パリ〜ルーベの石畳が用意された第4ステージ。ドライコンディションのなか大本命たちは無事に切り抜けたようだ。マルティンが借り物バイクでステージとマイヨジョーヌを獲得。しかしピノはバイク交換の判断を誤り、総合順位を落とした。



ナミュールの城塞を登るプロトンナミュールの城塞を登るプロトン photo:Makoto.AYANO
「ツールの中の春のクラシック週間」は続く。フレーシュ・ワロンヌのお次はミニ・パリ〜ルーベだ。合計13.3kmのパヴェが待つ北の地獄の舞台に向け、ベルギーはリエージュを発った一行はフランスへと進んでいく。

鶏がトレードマークのワロン地方リエージュ郊外のスランから、まずは「ムーズ川の真珠」と讃えられるナミュールを訪れる。4級山岳に設定された城塞「シタデル・ド・ナミュール」へと続く石畳の道の九十九折を登る。今ツール最長距離のコースのまだ序盤53km地点。4人の逃げも、プロトンも、アクションは少なめで淡々と距離を稼ぐ。

スペインのサンフェルミン祭の赤スカーフを巻くイマノル・エルビーティ(スペイン、モビスター)スペインのサンフェルミン祭の赤スカーフを巻くイマノル・エルビーティ(スペイン、モビスター) photo:Kei Tsujiナミュールにかかる美しい橋を渡るプロトンナミュールにかかる美しい橋を渡るプロトン photo:Makoto.AYANOナミュールの城塞を登る4人の逃げグループナミュールの城塞を登る4人の逃げグループ photo:Makoto.AYANOこのナミュールの石畳は麓から長く続くが、表面が整っているためか今日の石畳区間にはカウントされないようだ。空気圧の低い、太めのパヴェタイヤのバイクで通り過ぎて行くプロトンの音は、硬いゴムの奏でる高い音ではない。

パヴェ区間はラスト45kmの区間に凝縮されているので、エース級の選手たちは後半まで通常ステージで乗るバイクで体力を温存する。そして後半になればパヴェ用のバイクに交換する作戦だ。チーム全員のバイクが交換できるわけではなく、エースクラスの選手のみに許された特権だ。平坦路のアシストを担う選手は、巡航性を重視したノーマルタイヤに近い状態で走らざるを得ない。つまり、パヴェでは余計に苦しむことになる。

残り約84kmでフランスに入国。ゴールまで約46km地点からパヴェの闘いへと突入する。6つの石畳区間のうち、2015年パリ〜ルーベで使用された石畳はセクター5、3、2の3つ。しかも進行方向は逆だ。やっかいなのは最後の2つ。3.7kmと2.3kmと長く、パヴェを抜け出ればフィニッシュまでは舗装路で10.5kmと近い。パヴェで付いた差を挽回するには微妙な距離だ。

勝負どころの、あるいは差がつくであろう最後のパヴェ区間「アヴェヌレゾベール〜カルニエール」に入り、集団を待つことに。暑い日が続いた後の曇り空。涼しいが空はからはポツポツ雨が落ちてくる。しかし本降りになるほどではない。適度なおしめりは、砂塵の巻き上げを減らしてくれるので、荒れることを望まない選手にとっては最高のコンディションと言えた。

パリ〜ルーベと違うのはその雰囲気。天気はすぐれないが、どこか陽気な観客たちが石畳の沿道に陣取ってプロトンの到着を待つ。先行のキャラバン隊がキャラバングッズを配って行ったのもあるだろう。手にしたグッズやシャツ、帽子が北の地獄の舞台を華のあるツールの雰囲気に彩る。そして昨年もそうだった、ラスト区間ではAG2Rラモンディアルの旗やシャツが大量に配られた。グッズを配るだけで即席でチーム大親衛隊が出来上がるという、じつに上手い作戦だ。

AG2Rの旗が配られると、あっという間に大応援団の結成だAG2Rの旗が配られると、あっという間に大応援団の結成だ 今年も最後のパヴェで配られたアージェードゥーゼルの旗や応援アパレル今年も最後のパヴェで配られたアージェードゥーゼルの旗や応援アパレル

