「今日は昨日よりも身体が動いたので積極的に攻めた」と語るオーストラリア王者が、野辺山2日目のエリート男子レースで圧勝。前日優勝したエミル・ヘケレ(チェコ、Stevens Bikes Emilio Sports)が2位、ギャリー・ミルバーン(オーストラリア、SPEEDVAGEN X MAAP)が3位に入り、表彰台を海外勢が埋めた。



14時40分、号砲と共に102名がスタートする14時40分、号砲と共に102名がスタートする photo:Makoto.Ayano
男子エリートレースのコールアップと共に一段と冷え込む、Raphaスーパークロス野辺山特有の天候。しかし風が吹き止み、体感気温の厳しさは前日よりも和らいだように感じる。14時40分、冬一歩手前の滝沢牧場に、2日間続いた祭典の最終レース開始を告げる号砲が鳴り響いた。

102名という大所帯が一斉に走り出した男子エリート。左90度の第1コーナーに真っ先に飛び込んだのはギャリー・ミルバーン(オーストラリア、SPEEDVAGEN X MAAP)だった。しかしスタートループを終える頃にはクリストファー・ヨンゲワールド(オーストラリア、Flanders JBlood)が先頭に立ち、ミルバーンと竹之内悠(東洋フレーム)を含めた3名が若干抜け出した。

スタートラップを終え、クリストファー・ヨンゲワールド(オーストラリア、Flanders JBlood)が竹之内悠(東洋フレーム)とギャリー・ミルバーン(オーストラリア、SPEEDVAGEN X MAAP)を率いるスタートラップを終え、クリストファー・ヨンゲワールド(オーストラリア、Flanders JBlood)が竹之内悠(東洋フレーム)とギャリー・ミルバーン(オーストラリア、SPEEDVAGEN X MAAP)を率いる photo:Makoto.Ayano出遅れたエミル・ヘケレ(チェコ、Stevens Bikes Emilio Sports)出遅れたエミル・ヘケレ(チェコ、Stevens Bikes Emilio Sports) photo:Makoto.Ayano

ピット前のストレートを駆け抜けるクリストファー・ヨンゲワールド(オーストラリア、Flanders JBlood)ピット前のストレートを駆け抜けるクリストファー・ヨンゲワールド(オーストラリア、Flanders JBlood) photo:Makoto.Ayano
コースコンディションは概ねドライで、前日と同じくハイスピードレースを演出する。名物の泥区間には踏み固められた轍が登場したが、スリッピーであることには変わらず、高速走行下でのスライド量をコントロールできる技量も試されることとなる。

そんなコース状況を味方につけたのが、豪州チャンピオンジャージを着るヨンゲワールドだった。前日2位、過去に10数度国内王者に輝いている実力者は、「試走の際にレース勘とフィジカルの強さが戻ってきているのを確認できたので、自信を持ってプッシュした」と加速した。竹之内はシーズン途中に故障していた足首に痛みが出て離脱。竹之内は「せっかく海外から選手が来てくれているので、日本人として展開に絡もうと思っていました。でも足首の痛みが出てしまって、力を抜けば痛みが引くことを分かっていたので2周目からは少し落としました」とこの瞬間を振り返っている。

先頭を追うギャリー・ミルバーン(オーストラリア、SPEEDVAGEN X MAAP)とエミル・ヘケレ(チェコ、Stevens Bikes Emilio Sports)先頭を追うギャリー・ミルバーン(オーストラリア、SPEEDVAGEN X MAAP)とエミル・ヘケレ(チェコ、Stevens Bikes Emilio Sports) photo:Makoto.Ayanoバニーホップでシケインを越えるクリストファー・ヨンゲワールド(オーストラリア、Flanders JBlood)バニーホップでシケインを越えるクリストファー・ヨンゲワールド(オーストラリア、Flanders JBlood) photo:Makoto.Ayano

