協力して逃げたマイヨヴェールとマイヨジョーヌ。ツール・ド・フランス第11ステージの主役を演じたペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)やクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)のコメントを紹介します。



ステージ2勝目を飾ったペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)

ポイント賞ランキングで断トツトップに立ったペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)ポイント賞ランキングで断トツトップに立ったペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ) photo:Kei Tsuji
残り12km地点でアタックしたペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)残り12km地点でアタックしたペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ) photo:Kei Tsujiクリス・フルームとゲラント・トーマス、マチェイ・ボドナールの自分の4人で抜け出してからは会話する余裕なんてなかった。ただ『行け行け行け!!』と言い合っていた。飛び出してすぐに協調してローテーションが回り始めたんだ。今日はボドナールとチームスカイのおかげで勝てたようなもの。いつもは誰も協力してくれないけど、今日は抜群の協力体制を築けたので嬉しかった。

スプリントを制したペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)が悠々と両手を広げるスプリントを制したペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)が悠々と両手を広げる photo:Kei Tsuji最後まで逃げ切ったことは素晴らしい。今日はとにかく風が強く、落車も多くてクレイジーだった。決して予定していたアタックではなかったし、状況が展開を作り出したんだ。マイヨジョーヌとマイヨヴェールが逃げるなんてアンビリーバブル。これが今までで最高のステージ優勝とは言えないけど、間違いなくスペシャルな勝利だ。

個人的にはボドナールに勝って欲しかったけど、フルームがボーナスタイムのためにスプリントする気配を見せたので、確実にステージ優勝できるように自分が行った。今日の自分たちはアクターではなくアーティストだった。走っている本人たちは苦しみの中にいたけど、観客や視聴者にとっては見ていて楽しいレースだったと思う。

フルームにはフィニッシュ後に直接感謝したよ。彼にとっては明日が勝負だ。(モンヴァントゥーが短縮されることを聞いて)え?明日はコースが6km短くなったんだって?いいねぇ(笑)

平坦コースでライバルたちを突き放したクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)

ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)やクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)が逃げるペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)やクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)が逃げる photo:Kei Tsujiサガンと飛び出してから「この動きは本当に価値があるのか?」と自問したけど、今はライバルたちから少しでもリードを奪っておくべき時期。特に最終週の山岳で強さを見せるナイロ(キンタナ)からタイム差を稼ぐチャンスがあるなら必ず動いておくべきだったんだ。この時点でマイヨジョーヌを着ているのは理想的な展開。

タイム差6秒とボーナスタイム6秒を稼いだクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)タイム差6秒とボーナスタイム6秒を稼いだクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:Kei Tsuji下りでのアタックに続いて平坦路でのアタック。プレッシャーに背中を押されて無理やり動いたのではなく、楽しみながらアタックした。今日はチームメイトたちが常に完璧なポジションをキープしてくれた。そのおかげでサガンのアタックに反応することができた。

正直言うと、モンヴァントゥーの登坂が短くなったことはレース展開に大きな影響を及ぼさないと思う。コースが短くなることでレースの強度が上がるだけ。シャレレイナールまでの登りは十分に厳しい。それに今日よりも強い風が吹くならば、登り口までに集団が分裂している可能性もある。

中盤までの登坂でもモンヴァントゥーは特別な存在。そして翌日のタイムトライアルを頭に入れながら走らなければならない。モンヴァントゥーで追い込みすぎると必ず翌日の走りに響く。これからは次の日の走りも考慮に入れた走りが要求される。おそらくライバルたちがタイム差を奪おうとアタックしてくると思う。当然彼らには彼らの戦略がある。でも自分はタイムトライアルを考えながら走りたい。

フルームから12秒失ったナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)

厳しいステージになった。間違いなく今大会最も厳しいステージだった。風が強くて真っ平らなステージで、しかもスプリンターさえ遅れてしまうような展開だった。タイミングよく飛び出したフルームにタイムを奪われてしまったけど、ナーバスなレースをチームが安全に走り抜いたことをポジティブに捉えたい。

オーガナイザーはスペクタクルなショー的要素をレースに取り入れたいのかも知れないけど、選手たちは命をかけて毎日レースを走っている。とくに今日のコースは危険がいっぱいだった。もう少し選手たちの安全を考えてコースを設定してほしい。

明日のモンヴァントゥーは自分に理想的な登りであり、できれば頂上まで行きたかった。でもまだまだ挽回のための山岳は多く残されている。

集団内でフィニッシュするアダム・イェーツ(イギリス、オリカ・バイクエクスチェンジ)集団内でフィニッシュするアダム・イェーツ(イギリス、オリカ・バイクエクスチェンジ) photo:Makoto.AYANOマイヨブランを着るアダム・イェーツ(イギリス、オリカ・バイクエクスチェンジ)

