サルデーニャ最終日のジロ・デ・イタリア第3ステージ。残り12km地点から始まった横風区間で集団が割れ、人数を揃えて有利にレースを展開したクイックステップフロアーズがフェルナンド・ガビリア(コロンビア)を初勝利に導いた。


ジロ・デ・イタリア第3ステージは港町アルバタクスをスタートジロ・デ・イタリア第3ステージは港町アルバタクスをスタート photo:Kei Tsuji / TDWsport

ジロ・デ・イタリア2017第3ステージジロ・デ・イタリア2017第3ステージ image:RCSsportサルデーニャ最終日は平穏な1日になるはず、だった。コース全長は200kmオーバーのステージが続いた開幕2日間と比べるとずっと短い148kmで、サルデーニャ島の東海岸に沿って走るため起伏は少ない。終盤は人口15万人を有するサルデーニャ自治州の州都カリアーリのローマ通りに向かってひたすら幹線道路が続くため、シンプルなスプリンターステージになると思われたが、残り12kmから始まる横風区間がレースを大きく動かすことになった。

前日のフィニッシュ地点トルトリをスタートしてすぐ、クリスティアン・ズバラーリ(イタリア、ディメンションデータ)、ヤン・トラトニク(スロベニア、CCCスプランディ・ポルコウィチェ)、イヴァン・ロフニー(ロシア、ガスプロム・ルスヴェロ)、エルゲルト・ズパ(アルバニア、ウィリエール・トリエスティーナ)の4名が先行を開始する。

逃げに乗ったズバラーリは2015年ブエルタ・ア・エスパーニャでステージ優勝を飾っているスプリンターで、今大会第1ステージ6位、第2ステージ5位という成績を残している。総合でもアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)から14秒差の総合7位と危険な存在。そんなズバラーリにはフィニッシュまで逃げ切る意志はなかった。ズバラーリは中間スプリントを先頭通過し、20ポイント獲得&ボーナスタイム3秒獲得、さらにダニエル・テクレハイマノ(エリトリア、ディメンションデータ)の中間スプリント賞トップキープという目標を達成するとメイン集団に戻った。

前半はひたすら道幅のある幹線道路が続く前半はひたすら道幅のある幹線道路が続く photo:Kei Tsuji / TDWsport
マリアビアンカを着るルーカス・ペストルベルガー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ)マリアビアンカを着るルーカス・ペストルベルガー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ) photo:Kei Tsuji / TDWsport逃げるエルゲルト・ズパ(アルバニア、ウィリエール・トリエスティーナ)ら3名逃げるエルゲルト・ズパ(アルバニア、ウィリエール・トリエスティーナ)ら3名 photo:Kei Tsuji / TDWsport
ロット・ソウダルがメンバー全員でメイン集団を牽引ロット・ソウダルがメンバー全員でメイン集団を牽引 photo:Kei Tsuji / TDWsport

最大3分まで広がったタイム差はマリアローザ擁するロット・ソウダルのコントロールによって1分台に押さえ込まれる。やがて、4級山岳サンパンタレオ(全長3.2km/平均5.6%/最大12%)を越え、カリアーリに向かって西に進路をとると強い向かい風が吹き始めた。

進行方向からの強風は逃げグループに味方せず、風を警戒するメイン集団によって残り25km地点で早くも吸収される。チームスカイやモビスターといった総合系チームが先頭に陣取って、向かい風の中を突き進んだメイン集団。2日連続でイルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン)がメカトラに見舞われたが、この日はタイムを失うことなく集団に復帰している。

激しい位置取りの末に突入した残り12km地点のロータリー後に状況は一変する。進行方向が南に変わるとともに右側から強い風が吹き付けると、クイックステップフロアーズ主導のペースアップがスタート。ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ)らが横風区間で攻撃を仕掛けると、メイン集団はエシュロンを形成しながら分裂していった。

美しい海が広がるサルデーニャ島南部を走る美しい海が広がるサルデーニャ島南部を走る photo:Kei Tsuji / TDWsport
メカトラで遅れたイルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン)が集団復帰を目指すメカトラで遅れたイルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン)が集団復帰を目指す photo:Kei Tsuji / TDWsport落車したローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)落車したローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング) photo:Kei Tsuji / TDWsport
残り12kmから始まる横風区間でエシュロンが形成残り12kmから始まる横風区間でエシュロンが形成 photo:Kei Tsuji / TDWsport

先頭で形成された10名のグループの中にクイックステップフロアーズは6名(ユンゲルス、ガビリア、リケーゼ、マルティネッリ、ケイセ、カペッキ)を送り込むことに成功。圧倒的な人数でローテーションを回し始めると後続とのタイム差がぐんぐんと広がっていく。マリアローザのアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)は単独でのブリッジを試みたが、結局は追走集団に戻らざるをえなかった。

