スポーツ自転車用タイヤのリーディングブランドとして君臨してきたヴィットリア。コンパウンドやトレッドパターンを見直し、よりスピードを追求したハイエンドモデル「CORSA SPEED」のチューブレスレディ(TLR)をインプレッションした。



ヴィットリア CORSA SPEED TLRヴィットリア CORSA SPEED TLR (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
1953年に創業し、ハイエンドからエントリーグレードまで幅広い人気を誇るヴィットリア。ツール・ド・フランスや世界選手権を筆頭に、60年以上の歴史の中で貢献した勝利は数知れず。プロからこよなく愛され、常に厚い信頼を勝ち得てきた伝統のブランドだ。

そんなヴィットリアが今年、タイヤのラインアップを総刷新。最新鋭のナノ素材「Graphene(グラフェン)」をタイヤのコンパウンドに使用することで性能を飛躍的に高め、一つのタイヤであらゆるコンディションに対応できるようになった。その結果従来6種類あったハイエンドのバリエーションは、オールラウンドレーシングモデルの「CORSA」とTT向けの「CORSA SPEED」という2種類に集約された。

タイヤのロゴ部。推奨空気圧は8~9Bar。新素材グラフェンを示すG+のマークもタイヤのロゴ部。推奨空気圧は8~9Bar。新素材グラフェンを示すG+のマークも
ヴィットリアは同郷の化学メーカー「Directa Plus」社より供給を受ける「G+」という高品質グラフェンをタイヤ及びホイールに使用。これらの革新的な製品レンジを「インテリジェント・タイヤ・システム(IT’S)」と名付けた。

G+を採用したIT’Sコンパウンドは、ライディングシーンに応じて自らの性質を変化させるという。タイヤが真っ直ぐに回転している時、つまりはタイヤに掛かる負荷が少ない時はコンパウンドは堅く、優れた転がり性能を発揮する。一方で、加減速時やコーナリング中などタイヤに掛かる負荷が大きくなるとコンパウンドが軟化し、グリップ力が向上する。その名の通りインテリジェントな性能を獲得した。

箱から取り出した状態は平たくコンパクトだ箱から取り出した状態は平たくコンパクトだ 円周方向に溝が切られたトレッドパターン。地面との接地面ほど溝が少ない円周方向に溝が切られたトレッドパターン。地面との接地面ほど溝が少ない

TLRモデルはグレーサイドケーシングカラーとなるTLRモデルはグレーサイドケーシングカラーとなる 内側にはグレーのインナーシールが施される内側にはグレーのインナーシールが施される


そんなハイエンドタイヤの一角「CORSA SPEED」は、史上最速のロードタイヤを目指し開発されたTT向けタイヤ。従来ラインアップにおけるTT用タイヤ「Crono CS」の後継に位置づけられるモデルだ。製品名の通りにスピードを追求するべく、シングルコンパウンドを採用し、昨今主流の幅広リムに最適化している。

ケーシングには従来のコルサシリーズでも採用されていたコアスパン320TPIを使用。TTに特化させた結果、トレッド面は通常のCORSAよりも狭く設計され、円周方向に溝が切られたトレッドパターンを採用した。チューブレスレディ(TLR)は、ヴィットリアが得意とするオープンチューブラー製法(チューブラーと同じ工程でハンドメイド)で生産され、軽さとしなやかさを両立している。

折りたたまれ箱に入った販売パッケージ。中央の窓から質感などが確認できる折りたたまれ箱に入った販売パッケージ。中央の窓から質感などが確認できる 推奨シーラント剤「PIT STOP TNT EVO」推奨シーラント剤「PIT STOP TNT EVO」


速さを追求したCORSA SPEED TLRは、グラフェンを使用していない同製品と比べて40%転がり抵抗を低減。外部(フィンランド、ホイールエナジー社)による50kmタイムトライアルを想定した風洞実験テストにおいて、他社の同レンジのタイヤと比較して32秒ものアドバンテージを叩き出した。

