KOMコークスクリューで絞られた10名による小集団スプリント。ローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)との接戦を制したサイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)がステージ優勝を飾るとともに総合首位に立った。



第3ステージはビーチタウンのグレネルグをスタート第3ステージはビーチタウンのグレネルグをスタート photo:Kei Tsuji
リーダージャージを着るジェイ・マッカーシー(オーストラリア、ティンコフ)リーダージャージを着るジェイ・マッカーシー(オーストラリア、ティンコフ) photo:Kei Tsujiアダム・ハンセン(オーストラリア、ロット・ソウダル)のシューズは相変わらずアダム・ハンセン(オーストラリア、ロット・ソウダル)のシューズは相変わらず photo:Kei Tsuji


逃げを見送ったメイン集団がペースダウン逃げを見送ったメイン集団がペースダウン photo:Kei Tsujiツアー・ダウンアンダー第3ステージの注目は何と言ってもフィニッシュの6km手前に位置するKOMコークスクリューだ。「コルク栓抜き」という名前の通り、シャープなスイッチバックが続く登りで今大会最初の山岳バトルが繰り広げられた。

第3ステージはビーチタウンのグレネルグをスタート第3ステージはビーチタウンのグレネルグをスタート photo:Kei Tsuji大会ディレクターのマイク・ターター氏がニュートラルスタートの終わりを告げる旗を振るや否や飛び出したのは「何もしないよりは逃げたほうがマシ。良いトレーニングになるし」というローレンス・デフレース(ベルギー、アスタナ)。2015年からアスタナに籍を置く身長190cmの大柄なベルジャンが先行を始めると、メイン集団はすぐにペースを落として道いっぱいに広がった。

沿道では今日もオーストラリア国旗がなびく沿道では今日もオーストラリア国旗がなびく photo:Kei Tsujiアデレード南東部に広がる丘陵地帯を走るこの日の獲得標高差は2,100m。地元出身のモトドライバーが「この辺りはサイクリングにもツーリングにも最高だ」と自信たっぷりに語るワインディングを行く。スタート地点グレネルグは雲に覆われたが、レースが進むとともに空はクリアに。最高気温34度で湿度が高めという真夏の南オーストラリア州を、リーダージャージ擁するティンコフを先頭にしたメイン集団が走る。

単独で逃げ続けるローレンス・デフレース(ベルギー、アスタナ)単独で逃げ続けるローレンス・デフレース(ベルギー、アスタナ) photo:Kei Tsuji先頭デフレースは最大3分のリードを稼ぎ出したものの、終始メイン集団に泳がされている状態。2つのスプリントではメイン集団の先頭がにわかに活性化し、3位通過を2度繰り返した総合首位マッカーシーが合計2秒のボーナスタイムを獲得している。

KOMコークスクリューに向けた総合系チームの位置取り合戦が始まるとメイン集団は自然とペースアップし、残り20kmでこの日の敢闘賞男デフレースを捉え、置き去りにしていく。登り口に向けたハイスピードダウンヒルで落車が発生し、ジュリアン・アレドンド(コロンビア、トレック・セガフレード)やマークス・ブルグハート(ドイツ、BMCレーシング)、タイラー・ファラー(アメリカ、ディメンションデータ)らが脱落した。

なお、ファラーは再スタートを切ったもののしばらくしてリアディレイラー破損により走行不能に。チームカーやニュートラルサービスが周りにおらず、そこに出会わせた観客からバイクとシューズを借りてトップから13分遅れでフィニッシュしている。通常であれば外部からの機材援助は失格処分扱いだが、状況を考慮したコミッセールはファラーの翌日のスタートを認めている。



ぶどう畑が広がるワイン産地を進むぶどう畑が広がるワイン産地を進む photo:Kei Tsuji
山岳賞ジャージを着るマヌエーレ・ボアーロ(イタリア、ティンコフ)がメイン集団を牽引山岳賞ジャージを着るマヌエーレ・ボアーロ(イタリア、ティンコフ)がメイン集団を牽引 photo:Kei Tsujiティンコフを先頭にメイン集団が進むティンコフを先頭にメイン集団が進む photo:Kei Tsuji
リーダージャージを着て走るジェイ・マッカーシー(オーストラリア、ティンコフ)リーダージャージを着て走るジェイ・マッカーシー(オーストラリア、ティンコフ) photo:Kei Tsujiメイン集団を献身的に牽引するオスカル・ガット(イタリア、ティンコフ)メイン集団を献身的に牽引するオスカル・ガット(イタリア、ティンコフ) photo:Kei Tsuji
緩やかなアップダウンを繰り返しながらレースは進む緩やかなアップダウンを繰り返しながらレースは進む photo:Kei Tsuji


内陸部の丘陵地帯を進むメイン集団内陸部の丘陵地帯を進むメイン集団 photo:Kei Tsuji落車の影響でメイン集団は一旦分裂したものの、KOMコークスクリューの麓までに集団は一つに戻る。役者は揃った。ティンコフとチームスカイのハイスピードトレインを先頭にして90度コーナーを曲がり、2013年大会で初登場した平均勾配9%・登坂距離2.5kmのKOMコークスクリューが始まった。

