フラムルージュを越えてなおも逃げるシャヴァネルら3名。しかし最後は大集団によるスプリント勝負に持ち込まれ、ナセル・ブアニ(フランス、コフィディス)が前々日の借りを返す勝利を飾った。



ボジョレーの丘をスタートするプロトンボジョレーの丘をスタートするプロトン photo:Tim de Waele


パリ〜ニース2016第4ステージパリ〜ニース2016第4ステージ image:A.S.O.8日間の日程で開催されているパリ~ニースも後半戦に突入。第4ステージはその名の通りローヌ川が流れるローヌ県を一路南下。大都市リヨンの郊外をかすめてドローム県のロマン=シュル=イゼールにフィニッシュする。

逃げるマット・ブラマイヤー(アイルランド、ディメンションデータ)ら4名逃げるマット・ブラマイヤー(アイルランド、ディメンションデータ)ら4名 photo:Tim de Waele雪によってレースキャンセルという措置が取られた冬日から一夜明けて第4ステージ当日は晴れ。5km地点で形成されたトマ・ヴォクレール(フランス、ディレクトエネルジー)、エヴァルダス・シシュケヴィチュス(リトアニア、デルコ・マルセイユプロヴァンス)、マット・ブラマイヤー(アイルランド、ディメンションデータ)、フロリアン・ヴァション(フランス、フォルトゥネオ・ヴァイタルコンセプト)による4名の逃げを、オリカ・グリーンエッジやカチューシャ、コフィディス、エティックス・クイックステップが追いかける形でレースは進行する。

粘り強く独走するトマ・ヴォクレール(フランス、ディレクトエネルジー)粘り強く独走するトマ・ヴォクレール(フランス、ディレクトエネルジー) photo:Tim de Waele別府史之と同じくフランスのラポム・マルセイユで経験を積み、今大会2度目の逃げを試みた27歳のリトアニア人シシュケヴィチュスが前半から動く。3級山岳を連続で先頭通過したシシュケヴィチュスは山岳賞ジャージ獲得。レース後にシシュケヴィチュスは「山岳賞ジャージを着て(第5ステージの)モンヴァントゥーを登るなんて誇らしい気分だ」と語っている。

全長195.5kmコースの中で勝負の行方を左右したのは残り32km地点の2級山岳サントゥーズ(平均勾配7%/登坂距離2.7km)だった。タイム差が1分を割り込む中、先頭ではヴォクレールが独走を開始し、一方のメイン集団ではマルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ)やアルノー・デマール(フランス、FDJ)が脱落する(デマールはその後リタイア)。落車に巻き込まれたゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)やタイミング悪くパンクしたアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)も一時的に脱落したものの、両者ともに集団復帰を果たしている。

2級山岳サントゥーズの頂上を越えてもなお力強い走りで逃げたヴォクレール。メイン集団からはネイサン・ハース(オーストラリア、ディメンションデータ)が飛び出したが、下りコーナーでオーバーランして牧草地にダイブ。チームの発表によるとハースは大怪我を免れたがリタイアを余儀なくされた。



レース終盤に逃げるシルヴァン・シャヴァネル(フランス、ディレクトエネルジー)レース終盤に逃げるシルヴァン・シャヴァネル(フランス、ディレクトエネルジー) photo:Tim de Waele


テウンスを抜いて先頭に立つナセル・ブアニ(フランス、コフィディス)テウンスを抜いて先頭に立つナセル・ブアニ(フランス、コフィディス) photo:Tim de Waele先頭で粘り続けるヴォクレールが視界に入ったところでメイン集団からはカウンターアタックが連発する。クラシックシーズンに向けて調子を上げるセプ・ファンマルク(ベルギー、ロットNLユンボ)とデリオ・フェルナンデス(スペイン、デルコ・マルセイユプロヴァンス)が抜け出しに成功したところでシルヴァン・シャヴァネル(フランス、ディレクトエネルジー)もジョインし、そのままヴォクレールまでブリッジをかける。ツール・ド・フランス出場を決めているディレクトエネルジー(元ユーロップカー)のベテラン2名がレースを沸かす。

