開催わずか2年で関西CXに次ぐ人気を集めた東海シクロクロスシリーズ。最終戦となる愛知県稲沢市祖父江砂丘ワイルドネイチャープラザでの第7戦。ホット&アットホームな大会の人気の秘密を探ってみた。
砂丘の最上部へ駆け上がる選手たちは息も絶え絶えだ photo:Makoto.AYANO
砂丘の下りを乗車でチャレンジ! photo:Makoto.AYANOシリーズ全7戦で開催された東海シクロクロス2016〜17。最終戦の舞台となったのは、「日本のコクサイデ」と異名をとる祖父江砂丘ワイルドネイチャープラザ。名古屋市街の郊外にあたる河畔型砂丘だ。まずはそのレースレポートからお伝えする。
深い砂にタイヤをとられて思わずスタック photo:Makoto.AYANO砂丘を利用したユニークなコースで一躍有名になったこの会場。日本に河畔型砂丘は3箇所しかないと言われるが、他の2つは現在は草が繁ってしまっているとのことで、実際のところはこの祖父江砂丘が日本唯一のものとなっているのだとか。地形学的にも非常に貴重な自然公園だが、なんと自転車が走ることで草が繁るのを防ぎ、現在の状態を維持することに役立っているとのことで管理事務所の全面的なバックアップを得て開催しているのだという。
シクロクロスのW杯が開催されるベルギーの砂丘コースになぞらえ「日本のコクサイデ」と呼ばれるこのコースは、その8割ほどが砂路面となり、独特の走行テクニックが試される。それが観ていても非常に面白く、出場するにも観戦するにも人気の会場となっている。今回はいつもの逆回りコースとなり、乗車率は著しく上がったという。
砂丘を駆け上がる選手たち。上手い人は中腹まで乗車できる photo:Makoto.AYANO
C1のスタート。好スタートを切ったのは岩田祐樹(team36隊/cyclespeceHalo) photo:Makoto.AYANO全日本選手権やシクロクロス東京など花形大会も終わり、シーズン最終盤となるため有力選手はすでにオフに入っているものの、この最終戦には461人の参加者が集まった。
川村誠(スクミズマシンワークス)がトップにたつ photo:Makoto.AYANO最高峰C1は、ホールショットをとった岩田祐樹(team36隊/cyclespeceHalo)、川村誠(スクミズマシンワークス)、山中真(MilePost BMC Racimg)の3人の上位争いになった。
元気よく先行した岩田に山中がジョインし、テール・トゥ・ノーズのランデブーを開始。しかし全8周のうち3周を終え、レースも半分を残す頃、遅れて3位を走っていた川村が突如ペースを取り戻し、ふたりに追いつく。しばし三つ巴で走ったが、4周を終える頃に河村はさらに加速し、独走状態に入った。川村はけっきょくそのまま逃げ切り優勝。関西、四国で2週連続優勝していた川村はこれで3連勝を飾った。関西シクロクロスを総合ランキング3位で終えており、この東海でも総合3位に。
マスターズM1で初代日本チャンプの大原満が優勝!
この日のニュースは最終レースのマスターズM1で大原満が優勝したことだろう。愛三工業レーシングOB、元シクロクロスの初代全日本チャンピオンで、1996・97・98年に3連覇を飾っている大原が、とうとうマスターズM1の優勝を飾ったのだ。
華麗なテクニックで追い上げ、M1優勝を飾った大原満 photo:Makoto.AYANO第6戦(1月29日)の後にインフルエンザにかかり、回復したものの本調子ではなかったとはいえ、力強い走りでマスターズの強豪たちを蹴散らした。やはり身体はかつての動きを覚えていたようだ。「この勝利の後、何処を目指す?」との問いに大原は答える。
「できれば来年はカテゴリークラスで走ってステップアップしたいですね。小坂さんが待っていますから!」。そう、かつてのライバル・小坂正則が今でも現役トップクラスで走っていることに刺激を受けているという。そもそも大原は大会側から運営側のお手伝いを頼まれ、スタッフ役とあわせてレース出場を楽しんでいるそうだ。
「今は平日はローラーで、休日にインターバルなどで短時間でメリハリある練習をしています。来シーズンはどれだけ走れるかはわかりませんが、鳥人間コンテストのディスタンス部門にも出場するんです」。
カテゴリークラスの優勝者たち
フラットバーのクロスバイクに乗りC4Aで優勝した三好 黎(SimWorks Racing) photo:Hiro.AYANO
C2優勝はMTBに乗った石川 絃(サッサーズ) photo:Makoto.AYANO
砂場を力強いランでこなすCL2優勝の西 麻依子 photo:Makoto.AYANO
CL1優勝は児玉 和代(sfiDARE WORKS) photo:Makoto.AYANO
東海クロスシリーズの人気急上昇のワケは?
シリーズ戦として開催2年目を終えた東海シクロクロスだが、その人気の急上昇ぶりはCX関係者なら誰もが驚くものだ。この2シーズンとも全7戦で開催され、各大会ともコンスタントに参加者約400人を集める人気ぶりだ。
