獲得標高差が今大会最大の3,453mに達する第6ステージは、プロトンの約1/3が先行する異例の展開に。終盤に独走に持ち込んだマッテオ・トレンティン(イタリア、エティックス・クイックステップ)が勝利し、ライバルの攻撃を防いだエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、MTNキュベカ)が総合リードを広げた。



イエロージャージを着てピースするエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、MTNキュベカ)イエロージャージを着てピースするエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、MTNキュベカ) photo:Kei Tsuji


ツアー・オブ・ブリテン2015第6ステージツアー・オブ・ブリテン2015第6ステージ image:www.tourofbritain.co.ukイングランド北部に広がるピークディストリクト国立公園をツアー・オブ・ブリテンは走る。標高300〜400mのダイナミックな丘となだらかな山が延々と連なる国立公園は、マンチェスターなどの大都市からアクセスも良く、トレッキングやハイキングの目的地として親しまれている。

ストークオントレントをスタートする選手たちストークオントレントをスタートする選手たち photo:Kei Tsujiストークオントレントからノッティンガムまでの192.8kmコースの獲得標高差は今大会最大の3,453m。高低差100〜200mのアップダウンがスタートからフィニッシュまで断続的に登場する。しかも勾配のある登りが連続するため、さながらリエージュ〜バストーニュ〜リエージュ。コースの厳しさと風の強さ、そして1秒差という僅差の総合争いがレース展開を厳しいものにした。

イアン・スタナード(イギリス、チームスカイ)が積極的に先頭集団のペースを上げるイアン・スタナード(イギリス、チームスカイ)が積極的に先頭集団のペースを上げる photo:Kei Tsujiスタート直後からレースが高速化する中、マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、エティックス・クイックステップ)が駐車車両と接触して落車してしまう。左肩から地面に落ちたカヴェンディッシュはそのままリタイア。病院での検査で骨折は発見されなかったが、2週間後に迫るロード世界選手権への影響が心配される。

集団先頭でUCIワールドチームを中心にしたアタック合戦が繰り返された結果、30名が先行を開始する。総合逆転を狙うチームスカイが人数を揃えた一方で、イエロージャージを着るボアッソンハーゲンは単独に。

後方に取り残された76名の大集団はペースが上がらず、レース中盤の時点で先頭から15分遅れ。総合4位ベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター)を含む大集団に追撃の意思はなく、先頭30名とのタイム差はその後も広がり続けた。

スタートから一切落ち着くことなくハイペースでアップダウンコースを進んだメイン集団。やがてステファン・キュング(スイス、BMCレーシング)、ゴルカ・イサギーレ(スペイン、モビスター)、セバスティアン・ラングフェルド(オランダ、キャノンデール・ガーミン)、ブラム・タンキンク(オランダ、ロットNLユンボ)、イェンス・デブシェール(ベルギー、ロット・ソウダル)、マッテオ・トレンティン(イタリア、エティックス・クイックステップ)がメイン集団から抜け出し、逃げグループを形成して先を急いだ。



ピークディストリクト国立公園の2級山岳を通過していくピークディストリクト国立公園の2級山岳を通過していく photo:Kei Tsuji
アップダウンコースをこなすステファン・キュング(スイス、BMCレーシング)とマッテオ・トレンティン(イタリア、エティックス・クイックステップ)アップダウンコースをこなすステファン・キュング(スイス、BMCレーシング)とマッテオ・トレンティン(イタリア、エティックス・クイックステップ) photo:Kei Tsujiアップダウンコースで一時的に先頭から遅れた選手たちアップダウンコースで一時的に先頭から遅れた選手たち photo:Kei Tsuji
暖かい太陽が照らすピークディストリクト国立公園暖かい太陽が照らすピークディストリクト国立公園 photo:Kei Tsuji


大きく遅れた第2集団がゆっくりとフィニッシュを目指す大きく遅れた第2集団がゆっくりとフィニッシュを目指す photo:Kei Tsuji総合で51秒遅れのイサギーレが先行したため、イアン・スタナード(イギリス)、ピーター・ケノー(イギリス)、ベン・スウィフト(イギリス)、ワウト・ポエルス(オランダ)を残したチームスカイがメイン集団を牽引。2分まで広がったタイム差を縮め始める。脱落者も出るほどのチームスカイの牽引だったが、イエロージャージのボアッソンハーゲンはしっかりと集団内にポジションをキープする。

スプリントするエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、MTNキュベカ)とマッテオ・トレンティン(イタリア、エティックス・クイックステップ)スプリントするエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、MTNキュベカ)とマッテオ・トレンティン(イタリア、エティックス・クイックステップ) photo:Kei Tsuji先頭ではイサギーレのアタックをきっかけに分裂し、キュング、デブシェール、トレンティンが追いついて4名に。メイン集団から30秒前後のリードをキープしたままフィニッシュ地点ノッティンガムに向かい、残り9kmでトレンティンが独走に持ち込んだ。

スプリントで先頭に立つマッテオ・トレンティン(イタリア、エティックス・クイックステップ)スプリントで先頭に立つマッテオ・トレンティン(イタリア、エティックス・クイックステップ) photo:Kei Tsuji先頭トレンティンを視界にとらえたメイン集団からは残り3kmでイエロージャージのボアッソンハーゲンがアタック。牽引に力を使ったチームスカイに追撃の力はなく、ボアッソンハーゲンが単独で飛び出して先頭トレンティンに合流する。そのまま先行した2名がメイン集団を振り切った。

