標高1572mの2級山岳ロッカラーゾにフィニッシュするジロ・デ・イタリア第6ステージでティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ソウダル)が独走勝利。ライバルたちを引き離したトム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)がマリアローザのリードを広げた。



ピンクに彩られた街中を走るプロトンピンクに彩られた街中を走るプロトン photo:Kei Tsuji


5月12日(木)第6ステージ ☆☆☆ ポンテ〜ロッカラーゾ(アレモーニャ)157km5月12日(木)第6ステージ ☆☆☆ ポンテ〜ロッカラーゾ(アレモーニャ)157km image:Giro d'Italia大会最初の山頂フィニッシュが設定されたジロ第6ステージ。前半に標高1393mの2級山岳ボッカ・デッラ・セルヴァ(18km/平均5.6%)を越え、モリーゼ州を経てアブルッツォ州を目指す。フィニッシュ地点は標高1572mの2級山岳ロッカラーゾ(16.75km/平均4.8%)だ。

逃げるアレクサンドル・コロブネフ(ロシア、ガスプロム・ルスヴェロ)ら3名逃げるアレクサンドル・コロブネフ(ロシア、ガスプロム・ルスヴェロ)ら3名 photo:Kei Tsuji朝から激しく降っていた雨は12時50分のスタート前に上がり、晴れ間ののぞく中でレースは始まる。まだ濡れた状態のコースを走り始めてすぐ、第2ステージと第3ステージでも逃げたジャコモ・ベルラート(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ)らがアタック。しかしベルラートらはしばらくしてメイン集団に引き戻される。

2級山岳ボッカ・デッラ・セルヴァを登る2級山岳ボッカ・デッラ・セルヴァを登る photo:Kei TsujiNIPPOヴィーニファンティーニはこの日も逃げに積極的で、続いて飛び出したのはアレッサンドロ・ビゾルティ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ)。ここにアレクサンドル・コロブネフ(ロシア、ガスプロム・ルスヴェロ)とエルゲルト・ズパ(アルバニア、ウィリエール・サウスイースト)が合流して3名の先行が始まるとメイン集団はペースを落とした。

メイン集団からカウンターアタックで飛び出したティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ソウダル)らメイン集団からカウンターアタックで飛び出したティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ソウダル)ら photo:Kei Tsujiタイム差は瞬く間に6分まで拡大。ダミアーノ・クネゴ(イタリア)のマリアアッズーラを守る立場のビゾルティを先頭に標高1393mの2級山岳ボッカ・デッラ・セルヴァ(18km/平均5.6%)をクリアする。4分11秒後方のメイン集団ではクネゴが先頭通過して4ポイントを加算した(結果的にこの4ポイントがジャージキープにつながる)。

最後の山頂フィニッシュまで平穏に進むと思われたが、2級山岳通過後に天候が悪化。テクニカルな下り区間が雨に濡れたためメイン集団はナーバスな状態となり、ミケル・ランダ(スペイン、チームスカイ)が一時的に飛び出すシーンも。ペースアップしたメイン集団は逃げグループの54秒後方まで迫った。

下り区間が終わって天候が回復するとメイン集団はペースダウン。先頭からはコロブネフが脱落し、代わってメイン集団からカウンターアタックで飛び出したティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ソウダル)とピム・リヒハルト(オランダ、ロット・ソウダル)、ローラン・ディディエ(ルクセンブルク、トレック・セガフレード)が合流する。

UCIプロコンチネンタルチーム2名にUCIワールドチーム3名が加わり、メンバーが再編成された5名の逃げがリードを広げながらレース後半に入った。



中世の名残を残す煉瓦造りの街を横目に進む中世の名残を残す煉瓦造りの街を横目に進む photo:Kei Tsuji
先頭グループに追いついたティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ソウダル)先頭グループに追いついたティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ソウダル) photo:Kei TsujiロットNLユンボやランプレ・メリダ、アスタナが集団先頭を固めるロットNLユンボやランプレ・メリダ、アスタナが集団先頭を固める photo:Kei Tsuji
2級山岳ロッカラーゾで飛び出したティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ソウダル)2級山岳ロッカラーゾで飛び出したティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ソウダル) photo:Kei Tsuji


