島根県益田市で行われたジュニア全日本ロードはジュニアで松田祥位(岐阜第一高)と菅原朱音(倉吉総合産業高)が逃げで、男子U17+U15は塩島嵩一朗(南大隅高)がスプリントでそれぞれ優勝した。



MJ 松田祥位(岐阜第一高)がジュニアチャンピオンにMJ 松田祥位(岐阜第一高)がジュニアチャンピオンに photo:Hideaki TAKAGI
今年の全日本選手権ロードは、エリートとU23、TTが6月に東京都大島町で行われた。いっぽうで島根県益田(ますだ)市では益田チャレンジャーズステージとして若い世代のロードレースが2014年から開催されており、第3回目の今年はジュニアとU17U15全日本選手権ロードの名を冠し、11月6日(日)に行われた。

益田市での3回目の大会は全日本選手権

益田市での過去2回の大会と同様に今回も主催はJCFと「益田市・町おこしの会」だ。「サイクリストの町 益田市」を掲げており「益田INAKAライド」など自転車を通した町おこしに熱心な地域だ。シームレスタイヤなどを製造するソーヨータイヤの工場がコースから500mほどのところにあることも縁がある。交通も石見空港が益田市西部にあり、高速道の浜田道路そして9号バイパスなどの建設が進み便利が良い。気候も安定しており2020年東京オリンピックの合宿候補地としても名乗りを上げている。

前夜祭で演じられた石見神楽。二神二鬼が戦い乱舞する様は圧巻前夜祭で演じられた石見神楽。二神二鬼が戦い乱舞する様は圧巻 photo:Hideaki TAKAGIMJ スタート前MJ スタート前 photo:Hideaki TAKAGI

コースはエキップアサダ浅田顕氏監修のもので、昨年とは逆回りで時計回りの1周14.2km。半分は平坦、半分はアップダウンという配分で、比較的上りは短く急、下りは長く緩やかだ。フィニッシュ地点は一直線の緩い上り勾配。スタートしてじきに短いが10%ほどの上りがありアップダウンを繰り返し6km地点の広域農道の上りが一番長い。この頂上からフィニッシュまでの8kmは下りから小さなアップダウンがある。

前半の上りがきつくしかも連続するが、いっぽうで距離が短いので逃げても吸収される可能性が高い。そしてフィニッシュまで4kmほどは小さなアップダウンがありこれも仕掛けどころだ。通常のレースならばバラバラな展開になるだろうが、全日本チャンピオンのタイトルのかかる今大会は違った展開も予想された。なお反時計回りで行われた過去2回の大会は、その多くのクラスで単独ないし数人の逃げ切りがみられた。

男子ジュニア 松田祥位(岐阜第一高)が逃げ切る

97名が出走した男子ジュニアは6周85.2kmのレース。序盤からアタックがかかるが10秒以上の差にはならない。上りを中心に抜け出したい選手がアタックを仕掛ける。その中心は渡邉歩(EQADS)、浜田大雅(藤井寺工科高/EQADS)、日野竜嘉(ボンシャンス)、織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)、重満丈(北中城高)、成海大聖(普天間高)ら。これら動きは最終周回まで続くことになる。

MJ 2周目、先頭は2連覇中の沢田桂太郎(日本大)と渡邉歩(EQADS)MJ 2周目、先頭は2連覇中の沢田桂太郎(日本大)と渡邉歩(EQADS) photo:Hideaki TAKAGIMJ 3周目上り、浜田大雅(藤井寺工科高/EQADS)がペースを上げるMJ 3周目上り、浜田大雅(藤井寺工科高/EQADS)がペースを上げる photo:Hideaki TAKAGI

スプリンターをめぐる攻防

決定的な動きは5周目に入ってからの上り区間で起きた。日野、渡邉、織田、浜田、花田聖誠(昭和第一学園高)らがペースを上げて抜け出す。浜田はメカトラでいったん降車するがその後に復帰する。そこからさらに宇賀隆貴(フィッツ)が単独で抜け出す。農道の長い上りで宇賀が吸収後に渡邉、日野がペースを上げると、3連覇を目指すスプリンターの沢田桂太郎(日本大)が遅れだす。同じく後方にいた優勝候補のひとり、大町健斗(安芸府中高)は単独で前へ合流する。

MJ 5周目上り、織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)らがペースを上げるMJ 5周目上り、織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)らがペースを上げる photo:Hideaki TAKAGIMJ 5周目上り、渡邉歩(EQADS)がペースを上げて沢田桂太郎(日本大)が遅れるMJ 5周目上り、渡邉歩(EQADS)がペースを上げて沢田桂太郎(日本大)が遅れる photo:Hideaki TAKAGI