大会実行委員長の山田冨美雄さん(岐阜車連) photo:Makoto.AYANO大会実行委員長をつとめる山田冨美雄さん(岐阜車連)に聞いた。山田さんは開催72回を数える平田クリテリウムを開催してきた人物で、その流れでこの東海クロスを手がけるようになったという。現在大会はおもに岐阜車連と愛知車連の共同で開催されている。
「日本一盛んな関西クロスに次いで、東海クロスが日本で2番目の集客力を誇るまでに急成長したことに驚いています。まさかこんなに人気が出るなんて!」と山田さんも驚く。
初年度は各大会の参加者は約200人ほどだったが、2年目の今年は各大会に400人弱が集まり、第6戦・愛知牧場大会はなんと530人が参加。この日の最終戦の参加者は461人だった。
山田さんは言う。「どんどん新しい参加者が増えているのがわかります。その8割が東海3県からの参加者というのも嬉しいことで、C4は3つ、CM3は2つに分けなければならないほどの盛況で、つまり底辺・入門層が盛り上がっているんです。C1は今回は40人ですが、JCXシリーズに組み入れられたときはぐっと多くなります」。
初めてシクロクロスに挑戦する人(コードがない人)が毎年200人づつ増えているような状況だから、初めて挑戦する人に対しても分かりやすい表記や安全に対するルールの徹底をするようにしているという。安全対策としては8列スタートが基本のところを下位カテゴリーは6列スタートにしているなど、初心者にも危なくないように配慮し、コース設計も競技志向よりも安全志向のレースになるようにコースディレクターに伝えているそうだ。「しかし、それでも走って面白いコースになるように」と。
怪我からの復活で優勝した選手を仲間たちが讃える photo:Hiro.AYANO
上位入賞者には東海CXのタンブラーグラストロフィーが贈呈される photo:Makoto.AYANO
この会場でも何よりコースが走って面白いと評判で、会場はアットホームな雰囲気に満ちている。コーヒーやパスタ、ケーキを振る舞うBUCYO coffeeブースなども充実しており、参加者の表情を見るとレースだけでなくイベント全体を楽しんでいるのがわかる。
東海シクロクロスシリーズの始まりは、平田クリテを開催して好評だった山田さんに、筧太一さん(2012、13年のマスターズ40の年代別選手権チャンピオン)がシクロクロス大会の開催を持ちかけたことが発端だったという。
「それまで東海エリアはシクロクロスの開催がまったく無い空白地帯だったんです」と言う山田さん自身も、CX未経験者。右も左も分からない状態だったが、クリテリウムの運営には長けていたことで、筧さんに「その運営ノウハウがあればシクロクロスはできますよ」と口説かれたのだという。
「最初は『平田シクロクロス』として、一戦目は無料で開催しました。それが好評で、平田で4戦を開催しました。関西シクロクロスや全日本選手権を観に行って大会運営を学びつつ、その後東海シクロクロスに名前を変えました。AJOCCに加盟したのも良かった。やはり皆が昇格をかけて走るのがいいですね。カテゴリーを上げていくことが励みになるんです」。
コーヒーにパスタ、サンドウィッチが好評のBUCYO coffeeブース photo:Makoto.AYANO
BUCYO coffeeの筧太一はコース設営にブースでの調理にレース参加にと忙しい photo:Makoto.AYANO
筧太一さんは仲間たちと一緒にコース設営を担当し、筧さんの経営するBUCYO coffeeや、チームメイトでCULTサングラス代表の蜂須賀智也さんらとともにブース出店とスポンサーの立場でも盛り上げる。ご存知の通り自らレースに出場しながらも楽しんでいる。マスターズの上位を狙って走り、今季はシリーズ総合チャンピオンにも輝いた。そしてコーヒーや料理を提供して参加者たちに味わってもらう。
BUCYO coffeeではプロテインドリンクの提供も。レース後に嬉しい photo:Makoto.AYANO
参加者にプレゼントされた保温タンブラー photo:Makoto.AYANO
スポンサーと言えば特徴的なのが名古屋にルーツをもつ自転車関連会社がこぞってブース出展して盛り上げていることも挙げておきたい。エディメルクスを扱う深谷産業、シラクCXタイヤが好評のIRC井上ゴム工業、BMCを扱うフタバ商店、Circles(サークルズ)とSimWorksなどなど、名古屋拠点のサイクル関連会社はこぞってブースを出展して盛り上げ、その担当者も自ら出場して楽しんでいるのだ。そして入賞者、参加者にたくさんの賞品を提供している。
名古屋の自転車総合卸問屋、深谷産業はエディメルクスのCXバイクをプロモーション photo:Makoto.AYANO
名古屋の自転車店サークルズ&SimWorksのブース。スタッフ2人が優勝した photo:Makoto.AYANO
この日は2年目の締めくくりにシリーズ戦総合表彰も行われた。ホットでアットホームな東海シクロクロスシリーズはまた来季も全7戦で開催される予定だ。将来的には東海に含まれる三重県での開催も視野にあるという。
photo&text:Makoto.AYANO
photo:Hiro



