ペナン島にフィニッシュするツール・ド・ランカウイ第2ステージは小集団によるスプリント勝負に。リーダージャージを着るアンドレア・グアルディーニ(アスタナ)との接戦スプリントでアンドレア・パリーニ(スカイダイブドバイ)が勝利した。



全長24kmのペナン第2大橋を渡るメイン集団全長24kmのペナン第2大橋を渡るメイン集団 photo:Kei Tsuji
朝日に照らされながら日焼け止めをスプレー朝日に照らされながら日焼け止めをスプレー photo:Kei Tsuji愛三工業レーシングを指揮する別府匠監督愛三工業レーシングを指揮する別府匠監督 photo:Kei Tsuji


ペナン島にわたるコースの地図を改めて確認ペナン島にわたるコースの地図を改めて確認 photo:Kei Tsujiランカウイ島をパスした2016年のツール・ド・ランカウイは、マラッカ海峡に浮かぶペナン島を訪れる。面積は小豆島や奥尻島の約2倍(西表島と同じぐらい)で、約70万人が住む離島にツール・ド・ランカウイが上陸するのは2004年以来12年ぶりだ。

午前9時にレースはスタート午前9時にレースはスタート photo:Kei Tsujiマレー半島とは長さ13.5kmのペナン橋と、長さ24kmのペナン第2大橋(スルタンアブドルハリムムアドザムシャー橋)で結ばれている。レースが通過するためには交通量の多い橋を封鎖する必要があるため疎遠な関係にあったが、2014年3月に総工費45億リンギット(約1,200億円)を投じた第2大橋が開通したことでレース通過が可能となった。

朝陽に向かうプロトンが0km地点に差し掛かる朝陽に向かうプロトンが0km地点に差し掛かる photo:Kei Tsuji第2ステージはスンガイペタニを発ってからこの第2大橋を渡り、ペナン島西部の山岳地帯をぐるりと回って同島最大の都市ジョージタウンにフィニッシュする。

この日も逃げグループの中にはワン・メイイン(中国、ヘンシャンサイクリング)とロー・シーキョン(マレーシア、マレーシアナショナルチーム)の姿があった。揃って2日連続逃げを試みた2人の伴侶はゴン・ヒュソク(韓国、KSPO)、モハマドバクリ・ソフィアンナビル(マレーシア、NSCマイクロン)、ジャマリディン・ナバルディアント(インドネシア、ペガサスコンチネンタル)の3人。

レース前半に設定された3つの中間スプリントを全て先頭通過したワンは、ステージ上位に加わることなくポイント賞トップに立っている。さらにワンはレース後半の連続山岳をいずれも先頭通過。結局はメイン集団に捕まることになるが、ワンはポイント賞、山岳賞、アジアンライダー賞の三賞ジャージを獲得することに成功している。



逃げグループから4分遅れでペナン第2大橋を渡るメイン集団逃げグループから4分遅れでペナン第2大橋を渡るメイン集団 photo:Kei Tsuji
ペナン第2大橋を渡る逃げグループペナン第2大橋を渡る逃げグループ photo:Kei Tsuji全長24kmのペナン第2大橋を渡るメイン集団全長24kmのペナン第2大橋を渡るメイン集団 photo:Kei Tsuji
ペナン島西部の山岳地帯を進むペナン島西部の山岳地帯を進む photo:Kei Tsuji


3級山岳で飛び出したヨハン・ヴァンジル(南アフリカ、ディメンションデータ)ら3級山岳で飛び出したヨハン・ヴァンジル(南アフリカ、ディメンションデータ)ら photo:Kei Tsujiペナン第2大橋での海風を心配する声がスタート前にあがっていたものの、危険は横風は吹かず、集団分裂を起こすようなペースアップも見られず。アスタナがコントロールするメイン集団は、逃げグループとのタイム差を詰めながら4級山岳バリクプラウ(平均勾配2%)を越え、この日最大の難所である残り29km地点の3級山岳テロクバハン(平均勾配5%)に向かう。

ルッフォニやペイジらが落車する中、アンドレア・パリーニ(イタリア、スカイダイブドバイ)とアンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ)がスプリントルッフォニやペイジらが落車する中、アンドレア・パリーニ(イタリア、スカイダイブドバイ)とアンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ)がスプリント photo:Kei Tsuji3級山岳テロクバハンでヨハン・ヴァンジル(南アフリカ、ディメンションデータ)やイヴァン・サンタロミータ(イタリア、スカイダイブドバイ)、ルーカ・キリコ(イタリア、バルディアーニCSF)らがメイン集団から飛び出して逃げグループに合流。こうして新たに6名が先行する展開となるが、メイン集団から大きなリードは奪えない。

ハンドルを投げ込むアンドレア・パリーニ(イタリア、スカイダイブドバイ)とアンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ)ハンドルを投げ込むアンドレア・パリーニ(イタリア、スカイダイブドバイ)とアンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ) photo:Kei Tsuji約60名に縮小したメイン集団からは、1年前のランカウイでアジアンライダー賞を獲得した早川朋宏(愛三工業レーシング)が脱落。3分29秒遅れでフィニッシュした早川は、氷嚢を首筋に入れながら「予想していたよりも集団のスピードが一段階速かった」と振り返る。愛三工業レーシングは伊藤雅和と平塚吉光の2人を集団内に残した。

