2016/02/11(木) - 09:40
アンカーの2016ラインアップに加わる2つの新型ロードバイクから、今回はアルミレーサー「RS6」をピックアップ。1月下旬に開催されたメディア向け試乗会で、「RS9と同水準の走りをアルミで目指した」という1台にスポットを当てた。
2016年、アンカーは2つの新型ロードバイクをデビューさせた。1つは、既にシクロワイアードでも詳細をお伝えしている「RS9」だ。4年ぶりとなるフラッグシップの刷新であり、「アンカー史上最も進むフレーム」と謳うだけあって、1月下旬に開催されたメディア向け試乗会でも非常に大きな注目を集めた(RS9の詳細記事はこちらから)。
そしてもう1つの新型バイクがアルミ製ロードレーサー「RS6」である。ブリヂストンサイクルによれば、その開発コンセプトは「RS9と同水準の走りをアルミで」だ。具体的には反応性や耐久性など金属素材ならではのメリットを保ちつつ、可能な限り無駄をそぎ落とし軽量化し、走りを追求しているという。
フレーム設計には「PROFORMAT」という自転車専用のシミュレーションシステムを導入。RS6はRS9とよく似たフレーム形状とされ、従来モデルにあたるRA6との比較では各チューブとも一回り細身に。結果、RS6のフレーム重量は1,400gと、従来モデルRA6に対して190g減という大幅なシェイプアップに成功。他ブランドの軽量アルミと比較するとやや重めだが、「重さを感じさせないバイクに仕上がっている」と開発陣は自信をみせる。
フレーム素材には従来モデルと同じくA6061アルミ合金を採用する。A6061とはアルミに亜鉛、マグネシウム、銅を添加し強化した合金であり、強度、軽さ、加工性のバランスに優れる。成型にはハイドロフォーミング法を用いた。溶接部は可能な限りなめらかに仕上げることで高強度化に貢献している
RS6のフレーム形状を各部位ごとに説明していこう。まずは剛性を担うフレームの下部から。スクエア断面のダウンチューブは、接合面積を拡大すべくBB側が広げられている。BBはプレスフィット式のBB86規格とし、シェルを目一杯拡幅。チェーンステーは半分よりBB側を太く、エンド側を細くすることで、剛性と振動吸収性をバランスさせた。
快適性を担うのは、トップチューブからシートステーにかけてのフレーム上部だ。トップチューブは、ダウンチューブと同じく長方形断面としながらも、横方向に扁平を強め、縦方向の柔軟性のみを高めた格好だ。シートステーは部位ごとに細かな形状変化が与えられており、シートチューブ側では横方向に、エンド側では縦方向に扁平している。
ヘッドチューブには継続して下側1-1/4インチのテーパード設計を採用。RS6専用設計のマッシブなフロントフォークと合わせて、ハンドリングの安定性を高めた。シートポストは31.6mm径とされている。ジオメトリーは基本的に従来モデルと共通だが、最小サイズの430mmのみヘッドのキャスター各やフロントセンターに少変更が加えられている。
細かな箇所ではワイヤリングに注目したい。リアブレーキケーブルはフレーム内に内蔵され、日本人に多い右前左後のセッティングに合わせて、リアブレーキケーブルのハンドル側挿入口をトップチューブの右側に設置。シフトケーブルはコンポーネントが機械式の場合は外装、シマノDi2の場合は内装としている。
大幅な軽量化と共に進化を遂げたアンカーの新型アルミロードレーサー「RS6」。テストライダーを務めるのは、アンカーのバイク開発に深く携わっているチームのベテランライダー 井上和郎選手と、アンカーに精通する山添悟志さん(WALKRIDE コンセプトストア)だ。早速インプレッションに移ろう。
ー インプレッション
「RS9に通じる走行フィーリング かつての軽量アルミバイクを凌駕する1台」
井上和郎(ブリヂストンアンカー)
設計開発のコンセプトやプロセスが共通とあって、RS9に通じるフィーリングを多くの点で感じることができました。完成度は非常に高いといえるでしょう。実はこのメディア向け試乗会まで価格を知らなかったのですが、RS9の1/3程度に抑えられていると知って「マジですか!」と思わず声を上げて驚いてしまいました。
10年ほど前には定価で40万円以上もするアルミバイクもありましたが、RS6は1/4の価格でそれらに凌駕するだけの走行性能を持っています。重量面ではかつての高級アルミバイクに分がありますが、あらゆる性能のバランスでみれば明らかにRS6のほうが優れています。
