ヘント〜ウェヴェルヘムでのアントワーヌ・デモアティエ(ベルギー、ワンティ・グループグベルト)の事故死を受け、ベルギーチームが記者会見を開き、落車について、そして今後のレースについて語った。



アントワーヌ・デモアティエ(ベルギー、ワンティ・グループグベルト)アントワーヌ・デモアティエ(ベルギー、ワンティ・グループグベルト) photo:Wanty-Groupe Gobert3月28日にベルギー・デパンヌで開かれた記者会見。ベルギーのヘットンユースブラッド紙によると、チームのヒレール・ファンデルシューレン監督と、選手代表としてローイ・ヤンスが会見に出席した。

アントワーヌ・デモアティエ(ベルギー、ワンティ・グループグベルト)アントワーヌ・デモアティエ(ベルギー、ワンティ・グループグベルト) photo:Wanty-Groupe Gobert「昨日という一日は、カタルーニャで落車したトーマス・デギャンが肘を骨折し、ヘント〜ウェヴェルヘムでシモーネ・アントニーニが手を開放骨折するという悪いニュースから始まり、その後に(デモアティエ事故死という)悲劇が起きた。アントワーヌは集団から下がってきてボトルを要求してきた。チームカーを運転しながら聞いた彼の『ボトルを2本くれ』という言葉が最後の言葉になってしまった。落車が発生したのは離れた場所だったので、アクセル全開で彼のもとに向かった。一見して重大な怪我だということが分かった」とファンデルシューレン監督は語る。

アントワーヌ・デモアティエ(ベルギー、ワンティ・グループグベルト)アントワーヌ・デモアティエ(ベルギー、ワンティ・グループグベルト) photo:Wanty-Groupe Gobert「レースが終わってからリールの病院に直行。病院の廊下でアントワーヌの父親に会い、とても深刻な状態だと聞かれた。しばらく家族と話をして午後9時に病院を離れ、深夜にアントワーヌが亡くなったという一報が入ってきた」。

「今後のレース出場についてアントワーヌの家族に判断を委ねた。彼らはレース出場を続けて欲しいという気持ちを示したので、選手たちと話し合った」とファンデルシューレン監督。

記者会見に出席したヤンスは続ける。「チームで話し合った結果、失意に打ちひしがれている現在の状態では、レースに集中することができないということで一致した。現実を飲み込めないでいる。何が起こったかを理解するために時間が必要だ。忘れることなんてできない。レースに出場するからには100%の状態で、アントワーヌに勝利を捧げるために走りたい」。

チームは3月29日に開幕するデパンヌ・コクサイデ3日間レースを欠場することを決めた。予定されていた4月1日のルート・アデリー・ド・ヴィトレと4月3日のパリ〜カマンベールの出場も取りやめている。ロンド・ファン・フラーンデレンには出場予定だ。

近年ロードレースのプロトン内ではレース関係車両が原因の落車や事故が多発している。2015年シーズンを振り返ると、ツール・ド・フランスでヤコブ・フグルサング(デンマーク、アスタナ)が、ブエルタ・ア・エスパーニャでペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)が、そしてクラシカ・サンセバスティアンでグレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)がモーターバイクに衝突される形で落車。同年ロンド・ファン・フラーンデレンではニュートラルサポートカーがジェシー・サージェント(ニュージーランド、当時トレックファクトリーレーシング)らをはねる事故が発生している。

今シーズンはクールネ〜ブリュッセル〜クールネでスティグ・ブロークス(ベルギー、ロット・ソウダル)がモーターバイクと絡んで鎖骨を骨折。同じ週末に開催されたラ・ドローム・クラシックでもダニーロ・ウィス(スイス、BMCレーシング)がモーターバイクに衝突されている。

度重なる事故と、今回のデモアティエの事故死を受け、選手たちは一斉に状況改善を要求するコメントをTwitterやFacebookなどのSNSを通して発信。その多くは「モーターバイクの台数制限」や「モーターバイクの追い抜きスピードの制限」を求めるものだ。

アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ)は「モーターバイクの規定が必要だ、今すぐ」とコメント。マルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ)は「リスクを伴うスポーツだが、スプリントに向けて競り合う際に発生する落車と、今回のような関係車両が関係する落車はわけが違う。今こそ協力してロードレースの安全性を高める時だ」とコメントしている。

記者会見ではモーターバイクに関する質問も飛んだが、チームの広報担当者は「事故が発生してからまだ時間が経っておらず、まだモーターバイクについて語る段階ではない。(衝突した)モーターバイクのドライバーはとても経験豊かな人物であり、今回は事故であることを強調したい。凄惨な結果ではあるが、事故は事故。彼を責めるつもりはなく、彼を責める立場にもない」とコメントしている。

text:Kei Tsuji