マリアローザ獲得を狙うスプリンターたちの野望を25歳の元オーストリアチャンピオンが打ち砕いた。中切れによって一人飛び出した発射台役のルーカス・ペストルベルガー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ)が残り1kmを独走。ジロ・デ・イタリアの初日にプロ初勝利とマリアローザを獲得した。



青い海のサルデーニャ島北部を走る青い海のサルデーニャ島北部を走る photo:Kei Tsuji / TDWsport
ジロ・デ・イタリア2017第1ステージジロ・デ・イタリア2017第1ステージ image:RCSsportジロ第1ステージはサルデーニャ島を時計回りに半周する206km。残り21km地点の4級山岳サンパンタレオ(全長3.2km/平均5.6%/最大12%)を含めて合計3つの4級山岳が設定されているが、スプリンターが脱落してしまうような難易度ではない。

2週間前に事故死を遂げたミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アスタナ)に捧げる1分間の黙祷を経て、アスタナを先頭にアルゲーロの街をスタートしていった。スタートを切ったのは前夜にドーピング陽性が発覚したステファノ・ピラッツィとニコラ・ルッフォニ(イタリア、バルディアーニCSF)を除く195名の選手たち。旧市街地を抜け、幹線道路に入ってニュートラルゾーンが終わるとともに今大会最初のアタックがかかった。

逃げグループを形成したのはエルゲルト・ズパ(アルバニア、ウィリエール・トリエスティーナ)、ダニエル・テクレハイマノ(エリトリア、ディメンションデータ)、パヴェル・ブラット(ロシア、ガスプロム・ルスヴェロ)、マルチン・ビアロブロツキー(ポーランド、CCCスプランディ・ポルコウィチェ)、チェザーレ・ベネデッティ(イタリア、ボーラ・ハンスグローエ)、ミルコ・マエストリ(イタリア、バルディアーニCSF)という面子。すべてのUCIプロコンチネンタルチームが逃げに選手を送り込むことに成功し、メイン集団はUCIワールドチームが前を塞ぐ形でペースダウン。逃げ6名とのタイム差は7分まで一気に拡大した。

アルゲーロの町をスタートしていく選手たちアルゲーロの町をスタートしていく選手たち photo:Kei Tsuji / TDWsport海沿いのアップダウンを進む逃げグループ海沿いのアップダウンを進む逃げグループ photo:Kei Tsuji / TDWsport
サルデーニャ島北部の幹線道路を走るサルデーニャ島北部の幹線道路を走る photo:Kei Tsuji / TDWsport
大会初日に逃げて山岳ポイントを稼ぐことができればマリアアッズーラ(山岳賞ジャージ)着用のチャンス。1つ目の4級山岳ムルテデュでは山頂フィニッシュさながらのアタック合戦が繰り広げられ、アルバニアチャンピオンのズパを振り切ったベネデッティが先頭通過する。2つ目のトリニタ・ダグルトゥではテクレハイマノが頂上まで距離を残して独走に持ち込んだが、追い上げたベネデッティがここも先頭で通過。

こうしてマリアアッズーラ争いを繰り広げる逃げグループの後ろでは、オリカ・スコット、ロット・ソウダル、クイックステップフロアーズ率いるメイン集団が淡々とタイム差を詰めていった。向かい風の影響でレース進行ペースは遅め。マエストリの脱落によって5名になった逃げグループは3分前後のリードで残り94km地点の補給ポイント通過していく。

スプリンターチームが支配的なコントロールを見せる中、せめて残り21km地点の4級山岳サンパンタレオまでは逃げたい5名がローテーションを回し、2分半のリードで残り50kmアーチを駆け抜ける。しかしスプリンターチームは慎重で、細かいアップダウンのある海岸に近いワインディングロードを進むうちにタイム差は1分台に突入した。

最後の4級山岳サンパンタレオもベネデッティの手に収まり、45秒後方に迫ったメイン集団はオルビアの町に向かってスピードを上げる。賑やかな町中の大声援に押されるように逃げグループは粘りを見せたが、フルメンバー&フレッシュなスプリンターチームは残り4km地点で逃げを飲み込んだ。

海に近いアップダウンをこなしていく海に近いアップダウンをこなしていく photo:Kei Tsuji / TDWsport
逃げるダニエル・テクレハイマノ(エリトリア、ディメンションデータ)ら逃げるダニエル・テクレハイマノ(エリトリア、ディメンションデータ)ら photo:Kei Tsuji / TDWsport下りを走るカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)下りを走るカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット) photo:Kei Tsuji / TDWsport
ロット・ソウダルやクイックステップフロアーズ、オリカ・スコットがメイン集団を牽引ロット・ソウダルやクイックステップフロアーズ、オリカ・スコットがメイン集団を牽引 photo:Kei Tsuji / TDWsport
逃げを吸収して一塊となった集団だったが、残り3kmを前にした直角コーナーで落車が発生する。急激に道幅が狭まった右直角コーナーでシルヴァン・ディリエ(スイス、BMCレーシング)を含む数名が落車し、足止めを食らったステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ロットNLユンボ)がタイムを失う事態に。落車発生地点がフィニッシュから3km以上離れていたため救済措置は取られず、クライスヴァイクは初日から13秒を失っている。

