ホビーレーサー最強の座を決めるツール・ド・おきなわ市民210km。レース前の優勝宣言通り、ずば抜けた強さを魅せつけたのは高岡亮寛(イナーメ信濃山形)。終始レースを支配し、28kmを残して独走、通算3勝目を挙げた。



朝日を浴びながらスタートを待つ市民210kmの選手たち朝日を浴びながらスタートを待つ市民210kmの選手たち photo:Makoto.AYANOスタート最前列に並んだ高岡亮寛と高橋誠(イナーメ信濃山形)スタート最前列に並んだ高岡亮寛と高橋誠(イナーメ信濃山形) photo:Makoto.AYANO


名護市を発着するコースは、UCIチャンピオンレースと全く同じルートをたどる。本部半島をほぼ一周してから海岸線を北上し、厳しい普久川ダムの登りを計2回こなし、アップダウンが連続する東海岸を南下。スタミナを消耗したレース終盤には厳しい急坂の羽地ダムの登坂が待ち構える。

ホビーレースとしては国内最長かつ最難関のコースであり、ゆえにそのステイタスは非常に高い。ホビーレースといえども年間を通じたトレーニングプランとコンディショニングづくりができなくては勝負に絡むことは難しい。

朝陽を浴びながら名護市街を出発していく市民210kmの選手たち朝陽を浴びながら名護市街を出発していく市民210kmの選手たち photo:Makoto.AYANO
優勝候補筆頭の高岡をはじめ、強豪ホビーレーサー323人が集った。チャンピオンレースが6:45にスタートしてから約1時間2分後、300人を越える巨大なプロトンが朝陽を浴びながらコースへと走りだしていった。

例年、チャンピオンレースよりもペースが早く進むこの市民210km。コース上の工事箇所も例年に比べて少なく、スムーズに滑りだしていく。先頭付近には高岡、白石慎吾(シマノドリンキング)、奈良浩や小畑 郁率いるなるしまフレンドのメンバーたちなどベテラン勢がポジションを固めつつ、リラックスした表情で走りだす。

海岸線に出るとスピードが上がる市民210kmのメイン集団海岸線に出るとスピードが上がる市民210kmのメイン集団 photo:Makoto.AYANO代わる代わる先頭に出てペースを上げていく市民210kmのメイン集団代わる代わる先頭に出てペースを上げていく市民210kmのメイン集団 photo:Makoto.AYANO


スタートしばらくで形成された8人の逃げスタートしばらくで形成された8人の逃げ photo:Makoto.AYANO
0km地点リアルスタートから間もなく、するすると数人が抜けだして前へと逃げ出す。後方からひとり、またひとりと飛びつき、瀬底島を通過するあたりまでに8人の逃げが形成される。

8人のメンバーは、安藤光平(bicicletta SHIDO)、櫻井一輝(なるしまフレンド)、渡邊悠太(OMG MORI)、佐藤秀和(サイクルフリーダム)、土屋幸生(WANGAN United)、下島将輝(コラッジョ川西)、高橋伸成(Fits Groen)、多田尚史と八幡光哉(ともにTEAM SPORT KID)。

8人はローテーションしながら順調に海岸線を逃げ続け、メイン集団に3分の差をつける。しかし1回目の普久川ダムの上りで分解。メイン集団のペースも上がったことで最初のKOMを通過した後、集団に飲み込まれてしまう。1回目頂上の山岳賞は安藤光平(bicicletta SHIDO)が獲得。

1回目の普久川ダムへの与那の坂を登る先頭集団1回目の普久川ダムへの与那の坂を登る先頭集団 photo:Makoto.AYANO
奥から辺戸岬にかけての周回を経て、2回めの普久川ダムの上りでさらにメイン集団はペースが上がり、バラバラに分断される。レースを作ったのは優勝候補の高岡亮寛だ。

約20人ほどとなった先頭集団は、下りきったところでさらに高岡のペースアップにより、一気に6人に絞られる。そして高江のアップダウンでさらに4人に。高岡の動きに対応できたのは、白石真悟(シマノドリンキング)、青木峻二(ウォークライド) 、井上亮(VCフクオカ)だ。

高岡亮寛(イナーメ信濃山形)、青木峻二(ウォークライド) 、白石真悟(シマノドリンキング)、井上亮(VCフクオカ)の4人が抜け出す高岡亮寛(イナーメ信濃山形)、青木峻二(ウォークライド) 、白石真悟(シマノドリンキング)、井上亮(VCフクオカ)の4人が抜け出す photo:Makoto.AYANO
青木峻二(ウォークライド) 、井上亮(VCフクオカ)、高岡亮寛(イナーメ信濃山形)の3人の逃げが続く青木峻二(ウォークライド) 、井上亮(VCフクオカ)、高岡亮寛(イナーメ信濃山形)の3人の逃げが続く photo:Makoto.AYANOパンクにより遅れた白石真悟(シマノドリンキング)と、小畑郁(なるしまフレンド)、田崎友康(F(t)麒麟山レーシング)による追走パンクにより遅れた白石真悟(シマノドリンキング)と、小畑郁(なるしまフレンド)、田崎友康(F(t)麒麟山レーシング)による追走 photo:Makoto.AYANO


ペースを上げる4人。しかし白石真悟の前輪がパンク。やむなくニュートラルサポートのスペアホイールに交換した白石だが、一旦ストップしたことで追いつけない差がついてしまう。白石は小畑郁(なるしまフレンド)と田崎友康(F(t)麒麟山レーシング)とともに3人で高岡を含む3人を追走することになる。

