107kmのショートコースで行われたツール・ド・ランカウイ第3ステージ。愛三工業レーシングの黒枝士揮と福田真平がそれぞれ6位と7位に入るスプリントで、ジョン・マーフィー(アメリカ、ユナイテッドヘルスケア)が勝利を収めた。



アブラヤシのプランテーションを進むアブラヤシのプランテーションを進む photo:Kei Tsuji
福田真平とともに平坦ステージでエースを担う黒枝士揮(愛三工業レーシング)福田真平とともに平坦ステージでエースを担う黒枝士揮(愛三工業レーシング) photo:Kei Tsuji屋台の軒先を借りてスタートの準備をする愛三工業レーシング屋台の軒先を借りてスタートの準備をする愛三工業レーシング photo:Kei Tsuji


クリムをスタートしていく選手たちクリムをスタートしていく選手たち photo:Kei Tsujiまだ朝も明けやらぬ時間にホテルを出発した前日とは打って変わって、ペナン島でゆったりとした朝を迎えた選手たち。それもそのはずツール・ド・ランカウイ第3ステージのスタート時間は(前日のフィニッシュ時間よりも遅い)午後3時。これは毎週金曜日がイスラム教の礼拝の日にあたるためだ。なお、マレーシアでは国民の60%強が信仰する国教のイスラム教の他にも仏教やヒンドゥー教、キリスト教の信仰も認められており、コースの沿道にはモスクの他にも各宗教の寺院が立ち並んでいる。

アスタナとティンコフが協力してメイン集団をコントロールするアスタナとティンコフが協力してメイン集団をコントロールする photo:Kei Tsujiディメンションデータなど数チームは毎日のリズムを崩さないために午前中に軽くライドを行い、支度をしてスタート地点クリムの街へ。クアラカングサルまでの107kmコースは獲得標高差500mほどの平坦コース。残り15km地点に設定された4級山岳(平均勾配4%/登坂距離2.2km)がこの日の唯一とも言える難所だ。

逃げるジェームス・オラム(ニュージーランド、ワンプロサイクリング)、ゴー・チョンヒュアト(シンガポール、トレンガヌプロサイクリング)、ホアンマルチェロ・ペレイラ(ブラジル、ファンヴィクソウルサイクルズ)逃げるジェームス・オラム(ニュージーランド、ワンプロサイクリング)、ゴー・チョンヒュアト(シンガポール、トレンガヌプロサイクリング)、ホアンマルチェロ・ペレイラ(ブラジル、ファンヴィクソウルサイクルズ) photo:Kei Tsuji翌日にキャメロンハイランド山頂フィニッシュが控えていることもあり、連日活発に動いていたワン・メイイン(中国、ヘンシャンサイクリング)らはアタックせず。最高気温35度のうだるような暑さの中、アブラヤシのプランテーションを縫うように進むうち、先頭では3名の逃げが決まった。

アメリカのUCIコンチネンタルチームであるアクションサイクリング出身で、2015年ロード世界選手権U23タイムトライアル6位の22歳ジェームス・オラム(ニュージーランド、ワンプロサイクリング)が逃げに乗る。ゴー・チュンフアット(シンガポール、トレンガヌプロサイクリング)とホアンマルチェロ・ペレイラ(ブラジル、ファンヴィクソウルサイクルズ)とともに逃げグループを形成し、暑いマレー半島の内陸部を一路南下した。

貴重なアシスト2人をローテーションに送り込んだアスタナの他、この日はティンコフが序盤から集団コントロールに加わる。ステージ距離の短さから先頭3名のリードは3分台に押さえ込まれる。最後の4級山岳に向けた登りが始まる頃には、タイム差は1分台にまで縮まっていた。



集団中程に位置する愛三工業レーシング集団中程に位置する愛三工業レーシング photo:Kei Tsuji
ジェームス・オラム(ニュージーランド、ワンプロサイクリング)が積極的に逃げを率いるジェームス・オラム(ニュージーランド、ワンプロサイクリング)が積極的に逃げを率いる photo:Kei Tsujiティンコフとアスタナを先頭に逃げを追うティンコフとアスタナを先頭に逃げを追う photo:Kei Tsuji
アスタナがメイン集団を1日中コントロールするアスタナがメイン集団を1日中コントロールする photo:Kei Tsujiワインディングで縦に長く伸びるメイン集団ワインディングで縦に長く伸びるメイン集団 photo:Kei Tsuji
タイピンの街をツール・ド・ランカウイが進むタイピンの街をツール・ド・ランカウイが進む photo:Kei Tsuji


ツール・ド・ランカウイを熱く歓迎する子供たちツール・ド・ランカウイを熱く歓迎する子供たち photo:Kei Tsuji4級山岳で先頭からペレイラが脱落し、オラムとチュンフアットが引き続き逃げ続ける(何故か敢闘賞は最初に脱落したペレイラの手に)。1分リードで頂上をクリアした2人を、ディメンションデータやティンコフ、アスタナ、サウスイースト、チームロス、ドラパック率いるメイン集団が追いかける。

ミカル・コラー(スロバキア、ティンコフ)を先頭にスプリントが始まるミカル・コラー(スロバキア、ティンコフ)を先頭にスプリントが始まる photo:Kei Tsujiニュージーランドの次世代オールラウンダーとして属望されるオラムが先頭固定で追い風基調の平坦路を踏み続けたが、その後ろからスプリンターチームが束になって襲いかかる。4級山岳からフィニッシュまで平均スピード60km/h弱で駆け抜けたメイン集団が、ちょうど残り1kmアーチ通過とともにオラムとチュンフアットを飲み込んだ。