メイン集団はティンコフのコントロール下に置かれたメイン集団はティンコフのコントロール下に置かれた photo:Kei Tsuji頂上までおよそ1.5kmを残してリーダージャージのジェイ・マッカーシー(オーストラリア、ティンコフ)が早くも先頭に立つと、続いてリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)が一気にメイン集団のペースを上げる。このポートのペースアップによってメイン集団は形をなくし、チームメイトのローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)は後方に下がってしまう。

スプリントで競り合うローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)やサイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)スプリントで競り合うローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)やサイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) photo:Kei Tsujiポートのペースに食らいついたのはセルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア、チームスカイ)とドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア)、マイケル・ウッズ(カナダ、キャノンデール)の3名。勾配が増したところでそこからさらにアタックしたのはチームスカイのエースを担うエナオモントーヤと、2015年ツアー・オブ・ユタ総合2位&ステージ優勝を飾って今季キャノンデール入りした29歳のウッズだった。

先頭でフィニッシュするサイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)とローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)先頭でフィニッシュするサイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)とローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング) photo:Kei Tsujiエナオモントーヤとウッズが観客の集まったKOMコークスクリューの頂上を先頭通過し、8秒遅れでリーダージャージのマッカーシーやデニス、ゲランスを含む8名の追走グループが続く。100km/hオーバーのダウンヒルで軽量クライマーのエナオモントーヤとウッズは牽制することなくローテーションを回したものの、フィニッシュまで3kmを残して後続8名が追いついた。

頭から水をかぶるネイサン・ハース(オーストラリア、ディメンションデータ)頭から水をかぶるネイサン・ハース(オーストラリア、ディメンションデータ) photo:Kei Tsuji10名となった先頭グループからスティーブ・モラビート(スイス、FDJ)やデニスがアタックしたものの後続を振り切れず、10名のまま最終ストレートに差し掛かる。ルーベン・フェルナンデス(スペイン、モビスター)を先頭に始まったスプリントで、デニスとゲランス、マッカーシーが競り合った。

アルバジーニと勝利を喜ぶサイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)アルバジーニと勝利を喜ぶサイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) photo:Kei Tsuji「コークスクリューの登りではあえて力を抑えて、追い込むことなく頂上をクリアした。だからスプリントには自信があった」というデニスが先行したものの、ゲランスがその先を行く。最終的にゲランスがホイール半分の差で先着。ゲランスがステージ優勝を飾るとともに、ボーナスタイムによってマッカーシーからリーダージャージを奪った。

息を整えるまもなく始まったフィニッシュ直後のインタビューでゲランスは「コークスクリューの登りはスーパータフだった。ピュアクライマーたちに食らいつくために最大限追い込んだよ」と厳しい戦いを振り返る。

「でもチームメイトのおかげで良いポジションをキープして登りに挑めた。この結果は彼らのおかげだ。昨日の落車の影響は少しあったけど、スプリントポイントのボーナスタイムを無理に狙うことはせずに脚を貯め、最後の勝負に賭けた。ここまで3ステージを終えてオリカ・グリーンエッジはすでにステージ2勝。そして総合首位に立った。この上ない結果だ」。ゲランスは2006年と2012年、2014年のツアー・ダウンアンダー総合優勝者。自身4度目の大会制覇に向けてライバルたちからリードを奪うことに成功している。

「確かにリーダージャージというプレッシャーがあった。リーダージャージを失ったものの総合2位につけているし、明日は荒れる展開も考えられる。全力で総合首位奪還を狙うよ」と語るマッカーシーが総合2位につけ、ディフェンディングチャンピオンのデニスが総合3位に。KOMコークスクリューを先頭通過したエナオモントーヤが山岳賞ジャージを獲得している。



リーダージャージに袖を通したサイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)リーダージャージに袖を通したサイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) photo:Kei Tsuji


ツアー・ダウンアンダー2016第3ステージ結果
1位 サイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)     3h37’34”
2位 ローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)
3位 マイケル・ウッズ(カナダ、キャノンデール)
4位 ジェイ・マッカーシー(オーストラリア、ティンコフ)
5位 スティーブ・モラビート(スイス、FDJ)
6位 ラファエル・バルス(スペイン、ロット・ソウダル)
7位 セルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア、チームスカイ)
8位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、AG2Rラモンディアール)
9位 リッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)
10位 ルーベン・フェルナンデス(スペイン、モビスター)

個人総合成績
1位 サイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)    10h28’12”
2位 ジェイ・マッカーシー(オーストラリア、ティンコフ)            +03”
3位 ローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)            +05”
4位 マイケル・ウッズ(カナダ、キャノンデール)                +11”
5位 セルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア、チームスカイ)       +15”
6位 ラファエル・バルス(スペイン、ロット・ソウダル)
7位 ルーベン・フェルナンデス(スペイン、モビスター)
8位 スティーブ・モラビート(スイス、FDJ)
9位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、AG2Rラモンディアール)
10位 リッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)

スプリント賞
ジェイ・マッカーシー(オーストラリア、ティンコフ)

山岳賞
セルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア、チームスカイ)

ヤングライダー賞
ジェイ・マッカーシー(オーストラリア、ティンコフ)

チーム総合成績
キャノンデール

敢闘賞
ローレンス・デフレース(ベルギー、アスタナ)

text&photo:Kei Tsuji in Adelaide, Australia

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