シクロクロスのW杯が開催されるベルギーの砂丘コースになぞらえ「日本のコクサイデ」と呼ばれるこのコースは、その8割ほどが砂路面となり、独特の走行テクニックが試される。それが観ていても非常に面白く、出場するにも観戦するにも人気の会場となっている。今回はいつもの逆回りコースとなり、乗車率は著しく上がったという。



元気よく先行した岩田に山中がジョインし、テール・トゥ・ノーズのランデブーを開始。しかし全8周のうち3周を終え、レースも半分を残す頃、遅れて3位を走っていた川村が突如ペースを取り戻し、ふたりに追いつく。しばし三つ巴で走ったが、4周を終える頃に河村はさらに加速し、独走状態に入った。川村はけっきょくそのまま逃げ切り優勝。関西、四国で2週連続優勝していた川村はこれで3連勝を飾った。関西シクロクロスを総合ランキング3位で終えており、この東海でも総合3位に。
マスターズM1で初代日本チャンプの大原満が優勝!
この日のニュースは最終レースのマスターズM1で大原満が優勝したことだろう。愛三工業レーシングOB、元シクロクロスの初代全日本チャンピオンで、1996・97・98年に3連覇を飾っている大原が、とうとうマスターズM1の優勝を飾ったのだ。

「できれば来年はカテゴリークラスで走ってステップアップしたいですね。小坂さんが待っていますから!」。そう、かつてのライバル・小坂正則が今でも現役トップクラスで走っていることに刺激を受けているという。そもそも大原は大会側から運営側のお手伝いを頼まれ、スタッフ役とあわせてレース出場を楽しんでいるそうだ。
「今は平日はローラーで、休日にインターバルなどで短時間でメリハリある練習をしています。来シーズンはどれだけ走れるかはわかりませんが、鳥人間コンテストのディスタンス部門にも出場するんです」。
カテゴリークラスの優勝者たち




