宮澤崇史がチームスカイの冬期キャンプを訪問。今季注目の移籍選手ミケル・ランダへインタビューした。昨年のジロ・デ・イタリアではステージ2勝と総合3位獲得。今年、ジロ総合優勝へ向けてビルドアップするランダに疑問をぶつけた。



アスタナからチームスカイに移籍加入したミケル・ランダ(スペイン)アスタナからチームスカイに移籍加入したミケル・ランダ(スペイン) photo:Makoto.AYANO
スペイン人のミケル・ランダは、アスタナからチームスカイに移籍した26歳のバスク出身ライダーだ。昨シーズンのジロ・デ・イタリアでは、山岳の難関ステージである第15ステージ第16ステージで2連勝、最終的には総合3位でジロを終えた。ランダはそのときエースのファビオ・アルのために走っており、リーダーが入れ替わる可能性さえあった。

コンタドールとアルを置き去りにするミケル・ランダ(スペイン、アスタナ)コンタドールとアルを置き去りにするミケル・ランダ(スペイン、アスタナ) (c)CorVos独走でフィニッシュに飛び込むミケル・ランダ(スペイン、アスタナ)独走でフィニッシュに飛び込むミケル・ランダ(スペイン、アスタナ) photo:Tim de Waele


そのランダを迎えたチームスカイ。かつてジロをリッチー・ポート中心の布陣で固めていたが、優勝は叶わなかった。ポートがBMCへ移籍したことでスカイはランダを獲得。ランダにとってもアル、そしてニーバリ、フグルサングといったグランツール系リーダーが揃ったアスタナに自分のために走れるスペースは無かった。チームとランダ双方の希望が合致しての移籍だ。

トレーニングの合間にインタビューに応じてくれたミケル・ランダ(スペイン)トレーニングの合間にインタビューに応じてくれたミケル・ランダ(スペイン) photo:Makoto.AYANO宮澤: 新しいチームメイトと過ごして何日経つの?

ランダ: 12月にミーティングとミニ合宿をしてから、これが2回めの合宿になるんだ。だからまだ合計12日目だね。

宮澤: チームの皆と会って、新しいチームの居心地はどう? プロトンの中ではもう知っている選手ばかりだと思うけど、いい友人はできたかな? チームで一番の仲の良いのは誰?

ランダ: とくに仲の良い友達を挙げるのは難しいな。今はまだ、チームに関係する多くの人たちに会って、顔と名前を覚えて、という段階だからね。でも皆が親切なのでとてもハッピーだよ。彼ら皆が、僕がチームに溶け込めるようにベストを尽くしてくれていることが分かるんだ。

宮澤: シーズンインにあたって、君からチームに何かリクエストを出しているの? どのレースを走りたいとか。

ランダ: 僕の今季のゴールはジロ・デ・イタリアに勝つことなんだ。ブエルタ・アンダルシアでスタートして、ティレーノ。アドリアティコ、バスク一周、ジロ・デル・トレンティーノなどを走って調子を上げていくんだ。

真摯に質問に応えてくれるミケル・ランダ。強い意志を持ちながらもシャイな印象も受けた真摯に質問に応えてくれるミケル・ランダ。強い意志を持ちながらもシャイな印象も受けた photo:Makoto.AYANO
宮澤: ジロが大きな目標ですね。他には? 例えばどのレースでは勝ちたいといった希望はチームに出した?

ランダ: まずジロは僕がリーダーになるレース。もし僕がベストコンディションで臨めればチームメイトは僕のために働いてくれることになる。だけど調子次第ではそうなるかは分からない。悪いなら僕は他の調子がいい選手のために働くよ。バスク一周はフルームがリーダーだね。

宮澤: ジロを狙ってのトレーニングはいつから始めたの?

ランダ: 11月にジムでの軽い調整などから始めているけど、しっかりしたトレーニングは12月に入ってからだね。

静かな口調と太い眉が印象的なミケル・ランダ(スペイン)静かな口調と太い眉が印象的なミケル・ランダ(スペイン) photo:Makoto.AYANO宮澤: グランツールで勝つにはタイムトライアルについても強化しないとね。TTは得意という感じではないのかな?
(ランダは昨年のジロ・デ・イタリアの個人TTでトップのコンタドールに4分の遅れを喫している)

ランダ: 御存知の通り僕はクライマーだから、山でのトレーニングに重点を置くことはもちろん。TTバイクでのタイムトライアルは僕にとってとても難しいこと。僕はTTスペシャリストではないからね。12月にポジション改善のためのトラックでのトレーニングを始めて、もっとエアロダイナミックなポジションを追求している。たくさんのタイムを失わないようにしなければいけないから。TTのタイムを向上することが僕の今シーズンのもうひとつのゴールだね。

宮澤: ジロでは時々雪が降ったり、凍えるような状況があるよね。ラファがチームウェアを制作しているけど、新しいチームウェアを着てみた感触は?

チームスカイのジャージに身を包んだミケル・ランダ(スペイン)チームスカイのジャージに身を包んだミケル・ランダ(スペイン) (c)Team Skyランダ: スポンサーだからその質問にはもちろん『グッドだ』と言わざるをえないね(笑)。ブランドは変わったけど、すぐに慣れた。レースでもトレーニングでも問題なく素晴らしいよ。とても快適だね。

このマヨルカキャンプでも寒い状況や、雨のなかで走ったりもして、ウェアやアクセサリー類を試しているんだ。雨の中を走れるシャドウジャージは素晴らしいね。ちゃんとチーム仕様のものが用意されたんだ(※)。
(※かつてはスポンサーでない他社製のレインウェアのマークを消して使用していた)

宮澤: アスタナと比べると、チームスカイの雰囲気はどう? 何か違いがある?

