来日中のバーレーン・メリダのヴィンチェンツォ&アントニオ・ニーバリ兄弟とGMのブレント・コープランド氏が川崎市のミヤタサイクル社において記者会見を開いた。チームのこと、来季のレースのプランとは?



川崎のミヤタサイクル本社で開催された記者会見川崎のミヤタサイクル本社で開催された記者会見 photo:Makoto.AYANO
株式会社ミヤタサイクル代表取締役社長 高谷信一郎氏の挨拶のあと、ブレント・コープランドGMから新規チームの立ち上げ経緯から今年の振り返り、そしてニーバリ兄弟のインタビューが始まった。ここではその内容をダイジェストでお届けしよう。

ブレント・コープランド  バーレーン・メリダGMブレント・コープランド バーレーン・メリダGM photo:Makoto.AYANOブレント・コープランドGM 「新チームの最初の1年に満足」 来季のメンバー補強について

2日だけの滞在ですが、日本を満喫しています。今日はまずチーム創設のきっかけからお話します。バーレーンのナセル王子とヴィンチェンツォ・ニーバリとの出会いからチーム立ち上げ話が始まっています。王子はエンデュランス系のレースが好きで、自身もトライアスリートです。そして自転車レースにとくに興味をもっていました。ヴィンチェンツォとの話から、遊びのような軽い気持ちでスタートした構想が、実際にチーム創設に繋がったんです。

今年の成績には大変満足しています。新チームの最初の一年というのは、チームが機能すること自体が非常に難しいため、あまり大きな目標を掲げたり、過度な課題を提示したりすることはできないものです。チームのイメージも大切にしなくてはならない。それらのことに非常に神経を配りました。

ところがシーズンが終わってみれば非常に満足いく結果でした。ヴィンチェンツォのグランツール(ジロ、ブエルタ)での大活躍や、イル・ロンバルディアの勝利。ヴィンチェンツォについては期待以上の成績でした。しかし彼は大きなプレッシャー背負い込んでいたはずです。

それと同時にチームには落車での負傷など、大きな事故も続きました。もしそれらが無かったらもっと良い成績が出せたとも思っています。

インタビューに応えるヴィンチェンツォ・ニーバリインタビューに応えるヴィンチェンツォ・ニーバリ photo:Makoto.AYANO
来年は選手を補強します。新メンバーは6人。ドメニコ・ポッツォヴィーボ(イタリア、AG2Rより)、マティ・モホリッチ(スロベニア、UAEエミレーツより)、ゴルカ・イサギレ(スペイン、モビスターより)、クリスティアン・コレン(スロベニア、キャノンデール・ドラパックより)、他にマルコ・パドゥンという選手と、MTBライダーであったシュタイナー選手が加わります。
 
残念ながら北のクラシックに向けてはあまり体制が十分ではありませんが、ハインリッヒ・ハウッスラーは怪我から回復しつつあるので、期待はできます。

チーム全体を見れば、広く戦力を補強し、今までヴィンチェンツォひとりにかかっていた大きなプレッシャーや期待を分散していく方針です。多方面で活躍できるチームになれると思います。そう、アントニオにもアラシロにも、大きな期待をしています。

ヴィンチェンツォ・ニーバリ「クライマー向けツール、リエージュに興味」

今シーズンはすべてが新しくなり、不確定で始まったシーズンです。チームの体制がまず整うよう考えました。私の活躍のほかにもソニー・コルブレッリらの勝利もあり、結果的にはいいシーズンになったと思います。しかし北のクラシックにも新メンバーで体制を整えなければいけないし、何よりレース界にはたくさんのライバルチームが居ます。彼らと戦う方法も考えていかなくてはなりません。

来年に関しては、昨夜のツール・ド・フランスのプレゼンテーションを観ました。非常に面白いコースで、厳しいレースになりそうですが、自分が出場するかどうかはまだ決めていません。印象は「クライマー向けのツール」ですね。65kmという短いステージは予測がつきませんし、パヴェのステージがあります。そして35kmのチームTTは風の影響が大きなことも予想されます。全体を通してはクライマー向けのレースということで、出場を考えない理由はありません。

しかし、イタリア人の自分にとってジロへの思いは特別です。ツールとの選択は非常に難しい。また、クラシックのアムステルゴールド、リエージュ~バストーニュ~リエージュ、フレーシュ・ワロンヌには出たい。なかでもリエージュはコース的にも自分に向いていると思っており、非常に興味を持っています。優勝が狙えると思います。