アンソニー・クラーク(アメリカ、Squid Bikes)を引き連れて4位を走る前田公平(弱虫ペダルサイクリングチーム)アンソニー・クラーク(アメリカ、Squid Bikes)を引き連れて4位を走る前田公平(弱虫ペダルサイクリングチーム) photo:Makoto.Ayano
豪州王者が独走する焼き直しのような展開だったが、前日と違ったことはエミル・ヘケレ(チェコ、Stevens Bikes Emilio Sports)がスタートに手間取り、追走の一手を欠いたこと。蛍光グリーン眩しい40歳のベテランが10番手から前を追い続けたが、ミルバーンに追いつく頃にはヨンゲワールドははるか彼方先を逃げていた。

ヘケレとミルバーンの後ろは、付かず離れずの距離でケヴィン・ブラッドフォード(SET/Coaching.com)が追走。アンソニー・クラーク(アメリカ、Squid Bikes)も続く海外勢が上位を埋める状況には、前田公平(弱虫ペダルサイクリングチーム)が反応。クラークに食らいつき、小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム)や沢田時(ブリヂストンアンカーサイクリングチーム)、キャメロン・ベアード(アメリカ、Cannondale/Cyclocrossworld.com)、横山航太(シマノレーシング)らとの距離を広げた。

同じ豪州勢がビースト(野獣)と評するヨンゲワールドの走りは、誰の目にもパワフルだった。力強さと、障害をバニーホップで越え、滑りやすい路面に対応する繊細さを両立させながら、この日のエリートレースを掌握。大きなリードを築いてからはペースを調整し、フィニッシュまで独走を続けることとなる。

2位グループを組んで走るエミル・ヘケレ(チェコ、Stevens Bikes Emilio Sports)とギャリー・ミルバーン(オーストラリア、SPEEDVAGEN X MAAP)2位グループを組んで走るエミル・ヘケレ(チェコ、Stevens Bikes Emilio Sports)とギャリー・ミルバーン(オーストラリア、SPEEDVAGEN X MAAP) photo:Makoto.Ayanoブラッドフォードを引き離す前田公平(弱虫ペダルサイクリングチーム)とアンソニー・クラーク(アメリカ、Squid Bikes)ブラッドフォードを引き離す前田公平(弱虫ペダルサイクリングチーム)とアンソニー・クラーク(アメリカ、Squid Bikes) photo:Makoto.Ayano

野辺山2日目に勝利したクリストファー・ヨンゲワールド(オーストラリア、Flanders JBlood)野辺山2日目に勝利したクリストファー・ヨンゲワールド(オーストラリア、Flanders JBlood) photo:Makoto.Ayano
最終周回に入ると2位争いが白熱し、アタックを繰り返したヘケレにミルバーンは力負け。ヨンゲワールドが前日の雪辱を晴らす独走勝利を飾り、24秒後にヘケレがフィニッシュ。ミルバーンを射程圏内に捉えた前田とアンソニーが猛プッシュしたものの4秒届かず、昨年覇者が3位表彰台を確保した。

「序盤にチャンスを見出して、昨日は上手く走りが噛み合わずに落としたのでリベンジと思ってプッシュした。昨日はオフシーズンに入っていたこともあって自分で能力を押さえ込んでしまったが、今日はリミッターをオフにできた」と振り返るヨンゲワールド。「なんてクールな一日なんだろう。ナショナルチャンピオンジャージで勝てたことも嬉しいし、前回のシクロクロス東京で大好きになった日本のレースを、共にやってきた数名のオーストラリア人選手に感じてもらうことができた。時差もなく距離的にも近いので、ヨーロッパに遠征するよりもずっとハードルは低い。これからは日本のレースに参加するオージーも多くなっていくと思うよ」。

単独2位となってフィニッシュにやって来たエミル・ヘケレ(チェコ、Stevens Bikes Emilio Sports)単独2位となってフィニッシュにやって来たエミル・ヘケレ(チェコ、Stevens Bikes Emilio Sports) photo:Makoto.Ayano3位に終わったギャリー・ミルバーン(SPEEDVAGEN X MAAP)3位に終わったギャリー・ミルバーン(SPEEDVAGEN X MAAP) photo:Makoto.Ayano


