最大勾配19%の石畳坂でミケル・ランダとの登坂勝負を制したティム・ウェレンスがステージ優勝。ブエルタ・ア・アンダルシア最終個人TTを前にウェレンスが総合首位に立った。


アンダルシアらしい白い家屋が並ぶ田舎町を通過アンダルシアらしい白い家屋が並ぶ田舎町を通過 photo:Vuelta a Andalucia

内陸のセビーリャから地中海に近いアルカラ・デ・ロス・グズレスまで南下する。194kmコースの注目は、中盤に登場する1級山岳と3級山岳ではなく、残り1.3km地点から高低差137mを駆け上る急勾配のフィニッシュ。丘の上の街アルカラ・デ・ロス・グズレスに向かう最大勾配19%の石畳坂で総合が動いた。なお、同日ポルトガルで開催されたヴォルタ・アン・アルガルヴェ第4ステージのコースとは直線距離で150kmほどしか離れていない。

翌日に個人タイムトライアルが控えた大会最後のロードステージで逃げたのは13名。ギヨーム・マルタン(フランス、ワンティ・グループゴベール)らのアタックによってレース中盤の1級山岳で崩壊した逃げグループには、総合で48秒しか遅れていないアンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター)やエクトル・カレテロ(スペイン、モビスター)、セップ・ヴァンマルク(ベルギー、EFエデュケーションファースト・ドラパック)が合流した。

やがて逃げグループはアマドールとヴァンマルクの2名に絞られ、約60名に絞られたメイン集団に対して1分50秒リードで残り30km地点を通過。強力なルーラーによるタンデム走行が続いたが、チームスカイとアスタナが牽引するメイン集団がタイム差を詰めていく。Velonの公開データによると、タイム差が縮小したステージ後半の平坦区間でヴァンマルクは約40分間にわたって平均345Wを出力。対して、集団内で走るステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ロットNLユンボ)の平均出力は216Wだった。

レース序盤に形成された13名の逃げグループレース序盤に形成された13名の逃げグループ photo:Vuelta a Andalucia
アンダルシアらしい白い家屋が並ぶ田舎町を通過アンダルシアらしい白い家屋が並ぶ田舎町を通過 photo:Vuelta a Andaluciaリーダージャージを着て走るワウト・プールス(オランダ、チームスカイ)リーダージャージを着て走るワウト・プールス(オランダ、チームスカイ) photo:Vuelta a Andalucia

アルカラ・デ・ロス・グズレスの登りに向けてポジション争いが熾烈になる中、クリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)はパンクで集団から脱落した。総合優勝のチャンスを逃したフルームは1分19秒遅れでフィニッシュしている。

アルカラ・デ・ロス・グズレスの急坂が始まったと同時に逃げは吸収。ロット・スーダルが先頭で強力なペースを作ると集団はみるみるうちに形をなくし、残り1km地点で総合4位のミケル・ランダ(スペイン、モビスター)が先頭に立つ。急勾配の登りを突き進むランダには総合3位ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)が合流。リーダージャージのワウト・プールス(オランダ、チームスカイ)は後方に沈んでしまう。

「スプリントに持ち込みたくなかったので、前半から積極的に攻めることにした」というランダが先頭でハイペースを刻んだが、ウェレンスは離れない。残り300mで路面が石畳に変わり、勾配がグッとましたところでウェレンスが加速する。シッティングで衝撃を抑えながら突き進むウェレンスと、ダンシングでもがくランダの間に距離が生まれた。

急勾配の登りをこなすミケル・ランダ(スペイン、モビスター)とティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)急勾配の登りをこなすミケル・ランダ(スペイン、モビスター)とティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル) photo:Vuelta a Andalucia
石畳坂を駆け上がるティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)石畳坂を駆け上がるティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル) photo:Vuelta a Andalucia

「石畳坂でバイクを前に進めることができずに苦しんでいると、ウェレンスがシッティングで飛ぶように加速していった。石畳の経験が足らなかった」と語るランダを振り切って、石畳坂を踏破したウェレンスがステージ優勝。13秒遅れたプールスからウェレンスは総合首位の座を奪った。ウェレンスは3分04秒にわたって530Wを出力し、残り1kmを平均スピード19km/hで駆け上がっている。残り200mに限定すると36秒間714W。5秒差でフィニッシュしたランダは残り1kmを3分09秒466W、プールスは3分16秒464Wだった。

ステージ優勝を飾ったウェレンスは「今日のフィニッシュは自分向きだと思っていたので、どの区間が厳しくて、どの区間で前にいるべきかを事前にチェックしていたんだ。登りが始まってすぐトッシュ・ヴァンデルサンドが先頭に出てペースメイク。ミケル・ランダがアタックした時、自分だけが反応できるポジションにいた。そして作戦通り残り300mで加速してランダを振り切ったんだ。石畳だったけど、道の端と真ん中はスムーズだったので、自分でラインを選べる先頭で走りたかった」と、入念なリサーチとポジショニング、石畳の走り方が勝利につながったと説明する。

翌日の最終日タイムトライアルは全長14km。前半にかけて未舗装区間を含む特殊なタイムトライアルを前にウェレンスは「明日の結果がどうなるのか想像がつかない。自分向きの短い距離で、しかも好きな未舗装路が組み込まれている。タイムトライアルはごまかしがきかない競技。才能あるTTスペシャリストが総合上位にいるけど、今の状態であれば良い走りができるはず」と自信を見せている。

総合首位を明け渡したプールスは「今日はタイムロスを被ることなく、できればステージ優勝を狙う作戦だったけど、失敗に終わった。クリス(フルーム)がパンクで脱落してしまったし、登りが始まるコーナーでポジションを落とすミスをおかしてしまった。遅れる選手を抜きながらポジションを上げ、登りの後半はうまく走れたと思う。ジャージは失ってしまったけど、最終日に挽回したい。総合で11秒しか遅れてしないし、まだ総合争いはオープンな状態だ」とコメント。総合で7秒遅れのランダ、11秒遅れのプールス、14秒遅れのヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ)、20秒遅れのルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ)までが総合優勝ラインだと言えるだろう。

ステージ優勝を飾ったティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)ステージ優勝を飾ったティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル) photo:Vuelta a Andalucia
リーダージャージを手にしたティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)リーダージャージを手にしたティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル) photo:Vuelta a Andalucia
ブエルタ・ア・アンダルシア2018第4ステージ
個人総合成績
ポイント賞
1位 サーシャ・モードロ(イタリア、EFエデュケーションファースト・ドラパック) 45pts
2位 ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル) 41pts
3位 ワウト・プールス(オランダ、チームスカイ) 40pts
山岳賞
1位 ルイス・マス(スペイン、カハルーラル) 29pts
2位 アルバロ・クアドロス(スペイン、カハルーラル) 18pts
3位 マルコ・ミナールト(オランダ、ワンティ・グループゴベール) 16pts
text:Kei Tsuji

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