雨雲を抜け、晴れ間の広がるフォリーニョのテクニカルコースを攻略したスプリンターによるハイスピードバトル。アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)がステージ2勝目を飾るとともにマリアロッサを手にした。



2級山岳レ・ズヴォルテ・ディ・ポポリでメイン集団をコントロールするNIPPOヴィーニファンティーニ2級山岳レ・ズヴォルテ・ディ・ポポリでメイン集団をコントロールするNIPPOヴィーニファンティーニ photo:Kei Tsuji


5月13日(金)第7ステージ ☆☆ スルモナ〜フォリーニョ 211km5月13日(金)第7ステージ ☆☆ スルモナ〜フォリーニョ 211km image:Giro d'Italiaイタリア半島の内陸部を北上する旅は続く。第7ステージは前半に2級山岳レ・ズヴォルテ・ディ・ポポリ(9km/平均5.5%)、後半に4級山岳ヴァリコ・デッラ・ソンマ(6.7km/平均4.9%)を越えるが、スプリンターにも問題ないレベル。211kmコースを締めくくるのはテクニカルコーナーが連続するフォリーニョのフィニッシュだ。

ステージに上がるNIPPOヴィーニファンティーニステージに上がるNIPPOヴィーニファンティーニ photo:Kei Tsujiレースはスタート直後からアタック合戦開始。2級山岳レ・ズヴォルテ・ディ・ポポリの登りを前にステファン・キュング(スイス、BMCレーシング)とジェイ・マッカーシー(オーストラリア、ティンコフ)、パトリック・グレッチュ(ドイツ、AG2Rラモンディアール)という強力なUCIワールドチームライダー3名が先行したが、NIPPOヴィーニファンティーニがこれを容認しない。

メイン集団から飛び出したダミアーノ・クネゴ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ)メイン集団から飛び出したダミアーノ・クネゴ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ) photo:Kei TsujiNIPPOヴィーニファンティーニは山本元喜を含むメンバーを総動員してメイン集団を率い、マリアアッズーラのダミアーノ・クネゴ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ)を発射。しかしこの動きには山岳賞2位のティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ソウダル)が反応した。

逃げる3名から僅か5秒遅れで2級山岳の山頂に辿り着いた後続はウェレンスが先頭。頂上でのスプリントに敗れたクネゴはマリアアッズーラをウェレンスに明け渡すことになる。

ハイペースで2級山岳を進んだメイン集団は大きく3つに分裂し、マリアローザを含む約50名の第1集団が逃げていたキュング、マッカーシー、グレッチュをキャッチ。雨によって濡れた下りで第1集団と後続とのタイム差は2分まで広がり、レース前半にも関わらず荒れた展開となる。



アブルッツォ州の山岳地帯を走るアブルッツォ州の山岳地帯を走る photo:Kei Tsuji
2級山岳でメイン集団は分裂する2級山岳でメイン集団は分裂する photo:Kei Tsuji今大会最年少の20歳ダニエル・マルティネス(コロンビア、ウィリエール・サウスイースト)が逃げる今大会最年少の20歳ダニエル・マルティネス(コロンビア、ウィリエール・サウスイースト)が逃げる photo:Kei Tsuji
リエーティの街を通過する逃げグループリエーティの街を通過する逃げグループ photo:Kei Tsuji


残り35kmで独走に持ち込んだステファン・キュング(スイス、BMCレーシング)残り35kmで独走に持ち込んだステファン・キュング(スイス、BMCレーシング) photo:Kei Tsujiやがて先頭では再びキュングが飛び出し、アクセル・ドモン(フランス、AG2Rラモンディアール)、ジュリオ・チッコーネ(イタリア、バルディアーニCSF)、ステファン・デニフル(オーストリア、IAMサイクリング)、イリア・コシェヴォイ(ベラルーシ、ランプレ・メリダ)、そして今大会最年少20歳のダニエル・マルティネス(コロンビア、ウィリエール・サウスイースト)が追いついて6名の逃げグループが形成。ここでようやくペースは落ち着き、遅れていた選手たちが集団復帰を果たした。

トレヴィの街を眺める幹線道を独走するステファン・キュング(スイス、BMCレーシング)トレヴィの街を眺める幹線道を独走するステファン・キュング(スイス、BMCレーシング) photo:Kei Tsujiメイン集団のコントロールを担ったのはロット・ソウダルで、FDJも加勢したがエティックス・クイックステップは姿を見せない。集団内で落車したハビエル・モレーノ(スペイン、モビスター)は首にコルセットを装着した状態で病院に搬送されている。

残り6km地点でパンクしたマルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ)残り6km地点でパンクしたマルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ) photo:Kei Tsujiタイム差が着実に縮まる中、4級山岳ヴァリコ・デッラ・ソンマで再びクネゴがメイン集団を飛び出したが、先頭グループには追いつくことができずにポイント圏外の7番手通過に終わる。この4級山岳でマリアロッサのマルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ)は20秒ほどのタイムを失ったが、チームメイトの力を借りて集団に復帰している。

早掛けしたカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)を追って一斉にスプリント早掛けしたカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)を追って一斉にスプリント photo:Kei Tsuji先頭では2015年トラック世界選手権の個人追い抜きで世界チャンピオンに輝いているキュングが個人タイムトライアルを開始する。ハイペースを維持したキュングだったが、束になって襲いかかるスプリンターチームを振りきれずに残り7kmで吸収。

