12月26日土曜日、赤坂シュビアにて毎年恒例のエキップアサダイヤーエンドパーティーが開催された。エキップアサダ後援会主催のこのパーティーは、チームと参加者が触れ合う場であると同時に、育成チーム『EQADS(エカーズ)』の年間活動報告と来季体制が発表される場でもある。新城雄大、城田大和ら新規加入選手も発表されたこの会の模様をお届けする。



浅田顕監督を先頭にEQADSの選手とスタッフが入場し、田之頭宏明後援会長の乾杯で和やかに始まったパーティーは、しばしの歓談を経てチームの活動報告と2016年活動案内へと移行した。

今季と来季のEQADS所属選手の多くがこの場に集まった今季と来季のEQADS所属選手の多くがこの場に集まった photo:Yuichiro Hosoda
エキップアサダ卒業生・新城幸也から開催を祝う花が届いていたエキップアサダ卒業生・新城幸也から開催を祝う花が届いていた photo:Yuichiro Hosoda田之頭会長の発声で乾杯!田之頭会長の発声で乾杯! photo:Yuichiro Hosoda

浅田監督は「エキップアサダ史上最弱です」と、2015年が苦しいシーズンとなった事を隠さずに語った。例年に比して思うような成績を残すに至らなかったからだ。そういった中でもインターハイ優勝を遂げた渡邉歩、フランスのスヴニールJMベツモンで最優秀ジュニア賞を獲得した石上優大、全日本選手権やジャパンカップなどで積極的な展開を見せた面手利輝らが印象に残る。

来季もヨーロッパ遠征が活動の中心となっており、2月13、14日に開催される『さいたまサイクルエキスポ2016』でのチームプレゼンテーションが終わるとすぐにフランスへ渡り、2月末からレースを走り始める。その後も遠征は続き、全日本選手権直前の6月初旬までは週1回、あるいは2週に1回のペースでヨーロッパのレースを転戦する予定となっている。そして全日本終了後再び渡欧し、このスケジュールは続く。

チームの活動報告と来季の活動案内を行う浅田顕監督チームの活動報告と来季の活動案内を行う浅田顕監督 photo:Yuichiro Hosoda発表された2016年チームカレンダー。国内レースへの参戦はほとんどせず、大半を欧州でのレースに費やす発表された2016年チームカレンダー。国内レースへの参戦はほとんどせず、大半を欧州でのレースに費やす photo:Yuichiro Hosoda

特に3月末からのネイションズカップ連戦は、チームが目標とするプロ選手への登竜門的レース、ツール・ド・ラヴニール(フランス、8月下旬開催)への出場権がかかっており、上位入賞でのポイント獲得が必須だ。浅田監督は「世界のトップレベルに通用する日本人ロードレーサーの育成、世界選手権トップ10入りという目標は変わらない」と話す。来季のレーススケジュールを見ても、世界の最前線を経験させようと言うその姿勢に揺るぎがないことは容易に理解できる。

来季の所属選手は11名。トピックは城田大和、新城雄大と言う現国内プロチームからの移籍組だ。宇都宮ブリッツェンに所属した城田はツール・ド・熊野2015で新人賞を獲得。新城は那須ブラーゼンに所属、Jプロツアーでポイントを重ね、U23年間総合優勝を飾った選手だ。残念ながらこの日の来場は叶わなかったが「欧州への挑戦を志願し、EQADSの門を叩いたその勇気に期待している」と浅田監督は語った。

ツール・ド・熊野2015新人賞の城田大和ツール・ド・熊野2015新人賞の城田大和 photo:Hideaki TAKAGIJプロツアー2015のU23年間総合優勝を飾った新城雄大(写真左)Jプロツアー2015のU23年間総合優勝を飾った新城雄大(写真左) photo:Hideaki TAKAGI

さらには東京ヴェントスで走る津村翔平がU23終了間際のタイミングで加入。JBCFレースを主に走り、知多半島・美浜クリテリウムE1で2位に入るなど、好成績を残している。22歳、約半年のチャレンジ期間となる。

ユース選手には中学1年の津田悠義がトライアウトを経て加入した。トライアウトでは並み居る先輩ライダー達を次々抜き去る走りを見せたとのことで、その潜在能力と成長に期待が寄せられた。普段は各校の選手として走る準所属には、小野寛斗、浜田大雅が新規で、蠣崎優仁がひき続きの所属となる。

東京ヴェントスから加入する津村翔平東京ヴェントスから加入する津村翔平 photo:Yuichiro Hosoda中学1年の新星、津田悠義中学1年の新星、津田悠義 photo:Yuichiro Hosoda

横浜高校の小野寛斗。石上優大の後輩だ横浜高校の小野寛斗。石上優大の後輩だ photo:Yuichiro Hosoda大阪の藤井寺工科高から準所属となる浜田大雅大阪の藤井寺工科高から準所属となる浜田大雅 photo:Yuichiro Hosoda

チームきっての高身長、内野直也はU23カテゴリーで継続。昨季は日本代表入りも果たし、ジャパンカップを走るなどしてきた中、今季は力を発揮できずに終わった。来季は巻き返しのシーズンとなる。埼玉のクラブチーム、アライレーシングからEQADSへ加入し1年を過ごした椙田明仁も来季継続。大学へは進学せず挑戦を続ける。

ロード日本代表監督も務める浅田監督は「EQADSに所属したからと言って日本代表に入りやすいと言うことはない。むしろ入りづらいと思ってほしい」とチームの厳しさをプレゼンテーションの中に織り込んでいた。

チームTシャツがプレゼントされるじゃんけん大会も開催チームTシャツがプレゼントされるじゃんけん大会も開催 photo:Yuichiro HosodaTシャツを受け取り喜びの表情。おめでとうございます!Tシャツを受け取り喜びの表情。おめでとうございます! photo:Yuichiro Hosoda