スプリント勝利を飾ったナセル・ブアニ(フランス、コフィディス)スプリント勝利を飾ったナセル・ブアニ(フランス、コフィディス) photo:Tim de Waeleやがてヴォクレールが力つきると先頭はシャヴァネル、ファンマルク、フェルナンデスの3名に。カチューシャとコフィディスのダブルレッドチームがメイン集団を率いたものの、コーナーが連続するコースは逃げに味方する。逃げメンバーが強力かつフレッシュなため、タイム差は15秒と20秒を行ったり来たり。

リーダージャージを守ったマイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)リーダージャージを守ったマイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) photo:Tim de Waeleおよそ100名のメイン集団から5秒リードのままフラムルージュをくぐった先頭3名。しかしスプリンターチームを振り切ることは出来ずに残り400mで吸収される。コーナーが続いたため集団が伸び、後方からの追い上げが難しく、ポジション取りが鍵を握ったスプリント勝負。最終リードアウト役のクリストフ・ラポルト(フランス、コフィディス)に無賃乗車したエドワード・テウンス(ベルギー、トレック・セガフレード)が最初に仕掛けた。

テウンスを追撃したのはナセル・ブアニ(フランス、コフィディス)、アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)、アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)という面々。その中から抜群の加速を見せたブアニがテウンスをかわし、ライバルを突き放すスプリントで勝利した。

「終盤までチームメイト4人に守られて走っていた。第2ステージの降格処分へのリベンジという思いが頭の中にあった」と、今シーズン2勝目を飾った元ボクサーは語る。ブアニは3月19日のミラノ〜サンレモに出場予定。ブアニは2015年の同大会に初出場し、6位の成績を収めている。「調子は少しずつ上がってきている。このパリ〜ニースは目標であるミラノ〜サンレモに向けての理想的な準備レースだ」。

リーダージャージを着るマイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)はステージ5位。「昨日はたった100km足らずのレースだったけど、距離以上に疲労がたっぷり貯まっていたので今日は体力温存に徹した。今日は落車も頻発したし、安全に走りきることを優先したんだ。明日はおそらくモンヴァントゥーを乗り切れると思う。ピュアスプリンターたちが遅れる展開になればチャンスだ」と予想する。

第5ステージはモンヴァントゥーの中腹まで登る1級山岳シャレーレイナール(登坂距離9.5km/平均勾配9.3%)を経て、そこからさらに2級山岳を3つ越えてフィニッシュ。少人数の逃げ切りもしくは小集団スプリントに持ち込まれるだろう。



今シーズン2勝目を飾ったナセル・ブアニ(フランス、コフィディス)今シーズン2勝目を飾ったナセル・ブアニ(フランス、コフィディス) photo:Tim de Waele



パリ~ニース2016第4ステージ結果
1位 ナセル・ブアニ(フランス、コフィディス)                   4h42’29”
2位 エドワード・テウンス(ベルギー、トレック・セガフレード)
3位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)
4位 アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)
5位 マイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
6位 ベン・スウィフト(イギリス、チームスカイ)
7位 ニコラス・マース(ベルギー、エティックス・クイックステップ)
8位 トニー・ギャロパン(フランス、ロット・ソウダル)
9位 ヨウセフ・レグイグイ(アルジェリア、ディメンションデータ)
10位 ロイ・カーヴァス(オランダ、ジャイアント・アルペシン)
80位 別府史之(日本、トレック・セガフレード)

個人総合成績
1位 マイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)        14h24’15”
2位 トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)              +14”
3位 パトリック・ベヴィン(ニュージーランド、キャノンデール)             +19”
4位 ヨン・イサギーレ(スペイン、モビスター)
5位 ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)
6位 リエーベ・ヴェストラ(オランダ、アスタナ)                    +24”
7位 ドリス・デヴェナインス(ベルギー、IAMサイクリング)               +25”
8位 ラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ)                    +27”
9位 リッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)
10位 ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ソウダル)                 +28”

ポイント賞
1位 マイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)

山岳賞
1位 エヴァルダス・シシュケヴィチュス(リトアニア、デルコ・マルセイユプロヴァンス)

チーム総合成績
1位 モビスター

text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele

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