3月21日、歴史ある第96回ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャがスペインで開幕。グランツールを見据えるオールラウンダーが勢ぞろいする7日間のステージレースの初日は集団スプリントに持ち込まれ、直前のミラノ〜サンレモで辛酸を嘗めたナセル・ブアニ(フランス、コフィディス)が勝利した。



曇り空の山岳地帯を走るプロトン曇り空の山岳地帯を走るプロトン photo:Tim de Waele


ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ2016第1ステージボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ2016第1ステージ image: www.voltacatalunya.cat1911年に第1回大会が開催されたボルタ・ア・カタルーニャ(カタルーニャ一周)は、世界でも有数の歴史を持つ1週間のステージレース。その歴史は、ブエルタ・ア・エスパーニャ(1935年〜)よりも古く、ツール・ド・フランス(1903年〜)とジロ・デ・イタリア(1909年〜)と肩を並べるほど。

ディフェンディングチャンピオンのリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)ディフェンディングチャンピオンのリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング) photo:Tim de Waele独自の文化を持つカタルーニャ地方は、バスク地方同様スペインからの独立を訴える自治州の一つ。州都はスペイン第二の都市バルセロナ。一般的にカタルーニャ語が話されており、レースホームページもカタルーニャ語とカスティーリャ語(スペイン語)の2種類が用意されているほど。レース名の「ボルタ」はカタルーニャ語でスペイン語の「ブエルタ」を意味する。

揃って出場するクリス・フルームとゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)揃って出場するクリス・フルームとゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ) photo:Tim de Waele1週間にわたる戦いのうち、総合争いが決するのはピレネー山脈に分け入る2日間。1級山岳ラ・モリーナにフィニッシュする第3ステージと、超級山岳ポルト・アイネにフィニッシュする第4ステージだ。個人タイムトライアルが設定されないためクライマー有利のステージレースだと言える。最終日の第7ステージは州都バルセロナのモンジュイックの丘にフィニッシュする。

カタルーニャ初日を迎えたナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)カタルーニャ初日を迎えたナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) photo:Tim de Waele第96回大会にはツール・ド・フランスでマイヨジョーヌ候補に挙がるオールラウンダーが勢揃い。ゲラント・トーマスとタッグを組むクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)の他、アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ)やナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)、ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)、ロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)、そしてティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ)とリッチー・ポート(オーストラリア)のBMCコンビも出場。

登りをこなすアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ)登りをこなすアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ) photo:Tim de Waele総合優勝経験のあるホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)とダニエル・マーティン(アイルランド、エティックス・クイックステップ)の他にも、クラシックシーズンに向けて調整を続けるフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング)やサイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)も顔を揃える。

集団スプリントを制したナセル・ブアニ(フランス、コフィディス)集団スプリントを制したナセル・ブアニ(フランス、コフィディス) photo:Tim de Waeleまた、2015年のブエルタ・ア・エスパーニャ第8ステージで大怪我を負ったクリス・ボックマンス(ベルギー、ロット・ソウダル)が165日ぶりにレースに復帰。2月のドバイツアーで鎖骨を骨折したベルンハルト・アイゼル(オーストリア、ディメンションデータ)もこのカタルーニャで復帰している。

初日の第1ステージは州都バルセロナの北に位置するカレーリャを発着する175.8kmの定番コース。内陸部を走る後半にかけて1級山岳コルフォルミク(平均勾配5.2%・登坂距離9km)を含む5つのカテゴリー山岳が設定されているものの、スプリンターでもこなせる難易度だ。

レース序盤に先行を開始したキャメロン・マイヤー(オーストラリア、ディメンションデータ)、ルイス・マスボネ(スペイン、カハルーラル)、ボリス・ドロン(ベルギー、ワンティ・グループグベルト)が最大6分リードでエスケープ。

しかしチームスカイやモビスターが積極的にメイン集団を率いたため、逃げグループは1級山岳コルフォルミクの登りでリードを失う。先頭で頂上を通過したマイヤーを含め、フィニッシュまで50kmを残して逃げは捕らえられた。

