6月2日にオランダのリンブルフ州で第1回ハンマーシリーズのハンマークライムが開催され、トム・デュムランを含む先頭グループが逃げ切り。ポイントを稼いだカルロスアルベルト・ベタンクールのモビスターが首位に立った。


フィニッシュラインを通過する選手たちフィニッシュラインを通過する選手たち
逃げに乗り損ねたフィリップ・ジルベール(ベルギー、クイックステップフロアーズ)逃げに乗り損ねたフィリップ・ジルベール(ベルギー、クイックステップフロアーズ) カルロスアルベルト・ベタンクール(コロンビア、モビスター)を含む7名の先頭グループカルロスアルベルト・ベタンクール(コロンビア、モビスター)を含む7名の先頭グループ


ハンマークライム 7km x 11周回ハンマークライム 7km x 11周回 image: Hammer Series ヴェロングループが主催するハンマーシリーズが初開催。「スポートゾーン・リンブルフ」はその名の通りオランダのリンブルフ州を舞台にした3日間のステージレースで、「ハンマークライム」「ハンマースプリント」「ハンマーチェイス」という独自の3種目が行われる。当初はUCI(国際自転車競技連盟)に属さない大会として開催予定だったが、実際はUCIヨーロッパツアーにクラス2.1レースとして組み込まれての開催となった。

初日は丘陵コースで行われるクライマーを対象にした「ハンマークライム」で、2つの登り(長さ900m/平均4.2%と長さ2000m/平均5.3%)を含む標高差162mの7km周回コースを11周する。ポイントレース形式で行われ、毎周回フィニッシュライン通過時の上位10名選手にポイントが与えられるシステム(3周目、7周目、11周目は2倍ポイント)。チーム順位は合計ポイントで争われ、上位10チームには最終日の「ハンマーチェイス(チームTT)」に向けて最大15秒のボーナスタイムが与えられる。

毎周回のポイントで決するポイントレース制であり、しかもレース時間が2時間弱という短さ。そのためフィニッシュライムで決する従来のロードレースとは異なる展開を見せる。1周目からアタックがかかる展開は従来通りだが、登坂力に秀でた選手による先頭グループが形成されると、メイン集団に復帰の余地はなかった。

落車したタオ・ゲオゲガンハート(イギリス、チームスカイ)が先頭復帰を目指す落車したタオ・ゲオゲガンハート(イギリス、チームスカイ)が先頭復帰を目指す 最終周回も制したカルロスアルベルト・ベタンクール(コロンビア、モビスター)最終周回も制したカルロスアルベルト・ベタンクール(コロンビア、モビスター)

ダニエル・オス(イタリア、BMCレーシング)とティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ソウダル)が1周目と2周目のポイントを稼いだのち、先頭では13名のグループが形成され、やがて人数が絞られて7名に。ジロ・デ・イタリアを制したばかりのトム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)やジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、クイックステップフロアーズ)、タオ・ゲオゲガンハート(イギリス、チームスカイ)、カルロスアルベルト・ベタンクール(コロンビア、モビスター)、ルーク・ダーブリッジ(オーストラリア、オリカ・スコット)、シュテファン・キュング(スイス、BMCレーシング)、イウリィ・フィロージ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ)が先頭グループを形成した状態でレースは落ち着いた。

ベタンクールは3周目、4周目、5周目を連続で先頭通過してポイント争いで一歩リードし、積極的に動いたフィロージが6周目を先着。2番手通過を続けていたゲオゲガンハートはダブルポイントの7周目を先頭通過しながらも下りで落車して脱落してしまう。ベタンクールはその後も8周目、9周目、10周目を連取し、ライバルチームに大きなポイント差をつけることに成功した。

最終周回に入ると、落車で遅れていたゲオゲガンハートがネルソン・オリヴェイラ(ポルトガル、モビスター)とヴィクトール・カンペナールツ(ベルギー、ロットNLユンボ)を連れて先頭グループに復帰する。カウンターアタックで飛び出したカンペナールツを最後の登りで追撃したのはベタンクール。タイム差をつける必要がないためベタンクールはカンペナールツの後ろで力を温存し、フィニッシュ手前で仕掛けて最終ポイントまで獲得してみせた。

「この数ヶ月間ずっと高地トレーニングを行ってきた。その結果を出せたと思う。チームとして素晴らしいパフォーマンスを見せることができたし、今日は勝つことしか考えていなかった」と、丘陵コースを席巻したベタンクールは語る。2位のサンウェブに45.9ポイント差をつけたモビスターは「ハンマーチェイス」に向けてボーナスタイム15秒を獲得している。

「物凄くハードなレースだった。スタート後すぐに血の味がした。アタックなんてできなかった」と語るのはサンウェブを2位に導いたデュムラン。地元リンブルフ出身のジロ覇者は「終わってホッとしている。地元のレースで勝負に絡むことができてよかったよ。自分はジロの好調さを維持していたけど、ベタンクールの走りはずば抜けていた」と語っている。

チーム競技としてのエンターテインメント性の高さを謳ったハンマーシリーズ。この日は先頭グループの選手が毎周回ポイントを争う中だるみのないレースが展開されたものの、チーム戦ではなく個人戦の色が強く、後続の選手に合流のチャンスがない単調な展開だったとも言える。レース内容やルールについて主催者も手探りの状態であり、まだまだ改善の余地はありそうだ。

マキュアン氏のインタビューを受けるトム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)マキュアン氏のインタビューを受けるトム・デュムラン(オランダ、サンウェブ) ポイントトップに輝いたモビスターポイントトップに輝いたモビスター


ハンマーシリーズ2017ハンマークライム結果
1位 モビスター               144.8pts
2位 サンウェブ               98.9pts
3位 チームスカイ              84.7pts
4位 オリカ・スコット            83.3pts
5位 BMCレーシング             75.2pts
6位 NIPPOヴィーニファンティーニ      53.6pts
7位 クイックステップフロアーズ       53pts
8位 ロットNLユンボ             27.7pts
9位 ロット・ソウダル             23.7pts
10位 キャノンデール・ドラパック       2.3pts
11位 ルームポット・ネーデランセローテリ   0pts
12位 バーレーン・メリダ           0pts
13位 トレック・セガフレード         0pts
14位 UAEチームエミレーツ          0pts
15位 カハルーラル・セグロスRGA       0pts
16位 イスラエル・サイクリングアカデミー    0pts

text:Kei Tsuji
photo:TDWsport