ステージ優勝を飾ったマッテオ・トレンティン(イタリア、エティックス・クイックステップ)ステージ優勝を飾ったマッテオ・トレンティン(イタリア、エティックス・クイックステップ) photo:Kei Tsuji総合タイム拡大を狙ってペースを上げ続けたボアッソンハーゲンの後ろで息を整えたトレンティンが残り150mで加速。追いすがるイエロージャージをスプリントで下したトレンティンが勝利した。

ステージ優勝は逃したが、総合リード拡大に成功したエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、MTNキュベカ)ステージ優勝は逃したが、総合リード拡大に成功したエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、MTNキュベカ) photo:Kei Tsuji「今日はスタートからずっと全開走行だった。集団から割れてからもアタックが断続的に繰り返され、ひとときも休まるタイミングがなかった」。フィニッシュ後にしばらく放心状態になったトレンティンが興奮気味に話し始めた。

「残り10kmを切って逃げグループの協調体制が崩れたところでアタック。総合成績に影響するイサギーレが吸収されたから集団はペースを落とすと思いきや、彼らは追走を続け、ボアッソンハーゲンが追いついてきた。最後はフィニッシュまで距離を残してスプリント。逃げに乗り、独走し、最後にスプリントで勝つなんて非常に価値のある勝利だ」と、エティックス・クイックステップに今シーズン50勝目をもたらしたトレンティンは語る。チームは今大会ステージ3勝目。開幕からここまでチームスカイとエティックスが交互にステージ優勝を飾っている。

タイム差4秒に加えてボーナスタイムも加算したボアッソンハーゲンは、総合2位ポエルスとのタイム差を1秒から13秒まで拡大することに成功。古巣チームスカイの攻撃を防ぎ切った。

「ハードなステージの最後にイエロージャージを守ることが出来て本当に良かった。トレンティンに合流してから、ステージ優勝ではなくライバルたちとのタイム差を広げるために先頭を引き続けた。閉幕まで残り2日。最後までこの総合リードを守り抜きたい」。イエロージャージに袖を通したボアッソンハーゲンは安堵の表情を浮かべた。

レース序盤に遅れ始めた大集団は、結局45分47秒遅れでノッティンガムにフィニッシュした。規定ではステージ優勝者のタイム(4時間45分27秒)から12%以上遅れた場合(34分15秒遅れ)はタイムカットとなるが、人数の多さとコースの厳しさから特例としてコミッセールは45分47秒遅れの76名も完走扱いとしている。



勝利したマッテオ・トレンティン(イタリア、エティックス・クイックステップ)が地面に座り込む勝利したマッテオ・トレンティン(イタリア、エティックス・クイックステップ)が地面に座り込む photo:Kei Tsujiステージ優勝を飾ったマッテオ・トレンティン(イタリア、エティックス・クイックステップ)ステージ優勝を飾ったマッテオ・トレンティン(イタリア、エティックス・クイックステップ) photo:Kei Tsuji
総合首位を守ったエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、MTNキュベカ)総合首位を守ったエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、MTNキュベカ) photo:Kei Tsuji



ツアー・オブ・ブリテン2015第6ステージ結果
1位 マッテオ・トレンティン(イタリア、エティックス・クイックステップ)   4h45’27”
2位 エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、MTNキュベカ)
3位 オーウェン・ドゥール(イギリス、チームウィギンズ)            +04”
4位 ゼネク・スティバル(チェコ、エティックス・クイックステップ)
5位 イェンス・デブシェール(ベルギー、ロット・ソウダル)
6位 アルベルト・ベッティオル(イタリア、キャノンデール・ガーミン)
7位 アレックス・ピータース(イギリス、イギリスナショナルチーム)
8位 ディラン・テウンス(ベルギー、BMCレーシング)
9位 サンドロ・メウリセ(ベルギー、アンポスト・チェーンリアクション)
10位 ワウト・ポエルス(オランダ、チームスカイ)

個人総合成績
1位 エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、MTNキュベカ)     27h47’54”
2位 ワウト・ポエルス(オランダ、チームスカイ)                +13”
3位 ラスムス・グルトハマー(デンマーク、クルトエナジー)           +43” 
4位 オーウェン・ドゥール(イギリス、チームウィギンズ)            +44”
5位 ディラン・テウンス(ベルギー、BMCレーシング)              +51”
6位 ゼネク・スティバル(チェコ、エティックス・クイックステップ)
7位 ルーベン・フェルナンデス(スペイン、モビスター)
8位 ステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ)
9位 サンドロ・メウリセ(ベルギー、アンポスト・チェーンリアクション)
10位 クリスアンケル・セレンセン(デンマーク、ティンコフ・サクソ)

ポイント賞
オーウェン・ドゥール(イギリス、チームウィギンズ)

山岳賞
ピーター・ウィリアムス(イギリス、ワンプロサイクリング)

スプリント賞
ピーター・ウィリアムス(イギリス、ワンプロサイクリング)

チーム総合成績
キャノンデール・ガーミン

text&photo:Kei Tsuji in Nottingham, United Kingdom

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