RS9と比較すると、剛性はやや低めでソフトな踏み味に仕上がっています。ダッシュを繰り返すようなシチュエーションでの反応性は、パリッとした踏み味のRS9に一歩譲りますが、RS6でもホイールなど組み合わせるパーツ次第でカバーできるレベルです。
ハイペースでの巡航やロングライドでは剛性不足を感じることはないでしょう。RS9と同じく、入力が一定の時はたわみを制御しきれているため、綺麗に進んでくれる印象です。ケイデンスが極端に高かったり低かったりしなければ、どんなペダリングでも受け入れてくれる懐の深さがあります。
アルミだからといって振動吸収性に劣るということはなく、カーボンと比較との比較でも長距離走った後の疲労に大きな差はでないでしょう。RS9とRS6との比較でいえば、RS9はロードインフォーメションが豊富な分だけ伝わってくる振動も多いほどです。ハンドリングはRS9と遜色ない印象です。気を遣わずとも的確に理想のラインをトレースできます。下り性能も全く問題ないですね。
手頃さと性能のバランスを考えると、機材にかけられるお金に限りのある学生レーサーにピッタリですね。実際にレースで使用してカーボンバイクと競ったとしても、負けることはないでしょう。
「従来のフラッグシップに迫る走行性能 カーボンのような乗り味のアルミレーサー」
山添悟志(WALKRIDE コンセプトストア)
設計コンセプトが同じとあって、RS9に通じる運動性能や軽快感を感じました。これまでのアンカーといえば堅実性を重視していたせいか、アルミフレームもどっしりしていましたが、RS6は一転して踏み出しが軽ろやかになっています。それでいて、従来からのアンカーの特徴である安定感が確保されており、重量的にも無駄がなくなっています。
そして、いい意味でアルミらしさが無く、カーボンっぽい印象の乗り味になっています。RS6は踏み出しが軽いにも関わらず快適性が犠牲になっている印象は全くなく、振動をきっちりと丸めてくれます。
というのもの、一昔前に踏み出しの軽いアルミフレームを作ろうとしたら、トレードオフでどうしても振動吸収性が悪くなってしまうのが常でしたから。その点、昨今のアルミフレームの進化には驚かされますし、「アルミは振動吸収性が悪い」という常識は過去のものになりつつありますね。同様にこれまでアルミの欠点とされてきた反発力が少なく、RS6はガチャ踏みをしても疲れにくかったです。
確かにRS9とRS6を比較すれば、あらゆる点でRS9の優位性が目立ちます。ただ、それはRS9の完成度が高いからであり、従来のフラッグシップであるRIS9に迫る走行性能がRS6にはありますね。RS6の直接の従来もモデルにあたるRA6からは大幅な進化を遂げたといえるでしょう。
RS6が進化した背景にはチューブ形状があると考えられます。最近よく見る四角い断面のチューブですが、アンカーでは従来より使用しており、より使いこなすことができるようになってきたのでしょう。RS6をよくみてみると、四角い断面のチューブでも部位によって縦横比や断面積が細かく変えられていますね。
細かな部分ですが、機械式と電動のどちらのコンポーネントを使用した時でも、ワイヤリングがスマートな点は、作業する側の人間としては喜ばしい点です。
改めてですが、従来のアンカーとは大きく異なる乗り味になっていますので、アルミバイクを探している方で身近にRS6をテストできる機会があれば、是非とも試してみて欲しいですね。また、予算的に無理をしてでもカーボンを買おうとしている方にとっても、RS6は検討の余地があると思います。
RS6は比較的リーズナブルですから、ホイールを始めとした各パーツをハイグレードなものにすれば、とても戦闘力の高い1台になることでしょう。敢えて、RS6にカーボンホイールという組み合わせも面白いかもしれません。カラーリングに関して、オーダーシステムの対応できる幅が広いというのもRS6の大きな特徴の1つですね。国内ブランドという安心感も、RS6ひいてはアンカーの大きなポイントです。
インプレライダーのプロフィール
山添悟志(WALKRIDE コンセプトストア)
神奈川県厚木市に2014年にオープンしたロード系プロショップ、WALKRIDE コンセプトストアの店主。脚質はスプリンターで、過去にいわきクリテリウムBR-2で優勝した経験を持つ。走り系ショップとして有名だが、クラブ員と一緒にグルメツーリングを行うなど、「自転車で走る楽しみ」も同時に追求している。
CWレコメンドショップ
WALKRIDE コンセプトストア