気ままなスタイルで応援。水玉おじさんとおばさんがサポートをアピール気ままなスタイルで応援。水玉おじさんとおばさんがサポートをアピール photo:Makoto.AYANO麦畑の畦に腰掛けてプロトンを待つ麦畑の畦に腰掛けてプロトンを待つ


各チームのメカニックサポート部隊もこのラスト2区間に早めに入り、スペアホイールを持つ人員を一定間隔に配置する。レース終盤になれば集団が分断して長くなり、サポートするチームカーからの援助はあてにできない。ましてコンボイの前と後ろでは路上で待つ選手までの到着時間がまるで違ってくる。

パリ〜ルーベの経験が無いのに、まるで石畳クラシックのスペシャリストのように走れるヴィンチェンツォ・ニーバリ(アスタナ)。その走りはドライコンディションの今年も同じだった。そして昨年は石畳に到達する前にツールを去ったクリス・フルーム(チームスカイ)も、遜色ない走り。どころか、パワーを秘めた走りだ。軽量でひょろひょろながら、フルームはパヴェを苦手としていなかった。

キャノンデール・ガーミンのサポートスタッフがホイールを手に待っているキャノンデール・ガーミンのサポートスタッフがホイールを手に待っている photo:Makoto.AYANO歯を食いしばって先頭グループに最後尾でついていくアルベルト・コンタドール(ティンコフ・サクソ)歯を食いしばって先頭グループに最後尾でついていくアルベルト・コンタドール(ティンコフ・サクソ) photo:Makoto.AYANO麦畑の畦道に着けられたパヴェのアップダウンをこなすプロトン麦畑の畦道に着けられたパヴェのアップダウンをこなすプロトン photo:Makoto.AYANO残り3.5km地点でアタックしたトニ・マルティン(ドイツ、エティックス・クイックステップ)残り3.5km地点でアタックしたトニ・マルティン(ドイツ、エティックス・クイックステップ) photo:Tim de Waeleマイヨジョーヌ集団から離れてはいないが、最後尾近くに位置して、歯を食いしばり、苦痛に耐えるような表情で走っていたのはアルベルト・コンタドール(ティンコフ・サクソ)。沿道でその様子に気づいたスカイのスタッフが集団に向かって「Contador is Back=コンタドールが下がっている!」と叫ぶ。はたしてその後、フルームとトーマスによるアタックがかかったようだ。

パヴェの最後で一度離されたコンタドールとナイロ・キンタナ(モビスター)も、結局はフルーム集団に追いついた。「ファンタスティック4」の大本命たちは誰も遅れずに一塊でカンブレーを目指した。

ラスト3kmでのアタックを決めてフィニッシュまで独走したトニ・マルティン(ドイツ、エティックス・クイックステップ)。タイム差3秒とボーナスタイム10秒を加算してマイヨジョーヌに。ゴールではエディ・メルクス氏とトム・ボーネンから祝福を受けた。メルクス氏はかつて自分のブランドのバイクをクイックステップに供給していたが、近年はそれができずにいる。しかしこの母国ベルギーのチームにはやはり特別な思い入れがあるようだ。

ボーネンは朝に電話でマルティンにパヴェの走り方を伝授。メルクスからも直々に激励を受けた。つまりベルギーの偉大なふたりにマイヨジョーヌを取ることを応援されていたという。

マルティンは開幕マイヨジョーヌを目指したユトレヒトのTTでは2位。第2ステージはカンチェラーラがスプリントを見せ、ボーナスタイムによるマイヨジョーヌを獲得したことでまた総合2位に。そして第3ステージのユイの坂でもマイヨ目指して全力を振り絞ったが、フルームがステージ2位とボーナスタイムでマイヨジョーヌを獲得。三度の総合2位(しかもたった1秒差!)となっていた。カンチェラーラのリタイアにより再びビッグチャンスが目前に現れたこの日、ついにステージ勝利だけでなく念願のマイヨジョーヌに袖を通した。

ドイツ語で装甲戦闘車=パンツァーワーゲンというアダ名を持つマルティン。ドーピング問題でテレビのライブ中継が中断していたドイツは、キッテル、デゲンコルブはじめドイツ人選手の大活躍に後押しされてツールのライブ放送を再開した。「ドイツにとってもマイヨジョーヌは誇りに思うし、ドイツのファンも僕が総合首位であることを喜んでくれると思う。初日のTTで着たドイツナショナルチャンピオンジャージ、そして今度はマイヨジョーヌ。ドイツの人々により自転車競技に興味を持ってもらえたら最高だ」。

