸収されたので、チャンスが来たと思って、今日一番キレのある上野選手のアタックにジョイントして逃げを試みるが、やはり逃してもらえない。結局そのまま集団スプリントとなり、ジュタティップ選手に4勝目を持っていかれた。私のビワセチームはスプリントで2位に入った。

第9ステージ:チャンスが訪れることなくフィニッシュ。総合2位のままレースを終える

最終ステージの今日はフラットな115km。リーダーチームは常に先頭でイエロージャージを守りながら冷静に集団をコントロールしている。私としては逃げる事はほぼ不可能に近いが、逃してもらえるとしたらレースの終盤だろう。それにはアタック合戦があって、リーダーチームが崩れる事が前提だった。

第9ステージ 逃げた日本ナショナルチームの上野みなみ選手が2位に第9ステージ 逃げた日本ナショナルチームの上野みなみ選手が2位に 2位に甘んじた総合表彰台2位に甘んじた総合表彰台


スタートしてすぐに8人くらいの逃げが決まる。総合上位陣は反応させてもらえないのでまずは傍観だ。リーダーチームは2分くらいのタイム差で集団をコントロール。インドネシアが時々良い勢いで飛び出すが、単独だから決まらない。向かい風の時間帯もありリーダーチームに疲れが見えた場面もあったが、アタックが頻発しないので崩すまでには至らない。

ビワセチームの一員として連覇を狙った唐見実世子(弱虫ペダルサイクリングチーム)ビワセチームの一員として連覇を狙った唐見実世子(弱虫ペダルサイクリングチーム) ラスト10kmあたりで逃げ集団との差が2分40秒との表示。追い風という事もあり集団のペースが一気にあがる。ラストで抜け出したかったが、アタックが頻発しなかった事、集団優位のペースになってしまった事で私にチャンスが訪れる事なくゴール。優勝はポイントリーダーの韓国選手だった。日本からは上野選手が逃げ集団を強力に引いて2位。第8ステージ、第9ステージに関しては、3チームが協力してコントロールしていた事もあり、完封なきまでにやられてしまった。

最終的にビワセチームとしては山岳ジャージ、チーム総合優勝を手にする事ができたが、私としては個人総合を目標としていたが12秒のタイム差を縮める事が出来ず、個人総合2位、山岳賞2位という成績に終わった。ただ、今回ビワセチームで走らせてもらった事で学んだ事は多く、今回の経験を次回以降のレースに生かしていきたいと強く感じる。今回のチェンスを与えてくださったビワセチーム、そして日本の弱虫ペダルサイクリングチーム、同じ時間を共有した全ての方々に感謝したい。

また、今回はライバルだった日本チームは、明らかに展開の鍵を握るチームだったが、やはり第3ステージで私と同様にミスをしてしまった事が運命の分かれ道だった。吉川選手が途中落車による負傷でリタイアしてしまったが、スプリントに囚われず実力がある選手が自由に、かつチームワークを活かして動けていたと思う。

ビワセカップはオルガナイザーを始め、参加チーム、選手、それぞれがリスペクトし合えているとても良いレース。来年もチャレンジし、総合優勝を奪い返すことを貪欲に目指したい。

text:Miyoko.Karami

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