平坦コースでハイスピードバトルを繰り広げるスプリンターたち。過去4年間ポイント賞に輝いているペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)を中心に、マイヨヴェールを争う注目スプリンターたちをピックアップします。



トップスプリンターが競り合う平坦ステージトップスプリンターが競り合う平坦ステージ photo:Tim de Waele


平坦ステージ優勝者に有利なポイント配分

マイヨヴェールのペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)マイヨヴェールのペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ) photo:CorVosグリーンジャージを意味するマイヨヴェールはポイント賞ランキングトップの選手に与えられる特別賞ジャージ。チェコの自動車メーカーで、大会のオフィシャルカーサプライヤーでもあるシュコダがジャージスポンサーを務める。

中間スプリントポイントで飛び出すアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)中間スプリントポイントで飛び出すアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル) photo:Tim de Waeleツール主催者ASOは21あるステージを「平坦」「中級山岳」「上級山岳」「個人TT」の4種類に分類。それぞれ異なるポイント配分を設定している。2015年に「平坦ステージ」の優勝者に多くのポイントが与えられるシステムが導入されたことで、ピュアスプリンターがマイヨヴェール争いにおいてリードを得やすいポイント配分となった。

2011年に変更されたスプリントポイントのポイントシステムは継承。1ステージ・1スプリントポイントに固定されており、スプリントポイントでのポイント配分は全ステージ共通だ(TTを除く)。ポイント通過上位15名まで、「上級山岳ステージ」のゴールと同等のポイントが与えられる。

このスプリントポイントでの獲得ポイントがマイヨヴェール争いに大きな影響を及ぼす。山岳ステージでも、コース前半にスプリントポイントが設定されている場合は、スプリンターチームがレースをコントロールするだろう。山岳ステージで逃げに乗るスプリンターも出てくるはず。上位15名までポイントが与えられるため、10名に満たない逃げグループが形成されている場合は集団前方が活性化する。ポイント賞狙いの選手は1日に2回スプリントすることになる。もちろんスプリントポイントで脚を使えばステージ優勝に影響が出る。平坦ステージでも各チームの思惑が入り乱れそうだ。

また、厳しい山岳ステージを乗り切ることが出来ない限り、マイヨヴェール獲得のチャンスは回って来ない。そのためスプリンターたちはグルペットを形成し、タイムアウトの時間内にゴールを目指す。仮にコミッセールの判断でタイムアウトが救済された場合は、その日のステージ優勝の獲得ポイントと同ポイントが減点される。



ポイント配分(いずれも上位15名に付与)
・平坦ステージ(第1,2,3,4,6,11,14,16,21ステージ)
優勝者50pts、以下30、20、18、16、14、12、10、8、7、6、5、4、3、2pts
・中級山岳ステージ(第5,7,10,12ステージ)
優勝者30pts、以下25、22、19、17、15、13、11、9、7、6、5、4、3、2pts
・上級山岳ステージ(第8,9,15,17,19,20ステージ)
優勝者20pts、以下17、15、13、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1pt
・タイムトライアル(第13,18ステージ)
優勝者20pts、以下17、15、13、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1pt
・スプリントポイント
先頭通過者20pts、以下17、15、13、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1pt



サガンの5年連続マイヨヴェールを阻止するのは誰?

チームメイトを紹介していくペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)チームメイトを紹介していくペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ) photo:Kei Tsuji2012年から4年連続ポイント賞に輝いているのは世界チャンピオンのペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)だ。サガンはピュアスプリンターではなくパンチャー系の脚質であり、ステージの種類に関係なく勝負に絡むことができる。

マルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ)マルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ) photo:Kei Tsujiサガンは2012年にステージ3勝、2013年にステージ1勝を飾っている。ピュアスプリンターが脱落するような中級山岳ステージでもポイントを量産するスタイルでツールのポイント賞ランキングを席巻しているが、過去2年間はステージ0勝。昨年はステージトップ3を7回も経験しており、今年こそステージ優勝を飾りたいところだ。

アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル) photo:Kei Tsuji真っ平らな平坦ステージでは、ジロ・デ・イタリアと同様に、ジャーマンスプリンターが幅を利かすだろう。ジロでステージ2勝を飾ったマルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ)と、同ステージ3勝のアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)が二大巨塔だ。

マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ) photo:Tim de Waeleともに強力なリードアウトマンを従えての出場。マルティン、サバティーニ、リケーゼにリードアウトされるキッテルと、シーベルグ、ルーランズ、ヘンダーソンにリードアウトされるグライペル。直前のドイツ選手権ではグライペルが1位、キッテルが3位だった。

アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ) photo:Tim de Waele2月の交通事故から徐々に調子を戻しているジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)が第3のジャーマンスプリンター。デゲンコルブはブエルタでステージ10勝、ジロでステージ1勝を飾っているが、ツールでの優勝経験はまだない(ステージ2位は5回)。

ブライアン・コカール(フランス、ディレクトエネルジー)ブライアン・コカール(フランス、ディレクトエネルジー) photo:Tim de Waele南アフリカのディメンションデータはオールラウンドなスプリント力を発揮すると見られている。レンショーとアイゼルという心強い相棒を得たマーク・カヴェンディッシュ(イギリス)が平坦ステージでエースを担い、カヴェンディッシュが残れないようなアップダウンコースでは、通算8回目のノルウェー選手権制覇(TTとの二冠)を果たしたばかりのエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー)が勝負する。ツール・ド・ランカウイの総合優勝者レイナルト・ヤンセファンレンズバーグ(南アフリカ)も「登れるスプリンター」だ。

ノルウェー選手権でボアッソンハーゲンに次いで2位に入ったアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)は2014年にステージ2勝。ハラーとグアルニエーリにリードアウトされるクリストフが2年ぶりのステージ優勝を目指す。

フランス期待のナセル・ブアニ(コフィディス)とアルノー・デマール(FDJ)は欠場。ステージ優勝に最も近いのはブライアン・コカール(ディレクトエネルジー)だ。エースナンバーをつけるコカールは昨年パリでステージ2位。過去2年間安定して上位に絡む走りでポイント賞の上位にも入っている。

新城幸也のチームメイトで、ツアー・オブ・ジャパン京都ステージを制したダヴィデ・チモライ(イタリア、ランプレ・メリダ)や、今シーズン目覚ましい活躍で直前のオランダ選手権を制した23歳のディラン・フルーネヴェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ)、昨年ブエルタ・ア・エスパーニャでステージ優勝を飾ったヤスパー・ストゥイフェン(ベルギー、トレック・セガフレード)らも活躍が期待されるピュアスプリンターだ。

サガン同様に、アップダウンコースもこなせるグレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)やマイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・バイクエクスチェンジ)は多くのステージで勝負に絡んでくるだろう。例年よりも山岳ステージの比重が高いことから、彼らにもポイント賞獲得のチャンスは十分にある。



ツール・ド・フランス2015ポイント賞
1位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)          432pts
2位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)           366pts
3位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)       298pts
4位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、エティックス・クイックステップ)206pts
5位 ブライアン・コカール(フランス、ユーロップカー)           152pts
6位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)              139pts
7位 ティボー・ピノ(フランス、FDJ)                   113pts
8位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)           103pts
9位 トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル)           90pts
10位 アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)       90pts



歴代マイヨヴェール受賞者
2015年 ペーター・サガン(スロバキア)
2014年 ペーター・サガン(スロバキア)
2013年 ペーター・サガン(スロバキア)
2012年 ペーター・サガン(スロバキア)
2011年 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス)
2010年 アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア)
2009年 トル・フースホフト(ノルウェー)
2008年 オスカル・フレイレ(スペイン)
2007年 トム・ボーネン(ベルギー)
2006年 ロビー・マキュアン(オーストラリア)
2005年 トル・フースホフト(ノルウェー)
2004年 ロビー・マキュアン(オーストラリア)
2003年 バーデン・クック(オーストラリア)
2002年 ロビー・マキュアン(オーストラリア)
2001年 エリック・ツァベル(ドイツ)
2000年 エリック・ツァベル(ドイツ)
1999年 エリック・ツァベル(ドイツ)
1998年 エリック・ツァベル(ドイツ)
1997年 エリック・ツァベル(ドイツ)
1996年 エリック・ツァベル(ドイツ)
1995年 ローラン・ジャラベール(フランス)
1994年 ジャモリディネ・アブドヤパロフ(ウズベキスタン)
1993年 ジャモリディネ・アブドヤパロフ(ウズベキスタン)
1992年 ローラン・ジャラベール(フランス)
1991年 ジャモリディネ・アブドヤパロフ(ウズベキスタン)
1990年 オラフ・ルードヴィッヒ(ドイツ)

text:Kei Tsuji in Saint-Lo, France