2015/12/20(日) - 08:30
フェラーリのスポーツカーを筆頭に、様々な工業製品のデザインを手掛けてきたイタリアのピニンファリーナ社と、イタリア自転車界の雄ことデローザがタッグを組み開発したのが「SK by Pininfarina」だ。イタリアンブランドならではの流麗なフォルムを持つデローザ初のエアロロードをインプレッションした。
真っ赤なフェラーリのスポーツカーから、トリノ冬季オリンピックの聖火台とトーチ、更にはインクを要さないペンまで、幅広いジャンルの工業製品のデザインを手掛けるピニンファリーナ。85年以上の歴史を持つイタリアンデザインの象徴とも言うべき同社が、次にタッグを組んだのが、イタリア自転車界における3大ブランドの1つであるデローザである。
その共同開発モデルとして登場したのが「SK by Pininfarina」。デローザとしては初となる本格的なエアロロードバイクである。その開発コンセプトは「Aerodynamic、Fast、Elegant」の3つ。ピニンファリーナが持つエアロダイナミクスの経験やノウハウ、デローザが60年以上に渡って培ってきた自転車づくりの経験、そしてイタリアを拠点とする両社ならではの美への飽くなき探究心を融合した1台だ。
フレーム設計には、ピニンファリーナ社が所有する風洞実験施設でのテストで得たデータを多く投入している。ダウンチューブやヘッドチューブには、翼断面の後端を切り落とした昨今主流のチューブ形状を採用。
前方からの風のみならず、横方向からの風による空気抵抗も低減し、安定性を高めた。
バイクネームとピニンファリーナのロゴを大きく描いたシートチューブは、リアタイヤとのクリアランスを可能な限り詰め、リムと一体になるようなデザインとすることでスムーズな空気の流れを実現。加えて、曲線を多用した扁平形状のフォークブレードやヘッド周りの一体デザイン、前後のダイレクトマウントブレーキ、扁平形状のシートステー、臼式シートクランプ、スッキリとしたデザインの鼓型BBシェルも空力性能の向上に貢献している。
フレーム形状と同様に素材にもこだわっており、他ブランドでは多くても3種類のところ、「SK」では60T、40T、30T、24Tという4種類のカーボンを採用。これを適材適所で配置し、3Dプリントによる特別な樹脂製インナーモールドを用いた「Inner Mold Tooling」法によって成型。従来モデルにあたるSUPERKINGより15%の軽量化を達成している。
一方で、ボトムブラケットシェルはBB386規格を採用することでシェル幅を目一杯拡幅し、ペダリング剛性を強化。ヘッドチューブは下側1-1/4インチのテーパードデザインとし、制動力に優れるダイレクトマウントブレーキと合わせて、デローザの長所である高速のダウンヒルやカーブでの安定感を更に高めた格好だ。
また、一般的にエアロロードの弱点とされる快適性を高めようとする意匠も各部に。フロントフォークはエンドに近づくにつれブレードを薄くなっており、チェーンステーはエンド付近でベンドさせ、前後の末端で振動を緩和。もちろん、細身のシートステーも振動吸収に貢献している。
そして、レースバイクの現場を知り尽くしたデローザらしく、細部の設計はエアロ性能の追求よりも、扱いやすさを重視している。ハンドル及びステムは汎用規格に対応。シートポストのヤグラは、固定力に優れ、無断階で角度調整できるオーソドックスな2本締めとしている。コンポーネントはシマノDi2、カンパニョーロEPS、各ブランドの機械式に対応し、ケーブルルーティングは無理のない仕上がりとなっている。
販売はフレームセットにて行われ、サイズは46、48、50、52、54、56の6種類展開。最小サイズ46はトップチューブ長503mmと、女性サイクリストを含む小柄なライダーにも対応する。
カラーはBlue Black Glossy、White Black Glossy、Black Red Mattに、かつて初代IDOLで人気を博したBlue Gold Glossy(日本限定)を合わせた4種類。いずれもシンプルながら深みのある色合いで、フォークのクラウン部分にも塗り分けが施されるなど、凝った仕上がりとなっている。
