6月5日から12日までの8日間、フランス南東部でクリテリウム・ドゥ・ドーフィネ(UCIワールドツアー)が開催される。別府史之の他、7月のマイヨジョーヌ候補たちが集結する「ミニ・ツール」の見どころをチェックしておこう。



フランス南部のアルプスを走るフランス南部のアルプスを走る photo:Tim de Waele


本格アルプス山岳も登場する8日間のステージレース

クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ2016プロローグクリテリウム・ドゥ・ドーフィネ2016プロローグ image:Criterium du Dauphiné一般的に「ドーフィネ」として呼ばれるクリテリウム・ドゥ・ドーフィネは、2010年からツールと同じA.S.O.(アモリー・スポーツ・オルガニザシオン)が主催している8日間のステージレース。「クリテリウム」の名前がついているものの、レース形式はクリテリウムではない。

クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ2016第5ステージクリテリウム・ドゥ・ドーフィネ2016第5ステージ image:Criterium du Dauphiné1947年に第1回大会が開催され、長年地元新聞のドーフィネ・リベレ社によって運営されてきた。その名の通りレースの舞台はフランス南東部のドーフィネ地方(現在のイゼール県、ドローム県、オート=アルプ県)で、「ミニ・ツール」と形容されるほど内容の濃いステージレースだ。

クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ2016第6ステージクリテリウム・ドゥ・ドーフィネ2016第6ステージ image:Criterium du Dauphiné何しろ2012年と2013年、2015年はこのドーフィネの総合優勝者がツールの総合優勝に輝いており、ツール本戦に向けた最高のリハーサルの場となる。ツールの前哨戦と呼ばれるだけに、オールラウンダーたちの脚試しに最適な山岳ステージが用意されている。

クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ2016第7ステージクリテリウム・ドゥ・ドーフィネ2016第7ステージ image:Criterium du Dauphiné2016年大会はスイス国境に近い山間の町レ・ジェで開幕。初日は4kmのプロローグだが、一般的な超高速&短距離タイムトライアルではなく、平均勾配9.7%の登りっぱなしタイムトライアル。初日からマイヨジョーヌ候補たちの登坂力を試す。

スプリンター向きの第1ステージを経て、第2ステージは3級山岳シャルマゼル=ジャンサニエール(6.8km/平均3.7%)の山頂フィニッシュが早速登場。緩斜面をトップ選手たちが凄まじいスピードで駆け抜けるだろう。急勾配区間を含む2級山岳セシェラ(2.9km/平均8.2%)を残り16km地点でクリアする第3ステージでも総合変動の可能性はある。

総合争いが決するのは第5ステージから始まるアルプス山岳3連戦だ。中腹にかけてコンスタントに勾配が10%を超える2級山岳ヴォジャニー(6.4km/平均6.5%)を皮切りに山頂フィニッシュが3つ連続する。

中でもクイーンステージとして最も高い難易度を誇るのが最終日前日の第6ステージ。序盤から1級山岳シャンローラン(9.3km/平均8.1%)と2級山岳グランキュシュロン(3.4km/平均6.9%)を立て続けにクリアし、中盤にかけて標高1992mの超級山岳マドレーヌ峠(19.2km/平均7.9%)にアタック。そこからさらに1級山岳モンテー・デ・フラース(8km/平均6.5%)と1級山岳メリベル・レザリュ(12.3km/平均6.6%)を駆け上がってようやくフィニッシュ。獲得標高差4000mオーバーの1日の最後にマイヨジョーヌを着る者がそのまま総合優勝をかっさらい、ツール本戦のマイヨジョーヌ最有力候補になる可能性が高い。

とは言え戦いはまだ終わりではなく、最終日は1級山岳ノワイエ(7.5km/平均8.4%)と3級山岳シュペールデヴォリュイ(3.8km/平均5.9%)のダブルパンチ。例年よりも山岳が厳しいと言われるドーフィネで熾烈な山岳バトルが予想される。



クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ2016ステージリスト
6月5日(日)プロローグ レ・ジェ 4km(山岳TT)
6月6日(月)第1ステージ クリューズ~サン=ヴルバ 186km
6月7日(火)第2ステージ クレッシュシュルソーヌ~シャルマゼル=ジャンサニエール 168km
6月8日(水)第3ステージ ボエン=シュル=リニョン~トゥルノン=シュル=ローヌ 187.5km
6月9日(木)第4ステージ タン=レルミタージュ~ベレー 176km
6月10日(金)第5ステージ ラ・ラヴォワール~ヴォジャニー 140km
6月11日(土)第6ステージ ラ・ロシェット~メリベル 141km
6月12日(日)第7ステージ ル・ポン=ド=クレ~シュペール・デヴォリュイ 151km



フルームやコンタドール、アル、ポートらが激突

クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:CorVos2016年大会には「ツール前哨戦」と呼ぶに相応しいグランツールレーサーが集結する。ディフェンディングチャンピオンとして出場するフルームは2013年と2015年に総合優勝し、その後のツールでも総合優勝。逆にドーフィネで総合12位に終わった2014年はツールでDNFだった。

アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ)アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ) photo:Tim de Waeleシーズン初戦のヘラルドサンツアーで総合優勝したフルームは、3月のボルタ・ア・カタルーニャ総合8位、4月のリエージュ112位。比較的相性の良いツール・ド・ロマンディではパンクに伴うトラブルによって総合争いに絡めなかったが、第4ステージで逃げ切り勝利を飾っている。約1か月ぶりのレース出場で、1ヶ月後に迫ったツールへの仕上がりが気になるところ。クヴィアトコウスキーやエナオモントーヤ、そしてジロを途中リタイアしたランダらがフルームをサポートする。

ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)ファビオ・アル(イタリア、アスタナ) photo:CorVosツールでフルームの最大のライバルになると目されるアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)はヴォルタ・アン・アルガルヴェ総合3位、パリ〜ニース総合2位、ボルタ・ア・カタルーニャ総合2位、ブエルタ・アル・パイスバスコ総合1位と、今シーズンここまで出場したすべてのステージレースで必ず総合表彰台に上る安定感。

リッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)リッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング) photo:Tim de Waele2007年と2009年にツールで総合優勝(2010年の成績は剥奪)しているコンタドールだが、意外にもこのドーフィネで総合優勝の経験はない(2009年総合3位、2010年総合2位、2014年総合2位)。

この二強に挑むのが2015年ブエルタ・ア・エスパーニャ覇者でドーフィネ初出場のファビオ・アル(イタリア、アスタナ)だ。ジロ総合優勝のニーバリではなくアスタナはアルでマイヨジョーヌを狙う考え。しかしアルはアルガルヴェ総合9位、カタルーニャ総合14位、パイスバスコDNF、アムステルゴールドレースDNFと精彩を欠いている。

地元フランスからはティボー・ピノ(FDJ)、ロメン・バルデ(AG2Rラモンディアール)、ピエール・ロラン(キャノンデール)が出場する。2015年はバルデが総合6位フィニッシュ。8年連続で海外勢に奪われているタイトルを取り戻すことができるだろうか。

フルームのアシストからBMCレーシングのチームリーダーに転身したリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)やホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)、バウク・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)、アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・グリーンエッジ)といったオールラウンダーたちも総合上位を狙ってくるだろう。

2月の交通事故から復活したジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)はツアー・オブ・カリフォルニアに続くビッグレース出場。カリフォルニアでは0勝に終わったものの、ツールに向けて徐々に調子は戻しているはず。チームコーチも「彼は自信を取り戻している。リードアウトトレインをテストし、第1ステージと第4ステージで勝利を狙う」と語っている。

デゲンコルブの前に立ちはだかるのはアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)やナセル・ブアニ(フランス、コフィディス)、エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ)ら。アップダウンコースではグレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)やサイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)といったパンチャーも勝負に絡んでくるだろう。

text:Kei Tsuji