ツール・ド・フランスの総合優勝者に与えられるマイヨジョーヌ。栄光のイエロージャージを狙って世界トップライダーがドイツのデュッセルドルフに集結する。大会3連覇がかかったクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)をはじめ、マイヨジョーヌ候補をピックアップします。



総合リーダーの証である栄光のイエロージャージ

総合リーダーに与えられるマイヨジョーヌ総合リーダーに与えられるマイヨジョーヌ photo:Kei Tsuji / TDWsport
イエロージャージを意味するマイヨジョーヌは総合リーダーの証。個人総合成績首位の選手だけが着用を許される栄光のジャージであり、総合優勝者は最終日パリの表彰台でマイヨジョーヌを受け取る。ジャージスポンサーはリヨンに拠点を置くLCL銀行。

2017年もボーナスタイムが導入されており、ステージ1位に入った選手は10秒、ステージ2位は6秒、ステージ3位は4秒のタイムが総合時間からボーナスとしてマイナスされる(個人タイムトライアルを除く)。他のグランツールとは異なり、中間スプリントの上位通過者にボーナスタイムは与えられない。

選手たちの安全性を向上させる新たな試みとして、集団スプリントに持ち込まれる可能性が高い平坦ステージ(第2、6、7、10、16、19、21ステージ)において集団内に発生するタイム差の最小単位が1秒から3秒に拡大された。中切れによってタイムを失う確率が減るため、マイヨジョーヌを狙う選手たちは集団前方に突っ込んでいく必要がなくなる。UCIのリリースによると、集団が60km/hでフィニッシュした場合、1秒差は17mのギャップに相当。3秒差では50mまで広がる。つまり集団内に50mの中切れが起こっても、後方の集団は同タイム扱いとなる。


ポートやキンタナ、コンタドール、アル、バルデはフルームの3連覇を阻止できるか?

開幕前の記者会見に臨むクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)開幕前の記者会見に臨むクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:Kei Tsuji / TDWsport
総合優勝候補の筆頭は2013年と2015年、2016年にマイヨジョーヌを獲得しているクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)だ。自身4度目、3年連続の総合優勝を狙うフルームは出場選手の中で最も優れたタイムトライアル能力の持ち主。それでいて山岳ステージでもライバルを圧倒する登坂力を兼ね備えている。さらに他のチームに移籍すればエース級の選手がアシストとしてフルームに仕える。

しかし、2017年はこれまでの「ドーフィネで勝ってツールでも勝つ」という過去3度の常勝パターンが途絶えた。「ジンクスは信じていない。4度目の総合優勝を目指す、ただそれだけ。その目標を達成することができればどれだけ素晴らしいことか」と、開幕前の記者会見でフルームは落ちついてコメント。今シーズンまだ0勝だが、「逆に今まで経験したことがないほどフレッシュなんだ」と語っている。

記者会見でフルームが「最も警戒すべき相手」と名指ししたのが元チームメイトのリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)だ。今シーズンは1月のツアー・ダウンアンダー総合優勝に始まり、ツール・ド・ロマンディ総合優勝。前哨戦クリテリウム・デュ・ドーフィネでは個人TTで勝利するとともに山岳ステージで煌めきを見せた(総合2位)。これまでの総合最高位は2016年の総合5位で、総合表彰台の経験はないが、例年にも増して好調さを印象付けた状態でツールに挑む。

リッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)リッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング) photo:Kei Tsuji / TDWsportスペインのステージレース2連戦に出場するアルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード)スペインのステージレース2連戦に出場するアルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード) photo:Kei Tsuji / TDWsport

2007年と2009年の総合優勝者(2010年のタイトルは失格により剥奪)であるアルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード)はキャリアの最後にもう一花咲かせることができるだろうか。今シーズンはアンダルシアとパリ〜ニース、カタルーニャ、パイスバスコで総合2位を量産。あと一歩で勝てない状態が続き、ドーフィネは総合11位に終わっている。開幕直前にチームメイトのアンドレ・カルドソ(ポルトガル)がドーピング陽性を出して出鼻をくじかれたが、34歳の古豪は9度目のツールで自身8度目のグランツール制覇を狙う。