インナーチューブを入れてクリンチャーとしても使用できるTLRだが、チューブレスとして使う場合は対応するリムとシーラント剤が必要だ。純正のPIT STOP TNT EVOシーラントが推奨され、パンクリスクを低減してくれる。それでは、1/100秒を競うタイムトライアル、そして軽さを求めるヒルクライムレースに適したこのタイヤのインプレッションをお届けしよう。



ー インプレッション

「普段のバイクがワンランク上の優しい乗り心地に」山本朋貴(ストラーダバイシクルズ)

「普段のバイクがワンランク上の優しい乗り心地に」山本朋貴(ストラーダバイシクルズ)「普段のバイクがワンランク上の優しい乗り心地に」山本朋貴(ストラーダバイシクルズ)
小さい転がり抵抗も然ることながら、空気圧を落としたことによる乗り心地の優しさが際立つタイヤでした。クリンチャーともチューブラーとも異なる、チューブレスならではの気持ちよさがありますね。普段よりもタイヤの空気圧を低くできるチューブレスの特性がよく表れていると感じました。

チューブレスと言っても、マウンテンバイクやシクロクロスバイクほどタイヤの空気圧を落とすわけでは無いので、乗り心地はそこまで変わらないのではないかと始めは思っていました。普段から1気圧落とした6気圧で今回テストしましたが、快適性が劇的に変わりましたね。路面からの尖った振動をきれいに丸くしてくれる、そんな感覚です。まるでエンデュランスバイクに乗っているかのような快適感で、長時間のライドではどうしても身体の疲れや痛みが出る人も、このタイヤなら改善できるかもしれません。また、硬いフレームに乗っている人もその乗り味をマイルドにしてくれることでしょう。

「低い転がり抵抗はレースにおいて大きな武器に」山本朋貴(ストラーダバイシクルズ)「低い転がり抵抗はレースにおいて大きな武器に」山本朋貴(ストラーダバイシクルズ)
空気圧を落としたことによる乗った際のタイヤの潰れ具合や路面抵抗は、ほとんど誤差のレベルでしか感じませんね。それよりも乗り心地が良くなるメリットのほうが圧倒的に勝ります。バイクを倒した際のタイヤの変形も感じず、コーナリングも十分なグリップ力で思った通りのラインで走れました。

TT向けのタイヤだけあって、平坦でのスピードの乗りは気持ち良いものがありますね。テストしたフレームとの相性かもしれませんが、初速は多少重さを感じるものでした。シーラントが入ってリム外側の重量増はありますが、スピードを出してしまえば気になるところは全くありませんね。ただそれと引き換えにトレッドゴムは薄く、タイヤ寿命自体はオールラウンドモデルのCORSAには及ばないように思います。通じてタイヤロック等による摩耗には気を付けた方が良いでしょう。

パンクした際の修理の手間がクリンチャーに比べて面倒な点はありますが、普段履きでも使用したいほどの感動がありました。その快適性を活かし、ロングライドや長距離レースでの使用がオススメではないでしょうか。

ヴィットリア CORSA SPEED TLRヴィットリア CORSA SPEED TLR (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
ヴィットリア CORSA SPEED TLR
サイズ:700x23c
ケーシング:コアスパン320TPI
コンパウンド:グラフェンG+Isotech
重量:225g(平均値)
希望小売価格:9,000円(税別)

推奨シーラント剤
ヴィットリア PIT STOP TNT EVO
内容量:200ml
希望小売価格:1,680円(税別)



インプレッションライダーのプロフィール

山本朋貴(ストラーダバイシクルズ滋賀本店)山本朋貴(ストラーダバイシクルズ滋賀本店) 山本朋貴(ストラーダバイシクルズ滋賀本店)

滋賀県草津市にあるストラーダバイシクルズ滋賀本店の店長。2011、2012年の全日本マウンテンバイク選手権クロスカントリーマスタークラスチャンピオン。ストイックに自転車競技に取り組んできたが、ストラーダに入社後は、ビギナーライダーのライド初体験の笑顔に魅せられエントリーのお客様にバイクの楽しさを伝えることが楽しみ。最近はトライアスロンに挑戦中。

ストラーダバイシクルズ滋賀本店(CWレコメンドショップ)
ストラーダバイシクルズHP

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