その後も連続コーナーや石畳区間で集団は縦一列棒状に伸び、UAEチームエミレーツとボーラ・ハンスグローエ、オリカ・スコットが人数を残してリードアウトを開始する。残り2km地点のコーナーを抜けて先頭に出たのが、サム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ)のリードアウト役を担ったボーラ・ハンスグローエのペストルベルガーだった。

リードアウトのつもりでハイスピード巡航を開始したペストルベルガーの後ろからオリカ・スコットのトレインが離れていく。「今日はサム(ベネット)のために列車を組んで町中で先頭に出た。すると、後ろの選手が中切れを起こしたのか、突然自分の後ろにギャップが生まれたんだ。その瞬間、無線を通して『行け!ルーカス、行け!』という声が聞こえた」というペストルベルガーが、振り返って後続との距離を確認したのち、前を見て踏み始めた。

スプリンターではなく、TT系オールラウンダーとして知られる25歳のペストルベルガーが独走を開始。オリカ・スコットが引き続き集団を率いたが、ペストルベルガーのチームメイト2名がその後ろについてローテーションを阻止する。完全に集団から抜け出したペストルベルガーはブラケットから手を離し、手首をハンドル上部に置くTTポジションでハイスピードを維持した。ウルティモキロメトロ(残り1km)アーチを過ぎ、スピードをつないでいくつかのコーナーをクリアしたペストルベルガーが集団を引き離したまま最終ストレートにやってくる。カレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)やアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)が後方からロケットのように迫り来る中、ペストルベルガーがフィニッシュライン手前で両手を広げる。驚きの表情を浮かべながら、オルビアの大声援を独り占めした。

スプリンターたちを振り切ったルーカス・ペストルベルガー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ)スプリンターたちを振り切ったルーカス・ペストルベルガー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ) photo:Kei Tsuji / TDWsport
2012年に20歳の若さでオーストリアチャンピオンに輝いたペストルベルガーは2016年にボーラでプロ入り。2017年のE3ハーレルベーケで5位に入っている。初出場のグランツールの初日に勝利を飾るとともに、マリアローザまで手に入れた。

「プロ初勝利が初めてのグランツールの初日にやってくるなんて。この事実を理解するのに時間がかかりそうだ」。声援に感謝するポーズを見せながら、ペストルベルガーは表彰台でマリアローザ、マリアチクラミーノ、マリアビアンカを受け取った。マリアアッズーラはベネデッティが手にしており、ボーラ・ハンスグローエが4賞ジャージを総なめする結果となった。

マリアローザを獲得したルーカス・ペストルベルガー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ)マリアローザを獲得したルーカス・ペストルベルガー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ) photo:Kei Tsuji / TDWsport


ジロ・デ・イタリア2017第1ステージ結果
1位 ルーカス・ペストルベルガー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ)  5h13'35"
2位 カレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)
3位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)
4位 ジャコモ・ニッツォーロ(イタリア、トレック・セガフレード)
5位 サーシャ・モードロ(イタリア、UAEチームエミレーツ)
6位 クリスティアン・ズバラーリ(イタリア、ディメンションデータ)
7位 ジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)
8位 ライアン・ギボンズ(南アフリカ、ディメンションデータ)
9位 サム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ)
10位 フィル・バウハウス(ドイツ、サンウェブ)

マリアローザ 個人総合成績
1位 ルーカス・ペストルベルガー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ)  5h13'25"
2位 カレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)           +04"
3位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)             +06"
4位 パヴェル・ブラット(ロシア、ガスプロム・ルスヴェロ)           +08"
5位 ジャコモ・ニッツォーロ(イタリア、トレック・セガフレード)        +10"
6位 サーシャ・モードロ(イタリア、UAEチームエミレーツ)
7位 クリスティアン・ズバラーリ(イタリア、ディメンションデータ)
8位 ジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)
9位 ライアン・ギボンズ(南アフリカ、ディメンションデータ)
10位 サム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ)

マリアチクラミーノ ポイント賞
1位 ルーカス・ペストルベルガー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ)    50pts
2位 カレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)           35pts
3位 ダニエル・テクレハイマノ(エリトリア、ディメンションデータ)       32pts

マリアアッズーラ 山岳賞
1位 チェザーレ・ベネデッティ(イタリア、ボーラ・ハンスグローエ)       9pts
2位 エルゲルト・ズパ(アルバニア、ウィリエール・トリエスティーナ)      4pts
3位 ダニエル・テクレハイマノ(エリトリア、ディメンションデータ)       3pts

マリアビアンカ ヤングライダー賞
1位 ルーカス・ペストルベルガー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ)  5h13'25"
2位 カレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)           +04"
8位 ジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)      +10"

チーム総合成績
1位 ボーラ・ハンスグローエ     15h40'45"
2位 トレック・セガフレード
3位 UAEチームエミレーツ

text&photo:Kei Tsuji in Olbia, Italy
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