最終日を迎えたツアー・オブ・カリフォルニア。ロサンゼルスの街を駆け抜けるフラットステージを制したのは、今大会のスプリントで不敗のマーク・カヴェンディッシュ。サガンは執念のスプリントで3位に入りボーナスタイムを獲得。総合優勝を果たした。



ロサンゼルス都市部を走ったカリフォルニア最終ステージロサンゼルス都市部を走ったカリフォルニア最終ステージ photo:CorVos


ジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ)ジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ) photo:CorVosツアー・オブ・カリフォルニアを締めくくるのは西海岸最大の都市、ロサンゼルスの周回コース。ダウンタウンにある競技場「ステイプルズ・センター」の前に設置されたスタートから、ローズボールスタジアムの周りを9周する105㎞には目立った登りはほとんどない、スプリンター向けのステージだ。

最終ステージを制したマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、エティックス・クイックステップ)。今大会4勝をマークした最終ステージを制したマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、エティックス・クイックステップ)。今大会4勝をマークした photo:CorVos例年であれば、前日までのタイムトライアルと山岳ステージで総合争いは決定づけられており、ステージ優勝にフォーカスした争いが繰り広げられる最終ステージだが今年は少し異なる様相を呈していた。

ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)が僅差で3位に入るペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)が僅差で3位に入る photo:CorVos前日の山岳ステージ終了時点で、総合首位のジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ)と2位につけるペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)のタイム差はわずか2秒。つまり、中間スプリントポイントや、ゴール着順のボーナスタイムによって逆転される可能性が十分にある。

そんな重要な最終ステージ、まず最初に仕掛けたのはエティックス・クイックステップのイヴ・ランパート(ベルギー)。そこにダニー・ペイト(アメリカ、チームスカイ)、マッテオ・トレンティン(イタリア、エティックス・クイックステップ)、ルーベン・ゼプントケ(ドイツ、キャノンデール・ガーミン)、ジャック・ジャンセヴァンレンスバーグ(南アフリカ、MTNキュベカ)の4名が加わり、5人の逃げを形成した。

しかし、中間スプリントが設定されたローズボールスタジアムの周回へ入ると、サガンに中間スプリントをとらせたいティンコフ・サクソがペースを上げるメイン集団に5人は吸収される。サガンのボーナスタイムを阻止したいエティックス・クイックステップがスプリントポイント手前で波状攻撃を仕掛けるが、ティンコフ・サクソもすかさず応戦し集団は一つのままスプリントポイントに突入。

ステージ表彰台に上がるトップスリーステージ表彰台に上がるトップスリー photo:CorVos先に仕掛けたのはカヴェンディッシュ。300m地点から力強いスプリントを開始。すかさずサガンが反応し、残り100mから追い上げるが僅差で差し切れず。サガンをマークしていたアラフィリップが3位で通過。通過順に3秒、2秒、1秒のタイムボーナスが得られる中間スプリントでサガンが1秒返上するものの、勝負はゴールスプリントへと持ち込まれた。

この時点で、サガンが総合優勝する条件はボーナスタイムのつく3位以内かつ、アラフィリップよりも上位でフィニッシュすること。中間スプリント通過後にもアタックがかかるが、ゴールまで5kmを残して全て吸収され、勝負へのお膳立ては全て整った。

最初に腰を上げたのは、ダニー・ファンポッペル(オランダ、トレックファクトリーレーシング)。しかし、サガンの番手につけていたカヴェンディッシュが踏み始めると、一気に先頭へ立ち、そのままゴールへと飛び込んだ。一方、サガンは伸び切らず、ワウテル・ウィッパート(オランダ、ドラパックプロサイクリング)とタイラー・ファラー(アメリカ、MTNキュベカ)に前へ出ることを許してしまう。

しかし、最後まで諦めずハンドルを投げ込んだサガン。写真判定に持ち込まれた結果、タイヤ差でファラーを下して3位に入っており、ボーナスタイム4秒を獲得して総合優勝に輝いた。ゴール直後にはアラフィリップが優勝したと思い、チームメイトと喜び合う一幕もあったほどの僅差で、2015年のツアー・オブ・カリフォルニアは幕を閉じた。



祝福を受けるペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)祝福を受けるペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ) photo:CorVos


逆転総合優勝を決めたペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)