地中海に面したスタート/フィニッシュ地点カレーリャとは打って変わって内陸部は雨降り。続く急勾配の2級山岳モンセニー峠でルイス・フェルファーク(ベルギー、ロット・ソウダル)らが新たに飛び出して逃げグループを形成する。メイン集団は登りで分裂したが、チームスカイの牽引によって残り30kmで逃げを吸収した。

その後もアタックが続発する展開で、残り5kmからニコラス・ロッシュ(アイルランド、チームスカイ)が独走に持ち込むも、残り1.5kmでスプリンターチーム率いる大集団に吸収。オリカ・グリーンエッジがスプリントに向けてトレインを走らせ、ダリル・インピー(南アフリカ、オリカ・グリーンエッジ)とベン・スウィフト(イギリス、チームスカイ)が好位置からスプリントを開始した。

道幅のあるカレーリャの幹線道路は若干の登り基調。ミラノ〜サンレモで2位に入ったばかりのスウィフトが先行するも、その後ろから赤いジャージが勢いよく追い上げる。スプリント中のチェーン落ちによってミラノ〜サンレモ制覇を逃したブアニが圧倒的なスピードで勝利した。

「夢見ていたミラノ〜サンレモでの勝利を目の前にして、生まれて初めてスプリントでチェーンが落ちた。今日の勝利で少しは気が晴れたけど、その記憶は消し去ることができない」と、ブアニは2日前のサンレモでの悪夢を振り返る。今シーズン3勝目を飾った25歳はこの先の平坦ステージでも存在感を見せるだろう。

フルームやコンタドールをはじめとするトップレーサーがブアニと同タイム集団でフィニッシュした一方で、病明けのトム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)やライダー・ヘシェダル(カナダ、トレック・セガフレード)は6分43秒遅れでフィニッシュしている。

選手コメントはチーム公式サイトより。



リーダージャージを獲得したナセル・ブアニ(フランス、コフィディス)リーダージャージを獲得したナセル・ブアニ(フランス、コフィディス) photo:Tim de Waele


ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ2016第1ステージ結果
1位 ナセル・ブアニ(フランス、コフィディス)                4h28’51”
2位 ベン・スウィフト(イギリス、チームスカイ)
3位 ダリル・インピー(南アフリカ、オリカ・グリーンエッジ)
4位 エンリーコ・ガスパロット(イタリア、ワンティ・グループグベルト)
5位 アレクセイ・ツァテヴィッチ(ロシア、カチューシャ)
6位 カルロス・バルベーロ(スペイン、カハルーラル)
7位 ヨルディ・シモン(スペイン、ベルバ・アクティブジェット)
8位 ケヴィン・レザ(フランス、FDJ)
9位 エドゥアルド・プラデス(スペイン、カハルーラル)
10位 ゲオルグ・プレイドラー(オーストリア、ジャイアント・アルペシン)

個人総合成績
1位 ナセル・ブアニ(フランス、コフィディス)                4h28’41”
2位 ベン・スウィフト(イギリス、チームスカイ)                 +04”
3位 ダリル・インピー(南アフリカ、オリカ・グリーンエッジ)           +06”
4位 ルイス・フェルファーク(ベルギー、ロット・ソウダル)            +07”
5位 ハビエル・モレーノ(スペイン、モビスター)                 +08”
6位 ルーベン・フェルナンデス(スペイン、モビスター)              +09”
7位 キャメロン・マイヤー(オーストラリア、ディメンションデータ)
8位 エンリーコ・ガスパロット(イタリア、ワンティ・グループグベルト)      +10”
9位 アレクセイ・ツァテヴィッチ(ロシア、カチューシャ)
10位 カルロス・バルベーロ(スペイン、カハルーラル)

山岳賞
1位 キャメロン・マイヤー(オーストラリア、ディメンションデータ)

スプリント賞
1位 ルイス・フェルファーク(ベルギー、ロット・ソウダル)

ヤングライダー賞
1位 ルイス・フェルファーク(ベルギー、ロット・ソウダル)

チーム総合成績
1位 ジャイアント・アルペシン

text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele

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