1級山岳ハートサイドフェールで繰り広げられたハイスピード登坂バトル。強風が吹く緩斜面を最速で駆け上がったワウト・ポエルス(オランダ、チームスカイ)が優勝し、2位に入ったエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、MTNキュベカ)が総合首位に立った。



チームスカイとモビスターが先頭を固めるメイン集団チームスカイとモビスターが先頭を固めるメイン集団 photo:Kei Tsuji
今大会唯一の山頂フィニッシュに向けて準備が整う今大会唯一の山頂フィニッシュに向けて準備が整う photo:Kei Tsuji逃げグループを率いるモルガン・クネスキ(フランス、ラレーGAC)逃げグループを率いるモルガン・クネスキ(フランス、ラレーGAC) photo:Kei Tsuji


ツアー・オブ・ブリテン2015第5ステージツアー・オブ・ブリテン2015第5ステージ image:www.tourofbritain.co.ukレースディレクターのミック・ベネット氏が「近年のツアー・オブ・ブリテンの中で最も標高が高く、最もタフな山頂フィニッシュ」と太鼓判を押したツアー・オブ・ブリテン第5ステージの1級山岳ハートサイドフェール山頂フィニッシュが登場した。

逃げグループを形成するピーター・ウィリアムス(イギリス、ワンプロサイクリング)ら5名逃げグループを形成するピーター・ウィリアムス(イギリス、ワンプロサイクリング)ら5名 photo:Kei Tsuji湖水地方の東側に位置するペナイン山脈を貫く峠道は標高570m。なお、国土の最高地点が標高1,343m(スコットランドのベンネビス)で、グレートブリテン島の約2/3を占めるイングランドの最高地点が標高978m(スカーフェルパイク)というイギリスの中で、標高のある峠を探すのは至難の技だ。

最高気温20度の陽気に包まれたイングランド最高気温20度の陽気に包まれたイングランド photo:Kei Tsuji1級山岳の頂上に向かって高低差400m、平均勾配5.3%の登りが7.9kmにわたって続く。その勝負の山に向かう道のりもアップダウンの連続で、166.2kmコースの獲得標高差は2,838mに達した。

前日のステージ優勝者フェルナンド・ガビリア(コロンビア、エティックス・クイックステップ)は右膝の痛みのためDNS。長いニュートラル走行を経てスタートが切られるとすぐに5名の逃げグループが形成された。

2009年のトラック世界選手権マディソンで金メダルを獲得したミカエル・モルコフ(デンマーク、ティンコフ・サクソ)と、同じくトラック世界選手権のスクラッチとマディソンで金メダルを獲得した経験のあるモルガン・クネスキ(フランス、ラレーGAC)、マーク・マクナリー(イギリス、マディソン・ジェネシス)、ピーター・ウィリアムス(イギリス、ワンプロサイクリング)、コノル・デューン(アイルランド、アンポスト・チェーンリング)という逃げのメンバー構成。

総合に大きく影響する逃げではないものの、モビスターとチームスカイが目を光らせるメイン集団はペースを弱める隙を見せずに追走開始。先頭5名のリードは押さえ込まれた。スプリント賞ジャージを着るウィリアムスがカテゴリー山岳でポイントを量産し、スプリント賞だけでなく山岳賞でもトップに立っている。

最高気温が20度まで上がる今大会最も暖かな一日。太陽が照りつけたため汗ばむ陽気となったが、集団をナーバスにさせる強い風がコンスタントに吹く。断続的なアップダウンを経て、選手たちの視界の先に小麦色のペナイン山脈が見えてきた。



モビスターとチームスカイを先頭にいくつもの町を通過するモビスターとチームスカイを先頭にいくつもの町を通過する photo:Kei Tsuji
アレックス・ダウセット(イギリス、モビスター)らが集団を牽引アレックス・ダウセット(イギリス、モビスター)らが集団を牽引 photo:Kei Tsuji最も知名度のあるブラドリー・ウィギンズ(イギリス、チームウィギンズ)最も知名度のあるブラドリー・ウィギンズ(イギリス、チームウィギンズ) photo:Kei Tsuji
1級山岳ハートサイドフェールに向かうワウト・ポエルス(オランダ、チームスカイ)1級山岳ハートサイドフェールに向かうワウト・ポエルス(オランダ、チームスカイ) photo:Kei Tsuji


リードを失いながらも逃げ続ける先頭5名リードを失いながらも逃げ続ける先頭5名 photo:Kei Tsuji先頭で粘り続けたモルコフ、マクナリー、ウィリアムスは残り10kmを切って吸収される。メイン集団はモビスターやチームスカイが先頭を固めたまま残り7.9kmから始まる登坂に突入。登り始めてすぐ、イエロージャージのフアンホセ・ロバト(スペイン、モビスター)をはじめ多くの選手が脱落し始めた。

残り100mでボアッソンハーゲンをパスしたワウト・ポエルス(オランダ、チームスカイ)残り100mでボアッソンハーゲンをパスしたワウト・ポエルス(オランダ、チームスカイ) photo:Kei Tsuji麓からアタックを仕掛けたルーベン・ゼプントケ(ドイツ、キャノンデール・ガーミン)の先行は長続きせず、続いてピーター・ケノー(イギリス、チームスカイ)、ベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター)、クリスアンケル・セレンセン(デンマーク、ティンコフ・サクソ)の3名が先頭へ。