ランダ:アスタナでは唯一のスペイン人だったんだ。今は5人の自国の友人がいるから、馴染み易いね。もっと開放的な感じ。それ以上にチームの雰囲気が素晴らしいと思う。誰もが皆フレンドリーで親切で、よく組織化されている。メディアの注目度もこのように高いし、ファンにももっと注目される感じがするね。メカニックももっと高度な感じだし、よりテクニカルな印象がする。雰囲気は、アスタナは「小さなイタリアンスタイル」だったけど、スカイは「ブリティッシュスタイル」だね。いいチームだと感じている。

宮澤: 今日はありがとう。今季の活躍は本当に楽しみです。

ランダ: こちらこそありがとう。これからを楽しみにしていてください。



インタビューを終えて

人生初のインタビュー仕事がランダということで、ちょっと緊張しました。ランダは非常に落ち着いている表情で、キャンプの疲れを感じさせないところは、シーズン初めということもあったと思う。(疲れはあるのかな?と感じながらのインタビューでした)

まずはチームに合流して、ランダはすべての選手と仲良くしているようだ。「この選手とは特別仲が良いと言う選手はいない」と話してくれたが、普通はチーム内で英語圏、イタリア語件、スペイン語圏など、地域や言語ごとにグループが分れる傾向はあるが、すべての選手と積極的にコミュニケーションを取ろうとしていることころは、エースならではの役割を心得ているからなのかもしれない。

アスタナの時はスペイン人としかトレーニングしていなかったが、今はもっとオープンに全員と走っていると言う。これはチームを統括する監督の采配があるだろうし、集団を牛耳る力勝負のチームスカイにとってはとても大切なことだろう。

プロ選手にとって走ることはすなわち仕事だから、チームオーダーに従うのは当然だが、プロ選手として仲間との間に信頼関係を築くことは「現場判断」でレースを運ぶときに非常に大切だ。それはエースだけの努力ではなく、アシスト選手も積極的にエースに話しかけることで、お互いリスペクトしあえる関係がつくれるからだ。それがレース展開に良い方に作用するのはもちろんだ。

インタビューを終えて、ミケル・ランダと記念撮影インタビューを終えて、ミケル・ランダと記念撮影 photo:Makoto.AYANOいよいよレースシーズンが始まるが、ランダにとって今年はジロ・デ・イタリアにエースとして臨むことが先ずは大きな目標だ。今はクライムトレーニングはもちろんのこと、苦手だから好きではないとはいえタイムトライアルのトレーニングも積極的に入れてトレーニングをしているという。グランツールに勝つには、もちろんTT能力の向上は不可欠な要素だ。

私がいちばん聞きたかったこと。それは「古巣であるアスタナと戦うにあたって、どう攻撃すれば良いかなど攻略法はもう考えてる?」だった。

涼しい顔で軽く笑ったランダは「現場判断が一番大事になってくるし、今のところイメージはしてない」と話す。なるほど、対策はとくに「ナッシング」とのこと。やはりレース現場では体調や選手のひらめき、監督判断など無数にある可能性の中から1つを選ばなければならない。しかし、彼の眼差しのなかに隠れているのは、「勝負のときに向けて今は自分のトレーニングに集中し、攻撃の可能性を広げ、どのような状況の中でも自分を信じて走れる準備に集中するんだ!」という強い想いを感じる表情だった。

今年はバイクもスペシャライズドからピナレロに乗り換えるので、ポジションなどの変更についても聞いてみた。フレームのジオメトリーの違いから、1サイズ小さくすることを決めたのだという。

スペシャライズドに乗っている時はブレーキレバーのブラケット角が上がっており、ダンシングでのリズムを重視したポジショニングだったが、新しく乗ることになったランダのピナレロ・ドグマは、ステムが一番下まで下げられ、ブラケットとステムの角度がほぼ同じあたりに設定されていた。つまりダンシング時の振りの軽さとスピードの両方を狙ったポジションに設定されているのだ。自分の走りをどう発揮するかが、ランダなりの考えで選択したサイズとポジションに現れているようだった。(宮澤崇史)

文:宮澤崇史
写真:綾野 真
story:Takashi.MIYAZAWA
photography&edit:Makoto.AYANO




宮澤崇史さん宮澤崇史さん photo:Makoto.AYANO宮澤崇史プロフィール
1978年2月27日生まれ 長野県出身 自転車プロロードレーサー(2014年引退)
高校卒業後、イタリアのチームに所属しロードレーサーとしての経験を積む。しかし23歳の時に母に肝臓の一部を生体移植で提供、成績振るわず戦力外通告によりチーム解雇される。その後フランスで単独活動、オリンピック出場や 日本チャンピオン、アジアチャンピオンなど実績を重ねる。イタリアのアミーカチップス、ファルネーゼヴィーニを経て34歳の時にUCIプロチーム サクソバンクに所属。在籍中にリーダージャージ(個人総合時間賞)・ポイントジャージ(スプリントポイント賞)に日本人選手として唯一袖を通した。18年間の海外レース活動を経て、2014年に引退。現在はチームマネジメントやコーチング、スポーツサイクリング関連のアドバイザーやメディア出演など多方面で活躍。

【主な戦歴】
2006年〜2007年 ツール・ド・おきなわ 大会史上初の2年連続優勝
2007年 アジア選手権ロード優勝 アジアチャンピオン
2008年 北京オリンピック出場
2008〜2009年 ツール・ド・北海道 大会史上初2年連続総合優勝
2010年 全日本選手権ロードレース優勝
2010年 アジア大会ロード出場(アジアオリンピック)銀メダル獲得

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