スタートでの出遅れが響き2位に終わったヘケレは「前日が序盤から超ハイペースだったぶん、クリスを除いた全員が互いを見合ってしまったように思う」とレースを分析する。ミルバーンは「積極的にクリスを追いたかったけれど、今日の彼はとてもパワフルだった。エミルと一緒になってからはそれぞれ得意な区間で先頭に出ていたものの、舗装路では彼の方が少しだけ強かった。登りのたびに苦しんでしまい、その後の区間で後手に回ることが多く、最終的にはそこで差がついてしまった。硬い泥に対して常にタイヤは滑っていたけれど、それが僕には向いていた。楽しくレースを終えることができて良かった」と、マキノから続く2週間の日本遠征を振り返っている。

最後クラークに力負けしたものの、日本勢として気を吐いた前田公平(弱虫ペダルサイクリングチーム)の積極策がこの日は光った。「本当はもう一つ前のパックで優勝争いをしたかったのですが、今の力は全て出せたのでその部分は満足です。ただ3位がすぐそこまで近づいていたので悔しい」と言う23歳が見据えるのは、昨年2位に甘んじた全日本タイトル。「このレースで表彰台が見える位置に来たという手応えを掴み、自信になりました」と好感触を掴んだようだ。

アンソニー・クラーク(アメリカ、Squid Bikes)がスプリントで前田公平(弱虫ペダルサイクリングチーム)を引き離すアンソニー・クラーク(アメリカ、Squid Bikes)がスプリントで前田公平(弱虫ペダルサイクリングチーム)を引き離す 優勝したクリストファー・ヨンゲワールド(オーストラリア、Flanders JBlood)を称えるポール・レーデンバッハ(オーストラリア、Flanders JBlood)優勝したクリストファー・ヨンゲワールド(オーストラリア、Flanders JBlood)を称えるポール・レーデンバッハ(オーストラリア、Flanders JBlood) photo:Makoto.Ayano

Raphaスーパークロス野辺山2017 UCIエリート男子表彰Raphaスーパークロス野辺山2017 UCIエリート男子表彰 photo:Makoto.Ayano
前田の後方ではブラッドフォードが6位に入り、息を整えてからペースアップした竹之内が7位。以下、小坂、横山、ベアードと言う顔ぶれが続いた。

この日勝利したヨンゲワールドやクラークらはこのまま日本に滞在し、来週末のUCI宇都宮シクロクロスに出場予定。今年ルクセンブルクで開催された世界選手権U23で銀メダルに輝いたフェリペ・オルツ(スペイン)の参戦も決まっており、再びハイレベルな展開となることが予想される。

日本好きを公言しているクラークは「2日間、多くファンが名前を呼んでくれ、ブースにも訪ねて来てくれた。自国アメリカでもここまでじゃない。本当に感謝してもしきれない。だからこそ来週の宇都宮で良い走りを見せたい」と語った。
Raphaスーパークロス野辺山2017 UCIエリート男子
1位 クリストファー・ヨンゲワールド(Flanders JBlood) 57'27"
2位 エミル・ヘケレ(チェコ、Stevens Bikes Emilio Sports) 57'51"
3位 ギャリー・ミルバーン(SPEEDVAGEN X MAAP) 58'04"
4位 アンソニー・クラーク(Squid Bikes) 58'08"
5位 前田公平(弱虫ペダルサイクリングチーム)
6位 ケヴィン・ブラッドフォード(SET/Coaching.com) 58'22"
7位 竹之内悠(東洋フレーム) 58'54"
8位 小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム) 59'07"
9位 横山航太(シマノレーシング)
10位 キャメロン・ベアード(Cannondale/Cyclocrossworld.com)
text:So.Isobe
photo:Makoto.Ayano