2010年に結成されたばかりのチームスカイが初戦から魅せてくれた。結成1年目とは思えない連係でポジション争いを制し、万全の体制で発射されたグレゴリー・ヘンダーソン(ニュージーランド、チームスカイ)が勝利。この上ない形でシーズンをスタートさせた。

ライミルパーク周辺に集まった観客は108000人ライミルパーク周辺に集まった観客は108000人 photo:Kei Tsuji
1月19日に開幕するプロツアー初戦ツアー・ダウンアンダーに先立って行なわれたこの日のレースは、オーストラリア国内で癌に対する啓蒙運動を続ける「キャンサー・カウンシル(癌協会)」が開設した「ヘルプライン(ホットライン)」の名を冠したクリテリウム。

2日後に開幕する本戦に向けての顔見せ的な意味合いが強く、この日の成績はプロツアーレースの総合成績には反映されない。コースの沿道には108,000人の観客(南オーストラリア州警察発表)が詰めかけた。

ランス・アームストロング(アメリカ、レディオシャック)は常に集団前方でレースを展開ランス・アームストロング(アメリカ、レディオシャック)は常に集団前方でレースを展開 photo:Kei Tsujiアデレード市内のライミルパークを囲むように設置された1.7kmの周回コースはほぼフラットで、レースはここを30周。予想通り高速レースが展開された。

レースは序盤からUniSAチーム(オーストラリアナショナルチーム)を中心にアタックが繰り返された。5周毎に設定されたスプリントポイント目がけて数名が飛び出しては吸収されるハイスピードな展開。

逃げを試みるキャメロン・マイヤー(オーストラリア、ガーミン・トランジションズ)とダヴィド・ヴィトリア(スイス、フットオン・セルヴェット)逃げを試みるキャメロン・マイヤー(オーストラリア、ガーミン・トランジションズ)とダヴィド・ヴィトリア(スイス、フットオン・セルヴェット) photo:Kei Tsuji大きな盛り上がりを見せたのは、レースがちょうど半分を過ぎたあたり。ランス・アームストロング(アメリカ、レディオシャック)とオスカル・ペレイロ(スペイン、アスタナ)のツール覇者2人を含む5名の逃げが形成されると、会場のボルテージは急上昇した。

積極的に逃げグループを牽く好調な姿を見せたアームストロングは「ライバルチームの反応が見たかったんだ。昨年よりもコンディションは良い。明らかに昨年より快適に走れている。コーナー毎に他の選手のホイールに気を遣いながら走るよりも、小さなグループで走る方が良い時もある。もちろん苦しむことになるけど、その方が安全なんだ」と振り返る。

チームHTC・コロンビアが積極的に集団をコントロールチームHTC・コロンビアが積極的に集団をコントロール photo:Kei Tsujiメイン集団を最大で15秒引き離したアームストロング・グループ。しかしゴールに向けてスピードの上がったメイン集団には太刀打ち出来ず、残り3周で吸収された。

62位でレースを終えたアームストロングは「予想していたより長い間逃げ続けることが出来た。今回のタフな30分間のデータを早く帰ってパソコンで見たい。とにかく調子の良さを感じたよ」と、自身の走りに満足げだ。

逃げグループを積極的に牽くランス・アームストロング(アメリカ、レディオシャック)やオスカル・ペレイロ(スペイン、アスタナ)逃げグループを積極的に牽くランス・アームストロング(アメリカ、レディオシャック)やオスカル・ペレイロ(スペイン、アスタナ) photo:Kei Tsuji集団が一つにまとまると、ショーの主役はアームストロングからスプリンターチームへ。残り2周で集団先頭を独占していたのはグライペル擁するチームHTC・コロンビア。しかし人数を揃えて主導権を奪ったチームスカイが先頭で最終周回に突入した。

「こんなに速いリードアウトはこれまで経験したことが無かった」と最終車両のヘンダーソンが驚くほどのスピードで最終周回を駆け抜けたチームスカイ。マシュー・ゴス(オーストラリア、チームHTC・コロンビア)がトレインに食い込む場面も見られたが、チームスカイは主導権を渡さない。

チームスカイ勢が完全に主導権を握って最終周回へチームスカイ勢が完全に主導権を握って最終周回へ photo:Kei Tsuji最後はクリストファー・サットン(オーストラリア)に発射されたヘンダーソンが、アンドレ・グライペル(ドイツ、チームHTC・コロンビア)やロビー・マキュアン(オーストラリア、カチューシャ)を振り切ってゴール。発射台役のサットンが2位。チームスカイの圧勝だった。

「これ以上の勝利は無い!信じられないぐらい素晴らしいチームだ。残り2周でチームが隊列を整えると、もう後ろは振り返らなかった。『どれだけ速いんだ!』と驚くほどのスピードで最終周回を駆け抜けた。ひたすらチームメイトに食らいついたんだ。最後はCJ(サットン)に導かれるようにスプリント。本当に信じられない勝利だよ」

スプリントを制したグレゴリー・ヘンダーソン(ニュージーランド、チームスカイ)、後方は発射台のサットンスプリントを制したグレゴリー・ヘンダーソン(ニュージーランド、チームスカイ)、後方は発射台のサットン photo:Kei Tsujiヘンダーソンはトラック競技出身の33歳。2004年にはトラック世界選手権スクラッチで世界チャンピオンに輝いている。昨年はブエルタ・ア・エスパーニャ第3ステージでのグランツール初勝利を含むシーズン通算4勝を飾った。

2010年に結成されたばかりのチームスカイに早くも1勝目をもたらしたヘンダーソン。「チームのデビュー戦でチーム初勝利を飾るなんてファンタスティックだ。そんなチームは今まで聞いたことが無い」。チームスカイは最高の形でチームの歴史をスタートさせた。


キャンサー・カウンシル・ヘルプライン・クラシック
1位 グレゴリー・ヘンダーソン(ニュージーランド、チームスカイ)1h04'33"
2位 クリストファー・サットン(オーストラリア、チームスカイ)
3位 アンドレ・グライペル(ドイツ、チームHTC・コロンビア)
4位 ロビー・マキュアン(オーストラリア、カチューシャ)
5位 バーデン・クック(オーストラリア、サクソバンク)
6位 グレーム・ブラウン(オーストラリア、ラボバンク)
7位 アラン・デーヴィス(オーストラリア、アスタナ)
8位 ホセホアキン・ロハス(スペイン、ケースデパーニュ)
9位 アントニー・ラヴァール(フランス、アージェードゥーゼル)
10位 マヌエル・カルドソ(ポルトガル、フットオン・セルヴェット)

text&photo:Kei Tsuji in Adelaide, Australia

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