逃げに有利なステージと思われていた18ステージも、蓋を開けてみれば熾烈な総合争いの舞台に。アタックの応酬でペースが上がり続けるメイン集団から辛くも逃げ切り、マッチスプリントを制したニコラス・ロッシュをはじめ、総合上位陣のコメントを紹介しましょう。



ステージ優勝を果たしたニコラス・ロッシュ(アイルランド、チームスカイ)

ゴール勝負を制したニコラス・ロッシュ(アイルランド、チームスカイ)ゴール勝負を制したニコラス・ロッシュ(アイルランド、チームスカイ) photo:CorVos
ステージを制したニコラス・ロッシュ(アイルランド、チームスカイ)ステージを制したニコラス・ロッシュ(アイルランド、チームスカイ) photo:CorVos20秒後ろにメイン集団が見えた時、僕は言ったんだよ。「このままフィニッシュまで逃げ切って、そこで1対1の勝負をしよう」って。その決断は本当に良かった。残り15kmから僕らは協調して逃げ続けることができたし、それが僕らの勝てるただ一つの方法だったと思っている。

スプリントが始まる前、僕はどうにかして主導権を奪いたかったんだ。アイマルは多くの経験を持った選手で、僕は過去に彼との勝負で何度か負けてしまったことがある。たとえば、クラシカ・サン・セバスチャンなんかでね。その経験からすると、できれば低速から上げていくような加速勝負ではなくて、ハイスピードがどれだけ維持できるかがキモになる高速スプリントに持ち込みたかったんだ。

結果的に、僕は自分のペースに持ち込むことが出来た。このチャレンジが功を奏したから思わず笑ってしまったんだ。いつも少しの差で勝利を逃してきたけれど、今日はこのチャンスを台無しにすることなく活かしきれたんだ。

マッチスプリントに敗れたアイマル・スベルディア(スペイン、トレックファクトリーレーシング)

ニコラス・ロッシュ(アイルランド、チームスカイ)に届かなかったアイマル・スベルディア(スペイン、トレックファクトリーレーシング)ニコラス・ロッシュ(アイルランド、チームスカイ)に届かなかったアイマル・スベルディア(スペイン、トレックファクトリーレーシング) photo:CorVos序盤のアタック合戦で先行した25名序盤のアタック合戦で先行した25名 photo:A.S.O.逃げ集団に入るのに一番ぴったりのタイミングを見計らっていた。平坦なパートからみんなが逃げに参加しようとアタック合戦を起こしていた。みながキツくなってきたタイミングで前に上がったんだ。確か10回ほどトライして、最後のアタックが決まった。決定的な逃げ集団に乗るというのは簡単なことじゃない。なにせ右から左からみんなアタックしていくんだから。でも、おかげで脚を温存することは出来た。

逃げ集団は6分以上の差をつけることはできなかったけど、最後の登りに辿りついた時にアタックするべきだと感じたんだ。そこからフィニッシュまでは全開だった。そこが一番ハードな局面だったね。25人の逃げをコントロールするのは容易ではなかった。でも、自信があったからペースをあげることにした。

100回スプリント勝負をすれば、99回ロッシュが僕に勝つだろう。だから彼がスプリントを仕掛けるのを待って、最後に差し切ることができればと思っていたんだけど、結果的には彼をパスすることは叶わなかった。僕はスプリントが得意ってわけじゃないからね。

でも、少しがっかりしているのはもちろんだよ。今日はほとんど完璧なレース運びが出来ていたのに、最後のスプリントでロッシュを差すことが出来なかった。ただ、彼が僕よりも速かったんだ。彼をナーバスにしようと試みて、早めにスプリントを始めさせることが出来た。僕は牽制が入らない高速スプリントのほうが性に合っていると思っていたんだけど……。そう、スプリントできっと勝てると、いつも考えてしまうんだよね。でもそれは不可能だったんだ。ロッシュは僕より速いんだから。

かなり前の話になるんだけど、似たようなシチュエーションのレースがあった。でもその時は勝つことができたんだ。いつもならスプリント勝負で勝てるってことは無いはずなんだけど、そのレースは登りフィニッシュだったんだ。だから、もし今日のフィニッシュが登っていたらまた違った結果になっていたかもしれないね。

このブエルタにはステージ優勝に挑むために参加した。残りの3ステージでまたトライしていくよ。逃げに乗れたのは2度目。こんなに長くて厳しい逃げに乗ったのは辛かったけど、逃げ集団にいるというのは楽しかったね。まとめると、今日の2位という結果には満足している。レースを戦略的に走れたし、ライバルが僕よりも強かったということ。ブエルタが終わるまであと少し、トライしていくさ。

マイヨロホを守ったトム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)

マイヨロホを堅持したトム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)マイヨロホを堅持したトム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン) photo:CorVos今日は本当に難しいステージだった。平坦だったのは最初の少しだけ。後は登っているか下っているかのどちらかだった。良い逃げが出来たのは良かったね。彼らは良い仕事をしてくれた。

最後の登りでアルがアタックを仕掛けはじめたんだ。彼の最初のアタックは凄く力強かった。まるで彼の全てを叩きつけているかの様だったよ。でも、どうにか彼から離されずに耐えることが出来たから、マイヨロホを守ることができると確信出来た。今日の登りはそこまで斜度が厳しいわけではなかったから、残り4kmからは僕からアタックできるほどだったよ。明日と明後日は難しい日になるだろうね。多くのことが起こる日になるだろう。

総合3位のホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)

アスタナが最後の登りでドゥムランを置き去りにしようとハイペースを刻んでいたけれど、目的を果たすことはできなかったね。ドゥムランは強いよ。僕の見立てでは、ペースを上げるよりも何度もアタックを仕掛ける方が効果的だと思う。自分好みの展開に持ち込みたいけれど、そう簡単なことじゃない。結局、総合上位陣はみな一緒にフィニッシュすることになった。あと2日、何が起こるか楽しみにしていてほしい。

メイン集団を制した総合6位のアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)

ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)とアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)とアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) photo:A.S.O.打つ手がなかったね。僕らは挑戦したけど、果たせなかった。正直にいうと、アスタナはかなり努力してくれたと思う。おかげで総合リーダーの調子を見ることができた。ドゥムランは本当に強いと感じるよ。彼はアルの全ての攻撃を跳ねのけ、あの集団の中で一番強い選手であることを示して見せた。表彰台が一歩遠のいてしまったと感じるよ。でもまだ諦めない、挑戦を続けていくつもりさ。

総合4位のラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ・サクソ)

昨日の個人TTを終えた後調子が落ちてしまった。でも今日はモチベーションがとても高かったし、攻撃を仕掛けなければいけないと自分自身に言い聞かせていた。24時間前のTTスタート前よりもメンタル的に良い状態だったし、土曜日と同じ状態にまで脚の調子が戻ってきてくれれば、と願っていたよ。今日はクレイジーなほどにアタックがかかるだろうと思っていたし、調子が良ければ僕はマドリードで表彰台に上がることができるはずだと思っていたから。結果的に総合上位陣の調子はほぼイコールだったが、僅かな差を読み取ることができた。この差が後々響いてくるだろうから、自分のベストを尽くしていきたい。

今日はたくさんのアタックに反応したし、自分でも攻撃を仕掛けた。その時に少しだけ差を確保できたけれど、登りの緩さ的にもそのままリードすることはできなかった。

選手コメントは各チーム公式サイトより。

text:Naoki.Yasuoka,So.Isobe
photo:CorVos