ボアッソンハーゲンを下したワウト・ポエルス(オランダ、チームスカイ)が勝利ボアッソンハーゲンを下したワウト・ポエルス(オランダ、チームスカイ)が勝利 photo:Kei Tsujiコントロールを失ったメイン集団からステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ)が単独で先頭3名までジャンプし、そのまま独走に持ち込もうとペースを上げる。しかしクルイスウィクのアタックも決定打を欠き、ワウト・ポエルス(オランダ、チームスカイ)とエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、MTNキュベカ)がクルイスウィクに追い付いた。

ステージ2位に入ったエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、MTNキュベカ)ステージ2位に入ったエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、MTNキュベカ) photo:Kei Tsuji続くポエルスのアタックも勾配の緩さと強い向かい風によって短命に終わる。ポエルス、クルイスウィク、ボアッソンハーゲンによるハイスピード登坂バトル。残り1kmでアタックを成功させたのは、前日の大集団スプリントで3位に入ったスプリンターのボアッソンハーゲンだった。

ステージ3位のベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター)ステージ3位のベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター) photo:Kei Tsuji枯れ草に覆われた山肌を単独で駆け上がったノルウェーチャンピオンジャージ。下ハンドルを握りしめ、時折ダンシングを交えてスピードを繋いだが、後方からポエルスが勢い良く迫る。残り100mでついにポエルスがボアッソンハーゲンに追いつき、そのままの勢いで先頭を奪ってフィニッシュした。

ツール・ド・フランスでクリス・フルーム(イギリス)の総合優勝をサポートし、エースとしてイギリスに乗り込んだポエルスが勝利。「チームの働きに報いることが出来て良かったよ。チームスカイのお膝元イギリスでの勝利は格別。このツアー・オブ・ブリテンでは2010年にもステージ優勝していて、また勝つことが出来て嬉しい」と勝者は語る。

チームスカイに大会3勝目をもたらしたポエルスだったが、総合首位には1秒届かず。ステージ2位に入ったボアッソンハーゲンがポエルスに対して1秒差でイエロージャージを獲得した。ポエルスは「今日はとにかくボアッソンハーゲンが強力だった。残り3ステージあるけど、スプリント力のある彼から総合リードを奪うのは難しいだろう」と予想している。

表彰台でイエロージャージを受け取ったボアッソンハーゲンは「アタックが連続する厳しい戦いだったけど、勾配の緩い登りは自分向きだったので残り1kmでアタック。残念ながら向かい風に苦しめられたので最後はポエルスにステージ優勝を奪われてしまった。でもイエロージャージを獲得出来たことはとても嬉しいし、最後までリードを守れると思う」と自信を見せている。

ステージ6位に入ったクルイスウィクのSTRAVAデータによると、1級山岳ハートサイドフェールの登坂スピードは30.0km/h。ボアッソンハーゲン同様に、連日スプリントで上位に絡んでいるポイント賞ジャージ着用者オーウェン・ドゥール(イギリス、チームウィギンズ)が地元イギリス勢最高位となる総合5位に入っている。



ケノーに勝利を伝えるワウト・ポエルス(オランダ、チームスカイ)ケノーに勝利を伝えるワウト・ポエルス(オランダ、チームスカイ) photo:Kei Tsuji
ステージ優勝を飾ったワウト・ポエルス(オランダ、チームスカイ)ステージ優勝を飾ったワウト・ポエルス(オランダ、チームスカイ) photo:Kei Tsuji総合首位に立ったエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、MTNキュベカ)総合首位に立ったエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、MTNキュベカ) photo:Kei Tsuji




ツアー・オブ・ブリテン2015第5ステージ結果
1位 ワウト・ポエルス(オランダ、チームスカイ)              4h12’22”
2位 エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、MTNキュベカ)       +02”
3位 ベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター)             +17”
4位 ゼネク・スティバル(チェコ、エティックス・クイックステップ)       +18”
5位 ラスムス・グルトハマー(デンマーク、クルトエナジー)
6位 ステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ)
7位 サンドロ・メウリセ(ベルギー、アンポスト・チェーンリアクション)
8位 クリスアンケル・セレンセン(デンマーク、ティンコフ・サクソ)
9位 ルーベン・フェルナンデス(スペイン、モビスター)
10位 ディラン・テウンス(ベルギー、BMCレーシング)

個人総合成績
1位 エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、MTNキュベカ)     23h02’36”
2位 ワウト・ポエルス(オランダ、チームスカイ)                +01”
3位 ラスムス・グルトハマー(デンマーク、クルトエナジー)           +30” 
4位 ベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター)             +33”
5位 オーウェン・ドゥール(イギリス、チームウィギンズ)            +37”
6位 ディラン・テウンス(ベルギー、BMCレーシング)              +38”
7位 ゼネク・スティバル(チェコ、エティックス・クイックステップ)
8位 ルーベン・フェルナンデス(スペイン、モビスター)
9位 ステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ)
10位 クリスアンケル・セレンセン(デンマーク、ティンコフ・サクソ)

ポイント賞
オーウェン・ドゥール(イギリス、チームウィギンズ)

山岳賞
ピーター・ウィリアムス(イギリス、ワンプロサイクリング)

スプリント賞
ピーター・ウィリアムス(イギリス、ワンプロサイクリング)

チーム総合成績
モビスター

text&photo:Kei Tsuji in Cumbria, United Kingdom

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