先行する10名の先頭グループの中にはジャコモ・ニッツォーロ(イタリア、トレック・セガフレード)やネイサン・ハース(オーストラリア、ディメンションデータ)らの姿も。対する追走集団は50名ほどに人数を増やしたがタイム差は縮まらない。クイックステップフロアーズは力尽きたメンバーを失いながらも先頭グループをリードし続け、最終的に7名によるスプリントに持ち込むことに成功した。

フィニッシュまで距離を残してハースがロングスパートを仕掛け、追撃したマキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン)の後ろからガビリアが発進する。一気に先頭に立った2度のトラックオムニアム世界チャンピオンに、リュディガー・ゼーリッヒ(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)やニッツォーロの追い上げは届かなかった。

フェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ)の後ろではリケーゼが勝利を確信フェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ)の後ろではリケーゼが勝利を確信 photo:Kei Tsuji / TDWsport
ステージ初優勝を飾ったフェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ)ステージ初優勝を飾ったフェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ) photo:Kei Tsuji / TDWsport

グランツール初出場のガビリアが手にした初のステージ優勝。そればかりか、ガビリアは13秒遅れでフィニッシュしたグライペルからマリアローザを奪うことにも成功した。「どのチームも風向きが変わることを分かっていたけど、横風区間でのアタックは予定していなかった。集団前方に位置することを心がけていたら集団が分裂。強力なチームメイトたちが前に揃っていたので主導権を握ることができた。クイックステップフロアーズは6名も先頭集団に残していたんだ」。表彰台でシャンパンを頭からかぶったガビリアはチームの強さを強調した。

「チームワークの成果なので最高の気分。1回目の休息日までにステージ優勝するという目標は達成。今日はとにかく強力なチームメイトたちの全開走行で勝負が決まった。最初の2日間は脚の反応が悪かったので、申し訳ない気持ちでいっぱいだった。この勝利でようやくチームの働きが報われたよ」。今シーズン5勝目を飾ったガビリアはマリアビアンカも同時に獲得。総合リーダーの座についてサルデーニャ島の3日間を終えたガビリアは、マリアローザを着てシチリア島での休息日を迎えることになる。

グランツール初出場のフェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ)が勝利グランツール初出場のフェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ)が勝利 photo:Kei Tsuji / TDWsportマリアローザに袖を通すフェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ)マリアローザに袖を通すフェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ) photo:Kei Tsuji / TDWsport
豪快にシャンパンを開けるフェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ)豪快にシャンパンを開けるフェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ) photo:Kei Tsuji / TDWsport


ジロ・デ・イタリア2017第3ステージ結果
1位 フェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ)   3h26'33"
2位 リュディガー・ゼーリッヒ(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)
3位 ジャコモ・ニッツォーロ(イタリア、トレック・セガフレード)
4位 ネイサン・ハース(オーストラリア、ディメンションデータ)
5位 マキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン、クイックステップフロアーズ)
6位 カンスタンティン・シウツォウ(ベラルーシ、バーレーン・メリダ)      +03"
7位 ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ)
8位 カレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)           +13"
9位 サーシャ・モードロ(イタリア、UAEチームエミレーツ)
10位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)

マリアローザ 個人総合成績
1位 フェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ)   14h45'16"
2位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)             +09"
3位 ルーカス・ペストルベルガー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ)    +13"
4位 ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ)
5位 カンスタンティン・シウツォウ(ベラルーシ、バーレーン・メリダ)
6位 カレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)           +17"
7位 ロベルト・フェラーリ(イタリア、UAEチームエミレーツ)
8位 ライアン・ギボンズ(南アフリカ、ディメンションデータ)          +23"
9位 エンリコ・バッタリーン(イタリア、ロットNLユンボ)
10位 サーシャ・モードロ(イタリア、UAEチームエミレーツ)

マリアチクラミーノ ポイント賞
1位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)             81pts
2位 ダニエル・テクレハイマノ(エリトリア、ディメンションデータ)       74pts
3位 フェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ)     72pts

マリアアッズーラ 山岳賞
1位 ダニエル・テクレハイマノ(エリトリア、ディメンションデータ)       20pts
2位 チェザーレ・ベネデッティ(イタリア、ボーラ・ハンスグローエ)       9pts
3位 オマール・フライレ(スペイン、ディメンションデータ)           8pts

マリアビアンカ ヤングライダー賞
1位 フェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ)   14h45'16"
2位 ルーカス・ペストルベルガー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ)    +13"
3位 ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ)

チーム総合成績
1位 クイックステップフロアーズ   44h16'21"
2位 ボーラ・ハンスグローエ        +23"
3位 バーレーン・メリダ          +26"

text&photo:Kei Tsuji in Cagliari, Italy
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