前日に鮮烈な走りで総合首位に立ったエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ)が残り8kmのパンクで脱落。風によって縮小した集団によるスプリントでアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)が勝利し、秒差の総合争いは最終日に持ち込まれることに。



風が吹く真っ平らな幹線道路で分裂する集団風が吹く真っ平らな幹線道路で分裂する集団 photo:Tim de Waele


ツアー・オブ・カタール2016第4ステージツアー・オブ・カタール2016第4ステージ image:Tour of Qatar世界遺産アルズバラをスタートするツアー・オブ・カタール第4ステージ。コース全長は今大会最長の189kmで、後半にかけてカタール半島北部のマディナ・アルシャマルを起点にした周回コースを走る。海風の影響を受けやすいこの周回コースは道幅が細めで、毎年風による集団分裂が多発するポイントだ。

カタールならではの要塞を通過カタールならではの要塞を通過 photo:Tim de Waele追い風に乗ってハイスピードな幕開けとなったこの日、17km地点でパトリック・グレッチュ(ドイツ、AG2Rラモンディアール)ら9名が逃げグループを形成し、2分リードするとともに中間スプリントを通過する。しかし後方では風向きが変わったタイミングでBMCレーシングがペースアップを開始。総合上位陣を含む30名の精鋭集団が形成されると、レース中盤88km地点で早くも逃げを捉えた。

レース中盤から逃げたパトリック・グレッチュ(ドイツ、AG2Rラモンディアール)らレース中盤から逃げたパトリック・グレッチュ(ドイツ、AG2Rラモンディアール)ら photo:Tim de Waeleマディナ・アルシャマルの周回コースに入ると後続集団が追いついてレースは一旦リセットされる。そこから再び飛び出したグレッチュら4名が新たに先行を開始したが、結局はディメンションデータがコントロールするメイン集団に残り13km地点で吸収された。

残り8kmでパンクに見舞われたエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ)残り8kmでパンクに見舞われたエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ) photo:Tim de Waele風が吹く直線路でレースは動く。BMCレーシングとロットNLユンボが流れるようなローテーションで高速巡航を開始するとメイン集団は30名強に縮小。すると残り8km地点でリーダージャージのボアッソンハーゲンがパンクに見舞われる。

自ら第2集団を率いて追走するエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ)自ら第2集団を率いて追走するエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ) photo:Tim de Waele素早くホイールを交換して再スタートしたボアッソンハーゲンだったが、トラブルによって再びストップし、チームメイトからバイクを借りたもののその時点で先頭集団は40秒先を行く。追いついた後続集団をチームメイトともに率いたボアッソンハーゲンだったが、先頭集団に追いつくことはできず、最終的に45秒のタイムとリーダージャージを失った。

スプリントで2勝目を飾ったアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)スプリントで2勝目を飾ったアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ) photo:Tim de Waeleリーダージャージを欠く先頭集団は徐々に人数を減らしながらスプリント態勢へ。残り2kmで発進したカチューシャトレインが完全に主導権を奪ってみせる。一方、自力でポジション取りしたマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)は後方からのスプリントを強いられた。

他を寄せ付けない完璧なカチューシャのリードアウトから残り200mでクリストフが加速する。追いすがるグレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)を振り切ったクリストフが、発射台役グアルニエーリに祝福されながら先頭でフィニッシュした。

「今日は後半にかけて風が強まった。大集団スプリントを予想していたものの集団は分裂。それでもチームは先頭集団に人数を残し、最後はさらに集団を分裂させるようなパワフルなリードアウトを見せてくれた。ステージ1位と3位で、パーフェクトな出来と言っていい」。今大会ステージ2勝を飾り、ポイント賞トップに躍り出たクリストフはそう語る。

パンクで脱落したボアッソンハーゲンが総合5位に順位を下げた一方で、リーダージャージはチームメイトのカヴェンディッシュの手に。図らずも総合首位に返り咲いたカヴェンディッシュは、ファンアフェルマートから2秒、クリストフから9秒のリードで最終ステージに挑むことに。

カヴェンディッシュは「こんな形で総合ワンツー体制を失うのは非常に残念だ。エドヴァルドがパンクした時、総合成績がかかったBMCレーシングが全開で引き続けたのは理解できるけど、総合に関係のないロットNLユンボまで先頭で引き続けていたのを見て残念な気持ちになった。チームメイトたちの働きに報いるためにも、明日は何としてもリーダージャージを守り抜きたい」とコメントしている。

第5ステージで獲得可能なボーナスタイムは最大16秒(フィニッシュ1位10秒、中間スプリント1位3秒x2)。つまりボーナスタイムによって総合順位が簡単に入れ替わる混戦模様だ。ディメンションデータ、BMCレーシング、カチューシャの3チームが中心となって熾烈なボーナスタイム争奪戦を繰り広げるだろう。

選手コメントは各チーム公式サイトより。



総合首位に返り咲いたマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)総合首位に返り咲いたマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ) photo:Tim de Waele


ツアー・オブ・カタール2016第4ステージ結果
1位 アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)        3h57’12”
2位 グレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)
3位 ジャコポ・グアルニエーリ(イタリア、カチューシャ)
4位 サム・ベネット(アイルランド、ボーラ・アルゴン18)
5位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)
6位 マヌエル・クインツィアート(イタリア、BMCレーシング)
7位 ヴィチェスラフ・クズネツォフ(ロシア、カチューシャ)           +06”
8位 ソーレンクラーク・アンデルセン(デンマーク、ジャイアント・アルペシン)  +08”
9位 モレーノ・ホフランド(オランダ、ロットNLユンボ)             +09”
38位 新城幸也(日本、ランプレ・メリダ)                    +45”

個人総合成績
1位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)      10h51’13”
2位 グレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)         +02”
3位 マヌエル・クインツィアート(イタリア、BMCレーシング)           +06”
4位 アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)           +09”
5位 エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ)    +19”
6位 ソーレンクラーク・アンデルセン(デンマーク、ジャイアント・アルペシン)   +30”
7位 サム・ベネット(アイルランド、ボーラ・アルゴン18)             +41”
8位 スヴェンエリック・ビストロム(ノルウェー、カチューシャ)          +49”
9位 ヴィチェスラフ・クズネツォフ(ロシア、カチューシャ)            +50”
10位 ミヒャエル・シェアー(スイス、BMCレーシング)               +58”

ポイント賞
1位 アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)

ヤングライダー賞
1位 ソーレンクラーク・アンデルセン(デンマーク、ジャイアント・アルペシン)

チーム総合成績
1位 BMCレーシング

text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele

最新ニュース(全ジャンル)