ピニンファリーナとデローザという、イタリアンデザインの血統を受け継ぐ両ブランドのコラボレーションを経て誕生した「SK by Pininfarina」をインプレライダーの2人はどう評価するのか。早速インプレッションに移ろう。
ーインプレッション
「良いウェアを着て乗りたい上質な1台 高速巡航性に秀でる」
山崎敏正(シルベストサイクル)
さすがはデローザというべき、上質な走行感を持ったバイクですね。何かピーンと張り詰めた緊張感がある高級な走りは他に類を見ません。乗るのがもったいないと思わせられるほど流麗なルックスや、凝ったペイントは、襟を正すではないですが、良いウェアを着て乗りたいと思わせてくれますね。
カーボンの薄さと硬さを感じる乗り味は各社のハイエンドバイクと比較しても遜色ない印象で、気持ち良く乗るにはこれ以上ない1台です。肩肘を張って乗るのではなく、うだるような夏の昼間というよりは、空気の澄んだ朝に走るのが気持ち良いといえば、このバイクの雰囲気が伝わるでしょうか。
エアロロードながら縦剛性が強すぎることも無ければ、横剛性が低いということもありません。加えて、フォークとリアバックの剛性バランスも良好です。今回テストした48サイズでもバランスが良かったわけですから、サイズが大きくなれば、よりベターになるでしょう。小さいサイズのバイクは常に設計が難しいものだからです。
性能面では高速巡航性の高さが特徴ですね。ガチガチに剛性が高いというわけではなく、しなりも適度にあり、ウィップを生かしてグイグイと進んでくれます。そして「もっと踏んでくれ、まだまだスピードが伸びるよ」とバイクから訴えかけてきますし、それに応えて踏みたくなってしまいますね。ペダリングとしては軽いギアを回転数を上げた乗り方のほうが良いでしょう。
加速や登りでは、ライダーが思った以上に進んでくれます。このバイクに乗り換えたら「加速感が高いと思ったら、メーターを見てびっくり」「登りの調子が良いと思ったら、実際はフィーリング以上にタイムが更新できた」なんてことも起こり得るはずです。
コーナリングは見た目とは裏腹にニュートラルでクセがありません。シートポストが下げきれなかったため、今回のインプレッションではコーナーを攻めきることができませんでしたが、適切なポジションであれば、より軽快に走れるでしょう。直進安定性も良好ですね。
レーシングバイクとしては振動吸収性は良好で、エアロロードにありがちな縦方向の硬さは、乗り心地の面でも感じられません。大きな振動はしっかりといなして、細かい振動で路面状況を伝えてくれるため、不安感のなくコーナーを攻めることができます。
そして、ブレーキング性能の高さもSKの大きな特徴ですね。ダイレクトマウントを採用したことと、リア取付部周辺の設計がよく出来ているためでしょう。踏み心地や加速感に感じる高級感は、ブレーキングの挙動にも感じられます。調整機能に改良の余地はあるものの、今回取り付けられていたデローザのロゴ入りブレーキは制動力自体も良いですし、フレームの性能をうまく引き立たせています。
他社のハイエンドモデルの価格が70万円に迫ろうとしている中で、ハイエンドに近い走行性能で価格は半分ほど。しかし、私自身も値段を聞くまではこのバイクの価格は50万円台でもおかしくないと思っていたほど出来のよいバイクですから、お買い得感が高いといえるでしょう。
冒頭では「肩肘を張って乗るバイクではなく」と言いましたが、どんなレースでも好成績を狙えるバイクでもありますし、どちらかといえば平均スピードの高い平坦系レースが得意ですね。巡航性に優れていますから、ロングのトライアスロンにもおすすめです。
「見た目とは裏腹にマイルドな乗り味 余裕のある大人のためのラグジュアリーな1台」
鈴木卓史(スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ)
一言で言い表すとすれば「大人のためのラグジュアリーなバイク」ですね。デローザのブランドイメージ、ピニンファリーナのデザイン、そして見た目とは裏腹にマイルドな乗り味が一体となった1台です。良い意味でエアロロードっぽさがなく、上級者でなくとも、誰にでも乗りこなすことができるでしょう。