MJ 5周目中盤に先行した12人MJ 5周目中盤に先行した12人 photo:Hideaki TAKAGIMJ 5周目中盤、先行した12人を沢田桂太郎(日本大)、松田祥位(岐阜第一高)らが追うMJ 5周目中盤、先行した12人を沢田桂太郎(日本大)、松田祥位(岐阜第一高)らが追う photo:Hideaki TAKAGI

5周目中盤に12人の先頭集団ができる。メンバーは渡邉、日野、浜田、織田、花田、成海、重満、大町、吉岡衛(奈良北高)、蠣崎優仁(伊豆総合高/EQADS)、谷和也(市立堺高)、小野寛斗(横浜高)で、逃げを決めたいこの12人は先頭交代して後続とのリードを広げようとする。10秒ほどで続く後続は沢田がほぼ一人で先頭を引いてようやく先頭12人に追いつく。このとき松田祥位(岐阜第一高)と曽我部厚誠(京都産業大)も合流に成功する。

ラスト600mでアタックした松田祥位(岐阜第一高)が優勝

続く最終周回の6周目、抜け出したのは宇賀、さらに日野、重満、谷、花田らが先行するが吸収。この動きで沢田は後退する。続く長い上り区間で重満、そして浜田がペースを上げる。頂上を経て浜田、松田、吉岡の3人が先行するがこれも吸収される。ここからラスト5kmで依田翔大(甲府工業高)がアタックするが松田らが追い吸収、さらにラスト3kmで谷がアタックするがこれも松田らが吸収する。そしてラスト1km手前で花田がアタック、そしてラスト600mで松田がアタックして花田をかわし向かい風の中独走し同タイムながら逃げ切って松田が優勝した。

MJ 6周目中盤、松田祥位(岐阜第一高)、吉岡衛(奈良北高)、浜田大雅(藤井寺工科高/EQADS)が先行するMJ 6周目中盤、松田祥位(岐阜第一高)、吉岡衛(奈良北高)、浜田大雅(藤井寺工科高/EQADS)が先行する photo:Hideaki TAKAGIMJ ラスト3km、谷和也(市立堺高)がアタックMJ ラスト3km、谷和也(市立堺高)がアタック photo:Hideaki TAKAGI

優勝した2年生の松田は、1週間前の四日市ジュニアでは優勝した同校3年の亀谷昌慈に続いて2位の成績だった。3km個人追い抜きは3分27秒123と群を抜くタイムをJOCカップで出しており、今夏4分22秒で優勝したインターハイチームパーシュートの中心選手だった。終盤の重要な動きを自力で対処し、最後は向かい風の中をスピードを生かしたアタックで見事に逃げ切った。

3連覇を目指した沢田桂太郎(日本大)だったが

展開上のポイントは5周目の上りだった。集団にさえいればそのスプリント力で絶対に勝つと目される沢田を引き離すことが、逃げたい選手たちの共通の意識だった。いったんはそれで離されたが「全開で踏みました」という沢田は自力で集団へ復帰できた。だがそれで脚を使ったため次の上りで脱落してしまった。いっぽうで沢田が復帰したとき、同時に優勝した松田や2位の曽我部も復帰している。展開をよく読んだ結果と言えるだろう。

「先輩の分も頑張ろうと走りました」優勝した松田祥位(岐阜第一高)
「自分はスプリントが苦手なので後ろからレースの展開を見ていました。最後は先に花田さんが逃げていたので残り600mくらいで仕掛けました。亀谷先輩が受験で来られなかったので先輩の分も頑張ろうと思いました。名誉のある大会で優勝できて信じられないです。人数が絞られていくようなコースなのでスプリンターが入らないような集団になればと思っていました」

MJ 表彰MJ 表彰 photo:Hideaki TAKAGIジュニアチャンピオンになった松田祥位(岐阜第一高)。高校2年で3km3分27秒のスピードで優勝したジュニアチャンピオンになった松田祥位(岐阜第一高)。高校2年で3km3分27秒のスピードで優勝した photo:Hideaki TAKAGI

女子ジュニア+女子U17 菅原朱音(倉吉総合産業高)が優勝

WJ 菅原朱音(倉吉総合産業高)が優勝 中冨尚子(千原台高)はWU17優勝WJ 菅原朱音(倉吉総合産業高)が優勝 中冨尚子(千原台高)はWU17優勝 photo:Hideaki TAKAGI
女子ジュニア+女子U17は男子から1分差の同時スタートで3周42.6kmのレース。1周目の上りから菅原朱音(倉吉総合産業高)が先頭固定で踏むと集団が絞られていく。菅原と後続の間が空く場面さえも出てくる。2周目に菅原と中冨尚子(千原台高)の2人で抜け出し3周目を経てフィニッシュへ。菅原がロングスパートで中冨を下して優勝。高校3年の菅原はジュニアで優勝、高校2年早生まれの中冨はU17の勝者となった。

