最後の最後で総合表彰台の面々が入れ替わったクリテリウム・ドゥ・ドーフィネ最終ステージ。スティーブ・クミングス(イギリス、ディメンションデータ)がロングエスケープを成功させ、クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)が総合優勝に輝いた。



チームスカイが鉄壁のアシスト体制で登りを進むチームスカイが鉄壁のアシスト体制で登りを進む photo:Tim de Waele


クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ2016第7ステージクリテリウム・ドゥ・ドーフィネ2016第7ステージ image:Criterium du Dauphinéドーフィネ最終日に設定されたカテゴリー山岳は6つ。後半にかけて1級山岳モワシエール(8.3km/平均8.2%)、1級山岳ノワイエ(7.5km/平均8.4%)、3級山岳シュペールデヴォリュイ(3.8km/平均5.9%)が立て続けに登場する。

独走するスティーブ・クミングス(イギリス、ディメンションデータ)独走するスティーブ・クミングス(イギリス、ディメンションデータ) photo:Tim de Waeleこの日も大きな逃げ集団が序盤から先行する。ライダー・ヘシェダル(カナダ、トレック・セガフレード)やトニー・ギャロパン(フランス、ロット・ソウダル)、クミングス、そして山岳賞2位ダニエル・テクレハイマノ(エリトリア、ディメンションデータ)を含む20名の大所帯がメイン集団を引き離し始めた。

独走勝利を飾ったスティーブ・クミングス(イギリス、ディメンションデータ)独走勝利を飾ったスティーブ・クミングス(イギリス、ディメンションデータ) photo:Tim de Waeleテクレハイマノは前半のカテゴリー山岳でポイントを積み重ね、前日のステージ優勝車ティボー・ピノ(フランス、FDJ)から山岳賞トップの座を奪うことに成功する。同じく逃げに乗ったツガブ・グルメイ(エチオピア、ランプレ・メリダ)による追撃は届かず、アフリカ勢による山岳賞争いはテクレハイマノに軍配が上がった。

ステージ優勝を飾ったスティーブ・クミングス(イギリス、ディメンションデータ)ステージ優勝を飾ったスティーブ・クミングス(イギリス、ディメンションデータ) photo:Tim de Waeleチームスカイに代わってエティックス・クイックステップがメイン集団の牽引を開始する中、テクレハイマノの2年連続山岳賞を確信したチームメイトのクミングスが1級山岳モワシエールを前に逃げ集団の中からアタック。フィニッシュまで60kmという距離と3つのカテゴリー山岳を残してクミングスは独走に持ち込んだ。

クミングスは出遅れた逃げメンバーを引き離し、メイン集団とのタイム差をむしろ広げる走りで向かい風が吹く1級山岳モワシエールをクリア。約5分のリードで続く1級山岳ノワイエを駆け上がり、そのまま3級山岳シュペールデヴォリュイの頂上にフィニッシュ。1時間半におよぶ”個人タイムトライアル”でステージ優勝を掴み取った。

「今日は遠くから仕掛けようと心に決めていた。ツール・ド・フランスに向けた乗り込みだと自分に言い聞かせた。最初はトニー・ギャロパンと一緒に逃げたかったものの彼は脱落。誰かが追いついてくることを期待したけど結局は独走になった。厳しい山岳ステージが続いていたので誰もが疲れ切っていた」と、最終的に3分58秒差で逃げ切ったクミングスは語る。

クミングスはティレーノ〜アドリアティコとブエルタ・アル・パイスバスコでも独走逃げ切り勝利を飾っており、35歳になった今もそのスピードはプロトンを恐れさせる存在だ。「今シーズン自分にとってUCIワールドツアー3戦目でステージ3勝目。とても嬉しいよ。ディメンションデータには総合を狙う選手がいないので皆にチャンスが与えられる。そんな良い環境の中で勝利を積み重ねることができる。総合争いは退屈な場合が多いので、ステージ優勝狙いが自分の性格に合っていると思う」。