接戦を制したアンドレア・パリーニ(イタリア、スカイダイブドバイ)が手を挙げる接戦を制したアンドレア・パリーニ(イタリア、スカイダイブドバイ)が手を挙げる photo:Kei Tsuji逃げグループを吸収したメイン集団はスプリンターチームの牽引によってばらけ、約20名の先頭集団をユナイテッドヘルスケアが率いて残り1km。混沌とした状態のまま連続コーナーを抜けてスプリントが始まると同時に、ディラン・ペイジ(スイス、チームロス)とニコラ・ルッフォニ(イタリア、バルディアーニCSF)が落車する。宙に舞うバイクを尻目に、2人のアンドレアが加速した。

6秒差のステージ21位に入った伊藤雅和(愛三工業レーシング)6秒差のステージ21位に入った伊藤雅和(愛三工業レーシング) photo:Kei Tsujiステージ通算20勝目を目指すアンドレア・グアルディーニとアンドレア・パリーニによる横一線のスプリント。両者並んでフィニッシュラインにハンドルを投げ込む。最短ラインを突き進んだパリーニが先着した。伊藤雅和は6秒差の第2集団、平塚吉光は11秒差の第3集団でフィニッシュしている。

「グアルディーニに勝てるとは正直思っていなかった」と、レース後の記者会見でパリーニは笑みを浮かべながら話す。「おそらく山岳をフレッシュな状態でクリアしたのは自分の方だった。その差が最後の最後に出たんだと思う。この勝利で今年のツール・ド・ランカウイは大成功だと言っていい」。

パリーニは2013年と2014年にランプレ・メリダに所属し、2015年からUAEのUCIコンチネンタルチームであるスカイダイブドバイで走る。ツアー・オブ・ジャパンには3年連続で出場しており、2015年は堺ステージ5位、美濃ステージ3位。今シーズンはドバイツアー第1ステージ5位、第4ステージ4位、そしてツアー・オブ・カタール第2ステージ6位という成績を残していた。

「確かにパリーニは自分よりも山岳を苦しまずにこなしたと思う。自分は全力でメイン集団にしがみついて、そこで勝利に必要なエネルギーを使い切ってしまった」と振り返るグアルディーニは、敗れながらもボーナスタイムによってリーダージャージを守っている。



放水を浴びながら握手するミカル・コラーとエリック・バスカ(スロバキア、ティンコフ)放水を浴びながら握手するミカル・コラーとエリック・バスカ(スロバキア、ティンコフ) photo:Kei Tsuji
痛々しい姿でフィニッシュしたディラン・ペイジ(スイス、チームロス)痛々しい姿でフィニッシュしたディラン・ペイジ(スイス、チームロス) photo:Kei Tsujiツール・ド・ランカウイのシンボルである鷹のトロフィーツール・ド・ランカウイのシンボルである鷹のトロフィー photo:Kei Tsuji
レース終盤の集団内の位置取りについて話す伊藤雅和と平塚吉光(愛三工業レーシング)レース終盤の集団内の位置取りについて話す伊藤雅和と平塚吉光(愛三工業レーシング) photo:Kei Tsujiリーダージャージを守ったアンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ)リーダージャージを守ったアンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ) photo:Kei Tsuji
第2ステージ2位グアルディーニ、1位パリーニ、3位ヤンセファンレンズバーグ第2ステージ2位グアルディーニ、1位パリーニ、3位ヤンセファンレンズバーグ photo:Kei Tsuji


ツール・ド・ランカウイ2016第2ステージ結果
1位 アンドレア・パリーニ(イタリア、スカイダイブドバイ)        3h56’02”
2位 アンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ)
3位 レイナルト・ヤンセファンレンズバーグ(南アフリカ、ディメンションデータ)
4位 ミカル・コラー(スロバキア、ティンコフ)
5位 ジョン・マーフィー(アメリカ、ユナイテッドヘルスケア)
6位 ヤコブ・マレツコ(イタリア、サウスイースト)
7位 グレーム・ブラウン(オーストラリア、ドラパック)
8位 カロル・ドマガルスキー(ポーランド、ワンプロサイクリング)
9位 ルーカ・パチオーニ(イタリア、アンドローニジョカトリ)
10位 ジョージ・ハーパー(イギリス、ワンプロサイクリング)
21位 伊藤雅和(日本、愛三工業レーシング)                  +06”
46位 平塚吉光(日本、愛三工業レーシング)                  +11”

個人総合成績
1位 アンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ)          8h11’43”
2位 アンドレア・パリーニ(イタリア、スカイダイブドバイ)          +02”
3位 ワン・メイイン(中国、ヘンシャンサイクリング)             +10”
4位 レイナルト・ヤンセファンレンズバーグ(南アフリカ、ディメンションデータ)+12”
5位 ジョン・マーフィー(アメリカ、ユナイテッドヘルスケア)         +16”
6位 ミカル・コラー(スロバキア、ティンコフ)
7位 ヤコブ・マレツコ(イタリア、サウスイースト)
8位 グレーム・ブラウン(オーストラリア、ドラパック)
9位 パオロ・シミオン(イタリア、バルディアーニCSF)
10位 カロル・ドマガルスキー(ポーランド、ワンプロサイクリング)
27位 伊藤雅和(日本、愛三工業レーシング)                 +22”
48位 平塚吉光(日本、愛三工業レーシング)                 +27”

ポイント賞
1位 ワン・メイイン(中国、ヘンシャンサイクリング)

山岳賞
1位 ワン・メイイン(中国、ヘンシャンサイクリング)

アジアンライダー賞
1位 ワン・メイイン(中国、ヘンシャンサイクリング)

text&photo:Kei Tsuji in Georgetown, Malaysia

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