ブエルタ終盤の中級山岳ステージで、一騎打ちを制したサンデル・アルメ(ベルギー、ロット・ソウダル)がキャリア初勝利。ライバルの攻撃をチーム力で封じ込め、最後に加速したクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)が総合リードを再び広げることに成功した。



白い石灰岩の山肌を縫うように走るブエルタ・ア・エスパーニャ2017第17ステージ白い石灰岩の山肌を縫うように走るブエルタ・ア・エスパーニャ2017第17ステージ photo:CorVos
ブエルタ・ア・エスパーニャ2017第18ステージブエルタ・ア・エスパーニャ2017第18ステージ image:Unipublicブエルタ・ア・エスパーニャ2017第18ステージブエルタ・ア・エスパーニャ2017第18ステージ image:Unipublic


フィナーレに向けて総合争いが過熱し続けるブエルタ・ア・エスパーニャ(UCIワールドツアー)。大西洋沿いに面したカンタブリア州のスアンセスからサント・トリビオ・デ・リエバナへと至る第18ステージは、前日よりも若干短い169km。

標高600m級の峠が計4つ(3級→3級→2級→3級)と詰め込まれており、それぞれの難易度は厳しくないものの、最後は3級山岳サント・トリビオ・デ・リエバナが待ち受ける。リエバナ峠は長さ3.2km/平均6.4%であるが、ラスト2kmは9%という斜面が待ち受けているため油断は禁物。2012年にコンタドールが独走し、総合優勝につながる大逆転を達成した第17ステージのフエンテ・デ山頂フィニッシュのコースと似通っており、何か波乱も起こりそうな気配を漂わせつつ、前日からマキシム・モンフォール(ベルギー、ロット・ソウダル)を欠いた計161名がスタートを切った。

この日は逃げ切りにチャンスがあるだけに、長い長いアタック合戦が続く。アタックとチェック、吸収という流れが60km弱にも渡って続き、ようやく総合争いに関係の無い20名をチームスカイが見送った。

応援メッセージと共に写真に収まるアルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード)応援メッセージと共に写真に収まるアルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード) photo:CorVos最前列でスタートを待つクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)最前列でスタートを待つクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:CorVos

12分ものリードを得て逃げた20名12分ものリードを得て逃げた20名 photo:Unipublic/Photogomez Sport
ジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ)、マッテーオ・トレンティン(イタリア、クイックステップフロアーズ)、マテイ・モホリッチ(スロベニア、UAEチームエミレーツ)、アレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、アスタナ)という、これまでステージ優勝を挙げている4名を含む大所帯。ステージ優勝狙いや、総合エースのための前待ち作戦など、様々な思惑を持った20名は11分以上という大きなリードを得て先を急いだ。

逃げ切りにGoサインが灯る逃げグループ内では、109.5km地点の3級山岳カルモナ峠(4.8km/7.2%)、126km地点の3級山岳オザルバ峠(6.6km/6%)でホセ・ロハス(スペイン、モビスター)が共に先頭通過。このブエルタで勢いを失っているチームのために動いたロハスは、ステージ終了後に敢闘賞を受け取っている。

132.7km地点に置かれた中間スプリントを奪ったのは、第15ステージでクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)に奪われたマイヨプントス(ポイント賞)を諦めないトレンティン。3ポイントを加算して逆転に望みを繋げた。

オザルバ峠でアタックしたアルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード)オザルバ峠でアタックしたアルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード) photo:CorVos
オザルバ峠から長い独走を開始したファビオ・アル(イタリア、アスタナ)オザルバ峠から長い独走を開始したファビオ・アル(イタリア、アスタナ) photo:CorVos
オザルバ峠を逃げグループが通過した10分後、メイン集団ではチームスカイがコントロールする中からルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ)らが抜け出した。するとサンチェスを目掛けて総合9位のイタリア王者ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)アタックし、ここに総合5位アルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード)、7位マイケル・ウッズ(カナダ、キャノンデール・ドラパック)らも同調する。この後アルは独走に持ち込んだものの、フルームを従えるチームスカイ列車は冷静にペースメイクを続けた。この動きの中、前日に総合10位から12位まで落ちたエスデバン・チャベス(コロンビア、オリカ・スコット)が脱落していった。

自身の総合ジャンプアップ、そして総合6位ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)の前待ちという意味を持つアルの9分前では、2級山岳ラホス峠(7km/6%)の登りでサンデル・アルメ(ベルギー、ロット・スーダル)とアレクシ・グジャール(フランス、アージェードゥーゼル)が先行。ここにマルク・ソレール(スペイン、モビスター)とルツェンコ、アラフィリップが合流を果たし、5名が抜け出した。

ゴールに登り詰める3級山岳リエバナ峠の麓ではアラフィリップとルツェンコ、そしてアルメが抜け出し、ラホス峠山頂を先頭通過したソレールと、苦しい表情のグジャールは遅れを喫した。急峻な岩山を縫うように駆け上がる中で、優勝候補筆頭と思われていた「前日も逃げたことで脚が上手く回らなかった。ラスト2kmは恐ろしくもあった」と語るアラフィリップは脱落。ルツェンコとアルメは互いに牽制を繰り返しながら残り1kmのアーチをくぐった。