ルックス自体はエアロロードそのものですから、剛性が高くて硬いのかな?と想像していました。しかし、実際にはマイルドな乗り味で、多くのエアロロードのように、縦剛性が高すぎて踏み負けたり、疲労に繋がると言うことはありません。
縦横の剛性バランスが良く、ハンドリングもニュートラルで、ダンシングにもエアロロードにありがちな強いクセは感じられません。下りはダイレクトマウントブレーキの高い制動力もあって軽快にこなすことができます。登りも軽やかですし、あらゆるシーンでそつなく走ってくれます。乗り味だけでいえば、オールラウンドモデルですね。
もちろん、エアロダイナミクスについての効果は体感できますが、アメリカ系ブランドのエアロロードほどというわけではなく、オールラウンドモデルに空力性能が付加された程度という印象です。それでも、ピニンファリーナがデザインに参加したとあって、機能性と美しさがうまく融合されており、見た目の速さは他のエアロロードよりも秀でていると感じました。
良いバイクが欲しいけど、レースバイクだと硬すぎるし気恥ずかしいし、スチールバイクやロングライド向けモデルには食指が伸びないという方は決して少なくないはず。SKはそういった方にこそ適したバイクです。
他のブランドには真似できない、デローザだからこその立ち位置の1台といえるかもしれません。
ロングライドであったり、たまに仲間で集まってエンデューロを走るというような使い方をするサイクリストにこそおすすめです。40代後半~50代前半のスーパーカー世代の方は、ピニンファリーナという名前だけで惹かれるでしょう、ルックスやブランドイメージに惹かれて購入する方も多くいるバイクだとは思いますが、性能面で後悔することはないでしょう。加えて、所有欲を存分に満たしてくれるだけの雰囲気があり、シートポストまで塗り分けしているなど、細部のディテールも非常に良く仕上がっています。
ホイールは50mmハイト位のエアロ系モデルがマッチしていて、やはりデローザとあればカンパニョーロのBORAシリーズがマッチするでしょう。ダイレクトマウントブレーキが登場したこともあり、コンポーネントはぜひカンパニョーロのRECORDやCHORUSをアッセンブルしてあげたいですね。
デローザ SK by Pininfarina(フレームセット)
フレーム素材:60T、40T、30T、24Tカーボン
BBシェル:BB386
サイズ:46、48、50、52、54、56
カラー:Blue Black Glossy、White Black Glossy、Black Red Matt、Blue Gold Glossy(日本限定)
価 格:348,000円(税別)
インプレライダーのプロフィール
鈴木卓史(スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ)
スポーツバイクファクトリー北浦和スズキの店長兼代表取締役を務める。過去には大手自転車ショップで修行を積んだ後、独立し現在の北浦和に店を構える。週末はショップのお客さんとのライドやトライアスロンに力を入れている。ショップでは個人のポジションやフィッティングを追求すると同時に、ツーリングなどのイベントを開催することで走る場を提供し、ユーザーに満足してもらうことを第一に考えている。「買ってもらった方に自転車を続けてもらう」ことをモットーに魅力あるバイクライフを提案する日々を送っている。
CWレコメンドショップページ
ショップHP
山崎敏正(シルベストサイクル)
「てnち」のニックネームで親しまれているシルベストサイクル総括店長。選手としてはモスクワオリンピックの日本代表に選出された経験を持つ一方で、サンツアーの開発部に在籍していたことから機材への造詣も深い。現在も現役でロードレースを走る。シルベストサイクルは梅田、箕面、京都と関西に3箇所に店舗を構え「頑張るアスリートのためのショップ」として信頼の技術力や確かなフィッティングサービスなどを提供する。加えて、ロードレースやロングライド、トライアスロン、トレイルランなど様々なジャンルのソフトサービスを展開している。
CWレコメンドショップページ
ショップHP