photo:Makoto.AYANO
text:Yuya.Yamamoto
2016年、アンカーは2つの新型ロードバイクをデビューさせた。1つは、既にシクロワイアードでも詳細をお伝えしている「RS9」だ。4年ぶりとなるフラッグシップの刷新であり、「アンカー史上最も進むフレーム」と謳うだけあって、1月下旬に開催されたメディア向け試乗会でも非常に大きな注目を集めた(RS9の詳細記事はこちらから)。
そしてもう1つの新型バイクがアルミ製ロードレーサー「RS6」である。ブリヂストンサイクルによれば、その開発コンセプトは「RS9と同水準の走りをアルミで」だ。具体的には反応性や耐久性など金属素材ならではのメリットを保ちつつ、可能な限り無駄をそぎ落とし軽量化し、走りを追求しているという。
フレーム設計には「PROFORMAT」という自転車専用のシミュレーションシステムを導入。RS6はRS9とよく似たフレーム形状とされ、従来モデルにあたるRA6との比較では各チューブとも一回り細身に。結果、RS6のフレーム重量は1,400gと、従来モデルRA6に対して190g減という大幅なシェイプアップに成功。他ブランドの軽量アルミと比較するとやや重めだが、「重さを感じさせないバイクに仕上がっている」と開発陣は自信をみせる。
フレーム素材には従来モデルと同じくA6061アルミ合金を採用する。A6061とはアルミに亜鉛、マグネシウム、銅を添加し強化した合金であり、強度、軽さ、加工性のバランスに優れる。成型にはハイドロフォーミング法を用いた。溶接部は可能な限りなめらかに仕上げることで高強度化に貢献している
RS6のフレーム形状を各部位ごとに説明していこう。まずは剛性を担うフレームの下部から。スクエア断面のダウンチューブは、接合面積を拡大すべくBB側が広げられている。BBはプレスフィット式のBB86規格とし、シェルを目一杯拡幅。チェーンステーは半分よりBB側を太く、エンド側を細くすることで、剛性と振動吸収性をバランスさせた。
快適性を担うのは、トップチューブからシートステーにかけてのフレーム上部だ。トップチューブは、ダウンチューブと同じく長方形断面としながらも、横方向に扁平を強め、縦方向の柔軟性のみを高めた格好だ。シートステーは部位ごとに細かな形状変化が与えられており、シートチューブ側では横方向に、エンド側では縦方向に扁平している。
ヘッドチューブには継続して下側1-1/4インチのテーパード設計を採用。RS6専用設計のマッシブなフロントフォークと合わせて、ハンドリングの安定性を高めた。シートポストは31.6mm径とされている。ジオメトリーは基本的に従来モデルと共通だが、最小サイズの430mmのみヘッドのキャスター各やフロントセンターに少変更が加えられている。
細かな箇所ではワイヤリングに注目したい。リアブレーキケーブルはフレーム内に内蔵され、日本人に多い右前左後のセッティングに合わせて、リアブレーキケーブルのハンドル側挿入口をトップチューブの右側に設置。シフトケーブルはコンポーネントが機械式の場合は外装、シマノDi2の場合は内装としている。
大幅な軽量化と共に進化を遂げたアンカーの新型アルミロードレーサー「RS6」。テストライダーを務めるのは、アンカーのバイク開発に深く携わっているチームのベテランライダー 井上和郎選手と、アンカーに精通する山添悟志さん(WALKRIDE コンセプトストア)だ。早速インプレッションに移ろう。
ー インプレッション
「RS9に通じる走行フィーリング かつての軽量アルミバイクを凌駕する1台」
井上和郎(ブリヂストンアンカー)
設計開発のコンセプトやプロセスが共通とあって、RS9に通じるフィーリングを多くの点で感じることができました。完成度は非常に高いといえるでしょう。実はこのメディア向け試乗会まで価格を知らなかったのですが、RS9の1/3程度に抑えられていると知って「マジですか!」と思わず声を上げて驚いてしまいました。
10年ほど前には定価で40万円以上もするアルミバイクもありましたが、RS6は1/4の価格でそれらに凌駕するだけの走行性能を持っています。重量面ではかつての高級アルミバイクに分がありますが、あらゆる性能のバランスでみれば明らかにRS6のほうが優れています。
RS9と比較すると、剛性はやや低めでソフトな踏み味に仕上がっています。ダッシュを繰り返すようなシチュエーションでの反応性は、パリッとした踏み味のRS9に一歩譲りますが、RS6でもホイールなど組み合わせるパーツ次第でカバーできるレベルです。