ニッツォロとモードロを振り切るアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)ニッツォロとモードロを振り切るアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル) photo:Kei Tsujiトップスプリンター勢揃いの大集団スプリントに持ち込まれると思われた矢先、残り5kmでキッテルがパンクで脱落してしまう。すぐさまスペアバイクで再スタートしたキッテルだったが、横風基調の追い風に乗って60km/h近いスピードで進むメイン集団には届かなかった。

今大会2勝目を飾ったアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)今大会2勝目を飾ったアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル) photo:Kei Tsuji引き続きロット・ソウダルが集団コントロールを担い、アダム・ハンセン(オーストラリア、ロット・ソウダル)がほぼ先頭固定で高速巡航。残り2kmを切るとランプレ・メリダが先頭を奪い、テクニカルな連続コーナーを抜ける。

残り1kmアーチを切ってユルゲン・ルーランズ(ベルギー、ロット・ソウダル)がグライペルを連れて先頭に上がるも、残り400mでリードアウトが終了。すると横からルーカ・メスゲツ(スロベニア、オリカ・グリーンエッジ)に連れられたカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)が残り150mでスプリントを開始した。

小柄な弾丸ユアンが緩やかな右コーナーの内側を突進したが、外側を走るサーシャ・モードロ(イタリア、ランプレ・メリダ)の後ろからグライペルが上がる。モードロを抜き、ユアンを抜き、そして追いすがるジャコモ・ニッツォロ(イタリア、トレック・セガフレード)を振り切ったグライペルが頭一つ抜け出した状態でフィニッシュラインを駆け抜けた。

第5ステージに続く2勝目を飾り、マリアロッサを手にしたグライペルは「ここまでの7ステージのうちロット・ソウダルが3勝。本当にインプレッシブな成績だ。今日はリードアウトのタイミングが早すぎたものの、うまくモードロの番手に入ることが出来た。2008年にグランツールで初勝利を収めてから今までずっと勝利に絡む走りを出来ていることを嬉しく思う」とコメントする。

ロット・ソウダルはステージ3連勝で、グライペルがマリアロッサ、ウェレンスがマリアアッズーラを着る活躍ぶり。ウェレンスは「次の目標はステージ2勝目なのでマリアアッズーラは本来の目的ではない。これは嬉しいボーナスだ」と語っている。

マリアローザはトム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)がキープ。スプリントで集団が割れたため、総合8位のエステバン・シャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)が9秒を失う結果となっている。



ステージに上がるアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)ステージに上がるアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル) photo:Kei Tsuji
マリアアッズーラを獲得したティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ソウダル)マリアアッズーラを獲得したティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ソウダル) photo:Kei Tsujiスーパーチーム賞を獲得したロット・ソウダルスーパーチーム賞を獲得したロット・ソウダル photo:Kei Tsuji




ジロ・デ・イタリア2016第7ステージ結果
1位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)           5h01’08”
2位 ジャコモ・ニッツォロ(イタリア、トレック・セガフレード)
3位 サーシャ・モードロ(イタリア、ランプレ・メリダ)
4位 カレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
5位 エンリコ・バッタリーン(イタリア、ロットNLユンボ)
6位 マッテオ・トレンティン(イタリア、エティックス・クイックステップ)
7位 アレクサンドル・ポルセフ(ロシア、カチューシャ)
8位 アレクセイ・ツァテヴィツク(ロシア、カチューシャ)
9位 ニコラ・ルッフォニ(イタリア、バルディアーニCSF)
10位 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)
183位 山本元喜(日本、NIPPOヴィーニファンティーニ)           +5’39”

マリアローザ 個人総合成績
1位 トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)        29h23’23”
2位 ヤコブ・フグルサング(デンマーク、アスタナ)               +26”
3位 イルヌール・ザッカリン(ロシア、カチューシャ)              +28”
4位 ボブ・ユンヘルス(ルクセンブルク、エティックス・クイックステップ)    +35”
5位 ステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ)          +38”
6位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)             +41”
7位 ディエゴ・ウリッシ(イタリア、ランプレ・メリダ)
8位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)             +47”
9位 カンスタンティン・シウトソウ(ベラルーシ、ディメンションデータ)     +49”
10位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、キャノンデール)             +51”

マリアロッサ ポイント賞
1位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)            119pts
2位 マルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ)      106pts
3位 アルノー・デマール(フランス、FDJ)                   91pts

マリアアッズーラ 山岳賞
1位 ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ソウダル)             21pts
2位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ)       20pts
3位 アレッサンドロ・ビゾルティ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ)   16pts

マリアビアンカ ヤングライダー賞
1位 ボブ・ユンヘルス(ルクセンブルク、エティックス・クイックステップ)  29h23’58”
2位 ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、キャノンデール)             +1’25”
3位 カルロス・ベローナ(スペイン、エティックス・クイックステップ)      +1’52”

チーム総合成績
1位 アスタナ                               88h12’17”
2位 エティックス・クイックステップ                      +1’23”
3位 チームスカイ

text&photo:Kei Tsuji in Foligno, Italy
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