ウエア協力:reric
photo:Makoto.AYANO
text:Yuya.Yamamoto
真っ赤なフェラーリのスポーツカーから、トリノ冬季オリンピックの聖火台とトーチ、更にはインクを要さないペンまで、幅広いジャンルの工業製品のデザインを手掛けるピニンファリーナ。85年以上の歴史を持つイタリアンデザインの象徴とも言うべき同社が、次にタッグを組んだのが、イタリア自転車界における3大ブランドの1つであるデローザである。
その共同開発モデルとして登場したのが「SK by Pininfarina」。デローザとしては初となる本格的なエアロロードバイクである。その開発コンセプトは「Aerodynamic、Fast、Elegant」の3つ。ピニンファリーナが持つエアロダイナミクスの経験やノウハウ、デローザが60年以上に渡って培ってきた自転車づくりの経験、そしてイタリアを拠点とする両社ならではの美への飽くなき探究心を融合した1台だ。
フレーム設計には、ピニンファリーナ社が所有する風洞実験施設でのテストで得たデータを多く投入している。ダウンチューブやヘッドチューブには、翼断面の後端を切り落とした昨今主流のチューブ形状を採用。
前方からの風のみならず、横方向からの風による空気抵抗も低減し、安定性を高めた。
バイクネームとピニンファリーナのロゴを大きく描いたシートチューブは、リアタイヤとのクリアランスを可能な限り詰め、リムと一体になるようなデザインとすることでスムーズな空気の流れを実現。加えて、曲線を多用した扁平形状のフォークブレードやヘッド周りの一体デザイン、前後のダイレクトマウントブレーキ、扁平形状のシートステー、臼式シートクランプ、スッキリとしたデザインの鼓型BBシェルも空力性能の向上に貢献している。
フレーム形状と同様に素材にもこだわっており、他ブランドでは多くても3種類のところ、「SK」では60T、40T、30T、24Tという4種類のカーボンを採用。これを適材適所で配置し、3Dプリントによる特別な樹脂製インナーモールドを用いた「Inner Mold Tooling」法によって成型。従来モデルにあたるSUPERKINGより15%の軽量化を達成している。
一方で、ボトムブラケットシェルはBB386規格を採用することでシェル幅を目一杯拡幅し、ペダリング剛性を強化。ヘッドチューブは下側1-1/4インチのテーパードデザインとし、制動力に優れるダイレクトマウントブレーキと合わせて、デローザの長所である高速のダウンヒルやカーブでの安定感を更に高めた格好だ。
また、一般的にエアロロードの弱点とされる快適性を高めようとする意匠も各部に。フロントフォークはエンドに近づくにつれブレードを薄くなっており、チェーンステーはエンド付近でベンドさせ、前後の末端で振動を緩和。もちろん、細身のシートステーも振動吸収に貢献している。
そして、レースバイクの現場を知り尽くしたデローザらしく、細部の設計はエアロ性能の追求よりも、扱いやすさを重視している。ハンドル及びステムは汎用規格に対応。シートポストのヤグラは、固定力に優れ、無断階で角度調整できるオーソドックスな2本締めとしている。コンポーネントはシマノDi2、カンパニョーロEPS、各ブランドの機械式に対応し、ケーブルルーティングは無理のない仕上がりとなっている。
販売はフレームセットにて行われ、サイズは46、48、50、52、54、56の6種類展開。最小サイズ46はトップチューブ長503mmと、女性サイクリストを含む小柄なライダーにも対応する。
カラーはBlue Black Glossy、White Black Glossy、Black Red Mattに、かつて初代IDOLで人気を博したBlue Gold Glossy(日本限定)を合わせた4種類。いずれもシンプルながら深みのある色合いで、フォークのクラウン部分にも塗り分けが施されるなど、凝った仕上がりとなっている。
ピニンファリーナとデローザという、イタリアンデザインの血統を受け継ぐ両ブランドのコラボレーションを経て誕生した「SK by Pininfarina」をインプレライダーの2人はどう評価するのか。早速インプレッションに移ろう。
ーインプレッション
