旧市街ベルガモアルタを駆け上がった集団は12名に縮小。精鋭グループによるスプリントでマリアビアンカを着るボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ)が勝利した。



開始2時間が経ってもスピードが落ちない開始2時間が経ってもスピードが落ちない
ジロ・デ・イタリア2017第15ステージジロ・デ・イタリア2017第15ステージ image:RCSsportオローパ麓のヴァルデンゴから東に向かい、大都市ミラノの北側をかすめるようにしてロンバルディア州のベルガモへ。休息日前の日曜日に特大の山岳ステージを設定するのが通例だが、主催者はフィニッシュ直前にベルガモ旧市街を通過するお馴染みのレイアウトをもってきた。

残り50kmを切ってから登場する2級山岳ミラコロ・サンサルヴァトーレ(全長8.7km/平均7%)と3級山岳セルヴィーノ(全長6.9km/平均5.4km)でセレクションがかかった状態で、残り5.2km地点から始まるベルガモ旧市街の登りにアタック。平均7.9%/最大12%というパンチの効いた登りは長さこそ1km強だが、細く曲がりくねり、しかも丸石が敷き詰められた箇所もある。残り3.5km地点でピークを迎えるとそこからベルガモ新市街に向かってダウンヒル。この「イル・ロンバルディア」を彷彿とさせる中級山岳ステージはアタッカーたちのモチベーションを上げた。

ずばり逃げ向きのステージは猛烈なスピードで幕開ける。13km地点でヤン・バルタ(チェコ、ボーラ・ハンスグローエ)、モレノ・ホフラント(オランダ、ロット・ソウダル)、ドリス・デヴェナインス(ベルギー、クイックステップフロアーズ)、ジェレミー・ロワ(フランス、エフデジ)、エルゲルト・ズパ(アルバニア、ウィリエール・トリエスティーナ)という5名が飛び出してからも、逃げに選手を送り損ねたチームの集団牽引によってスピードが落ちない。タイム差30秒前後をキープしたまま高速走行を続けた結果、最初の1時間の平均スピードは51.800km/hに達している。

主にキャノンデール・ドラパックによる集団牽引によってその後もタイム差は広がらず、ちょうどステージ折り返しの100km地点で逃げグループは吸収される(2時間の平均スピードは50.450km/h)。逃げ吸収と同時に新たなアタック合戦が始まり、マリアチクラミーノを着るフェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ)のアタックをきっかけに10名が飛び出した。

ガビリア、シルヴァン・ディリエ(スイス、BMCレーシング)、ルディ・モラール(フランス、エフデジ)、エフゲニー・シャルノフ(ロシア、ガスプロム・ルスヴェロ)、ジャック・ヤンセファンレンズバーグ(南アフリカ、ディメンションデータ)、エンリコ・バッタリーン(イタリア、ロットNLユンボ)、エンリーコ・バルビン(イタリア、バルディアーニCSF)、フィリップ・ダイグナン(アイルランド、チームスカイ)、シモーネ・ペティッリ(イタリア、UAEチームエミレーツ)、フレン・アメスケタ(スペイン、ウィリエール・トリエスティーナ)が抜け出したところで、ようやく、スタートから2時間以上108kmにわたって続いたアタック合戦が終わりを迎えた。

アルプス山脈を背にメイン集団が高速で進むアルプス山脈を背にメイン集団が高速で進む
チームメイトに守られて走るマリアローザのトム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)チームメイトに守られて走るマリアローザのトム・デュムラン(オランダ、サンウェブ) 2級山岳ミラコロ・サンサルヴァトーレを登るプロトン2級山岳ミラコロ・サンサルヴァトーレを登るプロトン
逃げるフィリップ・ダイグナン(アイルランド、チームスカイ)やジャック・ヤンセファンレンズバーグ(南アフリカ、ディメンションデータ)逃げるフィリップ・ダイグナン(アイルランド、チームスカイ)やジャック・ヤンセファンレンズバーグ(南アフリカ、ディメンションデータ)
逃げグループ内の総合最高位は総合19位/16分02秒遅れのペティッリ。つまりマリアローザを保持するサンウェブにとっては10分程度のタイム差で10名の逃げ切りが決まっても問題無いが、オリカ・スコットがすぐさま集団コントロールを開始したためタイム差は2分35秒を上限に縮小する。

2級山岳ミラコロ・サンサルヴァトーレの登りが始まると、中間スプリントでポイントを稼ぐ役目を終えたガビリアをはじめ多くの選手が逃げグループから脱落。先頭はダイグナン、ヤンセファンレンズバーグ、モラールの3名に絞られた状態で頂上を越えていく。1分未満のタイム差で追うメイン集団からはピエール・ロラン(フランス、キャノンデール・ドラパック)とルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ)がアタックし、先頭3名の追走を開始した。

続く3級山岳セルヴィーノに向かう下り区間で総合2位のナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)が落車。バイクを交換して再スタートしたキンタナの復帰を待つため、「こんな形でリードを広げたくない」というマリアローザのトム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)は集団のペースダウンを指示した。キンタナは2度のバイク交換を経て集団に復帰している。

