1級山岳カンピテッロ・マテーゼにフィニッシュするジロ・デ・イタリア第8ステージでベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター)が逃げ切り勝利。アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)がマリアローザを守るとともに、総合リードを広げることに成功しています。



第8ステージはフィウッジをスタート第8ステージはフィウッジをスタート photo:Kei Tsuji


ジロ・デ・イタリア2015第8ステージジロ・デ・イタリア2015第8ステージ image:RCS Sportイタリア半島の「背骨」を形成するアペニン山脈に分け入る第8ステージ。前日のフィニッシュ地点フィウッジをスタートし、中盤にかけて標高1530mの2級山岳フォルカ・ダチェーロを含む起伏をこなして標高1430mの1級山岳カンピテッロ・マテーゼ(登坂距離13km/平均勾配6.9%)を目指す。

先頭で2級山岳フォルカ・ダチェーロを登るステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ)先頭で2級山岳フォルカ・ダチェーロを登るステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ) photo:Tim de Waele晴れては降ってを繰り返す気まぐれな天候。開始直後にペースアップした集団は落ち着く素振りを見せないままアタックを潰して行く。レース開始1時間の平均スピードは46.9km/hをマークした。

追走グループを率いるベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター)追走グループを率いるベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター) photo:Tim de Waeleアタックが決まらないまま迎えた50km地点のスプリントポイントではマリアローザのアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)が2番手通過してボーナスタイム2秒を獲得。左肩脱臼の影響が心配されながらも、マリアローザキープに向けて意欲を見せる。

ハイスピードな展開によって集団が割れるシーンも見られたが、59km地点でステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ)が飛び出し、11名が追走グループを形成したところでようやく集団は落ち着きを取り戻す。遅れていた選手たちが復帰し、ティンコフ・サクソが番人のごとくコントロールを開始した。

2級山岳フォルカ・ダチェーロで追走グループから飛び出したカルロスアルベルト・ベタンクール(コロンビア、AG2Rラモンディアール)とフランコ・ペッリツォッティ(イタリア、アンドローニジョカトリ)が先頭クルイスウィクを追撃し、1分遅れで頂上をクリアする。残りの追走9名は1分30秒、メイン集団は8分遅れでこの日の最高地点を通過した。

やがてフィニッシュまで90kmを残して先頭はクルイスウィク、ベタンクーン、ペッリツォッティの3名に。集団先頭では蛍光イエローのジャケットに身を包んだティンコフ・サクソに代わって、NIPPOヴィーニファンティーニの面々がダミアーノ・クネゴ(イタリア)のためにローテーションを開始する。そこには序盤の登りで一旦集団から脱落していた石橋学の姿もあった。



2級山岳フォルカ・ダチェーロを登るプロトン2級山岳フォルカ・ダチェーロを登るプロトン photo:Tim de Waele
先頭を走るカルロスアルベルト・ベタンクール(コロンビア、AG2Rラモンディアール)、ステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ)、クリストフ・ファンデワール(ベルギー、トレックファクトリーレーシング)先頭を走るカルロスアルベルト・ベタンクール(コロンビア、AG2Rラモンディアール)、ステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ)、クリストフ・ファンデワール(ベルギー、トレックファクトリーレーシング) photo:Tim de Waele2日前に左肩を脱臼したことを感じさせない走りを見せるアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)2日前に左肩を脱臼したことを感じさせない走りを見せるアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ) photo:Tim de Waele
1級山岳カンピテッロ・マテーゼでアタックするファビオ・アル(イタリア、アスタナ)1級山岳カンピテッロ・マテーゼでアタックするファビオ・アル(イタリア、アスタナ) photo:Tim de Waele


先頭で頂上を目指すベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター)先頭で頂上を目指すベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター) photo:Kei Tsuji30秒遅れで追走を続けていた9名の中からクリストフ・ファンデワール(ベルギー、トレックファクトリーレーシング)が単独で飛び出して先頭3名に合流。一方でペッリツォッティが脱落し、ベタンクール、クルイスウィク、ファンデワールの3名で最後の1級山岳カンピテッロ・マテーゼ登坂を開始する。追走グループは1分30秒、アスタナ率いるメイン集団は5分遅れで登りに差し掛かった。

1級山岳カンピテッロ・マテーゼにフィニッシュするベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター)1級山岳カンピテッロ・マテーゼにフィニッシュするベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター) photo:Tim de Waele先頭3名の中でベタンクールが最初にアタックを仕掛けたものの、カウンターアタックを成功させたクルイスウィクが独走を開始する。1分30秒後方では、追走グループの中から飛び出したベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター)とセバスティアン・ライヘンバッハ(スイス、IAMサイクリング)の2人が他のメンバーを振り切ることに成功する。

1級山岳カンピテッロ・マテーゼでアタックしたダミアーノ・クネゴ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ)1級山岳カンピテッロ・マテーゼでアタックしたダミアーノ・クネゴ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ) photo:Kei Tsuji結局クルイスウィクは先頭を守りきることが出来ず、残り4kmでインチャウスティとライヘンバッハにパスされる。そこからさらにペースを上げたインチャウスティが独走に持ち込み、標高1430mの1級山岳カンピテッロ・マテーゼにフィニッシュした。