「良いウェアを着て乗りたい上質な1台 高速巡航性に秀でる」
山崎敏正(シルベストサイクル)
さすがはデローザというべき、上質な走行感を持ったバイクですね。何かピーンと張り詰めた緊張感がある高級な走りは他に類を見ません。乗るのがもったいないと思わせられるほど流麗なルックスや、凝ったペイントは、襟を正すではないですが、良いウェアを着て乗りたいと思わせてくれますね。
カーボンの薄さと硬さを感じる乗り味は各社のハイエンドバイクと比較しても遜色ない印象で、気持ち良く乗るにはこれ以上ない1台です。肩肘を張って乗るのではなく、うだるような夏の昼間というよりは、空気の澄んだ朝に走るのが気持ち良いといえば、このバイクの雰囲気が伝わるでしょうか。
エアロロードながら縦剛性が強すぎることも無ければ、横剛性が低いということもありません。加えて、フォークとリアバックの剛性バランスも良好です。今回テストした48サイズでもバランスが良かったわけですから、サイズが大きくなれば、よりベターになるでしょう。小さいサイズのバイクは常に設計が難しいものだからです。
性能面では高速巡航性の高さが特徴ですね。ガチガチに剛性が高いというわけではなく、しなりも適度にあり、ウィップを生かしてグイグイと進んでくれます。そして「もっと踏んでくれ、まだまだスピードが伸びるよ」とバイクから訴えかけてきますし、それに応えて踏みたくなってしまいますね。ペダリングとしては軽いギアを回転数を上げた乗り方のほうが良いでしょう。
加速や登りでは、ライダーが思った以上に進んでくれます。このバイクに乗り換えたら「加速感が高いと思ったら、メーターを見てびっくり」「登りの調子が良いと思ったら、実際はフィーリング以上にタイムが更新できた」なんてことも起こり得るはずです。
コーナリングは見た目とは裏腹にニュートラルでクセがありません。シートポストが下げきれなかったため、今回のインプレッションではコーナーを攻めきることができませんでしたが、適切なポジションであれば、より軽快に走れるでしょう。直進安定性も良好ですね。
レーシングバイクとしては振動吸収性は良好で、エアロロードにありがちな縦方向の硬さは、乗り心地の面でも感じられません。大きな振動はしっかりといなして、細かい振動で路面状況を伝えてくれるため、不安感のなくコーナーを攻めることができます。
そして、ブレーキング性能の高さもSKの大きな特徴ですね。ダイレクトマウントを採用したことと、リア取付部周辺の設計がよく出来ているためでしょう。踏み心地や加速感に感じる高級感は、ブレーキングの挙動にも感じられます。調整機能に改良の余地はあるものの、今回取り付けられていたデローザのロゴ入りブレーキは制動力自体も良いですし、フレームの性能をうまく引き立たせています。
他社のハイエンドモデルの価格が70万円に迫ろうとしている中で、ハイエンドに近い走行性能で価格は半分ほど。しかし、私自身も値段を聞くまではこのバイクの価格は50万円台でもおかしくないと思っていたほど出来のよいバイクですから、お買い得感が高いといえるでしょう。
冒頭では「肩肘を張って乗るバイクではなく」と言いましたが、どんなレースでも好成績を狙えるバイクでもありますし、どちらかといえば平均スピードの高い平坦系レースが得意ですね。巡航性に優れていますから、ロングのトライアスロンにもおすすめです。
「見た目とは裏腹にマイルドな乗り味 余裕のある大人のためのラグジュアリーな1台」
鈴木卓史(スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ)
一言で言い表すとすれば「大人のためのラグジュアリーなバイク」ですね。デローザのブランドイメージ、ピニンファリーナのデザイン、そして見た目とは裏腹にマイルドな乗り味が一体となった1台です。良い意味でエアロロードっぽさがなく、上級者でなくとも、誰にでも乗りこなすことができるでしょう。
ルックス自体はエアロロードそのものですから、剛性が高くて硬いのかな?と想像していました。しかし、実際にはマイルドな乗り味で、多くのエアロロードのように、縦剛性が高すぎて踏み負けたり、疲労に繋がると言うことはありません。
