野辺山シクロクロスと全日本選手権を終え、後半戦へと入りつつあるシクロクロスシーズン。トップシクロクロッサーが駆るバイクを全3編にて紹介します。まずは新たなる全日本王者に輝いた沢田時、同女子2位の武田和佳、そして小坂光、小坂正則という4名の機材にクローズアップ。バイク選びやセッティングのヒントにして頂ければ幸いだ。



沢田時(ブリヂストンアンカー) アンカー CX6

全日本選手権で優勝した沢田時(ブリヂストンアンカー) のアンカー CX6全日本選手権で優勝した沢田時(ブリヂストンアンカー) のアンカー CX6 photo:Makoto.AYANO
サドルは厚手のクッションを用いた PROのMTBサドル、VULTUREサドルは厚手のクッションを用いた PROのMTBサドル、VULTURE コンピューターもパイオニア。Di2のサテライトスイッチは下側にセットしているコンピューターもパイオニア。Di2のサテライトスイッチは下側にセットしている


エリート初年度ながら全日本タイトルを獲得した沢田時(ブリヂストンアンカー)。その走りを支えたのはもちろん、アンカーのアルミCXバイクであるCX6。CX6には2015モデルからディスクブレーキ用フレームが用意されているが、沢田は従来から継続してカンチブレーキモデルを愛用中。

A6061アルミを使うこのフレームは、市販モデルの場合ダウンチューブとシートステーに機械式変速用のワイヤー受けが用意されているが、Di2を使う沢田のバイクには見受けられない。Di2組み込みを前提とした供給用バイクであるため、軽量化を狙ってのカスタムだと思われる。カラーはアンカーのカラーオーダーシステムで選択できる白黒ツートンのチームエディションだ。

カンチブレーキはシマノ。ブレーキワイヤーは張り出さないようにタイラップで留められているカンチブレーキはシマノ。ブレーキワイヤーは張り出さないようにタイラップで留められている パワーメーターとコンピューター、シートポストリングなどの色を2台で変更しているパワーメーターとコンピューター、シートポストリングなどの色を2台で変更している

全日本選手権ではデュガスのマッド用タイヤRhinoを用いた全日本選手権ではデュガスのマッド用タイヤRhinoを用いた フィジークのシートポストリングを仕様。もう一台のバイクは赤で色分けされていたフィジークのシートポストリングを仕様。もう一台のバイクは赤で色分けされていた


コンポーネントはデュラエースDi2を基本に、チェーンリングのみ46-36Tの設定があるアルテグラグレード。サテライトスイッチはステム右側のハンドルバー下部に取り付けられていた。ぺダルはXTR、ハンドルやステム、シートポスト、サドル、バーテープなどはシマノが展開するPRO製品で統一されている。

パワーメーターとコンピューターはパイオニア(メインバイクは各所が赤、スペアは白と色分けされていた)。ホイールはデュラエースC35だが、特に前輪は驚くほどブレーキ面が削れ凹みができるほど使い込まれていた。レースで使用したタイヤはデュガスで、前後共にマッド用のRhinoを採用したが、前が32c、後が33cという違いがあった。謎のイラストスタンプは継続採用中。



武田和佳(Liv)Liv BRAVA SLR

武田和佳(Liv)のLiv BRAVA SLR武田和佳(Liv)のLiv BRAVA SLR photo:So.Isobe
ベース、レールともにカーボンを採用したLivの女性用サドル、CONTACT SLR FORWARDベース、レールともにカーボンを採用したLivの女性用サドル、CONTACT SLR FORWARD 非常に手の込んだカラーリング。一般ユーザーからの人気も高いという非常に手の込んだカラーリング。一般ユーザーからの人気も高いという


昨年から女性用ブランドであるLivのアンバサダーとして活動し、今年の全日本選手権では2位に入るなど、着実に実力を増している武田和佳(Liv)。バイクは昨年から引き続き、Liv唯一のシクロクロスラインナップであるアルミモデルのBRAVA SLRを使用しているが、今シーズン序盤からブラックとファイアーオレンジにペイントされた2017モデルを愛用中だ。

昨年同様にフレームの戦闘力を上げるため、通常アルミコラムのフロントフォークはTCX ADVANCED用のフルカーボン製OverDrive 2規格対応品に交換され、フレームに合わせたペイントを台湾本社で特別に施工。フレーム側はヘッドベアリング類を交換することで対処しているという。

ジャイアントのシクロクロス用カーボンチューブレスホイール「P-CXR0」に、IRCのSERACシリーズを組み合わせるジャイアントのシクロクロス用カーボンチューブレスホイール「P-CXR0」に、IRCのSERACシリーズを組み合わせる ワイヤーとケーブル類の処理。美しくまとめられているワイヤーとケーブル類の処理。美しくまとめられている

2台用意するうちの1台はウルフトゥースのチェーリング(38T)を用いてフロントシングル化している2台用意するうちの1台はウルフトゥースのチェーリング(38T)を用いてフロントシングル化している リアディレイラーはアルテグラDi2を採用リアディレイラーはアルテグラDi2を採用


コンポーネントは強豪選手の定番となりつつあるシマノのDi2+油圧ディスクブレーキシステムを導入し、クランクはデュラエース、リアディレイラーはアルテグラという組み合わせに。2台用意されているうちの1台(写真)はウルフトゥースのチェーリング(38T)を用いてフロントシングル化されており、コース設定によってメインバイクとサブバイクを使い分けている。フロントシングルのバイクには兄弟車であるジャイアント・TCX用に設定されているチェーンキーパーと台座を流用し、ディレイラー台座は取り払われている。

