シマノのアパレルラインアップのハイエンドに位置づけられるレーシングライン「ACCU 3D」。シマノレーシングとの共同開発により軽量化や空気抵抗の低減などストレスフリーを追求したワンピースタイプ「レーシングスキンスーツ」をインプレッションする。



シマノ ACCU 3D レーシングスキンスーツシマノ ACCU 3D レーシングスキンスーツ photo:Makoto.AYANO
ここ数年の機材におけるキーワードの1つとなっている「エアロダイナミクス」。各メーカーとも「出力を◯ワット低減」というキャッチフレーズと共に続々と新製品を発表することから、どうしてもフレームやバイクに目がいきがちだが、実は空気抵抗を削減する上において最も効果的なのが「ウェア」である。

今回シマノから登場した「ACCU 3D レーシングスキンスーツ」は、ワンピースタイプとすることで空気抵抗の原因となるバタつきを抑え、シーム部の数を低減した1着。一方でタイムトライアル専用というわけではなく、バックポケットを設けたことにより長距離のロードレースからロングライド、ヒルクライム、日常使いまで幅広く対応することが特徴だ。

シマノ ACCU 3D レーシングスキンスーツ(表面)シマノ ACCU 3D レーシングスキンスーツ(表面) バックパネルにはメッシュパネルをあしらうことで通気性を向上バックパネルにはメッシュパネルをあしらうことで通気性を向上 裾にはタオルのような柔らかな質感の生地を配置裾にはタオルのような柔らかな質感の生地を配置


設計のベースとなったのが、これまでシマノがウェアとコンポーネントの開発で積み上げてきたエルゴノミクスに関する知識やノウハウ。これにモーションキャプチャーや風洞実験によって得られたデータ、そしてUCIコンチネンタルチーム「シマノレーシング」のフィードバックを加え、カッティングを煮詰め、空力性能を追求した。

一方で、長距離ライドで求められるウェアとしての優れた快適性も確保されている。ワンピースタイプとしたことによりビブ紐やウェストゴムに締付は完全に排除され、不快な擦れの原因となるシームの個数が減少している。加えて生地にはいずれも伸縮性に優れるライクラスポーツ、レボリューショナル、アトランタプラスという3種類を採用し、これらを適材適所に配置。裾と袖を切りっぱなしのカットオフ仕様とすることで、タイトフィットながら締付け感の少ないストレスフリーな着心地を実現した。

ジャージ部のメインパネルには高級ブランドのジャージに共通するエンボス地の生地を採用ジャージ部のメインパネルには高級ブランドのジャージに共通するエンボス地の生地を採用 出し入れしやすいようサイドポケットを口を斜めとしている出し入れしやすいようサイドポケットを口を斜めとしている


また、熱を最も発する背中にはメッシュパネルをあしらうことで通気性を高め、体温上昇によるパフォーマンスの低下を防止。また隣接する高伸縮素材との接合には縫製ではなく、熱溶着を用いることで不快な擦れを低減。バックポケットは3つにパーテーションされており、左右は取り出しやすい様に口が斜めとされている。

パッドには解剖学的研究から誕生したという赤の「レーシングパッド」を採用。弾力の異なるフォームを圧力分布に応じて適材適所で重ねた3レイヤー構造として衝撃吸収性を高め、表面は滑らかな肌触りと高い通気性を兼ね備えた4wayストレッチ素材を配した。

ACCU 3D レーシングスキンスーツを使用するシマノレーシングACCU 3D レーシングスキンスーツを使用するシマノレーシング photo:Hideaki TAKAGI
カラーはオレンジを差し色とした「ブラック/ブルー」と、よりシンプルな「ホワイト/レッド」の2パターンがラインアップされる。サイズはXS、S、M、L、XLという6種類が揃う。それでは早速インプレッションに移ろう。



ー インプレッション「誰にでも体感できる高い空力性能 体力に自信のないライダーにこそオススメ」

バックポケットのついたワンピースタイプのウェアが登場したのは5年ほど前のこと。当時はプロの選手の中でもある程度余裕のあるサイズのウェアが普通であった。しかし、スピードマンを揃えたあるチームが投入してからというもの、今やスプリンターやそのアシスト、逃げを得意とするライダーにとっては必需品となった。

