テクニカルな連続コーナーを抜け、世界遺産の町アルベロベッロの中心部に向かって突き進んだスプリンターたち。3名横並びの接戦スプリントでカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)が初勝利を飾った。



先頭でスタートしていく俳優のパトリック・デンプシーやマリアローザのボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ)先頭でスタートしていく俳優のパトリック・デンプシーやマリアローザのボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ) photo:Kei Tsuji / TDWsport
ジロ・デ・イタリア2017第7ステージジロ・デ・イタリア2017第7ステージ image:RCSsportカラブリア州からプーリア州まで224kmかけて走る長い一日。中盤までひたすら平坦な幹線道路(ほぼ高速道路)で、残り90kmを切ってからコースは少し登り基調となる。4級山岳ボスコ・デッレ・ピアネッレ(全長4.9km/平均3.6%)を含むアップダウンがあるものの、すでに残りの平坦ステージが少なくなっている今、スプリンターチームがステージ優勝のチャンスを逃すはずはなかった。

駆けつけた俳優パトリック・デンプシーを先頭にニュートラル区間を走り、正式なスタートが切られるとすぐにシモーネ・ポンツィ(イタリア、CCCスプランディ・ポルコウィチェ)、ドミトリ・コゾンチュク(ロシア、ガスプロム・ルスヴェロ)、ジュゼッペ・フォンツィ(イタリア、ウィリエール・トリエスティーナ)という3名が逃げグループを形成。瞬く間にタイム差は3分台に乗る。

単調な直線道路に差し掛かるとポンツィがメカトラによって脱落し、先頭はコゾンチュクとフォンツィの2人に。向かい風が吹いていたわけでもないが、レースは平均スピード40km/h強のまったりとした進行を見せ、タイム差は長時間にわたって4分前後で推移した。

逃げるジュゼッペ・フォンツィ(イタリア、ウィリエール・トリエスティーナ)ら3名逃げるジュゼッペ・フォンツィ(イタリア、ウィリエール・トリエスティーナ)ら3名 photo:Kei Tsuji / TDWsport
オリカ・スコットとロット・ソウダル、クイックステップフロアーズが集団を牽引するオリカ・スコットとロット・ソウダル、クイックステップフロアーズが集団を牽引する photo:Kei Tsuji / TDWsportボトル運びに勤しむフランコ・ペリツォッティ(イタリア、バーレーン・メリダ)ボトル運びに勤しむフランコ・ペリツォッティ(イタリア、バーレーン・メリダ) photo:Kei Tsuji / TDWsport
逃げを見送ったメイン集団がダウンヒル逃げを見送ったメイン集団がダウンヒル photo:Kei Tsuji / TDWsport
優勝候補のスプリンターを抱えるオリカ・スコット、ロット・ソウダル、クイックステップフロアーズがメイン集団の先頭を固め、レース後半にかけてタイム差を詰める作業に取り掛かる。2つあるスプリントポイントはいずれもコゾンチュクが手にし、マリアチクラミーノを着るフェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ)がしっかりと集団先頭通過。ガビリアはポイント賞争いで追いすがるジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)を引き離した。

残り50kmを切ってペースアップが始まったメイン集団は残り18km地点で早くも逃げを吸収。コゾンチュクとフォンツィが206kmにわたる逃げに終止符を打つと、そこから先はスプリンターチームの独壇場となる。残り4km地点で飛び出したクリスティアン・コレン(スロベニア、キャノンデール・ドラパック)も引き戻された。

総合エースを守りたいチームスカイやモビスターといった総合系チームが先頭を固めてアルベロベッロをぐるりと回る周回コースに入り、残り2kmまでヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ、チームスカイ)が長時間高速牽引。キリエンカの牽引が終わるとオリカ・スコットとボーラ・ハンスグローエがリードアウトトレインを組んで先頭に立った。