ディメンションデータはステージ2勝とポイント賞、山岳賞獲得という活躍でドーフィネを終えている。



1級山岳ノワイエでアタックを仕掛けるアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ)1級山岳ノワイエでアタックを仕掛けるアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ) photo:Tim de Waele


1級山岳ノワイエでアタックするダニエル・マーティン(アイルランド、エティックス・クイックステップ)1級山岳ノワイエでアタックするダニエル・マーティン(アイルランド、エティックス・クイックステップ) photo:Tim de Waele1級山岳ノワイエで残りの逃げメンバーを吸収したメイン集団は、総合5位アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ)のアタックによって崩壊する。ダンシングで踏み続けたコンタドールに追いついたのはフルームとリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)、ロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)だけだった。

コンタドール、フルーム、ポート、バルデの4人は後続を15秒引き離して1級山岳ノワイエをクリア。しかしその後の下り&平坦区間で協調体制を築けず、後方からダニエル・マーティン(アイルランド、エティックス・クイックステップ)を含む多くの選手が合流する。復帰したチームスカイのアシスト三人衆(ポエルス、ランダ、エナオモントーヤ)が先頭を固めて最後の3級山岳シュペールデヴォリュイを駆け上がった。

フィニッシュに向かう緩斜面で早めに仕掛ける選手は現れず、16名の精鋭集団がチームスカイを先頭にフラムルージュ。フルームの総合優勝は確定的となったが、総合表彰台を懸けたスプリントが繰り広げられることに。逃げ切ったのがクミングス単独だったため、ステージ2位と3位にはそれぞれボーナスタイム6秒と4秒が与えられる。残り500mで先に仕掛けたのは総合2位のポートと総合4位マーティンだった。

第6ステージ終了時 個人総合成績
1位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)               25h50’22”
2位 リッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)              +21”
3位 ロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)
4位 ダニエル・マーティン(アイルランド、エティックス・クイックステップ)     +30”

左側ラインから一気に加速したマーティンとバルデに対し、右側ラインのポートは前を塞がれて失速。マーティンとバルデがステージ2位とステージ3位に入ってボーナスタイムを獲得した一方で、遅れを挽回できなかったポートは5秒遅れでフィニッシュ。これにより総合順位に逆転が生じ、バルデが総合2位、マーティンが総合3位を射止めた。



ステージ2位に向けてスプリントするダニエル・マーティン(アイルランド、エティックス・クイックステップ)ステージ2位に向けてスプリントするダニエル・マーティン(アイルランド、エティックス・クイックステップ) photo:Tim de Waele


ドーフィネ総合表彰台 2位バルデ、1位フルーム、3位マーティンドーフィネ総合表彰台 2位バルデ、1位フルーム、3位マーティン photo:Tim de Waele「フェンスとの間に挟まれて減速したタイミングでライバルたちがスプリントした。その一瞬で総合表彰台を失ってしまった。よくある話だ。総合表彰台は手堅いと思っていたのに残り500mで落車しそうになって、残念な結果になった。1週間の中で今日は最も良い脚の状態だったけど、締めくくり方を失敗した。おかげで7月に向けてのハングリーな気持ちは上昇している。とにかく今の調子はとても良いので、ツールに向けた準備は順調に進んでいる」と、総合4位でレースを終えたポートは語っている。

3度目の総合優勝を果たしたクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)3度目の総合優勝を果たしたクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:Tim de Waele総合2位フィニッシュのバルデは「ハードな1週間だったけど、毎日調子が上がっていることを実感できた。最後はダニエル・マーティンに食らいつけば総合表彰台は安泰だと思っていた。クリス・フルームに次いでドーフィネ総合2位という結果は自分のキャリアにとってとても重要。ドーフィネで良い結果を残せた年はいつもツールで調子が良いんだ(2014年ドーフィネ5位・ツール6位、2015年ドーフィネ6位・ツール9位)」とコメント。最終的なフルームとのタイム差は12秒だった。