「この全日本のために練習してきた」優勝した菅原朱音(倉吉総合産業高)
「1周目から上りで後ろが離れたので一人で逃げようか考えていましたが、2周目から2人になったのでそこから逃げることができてよかったです。国体が終わってから坂のきついこの全日本のために毎日練習し村出監督の指示も受けながら走りました。進学希望で今後もエリートで活躍できるよう頑張りたいです」

WJ+WU17 1周目、菅原朱音(倉吉総合産業高)が先頭WJ+WU17 1周目、菅原朱音(倉吉総合産業高)が先頭 photo:Hideaki TAKAGIWJ+WU17 1周目上り、菅原朱音(倉吉総合産業高)がペースを上げるWJ+WU17 1周目上り、菅原朱音(倉吉総合産業高)がペースを上げる photo:Hideaki TAKAGI

WJ+WU17 3周目 先頭の菅原朱音(倉吉総合産業高)と中冨尚子(千原台高)WJ+WU17 3周目 先頭の菅原朱音(倉吉総合産業高)と中冨尚子(千原台高) photo:Hideaki TAKAGIWJ+WU17 表彰WJ+WU17 表彰 photo:Hideaki TAKAGI

男子U17+U15 塩島嵩一朗(南大隅高)が優勝

MU17+MU15 塩島嵩一朗(南大隅高)が優勝MU17+MU15 塩島嵩一朗(南大隅高)が優勝 photo:Hideaki TAKAGI
98名で出走の男子U17+U15は2周28.4kmのレース。序盤からアタックがかかるが10秒以上のタイム差にならず集団のまま推移する。前半は小野寺慶(真岡工業高)、日野泰静(松山城南高)、福田圭晃(横浜高)らが動く。後半はインターハイロード覇者の林祐作(名古屋高)が活発にアタックを繰り出す。しかしすべての逃げは吸収されて集団でのスプリント勝負へ。向かい風の中日野が先行し福田が反応。しかし塩島嵩一朗(南大隅高)が伸びて優勝。これに福田、日野らが続いた。

「スプリントに持ち込めれば自信があった」優勝の塩島嵩一朗(南大隅高)
「スプリントは得意です。上りが苦手なのでなんとか集団にいて最後は自信のあるスプリントに持ち込めればと考えていました。周りは強い選手というのはわかっていましたが勝ってやろうという気持ちで臨みました。トラックのケイリンを中心にしているので、次はトラック種目で一番を獲りたいです」

MU17+MU15 スタート前MU17+MU15 スタート前 photo:Hideaki TAKAGIMU17+MU15 林祐作(名古屋高)のアタックに日野泰静(松山城南高)らが反応MU17+MU15 林祐作(名古屋高)のアタックに日野泰静(松山城南高)らが反応 photo:Hideaki TAKAGI

MU17+MU15 塩島嵩一朗(南大隅高)が伸びるMU17+MU15 塩島嵩一朗(南大隅高)が伸びる photo:Hideaki TAKAGIMU17+MU15 表彰MU17+MU15 表彰 photo:Hideaki TAKAGI

結果

男子ジュニア 85.2km
1位 松田祥位(岐阜第一高)2時間18分16秒
2位 曽我部厚誠(京都産業大)
3位 吉岡衛(奈良北高)
4位 重満丈(北中城高)
5位 宇賀隆貴(フィッツ)+01秒
6位 松本大志(高松工芸高)
7位 成海大聖(普天間高)
8位 大町健斗(安芸府中高)
9位 栗原悠(千原台高)
10位 谷和也(市立堺高)+02秒

女子ジュニア+女子U17 42.6km
1位 菅原朱音(倉吉総合産業高)1時間22分59秒
2位 中冨尚子(千原台高) (U17 1位)
3位 成海綾香(南大隅高)+1分58秒
4位 長石悠里(倉吉西高)+1分59秒
5位 根岸恵美(チーム岡山)
6位 石上夢乃(横浜創学館高)+4分10秒

男子U17+U15 28.4km
1位 塩島嵩一朗(南大隅高)43分53秒
2位 福田圭晃(横浜高)
3位 日野泰静(松山城南高)
4位 日野凌羽(松山城南高)
5位 山内渓太(可児高)
6位 長松空吾(別府翔青高)
15位 竹内成(ボンシャンス)+01秒(U15 1位)

photo&text:高木秀彰