独走するティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ソウダル)独走するティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ソウダル) photo:Kei Tsuji逃げグループの中で総合成績が最も良いのは総合108位のビゾルティ(12分16秒遅れ)。つまりジャイアント・アルペシンにとっては「逃げ切らせても問題無い」メンバーであり、無理に追うことなく残り35km地点でタイム差は9分10秒まで拡大する。

メイン集団から抜け出したヤコブ・フグルサング(デンマーク、アスタナ)とカンスタンティン・シウトソウ(ベラルーシ、ディメンションデータ)メイン集団から抜け出したヤコブ・フグルサング(デンマーク、アスタナ)とカンスタンティン・シウトソウ(ベラルーシ、ディメンションデータ) photo:Kei Tsujiオリカ・グリーンエッジやランプレ・メリダの牽引によってタイム差は縮小したものの、逃げグループは6分30秒のリードで2級山岳ロッカラーゾの登坂を開始した。

メイン集団から飛び出したヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)にトム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)が反応するメイン集団から飛び出したヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)にトム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)が反応する photo:Kei Tsuji残り20kmを切ってから標高差775mを駆け上がる2級山岳ロッカラーゾ。過去に6回登場しているこの2級山岳は勾配が変化するのが特徴で、中盤には平坦区間も登場する。先頭で真っ先にアタックしたディディエはライバルたちを引き離せず、カウンターアタックでウェレンスが先行を開始した。

メイン集団から抜け出したトム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)メイン集団から抜け出したトム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン) photo:Kei Tsuji出遅れたディディエとビゾルティはやがてメイン集団に吸収。ウェレンスはリードを失いながらもペースを崩さず登坂を続け、メイン集団を1分以上引き離したままフィニッシュ。バイクを高く掲げてフィニッシュラインを切った。

メイン集団内では今大会最初の本格的な山岳バトルが繰り広げられ、アスタナのペースアップからヤコブ・フグルサング(デンマーク、アスタナ)がアタックし、カンスタンティン・シウトソウ(ベラルーシ、ディメンションデータ)とともに集団を引き離し始める。

アスタナに代わってモビスターがコントロールを担ったメイン集団はフグルサングとシウトソウを捕まえることが出来ず、頂上まで残り3.5kmを残していよいよ本命ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)が動く。勢いよく飛び出したニーバリだったがチームスカイによって吸収。続いて動いたのはマリアローザだった。

ニーバリのアタックに被せる形で飛び出したドゥムランにはドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、AG2Rラモンディアール)とイルヌール・ザッカリン(ロシア、カチューシャ)だけが合流し、すぐさまフグルサングとシウトソウを吸収する。牽制気味のメイン集団を引き離したマリアローザを含む5名がウェレンスの後ろでフィニッシュへ。フグルサングとザッカリンが競り合いながら1分19秒遅れでフィニッシュした。

マリアローザのドゥムランが1分22秒遅れのステージ4位に入った一方で、アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)は1分36秒遅れ、ミケル・ランダ(スペイン、チームスカイ)やニーバリは1分43秒遅れる結果に。日曜日のタイムトライアルでリードを広げると見られているドゥムランが、大会最初の山頂フィニッシュでライバルたちから更にリードを奪う結果となった。



2級山岳ロッカラーゾにフィニッシュするティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ソウダル)2級山岳ロッカラーゾにフィニッシュするティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ソウダル) photo:Kei Tsuji


ライバルたちを引き離したマリアローザのトム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)ライバルたちを引き離したマリアローザのトム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン) photo:Kei Tsuji「最後の登りは全開だった。まずはピム・リヒハルトに感謝したい」。ロット・ソウダルにステージ2連勝をもたらした25歳のウェレンスは語る。2級山岳を先頭通過したことで山岳ポイントを15ポイント獲得し、山岳賞トップのクネゴまで1ポイント差に迫っている。

ドゥムランから遅れて登るミケル・ランダ(スペイン、チームスカイ)とヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)ドゥムランから遅れて登るミケル・ランダ(スペイン、チームスカイ)とヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ) photo:Kei Tsuji「今日は最初から逃げるつもりだったものの、3名(コロブネフ、ズパ、ビゾルティ)の逃げが決まったので今日は終わったと思った。でもメイン集団が下り区間で分裂した時、トム・ドゥムランに『アタックするなら今だ』と言われたんだ。彼は良き友人であり、一緒に昨年11月のキュラソーでのクリテリウムに出場した仲。すぐには動かなかったけど、ピム・リヒハルトに同じことを言われたのでアタックした。総合リーダーが友人だなんてなかなかあることじゃない。彼のアドバイスは的確だったし、彼がマリアローザを守ったことを嬉しく思う」と、ウェレンスは友人に感謝した。

