UCIアジアツアーのツール・ド・フィリピン第3ステージで、キナンのウェズリー・サルツバーガーが優勝し、チームに今季初勝利をもたらした。チームからのレポートで紹介する。



フィニッシュに飛び込むウェズリー・サルツバーガー(オーストラリア、KINAN Cycling Team)フィニッシュに飛び込むウェズリー・サルツバーガー(オーストラリア、KINAN Cycling Team) photo:Daebong KIM
観客たちの記念写真に応じるウェズリー・サルツバーガー(オーストラリア、KINAN Cycling Team)観客たちの記念写真に応じるウェズリー・サルツバーガー(オーストラリア、KINAN Cycling Team) photo:Syunsuke Fukumitsu/KINAN大会は後半に入り、総合成績を見据えて有力チームが駆け引きを始める。そんな中で臨むステージは細かなアップダウンこそ続くものの、カテゴリー山岳は設けられておらず、スピードに富んだ展開になると予想された。

スタートに並んだ各賞ジャージの選手たちスタートに並んだ各賞ジャージの選手たち photo:Syunsuke Fukumitsu/KINAN約8kmのパレード走行を経てアクチュアル(正式)スタートが切られると、すぐに6人が逃げグループを形成。KINAN勢はこの中にウェズリーが加わった。いずれも前日の第2ステージでトップから大きく後退した選手たちだったこともあり、メーン集団は 6 人の抜け出しを容認した。

スタートしていくキナンの選手たちスタートしていくキナンの選手たち photo:Syunsuke Fukumitsu/KINANこの日1 回目のスプリントポイント(60km)では動かなかったウェズリーだったが、メーン集団とのタイム差が最大で約7分に広がり、ステージ優勝のチャンスがあると見るや、2回目のスプリントポイント(102.1km)を 1位通過。メーン集団は、リーダージャージ のオレグ・ゼムリャコフ選手(カザフスタン)擁するヴィノフォーエバー・SKO が主にコントロール。無理にタイム差を縮めようとしない姿勢に他チームが痺れを切らし、集団の 先頭に位置する場面こそあったが、大きなタイム差縮小とまではいたらない。

再び約8分にタイム差が広がったこともあり、5人となったウェズリーたちの逃げ切りは濃厚に。ラスト20km を切ると、ヴィノフォーエバーのアシストがメーン集団の牽引をや めたこともあり、5人の中からステージ優勝者が出ることは決定的となった。

ウェズリー・サルツバーガー(オーストラリア、KINAN Cycling Team)を含む逃げウェズリー・サルツバーガー(オーストラリア、KINAN Cycling Team)を含む逃げ photo:Syunsuke Fukumitsu/KINANラスト15kmを切ってからは 5人の間でアタックが散発するが、いずれも決定打にはいたらない。そして勝負が大きく動いたのは、フィニッシュまで残り3kmを切ったあたり。 アタッキ・チームグストのガイ・カルマ選手(オーストラリア)のアタックにウェズリーが乗じ、2人で抜け出すことに成功。互いに先頭交代を繰り返しながら、いよいよ運命の ラスト 1km を迎えた。

逃げを許したメーン集団逃げを許したメーン集団 photo:Syunsuke Fukumitsu/KINAN勝利への執念を見せる 2 人だが、ヨーロッパなど世界最高峰のレースを数多く経験してきたウェズリーに一日の長があった。残り300mで早めのスプリントを仕掛けたカルマ選手をしっかりとチェックし、自らのタイミングで加速。フィニッシュラインの数十メートル 先で勝利を確信し、歓喜のゴールを果たした。

久々の勝利に喜ぶウェズリー・サルツバーガー(オーストラリア、KINAN Cycling Team)久々の勝利に喜ぶウェズリー・サルツバーガー(オーストラリア、KINAN Cycling Team) photo:Syunsuke Fukumitsu/KINANワールドクラスの実績を誇るウェズリーとはいえ、UCIレースでの勝利は実に7年ぶり。 KINAN Cycling Team 加入 2戦目での大きな勝利に、ポディウムでは笑顔がはじけた。そして、フィニッシュポイントも加算し、13点でポイント賞ジャージも獲得。残る1ステージはジャージをかけた戦いにもなる。

総合上位陣が含まれたメーン集団は、ウェズリーから 3 分10秒差でレースを終えた。チーム総合最上位の伊丹は16 位でフィニッシュし、同タイムの選手間でのステージ順位合算により総合6位にアップした。ほか3選手は、終始メーン集団内で伊丹のサポートに徹し、ジャイが伊丹と同タイムの30位、阿曽圭佑が伊丹らから10秒差の40位、同じく野中が48位だった。結果、KINAN Cycling Teamはチーム内上位3人の合計タイムで争わ れるチーム総合において、このステージの1位に輝いた。

大会は21日に行われる第4ステージでフィナーレ。レガスピを発着地とする160.20kmのコースは、レガスピのシンボルであるマヨン山の麓を2周回。厳しい上りが複数控えており、クイーンステージの呼び声も高い。山岳ポイント、スプリントポイントそれぞれ 2 カ所ずつ待ち受けており、各賞ジャージ争いにも拍車がかかるはずだ。

よい流れで第3ステージまでを終えた KINAN Cycling Teamとしては、伊丹の総合ジャ ンプアップ、3ポイント差で 4 位につけるジャイの山岳賞、そしてウェズリーが着用するポイント賞ジャージと、大きなチャンスをもって最終日に挑むこととなる。