先頭でフィニッシュラインに向かうジョン・マーフィー(アメリカ、ユナイテッドヘルスケア)先頭でフィニッシュラインに向かうジョン・マーフィー(アメリカ、ユナイテッドヘルスケア) photo:Kei Tsujiエリック・バスカ(スロバキア、ティンコフ)を先頭に最終コーナーを抜け、残り300mからミカル・コラー(スロバキア、ティンコフ)がロングスプリントに持ち込む。単独でポジション取りしたリーダージャージのアンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ)は8番手前後から追い上げたものの届かない。

集団スプリントを制したジョン・マーフィー(アメリカ、ユナイテッドヘルスケア)集団スプリントを制したジョン・マーフィー(アメリカ、ユナイテッドヘルスケア) photo:Kei Tsuji先行するコラーを追い抜いたのはジョン・マーフィー(アメリカ、ユナイテッドヘルスケア)とフランチェスコ・キッキ(イタリア、アンドローニジョカトリ)の2人。最後までスプリントが伸びたのは、右半身が白く、左半身が青いデザインのマーフィーだった。

ステージ7位に入った福田真平(愛三工業レーシング)ステージ7位に入った福田真平(愛三工業レーシング) photo:Kei Tsuji「今日はチームメイトにエスコートされて、常にポールポジションで走った。絶好の位置で最終コーナーをクリアして、完璧なリードアウトを受けてスプリント。ドラッグレースのような力と力のぶつかり合いだった」と、先頭でフィニッシュラインを切ったマーフィーは語る。31歳の大柄なスプリンターがジェイコ・ヘラルドサンツアー第3ステージに続く今シーズン2勝目を飾った。

「2人で声を掛け合いながらどちらが先行してもいいように、ダブルエースという形をとっています」という愛三工業レーシングの黒枝士揮と福田真平もスプリントに絡み、それぞれ別ラインでもがいて6位と7位でフィニッシュした。

福田は「4級山岳を越えてから常にハイスピードでしたが、ずっと集団の前に位置取り出来ていました。基本的に自分と(黒枝)士揮の2人で位置取りして、最後は残り2kmぐらいから綾部さんに助けてもらって前に上がりました」とスプリントに向けての動きを振り返る。

「3人でまとまって(残り600mの)最終コーナーを10番手あたりでクリア。単騎のグアルディーニの後ろに控えていたんですが、彼自身ポジションはよくなくて、先行していた選手にそのまま行かれる形になってしまった」とチーム新加入ながらスプリントで重要な役割を担う黒枝は語る。福田は「まとまって動けているし、まだまだ上を狙える。明日は山岳の選手のアシストをして、まだ第5ステージからポイント圏内の3位以上を狙います」と締めくくった。



フィニッシュ後の放水を浴びるフランシスコ・マンセボ(スペイン、スカイダイブドバイ)フィニッシュ後の放水を浴びるフランシスコ・マンセボ(スペイン、スカイダイブドバイ) photo:Kei Tsuji
ステージ6位に入った黒枝士揮(愛三工業レーシング)ステージ6位に入った黒枝士揮(愛三工業レーシング) photo:Kei Tsujiステージ6位と7位に入った黒枝士揮と福田真平(愛三工業レーシング)ステージ6位と7位に入った黒枝士揮と福田真平(愛三工業レーシング) photo:Kei Tsuji
ステージ優勝を飾ったジョン・マーフィー(アメリカ、ユナイテッドヘルスケア)ステージ優勝を飾ったジョン・マーフィー(アメリカ、ユナイテッドヘルスケア) photo:Kei Tsujiリーダージャージのアンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ)が記者会見に臨むリーダージャージのアンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ)が記者会見に臨む photo:Kei Tsuji


ツール・ド・ランカウイ2016第3ステージ結果
1位 ジョン・マーフィー(アメリカ、ユナイテッドヘルスケア)       2h30’31”
2位 フランチェスコ・キッキ(イタリア、アンドローニジョカトリ)
3位 ヤコブ・マレツコ(イタリア、サウスイースト)
4位 ミカル・コラー(スロバキア、ティンコフ)
5位 アンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ)
6位 黒枝士揮(日本、愛三工業レーシング)
7位 福田真平(日本、愛三工業レーシング)
8位 ブレントン・ジョーンズ(オーストラリア、ドラパック)
9位 パオロ・シミオン(イタリア、バルディアーニCSF)
10位 アンドレア・パリーニ(イタリア、スカイダイブドバイ)

個人総合成績
1位 アンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ)          10h42’14”
2位 アンドレア・パリーニ(イタリア、スカイダイブドバイ)          +02”
3位 ジョン・マーフィー(アメリカ、ユナイテッドヘルスケア)         +06”
4位 ジェームス・オラム(ニュージーランド、ワンプロサイクリング)      +10”
5位 ワン・メイイン(中国、ヘンシャンサイクリング)
6位 レイナルト・ヤンセファンレンズバーグ(南アフリカ、ディメンションデータ)+12”
7位 ヤコブ・マレツコ(イタリア、サウスイースト)
8位 ミカル・コラー(スロバキア、ティンコフ)                +16”
9位 パオロ・シミオン(イタリア、バルディアーニCSF)
10位 カロル・ドマガルスキー(ポーランド、ワンプロサイクリング)
26位 伊藤雅和(日本、愛三工業レーシング)                 +22”
49位 平塚吉光(日本、愛三工業レーシング)                 +27”

ポイント賞
1位 アンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ)

山岳賞
1位 ワン・メイイン(中国、ヘンシャンサイクリング)

アジアンライダー賞
1位 ワン・メイイン(中国、ヘンシャンサイクリング)

text&photo:Kei Tsuji in Ipoh, Malaysia

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