17分30秒遅れのグルペットでフィニッシュを目指す山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ)17分30秒遅れのグルペットでフィニッシュを目指す山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ) photo:Kei Tsujiライバルたちからリードを奪ったドゥムランは「アタックは予定していなかった。本能に従って動いたんだ。ニーバリのアタックをチームスカイが封じ込めたタイミングだった。自分の走りに驚いたよ。確かに事前に高地トレーニングを行わなかったけど、このジロに向けてしっかり調整してきたことに変わりはない。この先のステージで全てを失うことになるけど、その日が来るまで、マリアローザを守るために走りたい」とコメントする。

大会最初の山頂フィニッシュを終えてドゥムランとバルベルデのタイム差は41秒、ニーバリとのタイム差は47秒、ランダとのタイム差は1分08秒まで広がっている。総合でジャンプアップしたフグルサングやザッカリンも総合争いに名乗りを上げている。

2級山岳ロッカラーゾの麓で遅れたという山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ)は最もボリュームのある79名のグルペット(17分30秒遅れ)でフィニッシュしている。



ステージ優勝を飾ったティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ソウダル)ステージ優勝を飾ったティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ソウダル) photo:Kei Tsuji




ジロ・デ・イタリア2016第6ステージ結果
1位 ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ソウダル)           4h40’05”
2位 ヤコブ・フグルサング(デンマーク、アスタナ)              +1’19”
3位 イルヌール・ザッカリン(ロシア、カチューシャ)
4位 トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)         +1’22”
5位 カンスタンティン・シウトソウ(ベラルーシ、ディメンションデータ)    +1’24”
6位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、AG2Rラモンディアール)
7位 エステバン・シャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)       +1’29”
8位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、キャノンデール)            +1’33”
9位 ラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ)
10位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)           +1’36”
11位 ステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ)
12位 セルゲイ・フィルサノフ(ロシア、ガスプロム・ルスヴェロ)       +1’39”
13位 ボブ・ユンヘルス(ルクセンブルク、エティックス・クイックステップ)  +1’41”
14位 ミケル・ランダ(スペイン、チームスカイ)               +1’43”
15位 ライダー・ヘシェダル(カナダ、トレック・セガフレード)
16位 イゴール・アントン(スペイン、ディメンションデータ)
17位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)
18位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アスタナ)
19位 ディエゴ・ウリッシ(イタリア、ランプレ・メリダ)
20位 アンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター)
171位 山本元喜(日本、NIPPOヴィーニファンティーニ)           +17’30”

マリアローザ 個人総合成績
1位 トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)        24h22’15”
2位 ヤコブ・フグルサング(デンマーク、アスタナ)               +26”
3位 イルヌール・ザッカリン(ロシア、カチューシャ)              +28”
4位 ボブ・ユンヘルス(ルクセンブルク、エティックス・クイックステップ)    +35”
5位 ステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ)          +38”
6位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)             +41”
7位 ディエゴ・ウリッシ(イタリア、ランプレ・メリダ)
8位 エステバン・シャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)        +44”
9位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)             +47”
10位 カンスタンティン・シウトソウ(ベラルーシ、ディメンションデータ)    +49”

マリアロッサ ポイント賞
1位 マルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ)      106pts
2位 アルノー・デマール(フランス、FDJ)                   86pts
3位 マーティン・チャリンギ(オランダ、ロットNLユンボ)            80pts

マリアアッズーラ 山岳賞
1位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ)       18pts
2位 ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ソウダル)             17pts
3位 アレッサンドロ・ビゾルティ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ)   16pts

マリアビアンカ ヤングライダー賞
1位 ボブ・ユンヘルス(ルクセンブルク、エティックス・クイックステップ)  24h20’50”
2位 ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、キャノンデール)             +1’16”
3位 カルロス・ベローナ(スペイン、エティックス・クイックステップ)      +1’43”

チーム総合成績
1位 アスタナ                               73h08’53”
2位 エティックス・クイックステップ                      +1’14”
3位 チームスカイ                               +1’23”

text&photo:Kei Tsuji in Roccaraso, Italy