1級山岳カンピテッロ・マテーゼでアタックするファビオ・アル(イタリア、アスタナ)1級山岳カンピテッロ・マテーゼでアタックするファビオ・アル(イタリア、アスタナ) photo:Kei Tsuji「今日は逃げにチャンスのあるステージだったから、何としても逃げに乗りたかった。逃げに乗るだけで脚を使ったよ。クルイスウィクは強かったけど、前半から積極的に動いたツケが回ってくると予想していた。マリアローザが1分後方にまで迫っていると分かった時には焦ったけど、残り4kmを全力で走り、残り300mで勝利を確信した」と、バスク生まれの29歳インチャウスティは語る。

1級山岳カンピテッロ・マテーゼの頂上手前でアタックするリッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ)1級山岳カンピテッロ・マテーゼの頂上手前でアタックするリッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ) photo:Tim de Waeleインチャウスティは2013年ジロでマリアローザを1日着用し、第16ステージで優勝。同大会を総合8位でレースを終えているオールラウンダーだが、今大会はすでに20分以上遅れ、ステージ優勝狙いにスイッチしていた。

4番手でフィニッシュするファビオ・アル(イタリア、アスタナ)4番手でフィニッシュするファビオ・アル(イタリア、アスタナ) photo:Tim de Waele総合上位陣の中で真っ先に動いたのは総合2位のファビオ・アル(イタリア、アスタナ)だった。残り5kmアーチを切ったところでアルが猛然とペースを上げると、集団はアル、コンタドール、リッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ)、リゴベルト・ウラン(コロンビア、エティックス・クイックステップ)、そしてミケル・ランダ(スペイン、アスタナ)の5名に絞られてしまう。

カウンターアタックを仕掛けたランダやダミアーノ・クネゴ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ)には誰も反応しない。アル、コンタドール、ポート、ウランは互いを牽制しながら登坂を継続し、残り1kmアーチを前にアルが再び腰を上げた。

ランダが先頭インチャウスティに20秒届かず2位に入る中、クネゴは吸収され、アル、コンタドール、ポート、ウランが我先にとフィニッシュを目指す。ポートのアタックも決まらず、4名は固まったままスプリントを繰り広げた。

スプリントでアルが先着したものの、逃げたインチャウスティ、ランダ、ライヘンバッハがボーナスタイムを全て消化したためボーナスタイムは無し。結果、スプリントポイントでコンタドールが獲得したボーナスタイム2秒を除いて、総合トップスリーの成績に変動は見られなかった。

「序盤のハイスピードな展開が最後の登りの走りに影響した」とコンタドールは語るが、1秒も失うことなく、むしろライバルから2秒を奪ってマリアローザをキープしている。

難所を乗り切ったコンタドールは「今日は重要なテストだった。総合リードを失うことなく走りきることが出来たのでハッピーだ。ジロの総合争いは始まったばかり。日に日に左肩の状態は良くなっており、明日もっと良い走りをする自信がある」とコメント。一時はリタイアまで噂されたピストレーロだったが、マリアローザ候補の筆頭であることを見せつけた。

現地の様子や日本人選手のコメントなどは現地レポートでお伝えします。



笑顔でマリアローザを受け取ったアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)笑顔でマリアローザを受け取ったアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ) photo:Tim de Waele
グルペットで1級山岳カンピテッロ・マテーゼを登る別府史之(トレックファクトリーレーシング)と石橋学(NIPPOヴィーニファンティーニ)グルペットで1級山岳カンピテッロ・マテーゼを登る別府史之(トレックファクトリーレーシング)と石橋学(NIPPOヴィーニファンティーニ) photo:Kei Tsuji


ジロ・デ・イタリア2015第8ステージ結果
1位 ベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター)            4h51’34”
2位 ミケル・ランダ(スペイン、アスタナ)                    +20”
3位 セバスティアン・ライヘンバッハ(スイス、IAMサイクリング)         +31”
4位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)                    +35”
5位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)
6位 リッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ)
7位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、エティックス・クイックステップ)
8位 ダリオ・カタルド(イタリア、アスタナ)
9位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ)        +45”
10位 ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、BMCレーシング)
164位 石橋学(日本、NIPPOヴィーニファンティーニ)              +28’17”
166位 別府史之(日本、トレックファクトリーレーシング)

個人総合成績
1位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)        32h40’07”
2位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)                     +04”
3位 リッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ)               +22”
4位 ダリオ・カタルド(イタリア、アスタナ)                    +30”
5位 ミケル・ランダ(スペイン、アスタナ)                     +42”
6位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、ティンコフ・サクソ)            +1’00”
7位 ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、モビスター)            +1’16”
8位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、エティックス・クイックステップ)      +1’24”
9位 ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、BMCレーシング)              +1’34”
10位 アンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター)             +1’38”

マリアロッサ ポイント賞
エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)

マリアアッズーラ 山岳賞
ベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター)

マリアビアンカ ヤングライダー賞
ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)

チーム総合成績
アスタナ

text&photo:Kei Tsuji in Campitello Matese, Italy