膝の故障によってジロを欠場したファビオ・アル(イタリア、アスタナ)はドーフィネ総合優勝のヤコブ・フルサング(デンマーク)とのダブルエース体制でツールに挑む。ドーフィネでは果敢に動いて総合5位に入り、直前のイタリア選手権ロードで初優勝。2016年ツールでは終盤まで総合6位につけていたが、第20ステージで大崩れして総合13位でレースを終えている。

2016年にフルームと4分05秒差の総合2位に入ったロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール)はマイヨジョーヌに最も近いフランス人だと言えるだろう。ドーフィネでは総合6位に終わったが、個人TTの距離が短くてチームTTがないコース設定はバルデに味方する。2014年に総合3位に入ったティボー・ピノ(フランス、エフデジ)はジロから連戦出場だ。

ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)ファビオ・アル(イタリア、アスタナ) photo:Kei Tsuji / TDWsportロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール)ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール) photo:Kei Tsuji / TDWsport

総合2位でジロ・デ・イタリアを終えたナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)は目標とする「ダブルツール」への挑戦権を逃したが、5月ではなく7月にコンディションのピークを合わせていることも考えられる。ジロ以降レースに出場していないためコンディションは未知数。超人的な安定感を誇るアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)がキンタナを援護する。

コロンビアンライダーとしてはエステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・スコット)やリゴベルト・ウラン(コロンビア、キャノンデール・ドラパック)にも注目したい。2016年にジロ総合2位、ブエルタ・ア・エスパーニャ総合3位という成績を残した27歳のチャベスは故障によってシーズン前半を棒に振ったが、ドーフィネで復調を印象付けている。チャベスはサイモン・イェーツ(イギリス)と、そしてウランはアンドリュー・タランスキー(アメリカ)とタッグを組むことになる。

ドーフィネ総合3位のダニエル・マーティン(アイルランド、クイックステップフロアーズ)は2016年ツールで初めて総合トップ10フィニッシュを達成。これまで1週間のステージレースを得意としてきたが、30歳になった今、グランツールでも総合争いに加わる安定感をつけている。マイヨブラン候補のルイス・マインティーズ(南アフリカ、UAEチームエミレーツ)や新城幸也のサポートを受けるヨン・イサギレ(スペイン、バーレーン・メリダ)も総合上位に絡んでくるだろう。

ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) photo:Kei Tsuji / TDWsportエステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・スコット)エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・スコット) photo:Kei Tsuji / TDWsport



ツール・ド・フランス2016総合成績
1位 クリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)           89h04’48”
2位 ロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)             +4’05”
3位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)                 +4’21”
4位 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・バイクエクスチェンジ)         +4’42”
5位 リッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)             +5’17”
6位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)              +6’16”
7位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)               +6’58”
8位 ルイス・マインティーズ(南アフリカ、ランプレ・メリダ)
9位 ダニエル・マーティン(アイルランド、エティックス・クイックステップ)    +7’04”
10位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、ティンコフ)                +7’11”



歴代のツール総合優勝者
2016年 クリストファー・フルーム(イギリス)
2015年 クリストファー・フルーム(イギリス)
2014年 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア)
2013年 クリストファー・フルーム(イギリス)
2012年 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス)
2011年 カデル・エヴァンス(オーストラリア)
2010年 アンディ・シュレク(ルクセンブルク)※コンタドール失格による繰り上げ
2009年 アルベルト・コンタドール(スペイン)
2008年 カルロス・サストレ(スペイン)
2007年 アルベルト・コンタドール(スペイン)
2006年 オスカル・ペレイロ(スペイン)※ランディス失格による繰り上げ
2005年 ランス・アームストロング(アメリカ)
2004年 ランス・アームストロング(アメリカ)
2003年 ランス・アームストロング(アメリカ)
2002年 ランス・アームストロング(アメリカ)
2001年 ランス・アームストロング(アメリカ)
2000年 ランス・アームストロング(アメリカ)
1999年 ランス・アームストロング(アメリカ)
1998年 マルコ・パンターニ(イタリア)
1997年 ヤン・ウルリッヒ(ドイツ)
1996年 ビャルヌ・リース(デンマーク)
1995年 ミゲル・インドゥライン(スペイン)
1994年 ミゲル・インドゥライン(スペイン)
1993年 ミゲル・インドゥライン(スペイン)
1992年 ミゲル・インドゥライン(スペイン)
1991年 ミゲル・インドゥライン(スペイン)
1990年 グレッグ・レモン(アメリカ)

text:Kei Tsuji in Dusseldorf, Germany
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