東海クロスシリーズの人気急上昇のワケは?
シリーズ戦として開催2年目を終えた東海シクロクロスだが、その人気の急上昇ぶりはCX関係者なら誰もが驚くものだ。この2シーズンとも全7戦で開催され、各大会ともコンスタントに参加者約400人を集める人気ぶりだ。

「日本一盛んな関西クロスに次いで、東海クロスが日本で2番目の集客力を誇るまでに急成長したことに驚いています。まさかこんなに人気が出るなんて!」と山田さんも驚く。
初年度は各大会の参加者は約200人ほどだったが、2年目の今年は各大会に400人弱が集まり、第6戦・愛知牧場大会はなんと530人が参加。この日の最終戦の参加者は461人だった。
山田さんは言う。「どんどん新しい参加者が増えているのがわかります。その8割が東海3県からの参加者というのも嬉しいことで、C4は3つ、CM3は2つに分けなければならないほどの盛況で、つまり底辺・入門層が盛り上がっているんです。C1は今回は40人ですが、JCXシリーズに組み入れられたときはぐっと多くなります」。
初めてシクロクロスに挑戦する人(コードがない人)が毎年200人づつ増えているような状況だから、初めて挑戦する人に対しても分かりやすい表記や安全に対するルールの徹底をするようにしているという。安全対策としては8列スタートが基本のところを下位カテゴリーは6列スタートにしているなど、初心者にも危なくないように配慮し、コース設計も競技志向よりも安全志向のレースになるようにコースディレクターに伝えているそうだ。「しかし、それでも走って面白いコースになるように」と。


この会場でも何よりコースが走って面白いと評判で、会場はアットホームな雰囲気に満ちている。コーヒーやパスタ、ケーキを振る舞うBUCYO coffeeブースなども充実しており、参加者の表情を見るとレースだけでなくイベント全体を楽しんでいるのがわかる。
東海シクロクロスシリーズの始まりは、平田クリテを開催して好評だった山田さんに、筧太一さん(2012、13年のマスターズ40の年代別選手権チャンピオン)がシクロクロス大会の開催を持ちかけたことが発端だったという。
「それまで東海エリアはシクロクロスの開催がまったく無い空白地帯だったんです」と言う山田さん自身も、CX未経験者。右も左も分からない状態だったが、クリテリウムの運営には長けていたことで、筧さんに「その運営ノウハウがあればシクロクロスはできますよ」と口説かれたのだという。
「最初は『平田シクロクロス』として、一戦目は無料で開催しました。それが好評で、平田で4戦を開催しました。関西シクロクロスや全日本選手権を観に行って大会運営を学びつつ、その後東海シクロクロスに名前を変えました。AJOCCに加盟したのも良かった。やはり皆が昇格をかけて走るのがいいですね。カテゴリーを上げていくことが励みになるんです」。


筧太一さんは仲間たちと一緒にコース設営を担当し、筧さんの経営するBUCYO coffeeや、チームメイトでCULTサングラス代表の蜂須賀智也さんらとともにブース出店とスポンサーの立場でも盛り上げる。ご存知の通り自らレースに出場しながらも楽しんでいる。マスターズの上位を狙って走り、今季はシリーズ総合チャンピオンにも輝いた。そしてコーヒーや料理を提供して参加者たちに味わってもらう。


スポンサーと言えば特徴的なのが名古屋にルーツをもつ自転車関連会社がこぞってブース出展して盛り上げていることも挙げておきたい。エディメルクスを扱う深谷産業、シラクCXタイヤが好評のIRC井上ゴム工業、BMCを扱うフタバ商店、Circles(サークルズ)とSimWorksなどなど、名古屋拠点のサイクル関連会社はこぞってブースを出展して盛り上げ、その担当者も自ら出場して楽しんでいるのだ。そして入賞者、参加者にたくさんの賞品を提供している。


この日は2年目の締めくくりにシリーズ戦総合表彰も行われた。ホットでアットホームな東海シクロクロスシリーズはまた来季も全7戦で開催される予定だ。将来的には東海に含まれる三重県での開催も視野にあるという。
photo&text:Makoto.AYANO
photo:Hiro
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