ハイペースでの巡航やロングライドでは剛性不足を感じることはないでしょう。RS9と同じく、入力が一定の時はたわみを制御しきれているため、綺麗に進んでくれる印象です。ケイデンスが極端に高かったり低かったりしなければ、どんなペダリングでも受け入れてくれる懐の深さがあります。
アルミだからといって振動吸収性に劣るということはなく、カーボンと比較との比較でも長距離走った後の疲労に大きな差はでないでしょう。RS9とRS6との比較でいえば、RS9はロードインフォーメションが豊富な分だけ伝わってくる振動も多いほどです。ハンドリングはRS9と遜色ない印象です。気を遣わずとも的確に理想のラインをトレースできます。下り性能も全く問題ないですね。
手頃さと性能のバランスを考えると、機材にかけられるお金に限りのある学生レーサーにピッタリですね。実際にレースで使用してカーボンバイクと競ったとしても、負けることはないでしょう。
「従来のフラッグシップに迫る走行性能 カーボンのような乗り味のアルミレーサー」
山添悟志(WALKRIDE コンセプトストア)
設計コンセプトが同じとあって、RS9に通じる運動性能や軽快感を感じました。これまでのアンカーといえば堅実性を重視していたせいか、アルミフレームもどっしりしていましたが、RS6は一転して踏み出しが軽ろやかになっています。それでいて、従来からのアンカーの特徴である安定感が確保されており、重量的にも無駄がなくなっています。
そして、いい意味でアルミらしさが無く、カーボンっぽい印象の乗り味になっています。RS6は踏み出しが軽いにも関わらず快適性が犠牲になっている印象は全くなく、振動をきっちりと丸めてくれます。
というのもの、一昔前に踏み出しの軽いアルミフレームを作ろうとしたら、トレードオフでどうしても振動吸収性が悪くなってしまうのが常でしたから。その点、昨今のアルミフレームの進化には驚かされますし、「アルミは振動吸収性が悪い」という常識は過去のものになりつつありますね。同様にこれまでアルミの欠点とされてきた反発力が少なく、RS6はガチャ踏みをしても疲れにくかったです。
確かにRS9とRS6を比較すれば、あらゆる点でRS9の優位性が目立ちます。ただ、それはRS9の完成度が高いからであり、従来のフラッグシップであるRIS9に迫る走行性能がRS6にはありますね。RS6の直接の従来もモデルにあたるRA6からは大幅な進化を遂げたといえるでしょう。
RS6が進化した背景にはチューブ形状があると考えられます。最近よく見る四角い断面のチューブですが、アンカーでは従来より使用しており、より使いこなすことができるようになってきたのでしょう。RS6をよくみてみると、四角い断面のチューブでも部位によって縦横比や断面積が細かく変えられていますね。
細かな部分ですが、機械式と電動のどちらのコンポーネントを使用した時でも、ワイヤリングがスマートな点は、作業する側の人間としては喜ばしい点です。
改めてですが、従来のアンカーとは大きく異なる乗り味になっていますので、アルミバイクを探している方で身近にRS6をテストできる機会があれば、是非とも試してみて欲しいですね。また、予算的に無理をしてでもカーボンを買おうとしている方にとっても、RS6は検討の余地があると思います。
RS6は比較的リーズナブルですから、ホイールを始めとした各パーツをハイグレードなものにすれば、とても戦闘力の高い1台になることでしょう。敢えて、RS6にカーボンホイールという組み合わせも面白いかもしれません。カラーリングに関して、オーダーシステムの対応できる幅が広いというのもRS6の大きな特徴の1つですね。国内ブランドという安心感も、RS6ひいてはアンカーの大きなポイントです。
インプレライダーのプロフィール
山添悟志(WALKRIDE コンセプトストア)
神奈川県厚木市に2014年にオープンしたロード系プロショップ、WALKRIDE コンセプトストアの店主。脚質はスプリンターで、過去にいわきクリテリウムBR-2で優勝した経験を持つ。走り系ショップとして有名だが、クラブ員と一緒にグルメツーリングを行うなど、「自転車で走る楽しみ」も同時に追求している。
CWレコメンドショップ
WALKRIDE コンセプトストア
photo:Makoto.AYANO
text:Yuya.Yamamoto
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