トラブルへの対処が大きな差となった

マルティンは最後のパヴェ区間に入る前にパンク。チームカーは待たず、そばにいたチームメイトのマッテオ・トレンティンのバイクを借りて走った。トレンティンはマルティンより背が低いが、サドル高さは数センチ高い。そして右が前ブレーキというイタリア組みのため、ブレーキ操作はまったく異なっていた。そんな借り物バイクでの逃げ切り勝利だった。

「パヴェだけでなく、バイク操作にも集中しなければいけなかったよ。本当に難しかった!」。

逃げ切り勝利を飾ったトニ・マルティン(ドイツ、エティックス・クイックステップ)逃げ切り勝利を飾ったトニ・マルティン(ドイツ、エティックス・クイックステップ) photo:Tim de Waele
マルティンを祝福するトム・ボーネン(ベルギー、エティックス・クイックステップ)マルティンを祝福するトム・ボーネン(ベルギー、エティックス・クイックステップ) photo:Tim de Waeleパンクしたトニ・マルティンのホイールをマヴィックのサポートチームが持つパンクしたトニ・マルティンのホイールをマヴィックのサポートチームが持つ photo:Makoto.AYANO


とっさに自分のバイクを差し出したトレンティン。レース後の祝福の後「トニが残りのツールを僕のバイクで走りたいって言いださないことをただ願うよ」とツィートした。

レースの後、マヴィックのニュートラルサポートチームが、交換したマルティンのホイールを持っていた。マルティンはホイール交換の時間さえ惜しんでトレンティンのバイクに飛び乗り、トレンティンはそのホイールを交換してマルティンのバイクでフィニッシュを目指した。

ピノの失敗

マルティンとほぼ同時に、同じ場所でパンクしたティボー・ピノ(FDJ.fr)だが、それぞれの対応の違いが結果的には大きな差となり、明暗を分けることになった。

チームカーを確認するティボー・ピノ(フランス、FDJ)チームカーを確認するティボー・ピノ(フランス、FDJ) photo:CorVos
いら立ちながらチームカーを待つティボー・ピノ(フランス、FDJ)いら立ちながらチームカーを待つティボー・ピノ(フランス、FDJ) photo:CorVosメカニシャンに対してフラストレーションをぶつけながら走り出すメカニシャンに対してフラストレーションをぶつけながら走り出す photo:CorVosピノは、一緒にいたマチュー・ラダニュのバイクを借りず、チームカーを待つことにした。FDJ.frのチームカーはナンバー13番という(不吉な番号とともに)中程の配置。到着までに長く時間がかかったうえに、交換したバイクも不調でまた交換する羽目になる。チームカーの到着を待つを間、またバイクを再交換するときにも、ピノは地面を蹴り、メカニシャンに対してフラストレーションを隠さなかった。フィニッシュタイムはマルティンに3分23秒遅れ。フルームらに3分20秒遅れ。

レース後のTVインタビューでメカトラブルについて聞かれると「前がビッグギアで、後輪は11Tだったから変速ができなかった」と、何の問題を指すのか不明なコメントをしたが、マルク・マディオ監督によればおそらく電動メカのケーブルがパヴェの振動で抜けて接触不良を起こしたのが原因だろうとのことだ。

ラダニュのバイクを借りなかった理由について、ピノは「身長が10センチも違うから自分のバイクを待つ以外なかった」と話したが、FDJ.frのチームサイトによれば、ピノは身長180cm、ラダニュは181cmだ。

マルティンが借り物バイクで走る決断をしたのと対照的に、ピノのタイムロスは取り返しの付かないことに。第2ステージではゼーラントの横風区間の罠にはまり後方に取り残され、1分28秒のロス。そして今日のミスによるロスが加算された。総合でフルームに対して6分30秒遅れの68位では、もはや総合上位は狙えない。今後はステージ優勝か山岳賞を狙うよりほかない。

また、負傷しているアダム・ハンセンは16分53秒遅れの188位でゴールしている。パヴェの痛みを乗り切れば、心配なステージはもう無い。

text:Makoto.AYANO
photo:Makoto.AYANO,CorVos,Kei Tsuji,Tim de Waele

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