監督・選手コメント

ウェズリー・サルツバーガー 「絶好のレース展開になることは走っている間から分かっていたんだ。ラスト3km を切 ってからのアタックは、カルマと申し合わせていたこと。彼の動きに合わせて僕もスピードアップしたんだ。スプリントになれば勝つ自信があったし、先に仕掛けたカルマを交わ すことはなんら問題がなかったよ」

石田哲也監督「シーズン 2 戦目での勝利は、今後のレースに勢いをもたらす最高の結果だ。スタート直+4 秒後からウェズ(サルツバーガー)を含む脚のある選手がそろったことが、逃げ切りにつな がった要因だろう。終盤はウェズの上手さが際立っていた。残す最終ステージは、伊丹を 少しでも総合上位に送り込んで、何としても UCI ポイントを獲得したい」

ジャイ・クロフォード 「パーフェクトなステージだった。何よりもウェズの勝利に尽きるね。力のあるウェズが 逃げグループに入ったことによって、リーダーチームのヴィノフォーエバー勢の脚を使わせることができたし、われわれはイージーに 1 日を過ごすことができた。明日、伊丹さんのために力を出し切ることができそうだ」

阿曽圭佑「第 2 ステージよりは調子がよかった。脚が動いている感覚があったし、伊丹さんのアシ ストとして集団内で走ることができた。あと 1ステージは力を出し尽くしたい」

伊丹健治 「チームとしてパーフェクトな動きができたのではないか。ウェズが逃げてステージ優勝したと同時に、僕たちは集団内で回復に努めることができた。第2ステージの落車ダメージも減ってきているので、最終ステージは少しでも上位を目指して走りたい」

野中竜馬 「伊丹さんのフォローに終始することができ、大きなトラブルなくステージを終えられた。最終ステージも伊丹さんの総合上位を目指してしっかりと走りきりたい。個人的には調子 がよく、内容のある走りができている」

ツール・ド・フィリピン第 3 ステージ(185.79km)結果
1 ウェズリー・サルツバーガー(オーストラリア、KINAN Cycling Team) 4 時間 27 分 55 秒
2 ガイ・カルマ(オーストラリア、アタッキ・チーム グスト) +2 秒
3 ジョニファー・ラヴィーナ(フィリピン、セブンイレブン・サヴァ RBP) +20 秒
4 ダニエル・ホワイトハウス(ニュージーランド、テレンガヌ サイクリングチーム) +20 秒
5 クリストファー・ウィリアムス(オーストラリア、チーム ノボノルディスク) +25 秒
6 ルストム・リム(フィリピン、フィリピンナショナルチーム) +3 分 7 秒
16 伊丹健治(KINAN Cycling Team) +3 分 10 秒
30 ジャイ・クロフォード(オーストラリア、KINAN Cycling Team) +3 分 10 秒
41 阿曽圭佑(KINAN Cycling Team) +3 分 20 秒
48 野中竜馬(KINAN Cycling Team) +3 分 20 秒

●個人総合時間賞
1 オレグ・ゼムリャコフ(カザフスタン、ヴィノフォーエバー・SKO) 13 時間 43 分 22 秒
2 エフゲニー・ギディフ(カザフスタン、ヴィノフォーエバー・SKO) +19 秒
3 ジェシー・ジェームス・イワート(オーストラリア、セブンイレブン・サヴァ RBP) +22 秒
4 バトムンフ・マラルエルデネ(モンゴル、テレンガヌ サイクリングチーム) +23 秒 5 鈴木龍(ブリヂストンアンカー サイクリングチーム) +1 分 25 秒
6 伊丹健治(KINAN Cycling Team) +1 分 25 秒
13 ウェズリー・サルツバーガー(オーストラリア、KINAN Cycling Team) +6 分 45 秒
24 ジャイ・クロフォード(オーストラリア、KINAN Cycling Team) +10 分 8 秒
30 野中竜馬(KINAN Cycling Team) +10 分 18 秒
47 阿曽圭佑(KINAN Cycling Team) +21 分 23 秒

●ヤングライダー賞
1 エフゲニー・ギディフ(カザフスタン、ヴィノフォーエバー・SKO) 13 時間 43 分 41 秒
2 ジェシー・ジェームス・イワート(オーストラリア、セブンイレブン・サヴァ RBP) +3 秒
3 バトムンフ・マラルエルデネ(モンゴル、テレンガヌ サイクリングチーム)

●チーム総合時間賞
1 ヴィノフォーエバー・SKO 41 時間 13 分 59 秒 2 セブンイレブン・サヴァ RBP +5 分 16 秒
3 テレンガヌ サイクリングチーム +5 分 58 秒
5 KINAN Cycling Team +14 分 38 秒

●ポイント賞
1 ウェズリー・サルツバーガー(オーストラリア、KINAN Cycling Team)13pts
2 オレグ・ゼムリャコフ(カザフスタン、ヴィノフォーエバー・SKO) 10pts
3 エフゲニー・ギディフ(カザフスタン、ヴィノフォーエバー・SKO) 8pts

●山岳賞
1 オレグ・ゼムリャコフ(カザフスタン、ヴィノフォーエバー・SKO) 10pts
2 ザンドス・ビジギトフ(カザフスタン、ヴィノフォーエバー・SKO) 10pts
3 スリャディ・ダディ(インドネシア、テレンガヌ サイクリングチーム) 8pts
4 ジャイ・クロフォード(オーストラリア、KINAN Cycling Team) 7pts


text&photo:Syunsuke FUKUMITSU/KINAN Cycling Team
photo:Daebong KIM