ゆったりとしたメイン集団が海沿いの城を通過するゆったりとしたメイン集団が海沿いの城を通過する photo:Kei Tsuji / TDWsport
逃げるジュゼッペ・フォンツィ(イタリア、ウィリエール・トリエスティーナ)とドミトリ・コゾンチュク(ロシア、ガスプロム・ルスヴェロ)逃げるジュゼッペ・フォンツィ(イタリア、ウィリエール・トリエスティーナ)とドミトリ・コゾンチュク(ロシア、ガスプロム・ルスヴェロ) photo:Kei Tsuji / TDWsportレース終盤は総合系チームも集団前方に上がって位置取りレース終盤は総合系チームも集団前方に上がって位置取り photo:Kei Tsuji / TDWsport
トゥルッロを通過するマリアローザのボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ)トゥルッロを通過するマリアローザのボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ) photo:Kei Tsuji / TDWsport
連続コーナーや道幅の減少によって縦に伸びたメイン集団が残り1kmアーチを駆け抜ける。ルーカス・ペストルベルガー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ)、ルカ・メズゲッツ(スロベニア、オリカ・スコット)、カレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)、アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)の順で残り700mの最終コーナーを抜け、フィニッシュラインまでの緩斜面に突入する。

ペストルベルガーが力尽きるとオリカ・スコットのメズゲッツがユアンのために最後のリードアウトを開始し、その横にリュディガー・ゼーリッヒ(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)がサム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ)を連れてポジションアップ。ベネットのスプリント開始を察したユアンが真っ先に仕掛けた。

緩やかに左右にうねる最終ストレートでコーナーのイン側を突き進んだユアン。ベネットとガビリアが追い上げたものの、最短ラインを走るユアンには届かない。ハンドルを投げ込むベネットとガビリアを振り切って、ホイール半分の差でユアンが先着した。

先頭で最終コーナーを抜けるカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)先頭で最終コーナーを抜けるカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット) photo:Kei Tsuji / TDWsport
サム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ)とフェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ)を振り切るカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)サム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ)とフェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ)を振り切るカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット) photo:Kei Tsuji / TDWsport
横並びでフィニッシュするサム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ)、カレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)、フェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ)横並びでフィニッシュするサム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ)、カレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)、フェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ) photo:Kei Tsuji / TDWsport

「残念な結果が続いていたので最高の気分。最後は混沌としたスプリントで、残り3kmの時点でかなり後方に沈んでしまっていた。でも焦ることなく隊列を組み直し、そこからチームメイトたちが完璧なリードアウトをしてくれた」。ユアンは2015年のブエルタ・ア・エスパーニャでステージ優勝を経験しているが、ジロ・デ・イタリアではこれがステージ初優勝。ガビリアと同じ22歳の弾丸スプリンターがイタリアの地でつかんだ初の金星を喜んだ。

「フィニッシュ手前はクレイジーな位置取りが繰り広げられたけど、安全にフィニッシュするためにポジションを落とすわけにはいかなかった」というボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ)はしっかりとステージ21位でフィニッシュラインを切り、タイムを失うことなくマリアローザを守っている。

後続を大きく引き離したカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)ら3名後続を大きく引き離したカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)ら3名 photo:Kei Tsuji / TDWsport
ステージ初優勝を飾ったカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)ステージ初優勝を飾ったカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット) photo:Kei Tsuji / TDWsport


ジロ・デ・イタリア2017第7ステージ結果
1位 カレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)          5h35'18"
2位 フェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ)
3位 サム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ)
4位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)
5位 ジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)
6位 ライアン・ギボンズ(南アフリカ、ディメンションデータ)
7位 エンリコ・バッタリーン(イタリア、ロットNLユンボ)             +12"
8位 リュディガー・ゼーリッヒ(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)
9位 アレクセイ・ツァテヴィツク(ロシア、ガスプロム・ルスヴェロ)
10位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)

マリアローザ 個人総合成績
1位 ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ)     33h56'07"
2位 ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)                 +06"
3位 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット)                +10"
4位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)
5位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼール)
6位 トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)
7位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)
8位 バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)
9位 アンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター)
10位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)

マリアチクラミーノ ポイント賞
1位 フェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ)     191pts
2位 ジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)      160pts
3位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)             129pts

マリアアッズーラ 山岳賞
1位 ヤン・ポランツェ(スロベニア、UAEチームエミレーツ)           43pts
2位 ダニエル・テクレハイマノ(エリトリア、ディメンションデータ)       23pts
3位 イルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン)         18pts

マリアビアンカ ヤングライダー賞
1位 ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ)     33h56'07"
2位 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット)               +10"
3位 ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、キャノンデール・ドラパック)

チーム総合成績
1位 UAEチームエミレーツ      101h49'02"
2位 キャノンデール・ドラパック      +04"
3位 モビスター              +27"

text&photo:Kei Tsuji in Alberobello, Italy