ベースギターを持って表彰台に現れたダニエル・オス(イタリア、BMCレーシング)ベースギターを持って表彰台に現れたダニエル・オス(イタリア、BMCレーシング) photo:CorVosとても嬉しく思っているし、信じられない働きをしてくれたチームメイトに感謝したい。ミカエル・コラーをアレルギー性の体調不良で、マチェイ・ボドナールを落車で失ってしまったが、かなり僅差の末に総合優勝を勝ち取る事ができた。最初はただの一度も総合を獲れるなんて思いもしなかったし、この勝利には自分自身で驚いているよ。

トロフィーをかざすペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)トロフィーをかざすペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ) photo:CorVosフィニッシュしたときは3位か4位か分からず、結果を待たなければいけなかった。でもソワニエが走りながら「3位!3位だったぞ!」と言ってくれたが信じられず、何度も問いただした。そしてオーガナイザーから事実を伝えてもらったときにようやく彼らを信じる事ができた。

最後のスプリントではなにも戦略を持たず、ただひたすらにもがいたよ。ティンコフとエティックス以外にもたくさんの選手がスプリントに混ざっていたから特に注意を払わなければならなかった。

全てのステージが僕にとってインクレディブルだったけれど、特に昨日のクイーンステージでは絶好調だったと言わざるを得ない。最後の数kmは本当にタフだったにも関わらず脚はよく回っていて、諦めずに踏み続ける事ができた。今日は総合優勝できると自分を信じていたし、今までのキャリアの中で一番の苦難に満ちた栄光だ。昨日はほとんど諦めかけていたけれど、今はそれが報いとなって返ってきた。

総合2位となったジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ)

総合表彰台に上がる上位3選手総合表彰台に上がる上位3選手 photo:CorVos今日のゴールはジャージを守り切る事だった。マーク(カヴェンディッシュ)は中間スプリントで僕のために先頭通過してくれたし、自分自身でも全力でスプリントした。ゴールでもサガンから数秒を奪うためにスプリントしたが、彼を倒すのは到底不可能だった。

望んだ結果とはならなかったが、深く落ち込んではいないんだ。リーダージャージを着て走ったのはボーナスのようなもので、このカリフォルニアではキャリア2勝目を挙げることができたし、総合でも2位。チームの動きも完璧で、マークも4勝、ほぼ毎日表彰台に上がることができた。

2つの特別賞ジャージを獲得して、その内1つが僕の新人賞。これ以上なにを望めるだろう?総合優勝できなかったのは確かだけれど、見方によっては十二分だと思う。レースの開幕前にこんな結果を渇望していたとしたらそれはクレイジーだよ。だから偉大なチャンピオンに負けたことも納得できるし、そしてこの思い出は一生心の中にしまっておきたいと思う。



ツアー・オブ・カリフォルニア2015第8ステージ結果
1位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、エティックス・クイックステップ)
2位 ワウテル・ウィッパート(オランダ、ドラパックプロサイクリング)
3位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)
4位 タイラー・ファラー(アメリカ、MTNキュベカ)
5位 トム・ファンアスブロック(ベルギー、ロットNLユンボ)
6位 セバスティアン・アエド(アルゼンチン、ジェイミス・ハーゲン)
7位 ジーコ・ワイテンス(ベルギー、ジャイアント・アルペシン)
8位 アンドレア・ペロン(イタリア、ノボノルディスク)
9位 ロガン・オーウェン(アメリカ、アクセオンサイクリング)
10位 マルティン・ベルスコール(オランダ、ノボノルディスク)
2h14'55"











個人総合成績
1位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)
2位 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ)
3位 セルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア、チームスカイ)
4位 ジョー・ドンブロウスキー(アメリカ、キャノンデール・ガーミン)
5位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ロットNLユンボ)
6位 アイマル・スベルディア(スペイン、トレックファクトリーレーシング)
7位 イアン・ボスウェル(アメリカ、チームスカイ)
8位 リカルド・ゾイドル(オーストリア、トレックファクトリーレーシング)
9位 ペーター・ケノー(イギリス、チームスカイ)
10位 ロブ・ブリットン(カナダ、スマートストップ)

28h13'12"
+03"
+37"
+1'14"
+1'15"
+1'16"
+1'23"
+1'24"
+1'44"
+2'10"


ポイント賞
マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、エティックス・クイックステップ)

山岳賞
ダニエル・オス(イタリア、BMCレーシング)

ヤングライダー賞
ジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ)

チーム総合成績
チームスカイ

text:Naoki.YASUOKA
photo:Corvos