ポイント賞に輝いたエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ)ポイント賞に輝いたエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ) photo:Tim de Waele自身初のドーフィネ総合表彰台に上ったマーティンは「アイルランド人として初のドーフィネ総合表彰台を誇りに思う。とてもスペシャルだ。表彰台について考えていなかったので、フィニッシュ後すぐに2km下山してバスに直行してしまった。チームの献身的な走りでステージ優勝を狙ったけど、今日はスティーブ(クミングス)が強すぎた。そんな中でステージ2位と、ジュリアン・アラフィリップのヤングライダー賞キープも達成したので最高の締めくくりになったよ」と語る。アラフィリップはアダム・イェーツ(イギリス、オリカ・グリーンエッジ)と6秒差でマイヨブランを守り抜いた。

2年連続で山岳賞を獲得したダニエル・テクレハイマノ(エリトリア、ディメンションデータ)2年連続で山岳賞を獲得したダニエル・テクレハイマノ(エリトリア、ディメンションデータ) photo:Tim de Waeleそして総合優勝はフルームの手に。チームスカイは最後まで強力なアシスト体制を崩さなかった。「今日を含めて最後の数日はチーム全体が力を尽くしてくれた。今日も終盤にチームメイトたち(ポエルス、ランダ、エナオモントーヤ)が戻ってきてくれてレースをコントロールしてくれたんだ。でも最後のスプリントは落車が発生しそうなほど白熱して、そこで生まれた差によってリッチー(ポート)が表彰台を逃してしまった。でもリッチーは好調なことを証明したし、ツールでは危険な存在になることは間違いない」とフルーム。

フルームは3度目の総合優勝。2013年と2015年はドーフィネ総合優勝とツール総合優勝を果たしており、当然7月のツールでもその活躍に注目が集まる。「3度目の総合優勝に大きな満足感を得ている。総合表彰台を狙えれば上々という気持ちだったので、こうしてリーダージャージを着て記者会見に臨んでいることを嬉しく思う。この勝利はツールに向けた自信の起爆剤だ。でもまだ7月までにやらなければならないことは残されている。今年はツールの3週目にベストコンディションを持って来るために、あえてレース日数を減らしている。ツール開幕に合わせてさらに調子を上げたい」と、まだまだ100%の調子ではないことを明らかにしている。

選手コメントはレース公式サイトより。



クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ2016第7ステージ結果
1位 スティーブ・クミングス(イギリス、ディメンションデータ)       4h05’06”
2位 ダニエル・マーティン(アイルランド、エティックス・クイックステップ)  +3’58”
3位 ロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)
4位 ワウト・ポエルス(オランダ、チームスカイ)
5位 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・グリーンエッジ)
6位 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ)
7位 ディエゴ・ローザ(イタリア、アスタナ)
8位 ルイス・マインティーズ(南アフリカ、ランプレ・メリダ)
9位 リッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)           +4’03”
10位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)
11位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ)

個人総合成績
1位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)               29h59’31”
2位 ロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)              +12”
3位 ダニエル・マーティン(アイルランド、エティックス・クイックステップ)     +19”
4位 リッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)              +21”
5位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ)               +35”
6位 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ)    +51”
7位 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・グリーンエッジ)             +57”
8位 ディエゴ・ローザ(イタリア、アスタナ)                   +1’13”
9位 ルイス・マインティーズ(南アフリカ、ランプレ・メリダ)           +1’30”
10位 ピエール・ロラン(フランス、キャノンデール)               +2’43”

ポイント賞
1位 エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ)

山岳賞
1位 ダニエル・テクレハイマノ(エリトリア、ディメンションデータ)

ヤングライダー賞
1位 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ)

チーム総合成績
1位 チームスカイ

text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele

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