約40名の集団を振り切ったチェコチャンピオンジャージが独走でフィニッシュ。アップダウンコースで形成された逃げグループから終盤に飛び出したペトル・ヴァコッチ(チェコ、エティックス・クイックステップ)がステージ優勝とイエロージャージを同時に手にした。



スタート直後の1級山岳ニックオペンドルでメイン集団はペースアップスタート直後の1級山岳ニックオペンドルでメイン集団はペースアップ photo:Kei Tsuji


ツアー・オブ・ブリテン2015第2ステージツアー・オブ・ブリテン2015第2ステージ image:www.tourofbritain.co.ukウェールズでの開幕ステージを終え、イングランド北西部のランカシャー州に舞台を移したツアー・オブ・ブリテン。第2ステージは「岩がちな丘」を意味するクリザーローから断続的な丘を越えてコルネにフィニッシュする。1級山岳が2つと2級山岳を含む159.3kmコースの獲得標高差は2,800mに達する。

スタート前にファンに囲まれるマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、エティックス・クイックステップ)スタート前にファンに囲まれるマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、エティックス・クイックステップ) photo:Kei Tsuji大会初日からあわや逃げ切りのシーンも見られたことから、UCIワールドチームは格下ライダーたちのエスケープに危機感を募らせる。最低気温9度まで冷え込んだクリザーローの朝の空気の中、チームスカイはメンバー全員がローラー台で入念にウォーミングアップを行った。

2日連続逃げを敢行したピーター・ウィリアムス(イギリス、ワンプロサイクリング)2日連続逃げを敢行したピーター・ウィリアムス(イギリス、ワンプロサイクリング) photo:Kei Tsuji前日にステージ優勝をお膳立てしたベン・スウィフト(イギリス、チームスカイ)曰く「危険な逃げが生まれやすいステージ」であり、総合リーダーチームであるチームスカイは逃げに乗るためのアップではなく、逃げメンバーを選別するために入念にアップを施す。チームスカイはレース序盤のアタック合戦に選手を送り込み、実力者を含む逃げや大人数の飛び出しを徹底的に潰した。

ようやく集団から抜け出すことに成功したのは、前日に敢闘賞を獲得したピーター・ウィリアムス(イギリス、ワンプロサイクリング)だった。2日連続逃げを試みるウィリアムスには、1年前の2014年大会で大逃げを成功させて総合成績に激震を走らせたアレックス・ダウセット(イギリス、モビスター)が合流する。

しかしチームスカイは元アワーレコード保持者ダウセットの先行を許さずに追撃。チームからの指示で先行を諦めたダウセットがペースを落とすと、ウィリアムスの独走が始まった。

丘の地形に合わせて作られた曲がりくねった道は上りと下りを繰り返し、その両脇は石積みの側壁と背の高い生垣がそびえ立つ。そんな圧迫感あるコースの路面は荒れがちで、集団内であっても休み所に乏しいナーバスな一日。設立1年目のイギリスチームに所属するウィリアムスは観客の声援を一身に受けて単独で逃げ続けた。



観客が詰めかけたコースを走るメイン集団観客が詰めかけたコースを走るメイン集団 photo:Kei Tsuji
チームスカイがメイン集団をコントロールするチームスカイがメイン集団をコントロールする photo:Kei Tsujiアップダウンとワインディングを繰り返すメイン集団アップダウンとワインディングを繰り返すメイン集団 photo:Kei Tsuji

残り50km地点で8名の先頭グループが形成される残り50km地点で8名の先頭グループが形成される photo:Kei Tsuji


イエロージャージを着て走るエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)イエロージャージを着て走るエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ) photo:Kei Tsujiチームスカイの集団コントロールによって先頭ウィリアムスは残り55km地点の1級山岳ブレアラモアーで吸収される。するとそこからUCIワールドチームが活動開始。BMCレーシングやロットNLユンボ勢によるペースアップによってピュアスプリンターたちは軒並み遅れた。

先頭グループを率いるダニーロ・ウィス(スイス、BMCレーシング)先頭グループを率いるダニーロ・ウィス(スイス、BMCレーシング) photo:Kei Tsujiイエロージャージを着るエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)やマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、エティックス・クイックステップ)、さらにはブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームウィギンズ)らが脱落する中、頂上通過後にダニーロ・ウィス(スイス、BMCレーシング)が飛び出すと、すかさず7名が合流する。

独走でフィニッシュにやってきたペトル・ヴァコッチ(チェコ、エティックス・クイックステップ)独走でフィニッシュにやってきたペトル・ヴァコッチ(チェコ、エティックス・クイックステップ) photo:Kei Tsujiヴァコッチやアルベルト・ベッティオル(イタリア、キャノンデール・ガーミン)、ルーベン・フェルナンデス(スペイン、モビスター)、ピム・リヒハルト(オランダ、ロット・ソウダル)、ワウト・ポエルス(オランダ、チームスカイ)、セルジュ・パウエルス(ベルギー、MTNキュベカ)、そしてチームスカイ入りが決まっている21歳アレックス・ピータース(イギリス、イギリスナショナルチーム)がウィスに追いつき、8名で先行を開始した。