残り距離の長さから3人で行くと思われた高岡だったが、次々とふたりを突き放すと、ラスト28kmで独走状態に入る。青木と井上もそれぞれ独走状態での追走となる。白石を含む3人も数で有利ながら差を詰めることはできない。やんばる路の連続する厳しいアップダウンに数的有利の方程式は成立しないようだ。

淡々とペースを上げて逃げ続ける高岡亮寛(イナーメ信濃山形)淡々とペースを上げて逃げ続ける高岡亮寛(イナーメ信濃山形) photo:Makoto.AYANO

逃げる高岡ら3人を追う市民210kmのメイン集団逃げる高岡ら3人を追う市民210kmのメイン集団 photo:Makoto.AYANO
ハイペースを刻み、快調に独走を続ける高岡。他との力の差は歴然としていた。最後の急勾配の坂、羽地ダムの上りも難なくこなすと、国道58号線へと下り、後は名護への平坦路を消化するのみ。カメラモトに向け残り5kmで早くも「3勝目」を意味する指三本のサインを繰り出し、笑顔を浮かべる。

後続の青木と井上を1分55秒引き離し、5時間28分07秒で名護のフィニッシュに戻ってきた高岡。ちなみにこのタイムはチャンピオンレースより約9分速かった。サインは高々と挙げた両手の「指3本」だ。

名護のフィニッシュへ向かう国道58号線で早くも3勝目をアピールする指三本サインを出す高岡亮寛(イナーメ信濃山形)名護のフィニッシュへ向かう国道58号線で早くも3勝目をアピールする指三本サインを出す高岡亮寛(イナーメ信濃山形) photo:Makoto.AYANO市民レース210kmを独走で制した高岡 亮寛(イナーメ信濃山形)市民レース210kmを独走で制した高岡 亮寛(イナーメ信濃山形) photo:Makoto.AYANO4位争いは田崎友康(F(t)麒麟山レーシング)と小畑郁(なるしまフレンド)4位争いは田崎友康(F(t)麒麟山レーシング)と小畑郁(なるしまフレンド) photo:Makoto.AYANO


高岡に離されてバラバラに走っていた青木と井上は、再びジョインしてふたりで羽地ダムの上りへ。そしてフィニッシュまでランデブーを続けた。ゴールではスプリントに勝る青木が井上を下し、2位に。結果的には満足行くものだが、青木もまた勝利を狙っていたひとり。しかし高岡の強さの前に、勝つ術はほぼ無かったと振り返る。

過去2007、2011年の2度、市民最長距離レースでの優勝経験がある高岡。これで3勝目となり、1993、1995、2001年の3回の市民200km優勝経験を持つ高山忠志と3勝で並んだ。

市民210km表彰 優勝した高岡亮寛(イナーメ信濃山形)、2位青木峻二(ウォークライド)、3位井上亮(VCフクオカ)市民210km表彰 優勝した高岡亮寛(イナーメ信濃山形)、2位青木峻二(ウォークライド)、3位井上亮(VCフクオカ) photo:Makoto.AYANO
チームのイナーメ信濃山形はUCIチャンピオンレースに出場権があり、高岡自身も出場経験が有る。今年もチームはチャンピオンレースに出場したが、高岡は昨年2位に終わった市民レースを選択し、チームメイトの高橋誠とともにふたりで出場した。

市民レースを選ぶのは、サラリーマンレーサーの趣味として仕事と自転車、そして家庭を両立させ、競技を楽しむためだ。昨年2位に終わった時、市民3勝、そしてその先の4勝目を強く意識した。すでに自転車レースを離れた高山忠志とタイの3勝。目指すはその先の4勝だ。

高岡は言う。「市民にエントリーするからには勝つために走りました。終わってみればイメージ通りの走り。ラスト30kmの独走は、過去2回の勝利の時の独走と比べれば早めの逃げというわけではありません。
ここまでの練習は付け焼刃的でしたが、9月下旬からおきなわを強く意識して距離を乗り込んできました。しかし今年はスケジュール的に子供の運動会や受験など色々な行事で週末に乗れないことが多いことが判っていたので、チャンピオンは諦めて市民を選びました。それで結果的に集中できましたね。

今年は明確に勝つつもりだったので、過去2回とは意識が少し違っていました。来年は4勝目と、今まで2連覇した人は誰も居ないので、両方を狙いたいですね。数えればおきなわは10年出場です。まだ38歳で、まだ年齢のハンデは感じていないので、来年もまだ行けると思っています。その先は、ひとつずつですね」。


ツール・ド・おきなわ2015市民210km トップ10
1位 高岡 亮寛(イナーメ信濃山形)5:28:07.604
2位 青木 峻二(ウォークライド) +1分55秒11
3位 井上 亮(VCフクオカ)+1分55秒95
4位 田崎 友康(F(t)麒麟山レーシング)+8分48秒64
5位 小畑 郁(なるしまフレンド)+8分48秒96
6位 白石 真悟(シマノドリンキング)+8分51秒97
7位 簑原 大介(VCフクオカ)+9分43秒96
8位 Caputo Paolo(Allied World-CCN)+9分44秒18
9位 岩島 啓太(MIVRO)+9分44秒24
10位 奈良 浩(なるしまフレンド)+9分44秒59

text&photo:Makoto.AYANO(綾野真)
photo:Hideaki.TAKAGI(高木秀彰)
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