「誰にでも体感できる高い空力性能 体力に自信のないライダーにこそオススメ」「誰にでも体感できる高い空力性能 体力に自信のないライダーにこそオススメ」 photo:Makoto.AYANO一方で、登録系のロードレース、TT、シクロクロスを除いてワンピースタイプのウェアはアマチュアライダーにとってまだまだ珍しいアイテムだ。筆者もワンピース系のウェアに袖を通すのは今回のインプレッションが初。実際のところ、空力性能的な観点では優れていることは知っていたものの「競技に打ち込んでいなければ不要」と考えていた。しかし、結論から先に述べると、その考えは固定観念だった。着て感じる圧倒的なストレスフリーは、ビギナーにもオススメできるほどだ。

やはりワンピースタイプとあって脱ぎ着しにくいのは確か。ただ、タイトフィットを謳う割にはやたらとキツいという印象はなく、身長173cmの筆者がMサイズを着用する際には特に他人の助けを必要とすることはなかった。それでも無理をすればフロントジッパー部からウェアを破いてしまう恐れがあるため、着用時は慎重を期したいところ。なお、袖も裾も比較的長めだ。

実際に走り出してみて、先ず感じたのがバタつきの少なさだ。とくに肋(あばら)骨あたりの空気抵抗の低減は顕著で、タイトフィットとされている他社ブランドの半袖ジャージよりも明らかに胴回りの空気の流れがスムーズで速くなっていることが実感できる。

着用感自体は決してタイトでなく、良い意味でライド中にウェアの存在を忘れさせてくれる。とりわけ個人的に秀逸と感じたのが、裾と袖に配されたタオル地の生地だ。一般的に袖にはズレ上がりを防止するために、裾にはパッドを適切な位置に保持するためにテンションの強い素材やシリコングリッパーを配しているが、ACCU 3Dレーシングスキンスーツの場合にはそういった設計は施されていない。

むしろ、その逆を突いており、とくに裾側はペダリングの動作に合わせて滑ってくれるのである。もちろん、この動きは適正サイズでテストした上でのこと。恐らく意図的なものであり、素材の質感と合わせてとても快適。ちなみに筆者は比較的肌が弱いのだが、擦れによって皮膚が赤くなったりということはなかった(ちなみにシリコングリッパーが原因で痒くなることがある)。

もちろん、レーシングシーンでの使用では大きなアドバンテージをもたらすだろうもちろん、レーシングシーンでの使用では大きなアドバンテージをもたらすだろう そしてウェア内部の縫製も好印象だ。これからの暑い時期はアンダーウェアを着用したくないという方は私を含め少なくないと思われるが、個人的にはどうしてもジャージのシームのあたりが気になってしまう。一方、狙ったものかどうか定かではないが、ACCU 3Dレーシングスキンスーツついては、直に着用してもスレやあたりがなく、不快な思いをすることはなかった。なお、アンダーウェア無しで炎天下の元を走ってもオーバーヒートする様なこともなかったことから、生地自体の吸湿速乾性も優れているといえるだろう。

赤いインナーパッドはやや薄手にこそ感じるが、しっかりと衝撃吸収性が確保されており、ペダリングを妨げることもなく、レーシングウェアという観点で見れば充分な仕上がりとなっている。

総じて、レーシングウェアでありながら、あまり競技志向の強くないライダーでも恩恵を受けることができる1着といえるだろう。ストレスフリーな着用感はもちろんのこと、空気抵抗の低減はそのまま体力消費の低減にもつながるため、体力的に自信がないという方やビギナーこそウェアによる違いをより体感して頂けるだろう。



シマノ ACCU 3Dレーシングスキンスーツ
素 材:ライクラスポーツ、レボリューショナル、アトランタプラス
サイズ:XS、S、M、L、XL
カラー:ブラック/ブルー、ホワイト/レッド
価 格:25,000円(税別)

impression:Yuya.Yamamoto
photo:Makoto.AYANO
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