何度もガッツポーズするペトル・ヴァコッチ(チェコ、エティックス・クイックステップ)何度もガッツポーズするペトル・ヴァコッチ(チェコ、エティックス・クイックステップ) photo:Kei Tsujiアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)に代表される「登れるスプリンター」を含む40名ほどのメイン集団が45秒遅れで続いた一方で、カヴェンディッシュやヴィヴィアーニを含む70名ほどの第2集団のペースは上がらず。終始ペースが上がらなかった第2集団は21分53秒遅れてフィニッシュしている。

独走でステージ優勝を果たしたペトル・ヴァコッチ(チェコ、エティックス・クイックステップ)独走でステージ優勝を果たしたペトル・ヴァコッチ(チェコ、エティックス・クイックステップ) photo:Kei Tsujiクライマー揃いの先頭グループから残り18kmでアタックしたのはヴァコッチ。「徐々に先頭グループの中に諦めの雰囲気が漂い始めたので、一か八かに賭けて飛び出した」というチェコナショナルチャンピオンが独走に持ち込み、その他のメンバーはメイン集団に吸収される。

ロット・ソウダルやティンコフ・サクソを中心に追撃するメイン集団に対し、ヴァコッチは30秒リードで残り5kmに差し掛かる。数的不利の状況の中でも諦めずに逃げ続け、残り2kmでタイム差は15秒。グライペル自身も集団ローテーションに加わったが、先頭ヴァコッチは粘り続けた。

残り1kmから始まる緩斜面でもペースは落ちず、独走のままフィニッシュを果たしたヴァコッチ。フアンホセ・ロバト(スペイン、モビスター)を7秒、そしてエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、MTNキュベカ)を先頭にしたメイン集団を9秒振り切る劇的な逃げ切り勝利を達成した。

「人生の中で一番キツかった」。フィニッシュ後に地面に倒れこんだヴァコッチは呼吸を整えながらチームスタッフの助けを借りて起き上がる。「厳しいレースの最後を勝利で締めくくることが出来て最高の気分。フィニッシュまでの距離がどれほど長く感じたことか。でも脚は回り続け、集団を振り切ることが出来た」。

第1ステージで長時間メイン集団を牽引した23歳がその翌日に自身のチャンスを射止め、キャリア最大の勝利を手にするとともに総合首位に。「総合リーダーは最高の栄誉。まだレース序盤だけど、少なくとも数日はこのイエロージャージを守りたい。6人というチーム編成で最後まで総合首位を守ることは難しいと思うけど、昨日2位、今日1位という成績はチームの状態の良さは証。明日からのレースが楽しみだ」とプロ2年目のヴァコッチは優しく笑った。

その他の写真はフォトギャラリーにて!



地面に座り込むペトル・ヴァコッチ(チェコ、エティックス・クイックステップ)地面に座り込むペトル・ヴァコッチ(チェコ、エティックス・クイックステップ) photo:Kei Tsuji集団先頭でフィニッシュするフアンホセ・ロバト(スペイン、モビスター)集団先頭でフィニッシュするフアンホセ・ロバト(スペイン、モビスター) photo:Kei Tsuji
21分53秒遅れでマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、エティックス・クイックステップ)らがフィニッシュ21分53秒遅れでマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、エティックス・クイックステップ)らがフィニッシュ photo:Kei Tsujiブライアン・クックソンUCI会長からイエロージャージを受け取ったペトル・ヴァコッチ(チェコ、エティックス・クイックステップ)ブライアン・クックソンUCI会長からイエロージャージを受け取ったペトル・ヴァコッチ(チェコ、エティックス・クイックステップ) photo:Kei Tsuji





ツアー・オブ・ブリテン2015第2ステージ結果
1位 ペトル・ヴァコッチ(チェコ、エティックス・クイックステップ)      4h02’22”
2位 フアンホセ・ロバト(スペイン、モビスター)                 +07”
3位 エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、MTNキュベカ)        +09”
4位 ラスムス・グルトハマー(デンマーク、クルトエナジー)
5位 マッテオ・トレンティン(イタリア、エティックス・クイックステップ)
6位 オーウェン・ドゥール(イギリス、チームウィギンズ)
7位 イェンス・デブシェール(ベルギー、ロット・ソウダル)
8位 ディラン・テウンス(ベルギー、BMCレーシング)
9位 ゴルカ・イサギーレ(スペイン、モビスター)
10位 ハビエル・メヒアス(スペイン、ノボノルディスク)

個人総合成績
1位 ペトル・ヴァコッチ(チェコ、エティックス・クイックステップ)      8h28’41”
2位 フアンホセ・ロバト(スペイン、モビスター)                 +11”
3位 エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、MTNキュベカ)        +15”
4位 フローリス・ヘールツ(オランダ、BMCレーシング)              +17”
5位 ワウト・ポエルス(オランダ、チームスカイ)                 +18”
6位 ディラン・ファンバールレ(オランダ、キャノンデール・ガーミン)
7位 オーウェン・ドゥール(イギリス、チームウィギンズ)             +19”
8位 グラハム・ブリッグス(イギリス、JLTコンドール)
9位 ラスムス・グルトハマー(デンマーク、クルトエナジー)
10位 セルジュ・パウエルス(ベルギー、MTNキュベカ)              +25”

ポイント賞
フアンホセ・ロバト(スペイン、モビスター)

山岳賞
イアン・ビビー(イギリス、アンポスト・チェーンリング)

スプリント賞
ピーター・ウィリアムス(イギリス、ワンプロサイクリング)

チーム総合成績
エティックス・クイックステップ

text&photo:Kei Tsuji in Colne, United Kingdom

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