縦横の剛性バランスが良く、ハンドリングもニュートラルで、ダンシングにもエアロロードにありがちな強いクセは感じられません。下りはダイレクトマウントブレーキの高い制動力もあって軽快にこなすことができます。登りも軽やかですし、あらゆるシーンでそつなく走ってくれます。乗り味だけでいえば、オールラウンドモデルですね。
もちろん、エアロダイナミクスについての効果は体感できますが、アメリカ系ブランドのエアロロードほどというわけではなく、オールラウンドモデルに空力性能が付加された程度という印象です。それでも、ピニンファリーナがデザインに参加したとあって、機能性と美しさがうまく融合されており、見た目の速さは他のエアロロードよりも秀でていると感じました。
良いバイクが欲しいけど、レースバイクだと硬すぎるし気恥ずかしいし、スチールバイクやロングライド向けモデルには食指が伸びないという方は決して少なくないはず。SKはそういった方にこそ適したバイクです。
他のブランドには真似できない、デローザだからこその立ち位置の1台といえるかもしれません。
ロングライドであったり、たまに仲間で集まってエンデューロを走るというような使い方をするサイクリストにこそおすすめです。40代後半~50代前半のスーパーカー世代の方は、ピニンファリーナという名前だけで惹かれるでしょう、ルックスやブランドイメージに惹かれて購入する方も多くいるバイクだとは思いますが、性能面で後悔することはないでしょう。加えて、所有欲を存分に満たしてくれるだけの雰囲気があり、シートポストまで塗り分けしているなど、細部のディテールも非常に良く仕上がっています。
ホイールは50mmハイト位のエアロ系モデルがマッチしていて、やはりデローザとあればカンパニョーロのBORAシリーズがマッチするでしょう。ダイレクトマウントブレーキが登場したこともあり、コンポーネントはぜひカンパニョーロのRECORDやCHORUSをアッセンブルしてあげたいですね。
デローザ SK by Pininfarina(フレームセット)
フレーム素材:60T、40T、30T、24Tカーボン
BBシェル:BB386
サイズ:46、48、50、52、54、56
カラー:Blue Black Glossy、White Black Glossy、Black Red Matt、Blue Gold Glossy(日本限定)
価 格:348,000円(税別)
インプレライダーのプロフィール
鈴木卓史(スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ)
スポーツバイクファクトリー北浦和スズキの店長兼代表取締役を務める。過去には大手自転車ショップで修行を積んだ後、独立し現在の北浦和に店を構える。週末はショップのお客さんとのライドやトライアスロンに力を入れている。ショップでは個人のポジションやフィッティングを追求すると同時に、ツーリングなどのイベントを開催することで走る場を提供し、ユーザーに満足してもらうことを第一に考えている。「買ってもらった方に自転車を続けてもらう」ことをモットーに魅力あるバイクライフを提案する日々を送っている。
CWレコメンドショップページ
ショップHP
山崎敏正(シルベストサイクル)
「てnち」のニックネームで親しまれているシルベストサイクル総括店長。選手としてはモスクワオリンピックの日本代表に選出された経験を持つ一方で、サンツアーの開発部に在籍していたことから機材への造詣も深い。現在も現役でロードレースを走る。シルベストサイクルは梅田、箕面、京都と関西に3箇所に店舗を構え「頑張るアスリートのためのショップ」として信頼の技術力や確かなフィッティングサービスなどを提供する。加えて、ロードレースやロングライド、トライアスロン、トレイルランなど様々なジャンルのソフトサービスを展開している。
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ウエア協力:reric
photo:Makoto.AYANO
text:Yuya.Yamamoto
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