サイクリング界に衝撃を与えたクリストファー・フルームのサルブタモール陽性反応。MPCC(世界アンチドーピング倫理運動)はチームスカイにフルームの暫定的な出場停止を求めている。



力強いガッツポーズでフィニッシュするクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)力強いガッツポーズでフィニッシュするクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:CorVos

「クリストファー・フルームの異常な検査結果は一般の人々の憤慨を招いている。サルブタモールは『特定物質』に定められているため、暫定的な出場停止は強制ではなく、選手は出場が可能な状態だが、MPCCは今回の件についてここに声明を出す」。MPCCのプレスリリースはそう始まる。

サルブタモールのAAF(違反が疑われる分析結果)が検出されたのはブエルタ・ア・エスパーニャ期間中の9月7日に行われたドーピング検査で採取されたフルームの尿サンプル。再検査によってBサンプルからも同様にAAFが検出された。フルームは喘息の治療目的でサルブタモールの吸引をTUE(治療目的使用に係る除外措置)の申請が不要な範囲内で行っていたが、検出されたのはWADAが定める上限1,000ng/ml(ナノグラム・パー・ミリリットル)を大きく上回る2,000ng/mlという高い値。UCIがフルームとチームスカイに説明を求めていた。

「信頼できる自転車レースを作る運動」として2007年に発足したMPCCには現在7つのUCIワールドチーム(アージェードゥーゼール、ボーラ・ハンスグローエ、キャノンデール・ドラパック、ディメンションデータ、エフデジ、ロット・ソウダル、サンウェブ)と20のUCIプロコンチネンタルチームの他、エキップアサダやツアー・オブ・ジャパンなどチームや主催団体、連盟が参加。例えば「薬物使用による6ヶ月以上の出場停止処分者との契約は行わない」など独自の規約を有し、UCIやWADAルールよりも厳格なアンチドーピングの姿勢を打ち出している。

およそ65%のUCIワールドチーム&UCIプロコンチネンタチームが加入するMPCCおよそ65%のUCIワールドチーム&UCIプロコンチネンタチームが加入するMPCC photo:MPCC

MPCCの規約には「最初の陽性反応の時点でチームは即時選手を出場停止状態にし、MPCC代表に報告する義務がある」とある。チームスカイはMPCCのメンバーではないためこの規約に従う必要はないが、MPCCは「透明性を目的としたルールであり、自転車界全体の利益になる」と強調。「任意の判断で」という言葉を添えて、MPCCはチームスカイにフルームの暫定的な出場停止を求めた。そうすることでチームと選手は弁明に集中し、他チームの監督や選手との間に生まれる緊張を緩和することができるとしている。

サルブタモール陽性が公になった12月13日以降、フルームはチームスカイのメンバーとともにマヨルカ島でのトレーニングキャンプに参加した。ジロ・デ・イタリアとツール・ド・フランスを狙う2018年シーズンに向けてすでに動き出しており、ルール上は現在もレース出場が可能。現在はUCIの判断が待たれている。

text:Kei Tsuji