ホイールはジャイアントのシクロクロス用カーボンチューブレスモデル「P-CXR0」を使い、タイヤはIRCのSERACシリーズの中からコンディションによって使い分けている。「レース直前でもタイヤ交換ができるのは、チューブラーに対して有利」とはメカニックの談。



小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム) メリダ CYCLO CROSS

小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム)のメリダ CYCLO CROSS小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム)のメリダ CYCLO CROSS photo:So.Isobe
パワーメーターとコンピューターはパイオニアを使用するパワーメーターとコンピューターはパイオニアを使用する ハンドル類はイーストン。小坂はハンドルを若干上向きにするセッティングだハンドル類はイーストン。小坂はハンドルを若干上向きにするセッティングだ


野辺山シクロクロス初日に優勝を飾り、全日本選手権では惜しくも3位になった小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム)。バイクは昨年から継続使用しているメリダのカーボンバイク「CYCLO CROSS」であり、パーツアッセンブルも昨年から継続中だ。

本来であれば今シーズンの途中から2台のディスクブレーキバージョンを投入する予定だったものの、シマノの選手供給用ホイールの数が確保できなかったため来シーズンまで見送ったという。9070系デュラエースを基本に、チェーンリングのみ46-36Tのアルテグラを採用しているのはトップ選手のスタンダードと言えよう。ホイールは全てのレースで一貫してデュラエースC35を愛用し、数種類のデュガスタイヤをコンディションによって使い分ける。ハンドル類はイーストンで統一されている。

ブレーキワイヤーはタイラップで留めでフィニッシュブレーキワイヤーはタイラップで留めでフィニッシュ ホイールはデュラエースC35で統一し、タイヤはデュガス。コンディションによって使い分けているホイールはデュラエースC35で統一し、タイヤはデュガス。コンディションによって使い分けている

阿部嵩之のバイクはフロントシングル(42T)。歯を削り落としたアウターリングをチェーン落ち防止用に残している阿部嵩之のバイクはフロントシングル(42T)。歯を削り落としたアウターリングをチェーン落ち防止用に残している フロントシングル化された阿部嵩之のバイク。リアスプロケットとディレイラーをアルテグラにし、ギアレシオをキープしているフロントシングル化された阿部嵩之のバイク。リアスプロケットとディレイラーをアルテグラにし、ギアレシオをキープしている


また、同じく宇都宮ブリッツェン所属の阿部嵩之は基本的に小坂と同仕様のバイクを駆るが、うち1台はフロントギアをシングル化したもの。歯数は42Tであり、リアスプロケットとディレイラーをアルテグラ(最大32T)にすることでギアレシオをキープし、デュラエースのアウターリングはチェーン落ち防止用に残されているが、ギア歯は製品版かのごとく美しく削り取られていた。FD台座にはK-EDGE製チェーンウォッチャーを取り付け、万全のチェーン脱落防止策を施している。



小坂正則(スワコレーシング) ボーマ D・OLA CT-XD

小坂正則(スワコレーシング)のボーマ D・OLA CT-XD小坂正則(スワコレーシング)のボーマ D・OLA CT-XD photo:So.Isobe
「今は自分にとってはディスクブレーキは手放せません」「今は自分にとってはディスクブレーキは手放せません」 取材時は高速コースに合わせて50-42Tという巨大なチェーンリングを持ち込んだ取材時は高速コースに合わせて50-42Tという巨大なチェーンリングを持ち込んだ


第1回大会から毎年全日本選手権に出場し、52歳になった現在でもトップ選手として優勝を含む好成績を収め続けている日本シクロクロス界のレジェンド、またの名を佐久の帝王、小坂正則(スワコレーシング)。ベテランだけあって機材も保守派、と思いきや、トップ選手の中では一番最初にディスクブレーキバイクを導入した一人だ。

もう3シーズン乗っているというこのバイク。「乗り始めこそカンチブレーキに対する重量増が気になっていましたが、高速コースや下りでの制動力はそれを補って余りあるほどです。今は自分にとってはディスクブレーキが気に入っています。身体も楽ですし、もう手放せませんね」と言う。

ヨシ○ラ風ロゴのポディウムキャップは、バイク好きの本人のために仲間がジョークで作ったもの。非売品ヨシ○ラ風ロゴのポディウムキャップは、バイク好きの本人のために仲間がジョークで作ったもの。非売品 サドルも10年以上使い込んでいるというセライタリアのフライトサドルも10年以上使い込んでいるというセライタリアのフライト

試走では「ずっと家に眠らせていた」というTUFOの28Cタイヤ。レースでは通常幅のタイヤを使った試走では「ずっと家に眠らせていた」というTUFOの28Cタイヤ。レースでは通常幅のタイヤを使った 10年以上使い続けているというシマノのSPDペダル10年以上使い続けているというシマノのSPDペダル


コンポーネントは未だにファンが少なくない7800系デュラエースで、ブレーキは油圧ではなくメカニカル式。取材したシクロクロスミーティング上山田は高速コースとあって、フロントには50-42Tのシクロクロスとしては巨大なチェーンリングを導入。さらに試走では「ずっと家に眠らせていた」というTUFOの28Cタイヤを試していた。最終的には通常幅のスリックタイヤを使ってレースに臨んだが、この時会場の話題をさらったのは言うまでもない。

サドルはセライタリアのフライトで、ペダルとコンポーネントなども10年以上使用し続けているものだという。ちなみにヨシ○ラ風ロゴのポディウムキャップは、バイク好きの本人のために仲間がジョークで作ったものなんだとか。ちなみにTシャツもあり、どちらも非売品。

text:So.Isobe