ルツェンコを置き去りにしてフィニッシュに到達したサンデル・アルメ(ベルギー、ロット・ソウダル)ルツェンコを置き去りにしてフィニッシュに到達したサンデル・アルメ(ベルギー、ロット・ソウダル) photo:CorVos
サンデル・アルメ(ベルギー、ロット・ソウダル)がキャリア初勝利を飾るサンデル・アルメ(ベルギー、ロット・ソウダル)がキャリア初勝利を飾る photo:CorVos
すると残り800mを切ってアルメが渾身のアタック。脚が無かったと振り返るルツェンコは遅れ、そのままダンシングを続けたアルメが大金星のステージ優勝を達成した。今年ダンケルク4日間レースで総合2位に入ったルーラーにとってはプロ初勝利。トップスポートフラーンデレンからロット・ソウダルと渡り歩いてきた31歳が輝きを放った。

トーマス・マルチンスキー(ポーランド)の2勝に続くチーム3勝目を挙げ、逃げ屋チームとしてのプライドを守ったアルメ。「これまでプロ選手としてデビューしてから8年になる。レースで勝利を掴みとるために長い間待ち続けてきた。何度か、チャンスはあったけれど、常にチームのオーダーをこなし続けてきた。でも、このブエルタでは自由に動けるチャンスを掴み、自分のために走ることが許されたんだ」と喜びを語っている。

2級山岳ラホス峠で抜け出したダビ・デラクルス(スペイン、クイックステップフロアーズ)は遅れ、トップ10から脱落2級山岳ラホス峠で抜け出したダビ・デラクルス(スペイン、クイックステップフロアーズ)は遅れ、トップ10から脱落 photo:CorVosフィニッシュ直前で猛烈にペースアップするクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)フィニッシュ直前で猛烈にペースアップするクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:CorVos

アルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード)とクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)、マイケル・ウッズ(カナダ、キャノンデール・ドラパック)が同タイムフィニッシュアルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード)とクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)、マイケル・ウッズ(カナダ、キャノンデール・ドラパック)が同タイムフィニッシュ photo:CorVosフルームグループから4秒遅れたウィルコ・ケルデルマン(オランダ、サンウェブ)とイルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン)フルームグループから4秒遅れたウィルコ・ケルデルマン(オランダ、サンウェブ)とイルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン) photo:CorVos


総合10位ダビ・デラクルス(スペイン、クイックステップフロアーズ)のアタックを封じ込めたチームスカイは、集団の人数を急速に絞り込みながら3級山岳リエバナ峠を駆け上がった。ライバルのアタックを許さないハイペースを保ち、残り600mでワウト・プールス(オランダ)が離れると、間髪入れずにフルームが加速した。

うつむきながら急激に踏み込んだフルームに対して総合2位ヴィンツェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)が遅れ、コンタドールとウッズだけがマイヨロホを追従。長時間単独で逃げ続けたアルまで8秒差に迫ってフルームら3名がゴールし、ニーバリは19秒遅れ。前日1分16秒差まで詰めたフルームの差は1分37秒に再び広がった。

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ブエルタ・ア・エスパーニャ2017第18ステージ
ステージ成績
1位 サンデル・アルメ(ベルギー、ロット・ソウダル) 4:09:39
2位 アレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、アスタナ) 0:00:31
3位 ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、バーレーン・メリダ) 0:00:46
4位 アレクシー・グジャール(フランス、アージェードゥーゼール・ラモンディアール) 0:01:02
5位 ホセ・ロハス(スペイン、モビスター) 0:01:06
6位 アレッサンドロ・デマルキ(イタリア、BMCレーシング) 0:01:19
7位 マッテーオ・トレンティン(イタリア、クイックステップフロアーズ) 0:01:21
8位 セルジオ・パルディーリャ(スペイン、カハルーラル・セグロスRGA)
9位 アントワン・トルホーク(オランダ、ロットNLユンボ) 0:01:38
10位 アントニー・ルー(フランス、エフデジ) 0:01:42
マイヨロホ(個人総合成績)
1位 クリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ) 72:03:50
2位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ) 0:01:37
3位 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、サンウェブ) 0:02:17
4位 イルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン) 0:02:29
5位 アルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード) 0:03:34
6位 ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ) 0:05:16
7位 マイケル・ウッズ(カナダ、キャノンデール・ドラパック) 0:06:33
8位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)
9位 ワウト・プールス(オランダ、チームスカイ) 0:06:47
10位 ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ロットNLユンボ) 0:10:26
マイヨプントス(ポイント賞)
1位 クリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ) 137pts
2位 マッテオ・トレンティン(イタリア、クイックステップフロアーズ) 121pts
3位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ) 118pts
マイヨモンターニャ(山岳賞ジャージ)
1位 ダヴィデ・ヴィレッラ(イタリア、キャノンデール・ドラパック) 54pts
2位 ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ) 47pts
3位 ホセ・ロハス(スペイン、モビスター) 33pts
マイヨコンビナーダ(複合賞)
1位 クリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ) 6pts
2位 ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ) 12pts
3位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ) 18pts
チーム総合成績
1位 アスタナ 215:42:32
2位 チームスカイ 20:47
3位 モビスター 30:35
txet:So.Isobe
photo:CorVos/Unipublic