アントニオ・ニーバリはNIPPOヴィーニファンティーニから移籍して1年をチームで過ごしたアントニオ・ニーバリはNIPPOヴィーニファンティーニから移籍して1年をチームで過ごした photo:Makoto.AYANOアントニオ・ニーバリ 「ブエルタは大いなる経験だった」

2017は特別な1年でした。自身、初めてワールドツアーチームで走ったこと、そして兄のそばで走ったこと。印象的だったのはブエルタです。それは大いなる経験でした。来年については、キャンプが終わってから考えたい。そして今回は自分にとって初めての日本ではないので、毎回温かい歓迎があるのが嬉しく、故郷のように感じています。

質疑応答より

グランツールとクラシックなどのワンデイレース。どちらも強いが、どのように準備しているのか。両者に違いはありますか?

リラックスした表情を見せるヴィンチェンツォ・ニーバリリラックスした表情を見せるヴィンチェンツォ・ニーバリ photo:Makoto.AYANOヴィンチェンツォ: グランツールとクラシックはアプローチが全く異なります。ワンデイレースには翌日が無いため100%出し切る必要があります。アタックし続けなくてはいけない。対してグランツールは一日ではなく、3週間を闘うレース。エネルギーをセーブしながら走らなくてはいけない。力を3週間に分散させる必要があります。

イル・ロンバルディアの勝利は、ブエルタで蓄えた筋力が大きな好影響があったと思っています。ブエルタでどれぐらいのエネルギーを残せたかを考えて、ロンバルディアを闘いました。

NIPPO時代に培った経験が、今に生きていますか?

アントニオ:チームの規模はNIPPOよりも大きくなりましたが、バーレーン・メリダも雰囲気のいいチームです。ワールドツアーチームとなったことでレースカレンダーは大きく違いました。ワールドツアーのレベルの高いレースに出ることで、身体的にも経験が積め、自分が大きく変われました。

壁の新城幸也を指さすヴィンチェンツォ・ニーバリ壁の新城幸也を指さすヴィンチェンツォ・ニーバリ photo:Makoto.AYANOCW:コープランド氏はかつてNIPPOのスタッフでした。長いコラボレーションの期間があったため、NIPPOの大門宏ゼネラルマネジャーとは旧知の仲だと思います。アントニオの移籍に関しては、ふたりでどのように話し合ったのでしょうか?

コープランド氏:個人的にも「ダイモンさん」とはもう20年以上のおつきあいで、かつて彼のスタッフだったため友情関係がありますが、実はアントニオの移籍に関しては彼とは話していません。ヴィンチェンツォのコーチのパオロ・スロンゴ(かつてバッソのコーチもつとめた)からの提案で、彼をチームに迎えることにしたのです。じつは私は最初は「どうかな?」と思っていましたが、彼のその後の活躍で、それは正解だったと思っています。

CW:兄弟だから同じレースを走らせる、そのほうがメリットが有るということはありますか? 兄弟だからということが、ふたりのレースカレンダーを決めることを左右しますか?

ワールドツアーレースに関しては出場レースを決めることは非常に難しい問題が伴います。ですので兄弟だから、ということは関係ありません。ただ、アントニオは力があるため今後グランツールに投用していくつもりです。

また、プロコンチネンタルチームとはプログラムの決め方がまったく違います。プロコンはレース主催者から招待があるまでレースカレンダーが組めないのです。しかし今年はアントニオに関しては、出場レースを早めにプランし、それに沿ったトレーニングメニューも組むことができた。だから思った以上の成長がみられたと思っています。それがブエルタでした。そして兄とは来年、どこかのグランツールで一緒に走らせたいとは思っています。

ヴィンチェンツォと弟のアントニオ・ニーバリ兄弟。そしてGMのブレント・コープランド氏ヴィンチェンツォと弟のアントニオ・ニーバリ兄弟。そしてGMのブレント・コープランド氏 photo:Makoto.AYANO


わずか2日の日本滞在を、初日は日本でのメリダ販売プロショップなどの関係者と屋形船に乗って東京湾遊覧と食事を愉しみ、夜はトークショーを催して一般の方へのサービスとした。翌日はこの記者会見のあとすぐさま羽田空港に向かったようだ。

photo&text:Makoto.AYANO