そして残る2人、石上優大と渡邉歩については、ユース世代から実績を重ねてきたEQADS生え抜きの選手として、スライドショーを用いて、笑いも交えつつこれまでの歴史が紹介された。石上は初めてのフランスでのレースでいきなり優勝、2014年世界選手権ロードレースのジュニアで17位に入るなど、同世代で一つ頭が抜けた存在感を示していた。対する福島県出身の渡邉は、当初EQADSのトライアウトに3度挑むも加入がならなかった選手だ。「東日本大震災の被災地の選手に練習の機会を与えたい」と言うエキップアサダの志のもと、特例的にEQADSへの練習参加が認められた後、実力を伸ばし正式加入となった。

経歴も性格も対照的な2人だが、今季は石上が高校選抜で優勝、渡邉がインターハイ優勝と、共に高校生レースの頂点を経験し、来季U23カテゴリーへと世代の駒を進める。

2人への期待を述べる浅田監督2人への期待を述べる浅田監督 photo:Yuichiro Hosoda
「全力でアシストしてもらった時には必ず結果を残したい」と渡邉歩「全力でアシストしてもらった時には必ず結果を残したい」と渡邉歩 photo:Yuichiro Hosoda「ヨーロッパの選手をぶっ飛ばしてやります!」と熱く意気込みを語った石上優大「ヨーロッパの選手をぶっ飛ばしてやります!」と熱く意気込みを語った石上優大 photo:Yuichiro Hosoda

今年を最後にEQADSを卒業する選手は、面手利輝、岡篤志、清水太己の3名。そのうち面手と岡がパーティーに出席。面手は来季のヨーロッパプロチーム入りを果たせなかったが、所属中にフランスのレースでの優勝を経験、また今季はジャパンカップにおいて新城幸也の3位入賞をアシストするなど成長を見せてきた。エリートとなる来季はフランスの『Team Payname』に所属し、挑戦を続ける。渡欧は1月25日を予定。

岡はヨーロッパを目指す形でのレース活動を一旦休止し、次のステップを模索すると言う。力があるにも関わらず、目標とするレースにコンディションがうまく整わず悔しい思いをすることも多かったようだ。2人には浅田監督より労いの言葉と花束が贈られた。

EQADSを卒業する面手利輝と岡篤志EQADSを卒業する面手利輝と岡篤志 photo:Yuichiro Hosoda
来季の所属チームなどについて報告する面手利輝来季の所属チームなどについて報告する面手利輝 photo:Yuichiro Hosoda浅田監督から花束を受け取る岡篤志浅田監督から花束を受け取る岡篤志 photo:Yuichiro Hosoda

パーティーの終盤には、エキップアサダ後援会・田之頭会長の挨拶において、新城幸也からエカーズ所属選手に向けたスペシャルメッセージが読み上げられた。

メッセージの内容については、前述の通り所属選手へ向けた限定的なものと言うことで差し控えるが、彼の日本ロードレース界への熱き想いと責任感が重い言葉になって現れた初めての機会であったように思う。その言葉は浅田監督をして「幸也がここまで考えてくれているとは驚いた」と語らしめた。その場にいた選手達も、それを聞いて涙ぐむ者、向上心を燃え上がらせ口にする者など、それぞれに彼の言葉を受け止めて決意を新たにしたようだ。

最後に浅田監督の十八番、小林旭「熱き心に」を皆で歌い、和やかなムードの中パーティーは閉幕した。参加者は記念品のチームボトルを受け取り、出口で待つ選手達に激励の声をかけながらそれぞれの帰途についた。

田之頭会長により、新城幸也から選手へ向けたスペシャルメッセージが読み上げられた田之頭会長により、新城幸也から選手へ向けたスペシャルメッセージが読み上げられた photo:Yuichiro Hosoda『熱き心に』を歌う浅田監督に渡邉歩もマイクを持ってデュエット『熱き心に』を歌う浅田監督に渡邉歩もマイクを持ってデュエット photo:Yuichiro Hosoda

選手がアーチを作ってお見送り選手がアーチを作ってお見送り photo:Yuichiro Hosoda新たな道へと進む岡篤志と面手利輝新たな道へと進む岡篤志と面手利輝 photo:Yuichiro Hosoda

選手、スタッフが揃って記念撮影選手、スタッフが揃って記念撮影 photo:Yuichiro Hosoda


■EQADS 2016年チーム体制

選手
石上 優大(いしがみ まさひろ/神奈川県)
内野 直也(うちの なおや/埼玉県)
城田 大和(しろた やまと/沖縄県)
新城 雄大(あらしろ ゆうだい/沖縄県)
椙田 明仁(すぎた あきひと/埼玉県)
津村 翔平(つむら しょうへい/神奈川県)
渡邉 歩(わたなべ あゆむ/福島県)

ユース選手
津田 悠義(つだ ゆうぎ/愛知県)

準所属選手
小野 寛斗(おの ひろと/神奈川県)
蠣崎 優仁(かきざき ゆうじん/静岡県)
浜田 大雅(はまだ たいが/大阪府)

※括弧内はふりがなと出身地

スタッフ
監督:浅田顕(JCFロードヘッドコーチ)
マネージャー:山崎健一(UCI公認選手代理人)
アドバイザー:デニス・ゴンザレス(元USポスタル第2監督)
コーチ:相川 将、香立武士(ともに日本体育協会公認自転車コーチ)
チーフメカニック:高橋優平(JCF強化支援スタッフ 自転車整備士)
メカニック:市川貴大(JCF強化支援スタッフ)
アシスタントメカニック:鈴木悠延

text&photo: Yuichiro Hosoda