3級山岳セルヴィーノの登りが始まると先頭3名にLLサンチェスとロランが合流し、オリカ・スコット率いるメイン集団から40秒先行して頂上をクリアする。ベルガモの街に向かうテクニカルな下りでは落車が多発。ケニー・エリッソンド(フランス、チームスカイ)やダヴィデ・フォルモロ(イタリア、キャノンデール・ドラパック)がスイッチバックで地面に叩きつけられている。その後の平坦区間では、中央分離帯の標識に衝突する形でタネル・カンゲルト(エストニア、アスタナ)が激しくクラッシュ。総合7位カンゲルトはリタイアを余儀なくされた。

残り5kmを切り、丸石が敷かれたベルガモアルタの登りが始まってすぐ、バーレーン・メリダ率いるメイン集団が逃げグループを吸収する。最後まで粘ったロランが捕らえられると、間髪入れずにマリアビアンカのユンゲルスがアタックを仕掛けた。

石畳坂を抜け、緩斜面をハイスピードで突っ走ったユンゲルスにはヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)やドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼール)が反応し、マリアローザのデュムランを引き離した状態でベルガモアルタをクリアして残り3km。デュムランらはユンゲルスやニーバリらに追いつき、総合上位陣を含む精鋭12名が先頭グループを形成してベルガモの街にやってきた。

バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)が集団先頭をひた走り、緩い下り基調の最終ストレートでスプリントが始まる。キンタナやティボー・ピノ(フランス、エフデジ)もステージ優勝を狙って加速したが、マリアビアンカのユンゲルスのスプリントが伸びた。

メイン集団を牽引するオリカ・スコットメイン集団を牽引するオリカ・スコット メイン集団からアタックしたピエール・ロラン(フランス、キャノンデール・ドラパック)メイン集団からアタックしたピエール・ロラン(フランス、キャノンデール・ドラパック)
ベルガモ・アルタでアタックするボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ)ベルガモ・アルタでアタックするボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ) ベルガモ・アルタでアタックするヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)ベルガモ・アルタでアタックするヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)
12名でのスプリントで先頭に出るボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ)12名でのスプリントで先頭に出るボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ)
大きく両手を広げてフィニッシュしたユンゲルスは「現実のものとして受け入れるのに時間がかかりそうだけど、この勝利をとても嬉しく思う。最後の(ベルガモアルタの)登りで仕掛けたものの、予想より長かった。最後はポッツォヴィーヴォの後ろから仕掛ける形でスプリント。これがスプリント初勝利であり、トップライダーたちと勝利を争うこの感触は最高だ」と語る。ボーナスタイム10秒獲得でマリアビアンカのリード拡大に成功している。

デュムランはライバルたちからタイムを失うことなくステージ8位でフィニッシュした。「平均スピードがとても速い(46.486km/h)ハードな1日だった。最終的にライバルたちがアタックを連発させたものの、危機を迎えることなく常に落ち着いていたし、良い1日だったと思う」と語るデュムランは、ステージ2位でボーナスタイム6秒獲得のキンタナから2分41秒のリードで大会最後の休息日を迎える。

スプリントを制したボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ)スプリントを制したボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ)
スプマンテを開けるボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ)スプマンテを開けるボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ) 危なげなくマリアローザを守って休息日を迎えるトム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)危なげなくマリアローザを守って休息日を迎えるトム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)




ジロ・デ・イタリア2017第15ステージ結果
1位 ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ)     4h16'51"
2位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)
3位 ティボー・ピノ(フランス、エフデジ)
4位 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット)
5位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼール)
6位 パトリック・コンラッド(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ)
7位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)
8位 トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)
9位 イルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン)
10位 バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)
11位 ヤン・ポランツェ(スロベニア、UAEチームエミレーツ
12位 ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ロットNLユンボ)
DNF タネル・カンゲルト(エストニア、アスタナ)

マリアローザ 個人総合成績
1位 トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)                63h48'08"
2位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)                +2'41"
3位 ティボー・ピノ(フランス、エフデジ)                   +3'21"
4位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)        +3'40"
5位 イルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン)         +4'24"
6位 バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)            +4'32"
7位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼール)     +4'59"
8位 ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ)      +5'18"
9位 アンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター)             +6'01"
10位 ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ロットNLユンボ)        +7'03"

マリアチクラミーノ ポイント賞
1位 フェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ)     325pts
2位 ジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)      192pts
3位 サム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ)          117pts

マリアアッズーラ 山岳賞
1位 トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)                 51pts
2位 オマール・フライレ(スペイン、ディメンションデータ)           49pts
3位 ヤン・ポランツェ(スロベニア、UAEチームエミレーツ)           46pts

マリアビアンカ ヤングライダー賞
1位 ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ)     63h53'26"
2位 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット)              +2'25"
3位 ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、キャノンデール・ドラパック)       +2'51"

チーム総合成績
1位 モビスター           191h44'22"
2位 アスタナ              +5'52"
3位 UAEチームエミレーツ        +20'19"

text&photo:Kei Tsuji in Bergamo, Italy

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