屈強なマシュー・ヘイマンたちが風から守ってくれた。フルームとサガンの走りには脱帽だ。誰かがアタックするとは思っていたけど、まさかフルームが飛び出すとは思っていなかった。現状、毎日少しずつリードを広げているフルームを引き離すのは並大抵のことではない。明日は自分の走りに徹したい。いつも通りの走りができれば優勝争いに加われると思う。

強風のステージを振り返るダニエル・マーティン(アイルランド、エティックス・クイックステップ)

極めてタフなステージだった。残り15kmを切ってからクレイジーな展開になったものの、トニ・マルティンが風よけとして前で走り続けてくれた。フルームからタイムを失ってしまったけど、率直に言って小さなタイム差であり、世界の終わりではない。

モンヴァントゥーの登りで最も厳しいのは前半部分。つまり明日のフィニッシュの難易度は高く、タフなステージになることは間違いない。でも象徴的な登りの頂上まで行けないので寂しくもある。

1分以上遅れたホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)

ちょうどロータリーに差し掛かった時にサガンとフルームが飛び出して、自分は横風区間で遅れてしまった。集団が分裂した時、チームはスプリンターのアレクサンダー・クリストフのために第1集団に人数を集めていたので、後ろに取り残される事態になってしまった。こればかりは仕方がない。

総合上位を狙う気持ちに変わりはないし、ステージ優勝も狙いたい。調子の良さを見せつける時がすぐにやってくると思う。

強風ステージに苦しめられたティボー・ピノ(フランス、FDJ)

落車したティボー・ピノ(フランス、FDJ)が集団復帰を目指す落車したティボー・ピノ(フランス、FDJ)が集団復帰を目指す photo:Kei Tsuji落車による身体的なダメージは小さい。前半に落車してからというもの、後半の横風には苦しめられたよ。隠れるところが一切なくて、とてもリスキーなコースだった。

明日マイヨアポワを着てモンヴァントゥーを走るのが楽しみだ。とにかく登り口まで集団から遅れないようにしないといけない。

ペーター・サガンは世界最高の選手だと思う。他の追随を許さない存在になっている。どんなコースにも対応するし、今日も勝利に値する走りだった。

メカトラでゴールスプリントに入る前に遅れたマーク・カヴェンディッシュ(ディメンションデータ)メカトラでゴールスプリントに入る前に遅れたマーク・カヴェンディッシュ(ディメンションデータ) photo:Makoto.AYANO終盤のメカトラで集団から脱落したマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)

(サガンがアタックして集団が割れた時も)問題なく位置取りできていた。でも誰か他の選手が自分のクランクと接触して、変速がおかしくなった。残念だけどそういうものだ。マイヨヴェールは第一目標ではないし、サガンを倒せる選手なんてそういない。彼は他の選手とは違ったものを持っている。

サガンを讃えるFDJのマルク・マディオ監督

ペーター・サガンはエディ・メルクスの孫だ。今日のステージを含め、開幕からここまで桁違いの活躍を見せている。この先20年も30年も彼のような選手は現れないだろう。型にはまらない特別な選手であり、世界チャンピオンであるだけでなく世界最強のライダーだ。しかも自転車に乗ることを楽しんでいる。

ツール・ド・フランス総合ディレクターのクリスティアン・プリュドム氏ツール・ド・フランス総合ディレクターのクリスティアン・プリュドム氏 photo:Makoto.AYANOモンヴァントゥーの短縮について語るクリスティアン・プリュドム氏

今日モンヴァントゥーの頂上では風速104km/hという猛烈な風を観測した。明日予定通りレースを開催すれば、森を抜けたところでライダーたちは吹き飛ばされるだろう。しかも天気予報によると明日は今日よりも風が強く、頂上は気温4度という厳しい条件になる。すでにアンドラ・アルカリスで選手たちは雹に打たれ、エンヴァリラ峠では濃い霧の中を下った。これは責任感ある主催者の判断だ。

だからと言って頂上と中腹(シャレ・レイナール)の二カ所にフィニッシュラインを引いて「明日になってからどちらにするか決めましょう」なんてことは言えない。今の段階で正しい判断を下したと思っている。シャレ・レイナールはパリ〜ニースではお馴染みのフィニッシュ地点。明日は3月のような天候なのでフィニッシュ地点としてはちょうど良いはず。

登りの距離は短くなったものの、その分アタックは激しさを増すだろう。平均勾配9%の登りが10kmにわたって続くので、決して簡単な登りではない。

text&photo:Kei Tsuji in Montpellier, France